日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
選択された号の論文の993件中501~550を表示しています
  • 金井 雅武, 樋口 恭子, 前田 良之, 吉羽 雅昭
    p. 499
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    ヨシ(Phragmites communis)は耐塩性植物であり、塩類集積土壌においても体内Na濃度を低く保つことができる。これは根から吸収されたNaを茎基部(根と地上部の境界)で再び根に送り返す機構を持つためであるとされている。そこで本研究ではイネ(Oryza sativa L.cv.Nipponbare)を対照植物とし、根表面から吸収されたイオンが根を移行した量、根から吸収されたイオンが茎基部を移行した量を測定し、比較することで茎基部の機能を定量的に評価した。ヨシはイネよりも根でNaを排除する能力は低かったが、ヨシ茎基部はNaを移行させにくくNaCl処理でのNaの茎基部移行割合(茎基部通過後のイオンの量/茎基部通過前のイオンの量)はイネで52.8%に対してヨシでは4.3%と低かった。またヨシ茎基部のイオンを移行させにくい機能には選択性があり、KCl処理のKおよびNa2SO4処理のNaではヨシとイネで茎基部移行割合は大差ないことがわかった。さらにヨシ、イネともに茎基部に高温の熱風を3秒間吹きつけることでイオンを移行させにくい機能が失われたことにより、この機能には何らかのトランスポーターやチャネルが関与していることが示唆された。例えば維管束近辺の細胞でNaトランスポーターが過剰発現し、道管から上昇していくNaを回収し師管へ送り返していることが考えられる。
  • 丸山 哲平, 樋口 恭子, 吉羽 雅昭, 但野 利秋
    p. 500
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    イネ科植物は根から鉄キレート物質(ムギネ酸類)を分泌して鉄吸収を行うため、鉄欠乏耐性の強弱はムギネ酸類の分泌量とそれによる鉄吸収量により説明されてきた。イネとオオムギの鉄欠乏症状は、イネでは新葉のみに極端なクロロシス症状を示し新葉の展開が止まるのに対し、オオムギでは全身の葉色が薄くなるが新葉の展開を維持する。この違いが鉄吸収量の違いだけによるものなのかを調査した。葉の鉄含量はイネの下位葉で高く、上位葉ほど低くなり、一方オオムギでは下位葉と上位葉での鉄含量はほぼ等しかった。そこでムギネ酸類分泌量の違いによる鉄吸収能力の差を排除するため、イネとオオムギを同じ容器内で生育(混植栽培)させた。その結果、単独栽培に比べ混植栽培でイネの最新葉中の鉄含量は増加したが、分配特性は変わらなかった。59Feを用いたパルスラベルの経根吸収実験においても各葉位への分配特性はイネとオオムギで単独栽培と同じであった。また葉中の59Fe含量はイネでオオムギより高かった。次に体内で有効な形態の鉄を維持する能力の違いを調べるため、新葉と下位葉の鉄欠乏時の水溶性鉄含量を比較した。オオムギでは新葉・下位葉ともにある程度の含量を維持したのに対し、イネの下位葉では極端に減少した。したがって、イネとオオムギではムギネ酸類の分泌量の違いによる鉄獲得能力の違いだけでなく、体内に吸収した鉄の分配や利用の仕方にも違いがあると考えられる。
  • 中村 進一, 秋山 智恵子, 渡辺 明夫, 服部 浩之, 藤巻 秀, 鈴井 伸郎, 石岡 典子, 松橋 信平, 茅野 充男
    p. 501
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     土壌中に蓄積した有害重金属であるカドミウム(Cd)を植物により土壌中より効果的に除去するためには、植物が根から吸収したCdを効率的に地上部へと移行させる必要がある。Cdの地上部への移行は主に導管経由であると考えられることから、本研究では導管に存在するタンパク質に着目し、導管におけるCdの輸送機構の解明を目指した。
     供試植物としては水耕栽培したアブラナを用いた。植物体のCd処理は10µM、30µMの濃度で塩化カドミウムを水耕液中に添加することで行った。コントロールの植物及びCd処理を行った植物より導管液を採取し、導管液タンパク質のCd処理に対する応答を調べた。
     採取した導管液中のタンパク質濃度をBradford法により測定すると約13 µg/mLであり、Cd処理は導管液タンパク質の濃度に影響を及ぼさなかった。SDS-PAGEによりタンパク質を分離後、銀染色法により検出するとアブラナ導管液中には根、葉、葉柄、篩管液中とは異なる組成でタンパク質が存在することが確認できた。導管液タンパク質の中で分子量20kDa、45kDaのものはCd処理により存在量が増加し、分子量50kDaのタンパク質はCd処理によりその存在量が減少していた。今後はこれらのタンパク質についての構造やカドミウム結合性に関しての解析を行う予定にしている。
  • 藤巻 秀, 中村 進一, 鈴井 伸郎, 石岡 典子, 茅野 充男, 松橋 信平
    p. 502
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    Positron Emitting Tracer Imaging System (PETIS)は、植物個体に与えたポジトロン放出核種の体内分布を非破壊的かつ経時的に観測できる装置である。最大の特長は、オートラジオグラフィーなどの手法と異なり動画像データが得られる点にある。これにより植物における物質輸送の動態を視覚的に理解することが容易になり、近年、様々な研究に利用されている。
    本研究では、土壌および食糧の汚染が問題となっているカドミウムに着眼し、植物体内における吸収・輸送・蓄積の挙動を可視化することを試みた。ポジトロン放出トレーサとして107Cd(半減期6.5時間)をイオンビーム照射および化学分離によって調製し、供試した。播種後4~5週のイネ、播種後2~4週のアブラナを供試し、水耕液からトレーサを経根吸収させつつ、根の基部から地上部にかけて11~37時間イメージングを行なった。その結果、生きた植物体内のカドミウム移行の様子を動画像として得ることに初めて成功した。また同時に、根、葉鞘(イネ)、茎・節・葉柄・葉身(アブラナ)といった部位別にトレーサ量の経時変化グラフ(time-activity curve)を得た。各部位におけるカドミウムの輸送と蓄積の挙動を理解するために、これらのグラフを元に動態解析を試みたので、これについても報告する。
  • 阪本 浩一, 藤巻 秀, 河地 有木, 石井 里美, 鈴井 伸郎, 石岡 典子, 塚本 崇志, 渡辺 智, 松橋 信平
    p. 503
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     ソースである葉でつくられた光合成産物は、篩管を通して植物の様々な器官シンクへと輸送される。光合成産物は、栄養生長期では主に根や茎へ、生殖生長期では花芽、子実や種子へと輸送され、植物の生長ステージにより輸送されるシンクが変化する。しかしながら光合成産物の輸送や分配の挙動をイメージング解析した例は少ない。
     本研究では、植物の栄養生長ステージにおける炭素の変化を経時的に追跡し、シンクへの蓄積について評価するため、ポジトロンイメージングシステム (Positron-Emitting Tracer Imaging System (PETIS)) による11C-トレーサーの動態から、光合成産物輸送の経時変化の撮像を試みた。栄養生長速度の速いアサを材料に用いて、ポジトロン放出核種11Cで標識した炭酸ガス(11CO2)をアサの葉から供給し、光合成産物の輸送と分配を調べた。さらにイメージ上に取った適当な領域におけるトレーサーの組織への積み下ろし率を、数理的解析法を用いて推定した。その結果、最大展開葉に11CO2を供給した場合には、光合成産物は茎の伸長が特に著しい最大展開葉直下の節間と茎頂部に集中して蓄積することがわかった。一方、下位葉に11CO2を供給した場合には、光合成産物は根方向に輸送されると共に、途中の節間に対して均等に積み下ろされることがわかった。
  • 森 真理, 北村 治滋, 佐藤 大祐, 田中 俊憲, 長谷川 博, 塚本 崇志, 藤巻 秀, 阪本 浩一, 石井 里美, 鈴井 伸郎, 河地 ...
    p. 504
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     NRT2はNO3-低濃度条件下で働く高親和性トランスポーター(HATS)である。イネは、一般栽培条件ではNO3-濃度が低いため、そのNO3-吸収に主にNRT2が寄与していると考えられる。本研究では、イネの窒素吸収能を高める方法として、HATSであるOsNRT2の機能を増強しNO3-低濃度条件でのNO3-の取り込みを高めることを試みた。まずイネからOsNRT2を単離し塩基配列を決定した(DDBJ;AB008519)。次に単離したOsNRT2を35S改変型高発現プロモーター(生物研から分譲)に連結しイネ品種「ゆめおうみ」に導入し100個体の形質転換イネを得た。導入遺伝子がmRNAレベルで安定して高発現する5系統を選抜しNO3-吸収能を分析した。3~5葉の形質転換イネ幼苗を窒素フリー条件で1~2日処理した後、200μM KNO3溶液に浸漬し4、8および16時間後の溶液中の残存NO3-量をイオンクロマトグラフィーを用いて測定し根1g当たりのNO3-吸収量を求めた。その結果、形質転換イネのNO3-吸収量は野生型イネに比べて有意に増加した。PETIS(Positron Emitiing Tracer Imaging System)を用いたNO3-吸収能の解析においても同様の結果が得られた。
  • 鈴木 陽子, 信定(鎌田) 知江, 三橋 尚登, 西村 幹夫, 林 誠, 三村 徹郎
    p. 505
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     低リン酸環境におかれた植物は、さまざまな生理反応によりリン欠乏に対処することが知られている。中でも老化器官(ソース)から若年器官(シンク)へのリン酸転流はリン酸欠乏に対する重要な適応機構の一つである。しかし、これまでのところ、その機構の詳細は未知の部分が多い。そこで、分子レベルにおけるリン酸転流機構の解析を目標に、モデル植物であるシロイヌナズナを材料として、リン酸転流現象の生理機構と転流に関与する遺伝子の探索を行った。
     シロイヌナズナにおけるリン酸転流現象を確認するため、新たに開発した水耕栽培法を用いて実験を行った。リン酸供給量の異なる培地で生育させた植物体について、成長段階を通じた葉組織中リン酸含量を測定し、個体内のリン酸分配を解析した。また、32Pにより標識した植物個体を培養し、植物個体内を転流していくリンの動態を追跡した。転流現象の生理解析に基づいて、特定の培養条件下でソース葉として機能する葉と、シンク葉として機能する葉を決定し、それぞれの葉から単離したRNAを用いて、マイクロアレイによる発現解析を行った。現在、発現変化が見られた遺伝子に関して、リン酸転流への特異的関与の可能性を検討中である。
  • 戸松 創, 高野 順平, 林 浩昭, 米山 忠克, 高橋 秀樹, 藤原 徹
    p. 506
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    モリブデンは植物の生育に必須な元素であり、欠乏と過剰は農業上の問題となる。モリブデン cofactor (Moco)はモリブドプテリンにモリブデン原子が共有結合した分子であり、これは硝酸還元酵素(NR)など幾つかの酵素の補酵素である。モリブデン欠乏環境下ではMocoの含有量が低下することが報告されており、土壌からのモリブデン吸収能が窒素代謝に影響を及ぼすことが示唆されている。Mocoの生合成経路は明らかにされているが、モリブデンの吸収と輸送に関するメカニズムは未だ不明である。発表者らは、シロイヌナズナのホウ素栄養に関する変異体を解析する過程において、葉におけるモリブデン濃度はCol-0とLerで数倍の違いがあることを見いだした。遺伝解析によって、この性質は単一の遺伝子座によって支配されていることを見いだし、Map based cloningによって原因となる遺伝子を同定した。同定された遺伝子は膜タンパク質であり、既知の無機イオントランスポーターと相同性を示した。酵母で発現させると、菌体内のモリブデン濃度を上昇させる効果が認められた。また、当該遺伝子にT-DNAの挿入を持つ変異株では葉におけるモリブデン濃度が低下していた。以上の結果を総合すると、今回の遺伝子の同定は植物におけるモリブデントランスポーターの初めての同定であると考えられる。
  • 高野 順平, 三輪 京子, Nicolaus von Wiren, 藤原 徹
    p. 507
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     ホウ素は植物に欠乏害と過剰害の両方を引き起こしやすい必須栄養元素である。シロイヌナズナBOR1は、導管への積極的なホウ素輸送を行う排出型ホウ素トランスポーターであり、そのタンパク質蓄積量はホウ素栄養状態によって翻訳時あるいは翻訳後に制御されていている。本研究では、35S:BOR1-GFP形質転換植物の根端において、BOR1-GFP融合タンパク質の細胞内局在を解析した。BOR1-GFPは低ホウ素条件下では細胞膜に局在し、高濃度のホウ素添加後30分以内に細胞内のドット状のオルガネラに移行し、数時間後には消失した。さらに、小胞輸送およびタンパク質分解に関する各プロセスの阻害剤を用いた解析から、BOR1はエンドソームを経由し液胞に輸送され、分解されることが示唆された。植物は、低ホウ素条件下にBOR1を細胞膜において機能させ地上部のホウ素欠乏害を防ぎ、ホウ素十分条件下にはBOR1をエンドサイトーシスさせ分解し、ホウ素の地上部への過剰輸送を防いでいると考えられる。
  • 青木 考, 山谷 知行, 榊原 均
    p. 508
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    カボチャ篩管タンパク質CmPP16は、一本鎖RNA結合タンパク質であり、篩部特異的に局在する。CmPP16は長距離移行能を有することから、篩管全身性情報伝達に何らかの役割を担っていることが示唆されている。我々の最近の研究により、CmPP16の2つのアイソフォーム、CmPP16-1とCmPP16-2は、全篩管タンパク質中では長距離移行の結果としてそれぞれシュートとルートを主な目的地としていることが明らかとなった。CmPP16-1は精製標品を用いると根への移行効率が低下することから、篩管タンパク質中にCmPP16-1の長距離移行制御因子が存在することが強く示唆された。そこでゲルろ過クロマトグラフィーと抗CmPP16-1抗体を用いた免疫共沈降法によりCmPP16-1と相互作用するカボチャ篩管タンパク質を探索したところ、CmPP16-1と相互作用するいくつかの篩管タンパク質が見いだされた。これらの相互作用タンパク質の共存下で精製CmPP16-1の根への長距離移行が回復することから、相互作用タンパク質のCmPP16-1目的地決定への関与が示された。さらにいくつかの相互作用タンパク質の同定を試み、eIF5Aや、TCTP類似21kDaタンパク質が含まれる事が判明した。以上の事から篩管タンパク質は、篩管液による受動的輸送のみならず、分子レベルで制御された選択的移行をしていることが示唆される。
  • 及川 愛, 山下 哲郎, 木藤 新一郎
    p. 509
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    我々は発芽時のオオムギ胚盤で大量に発現する23kDaの新規タンパク質(P23k)を単離同定した。発芽時において、P23kの発現は内胚乳デンプン分解の時期に特異的であり、その発現は糖に依存していた。これら結果は、P23kが発芽時の糖転流に関与することを示唆していると考えられる。
    しかしそれは発芽時に限定された考察であり、その生理的役割を明らかにするためには成育過程や種子の登熟過程における解析が必要である。そこで我々は、成熟期や登熟期のオオムギを用いてP23kの発現時期や発現部位の解析を行った。その結果、それら全ての転流の盛んな組織でP23kが特異的に局在していることが明らかとなった。さらに、登熟種子におけるP23kの発現は、胚乳組織への糖の流入が盛んな登熟初期から中期にかけて上昇し糖の流入が減少する登熟後期には減少することも明らかとなった。これらP23kの発現部位や発現時期は、既知の糖転流関連因子の発現部位および時期と完全に一致しており、これらはP23kが糖の転流機構に関与することをさらに強く示唆する結果と考えている。
     また、P23kはジャスモン酸誘導性タンパク質JIP23と相同性を示すことからジャスモン酸に対する応答性を調べた。その結果、P23kはジャスモン酸には誘導されないことが明らかとなった。この結果はP23kとJIP23は全く異なる機能を持つタンパク質であることを示している。
     
  • Mitsuru Akita, Hitoshi Inoue, Iku Ninomiya
    p. 510
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    We have reported in the previous meeting that the application of recombinant precursor proteins on protein import into chloroplasts. Currently, we are developing the methods to visualize protein import into chloroplasts in vitro. We have obtained the encouraging results if recombinant precursor proteins were modified with fluorescent compounds. In brief, after import reaction, chloroplasts are solubilized with the SDS sample buffer, followed by the SDS-PAGE. The gel in wet condition was directly loaded on the fluorescent imaging-analyzer and scanned. In this way, the processing of recombinant protein, resulted by the precursor to be imported into chloroplasts, was visualized. The rate of import was also able to be analyzed. We will present these results and our current efforts at the meeting.
  • Toshiki Yabe, Masato Nakai
    p. 511
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    The biosynthesis of iron-sulfur clusters is a highly regulated process involving several proteins. Among them, so-called scaffold proteins play pivotal roles in both the assembly and delivery of iron-sulfur clusters. Here, we report the characterizations of chloroplast-localized CnfU proteins from Arabidopsis whose cyanobacterial homologue was proposed to serve as a molecular scaffold. Deficient mutants of AtCnfU-V, one of three chloroplastic NifU-like protein homologues, exhibited a dwarf phenotype, impaired protein levels of both ferredoxin and photosystem I, and a decrease in the in vitro insertion activity of iron-sulfur cluster. We propose that AtCnfU has an important function as a molecular scaffold for iron-sulfur cluster biosynthesis and therefore is required for the biogenesis of ferredoxin and photosystem I. In addition to the results above, we would like to present the latest data of other possible protein factors involved in iron-sulfur cluster biosynthesis in chloroplasts.
  • 岩田 雄二, 小泉 望
    p. 512
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    小胞体で合成されるタンパク質は正しい高次構造をとった後、小胞輸送により目的の場所へ運ばれる。小胞体でのタンパク質の高次構造の形成に異常が生じBiPなどの小胞体シャペロンの遺伝子が誘導される現象は小胞体ストレス応答と呼ばれ、ユニークな情報伝達機構が酵母、哺乳動物で明らかとなりつつある。私達は植物での分子機構を明らかにするためにシロイヌナズナを用いて研究をおこなっている。その過程で糖鎖合成阻害剤ツニカマイシンにより転写が誘導されるbZIP型転写因子AtbZIP60を同定した。AtbZIP60はC末端側に膜貫通領域を有し、膜貫通領域以降を除いたタンパク質(AtbZIP60ΔC)はGFPと融合させると核に局在した。またAtbZIP60ΔCの一過的発現によりBiPプロモーターが活性化されるが、全長のAtbZIP60の過剰発現は活性化にほとんど影響を与えなかったことから、タンパク質レベルでの切断が活性化に必要である可能性が示唆された。また、BiPプロモーターに加えてAtbZIP60のプロモーターもAtbZIP60ΔCにより活性化された。さらに、AtbZIP60遺伝子破壊株では3個のBiP遺伝子のうち1遺伝子のみの誘導が明らかに抑制されていた。以上の結果から、AtbZIP60を介した植物特異的な小胞体ストレス応答の分子機構が存在することが示唆された。
  • 新濱 充, 森田(寺尾) 美代, 田坂 昌生
    p. 513
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    花茎と胚軸の重力屈性および形態に異常をもつシロイヌナズナzigzag(zig)変異体の原因遺伝子は、トランスゴルジ網から液胞へ向かう小胞輸送に関与するSNARE VTI11をコードする。高等植物における小胞輸送の分子ネットワークおよび小胞輸送の生理機能(重力応答や形態形成)へ関与を遺伝学的に解析するために、我々はzigのサプレッサー変異体を多数得ている。その一つであるzig suppressor 1(zip1)はZIG/VTI11のホモログVTI12に生じた優性変異であり、zig変異体の重力屈性および形態における異常を野生株レベルまで回復させる。一方、zip2zig変異体の重力屈性および形態の異常を部分的に回復させる劣性変異である。ZIP2のマッピングを行ったところ、zip1とは異なる第1染色体北に強い連鎖が見られた。さらに別のサプレッサー変異体SC2-1は zip1zip2に比べて重力屈性の回復が弱く、本葉の形態もzigに近いが、花茎のジグザグ形態をかなり抑圧する劣性変異である。SC2-1の原因遺伝子のマッピングを行ったところ、zip1およびzip2とは異なる第1染色体南に強い連鎖が確認された。zigの表現型を重力屈性および形態の双方で抑圧することから、zip2やSC2-1の原因遺伝子も液胞への小胞輸送関連因子であると期待される。
  • I Nengah Suwastika, Tomohiro Uemura, Masa.H Sato, Kunio Takeyasu
    p. 514
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    SNAREs (*Soluble N-ethyl-maleimide sensitive factor attachment protein receptors*) play a critical role in membrane fusion process of vesicular transport system. Genome studies on Arabisopsis thaliana pointed out that there are 54 genes (much more than yeast and mammalian) which encode SNARE proteins. The abundance of SNARE genes indicates the complexity of endomembrane trafficking within the plant cell. SYP7-group containing three genes, SYP71, SYP72 and SYP73, has no homologues in mammalians and yeast, suggesting that SYP7 group has plant unique functions. We already reported that SYP71/72/73 (SYP7-group) was localized on the ER by transient expression system. However, localization studies of GFP-fused proteins by*using BY2 Cell, showed that the proteins were not only localized on the ER, but also on the plasma membrane. Furthermore, we are analyzing membrane trafficking in plant involving SYP-7s proteins by generating transgenic plant expressing GFP-fused SYP7-group proteins and performing promoter analysis by using GUS reporter.
  • 上田 晴子, 西山 千晶, 中村 潤, 林 八寿子, 大友 一郎, 高橋 卓, 嶋田 知生, 西村 いくこ
    p. 515
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    VAM3は輸送小胞と液胞の融合に関与するSNAREである.われわれは,AtVAM3のペプチド挿入変異体がミロシナーゼ(TGG1, TGG2)を大量に蓄積することを見い出した.ミロシナーゼはアブラナ科を含むフウチョウソウ目に特徴的なβ-グルコシダーゼであり,グルコシノレート(カラシ油配糖体)を分解して害虫に対する忌避物質を生成する.そこで,AtVAM3の挿入変異体ならびにノックアウト変異体におけるミロシナーゼの蓄積について解析を行った.その結果,AtVAM3変異体におけるミロシナーゼの発現器官は野生型と変わらないが,個々の器官における蓄積量が著しく増加していることが分かった. AtVAM3変異体では,ミロシナーゼ活性も蓄積量に比例して上昇していた.ミロシナーゼはミロシン細胞と呼ばれる特殊な細胞に局在することが知られている.ミロシナーゼの特異抗体を用いた蛍光抗体法では,AtVAM3変異体においてもミロシナーゼは維管束周辺のミロシン細胞に局在していた.しかし,興味深いことに,AtVAM3変異体ではミロシン細胞の数が増えていることが明らかになった.ミロシン細胞の増加とミロシナーゼの蓄積量は,ノックアウト変異体よりも挿入変異体でより顕著に観察された.以上の結果から,AtVAM3がミロシン細胞の分化に関与している可能性が示唆された.
  • 須田 甚将, 唐原 一郎, Andrew L. Staehelin, 峰雪 芳宣
    p. 516
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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    分裂準備帯(PPB)は植物細胞において、前期のある時点で微小管が表層に帯状に並んだ構造である。PPBが形成される位置はその後の細胞分裂で分裂面が挿入される場所と一致することから、分裂面の決定に重要な役割を果たしている。これまでの解析よりPPB領域にはクラスリン被覆小胞(CCV)と非被覆小胞(NCV)が存在し、CCVがエンドサイトーシスを行う小胞であることをふまえ、CCVが脱被覆されてNCVへかわるということ、PPBでエンドサイトーシスが活発に行われることが示唆されている。エンドサイトーシスにはアクチン細胞骨格が関与するといわれているが、その働きは具体的にはよく分かっていない。そこで本研究では、PPB領域で観察されたNCVがCCV同様エンドサイトーシスに関わる小胞であるという可能性を検証するとともに、エンドサイトーシスにおけるアクチン細胞骨格の働きを知ることを目的とし、加圧凍結したタマネギ子葉の表皮細胞で2軸電顕トモグラフィー法を用いて、PPBにおける小胞の形態・分布に対するサイトカラシンDの影響を定量的に解析した。その結果NCV同士が輸送過程で融合すること、アクチンがクラスリン被覆ピットからCCVへの形成とNCVの融合に関与することが示唆された。このことはNCVもCCV同様エンドサイトーシスに関わる小胞である可能性を支持する。
  • 日野 武志, 田中 克典, 川向 誠, 松田 英幸, 中川 強
    p. 517
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
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     真核生物の小胞輸送系は、小胞体 (ER)から始まるタンパク質の分泌経路として見いだされた。輸送小胞のうち、ERとゴルジ体間の輸送を担っているのはCOPI(coat protein I)及び、COPII(coat protein II)である。COPIIはER・ゴルジ体間の輸送のうち、ERからゴルジ体への順方向の輸送を行っている被覆小胞であり、低分子量GTP結合タンパク質のSar1p等や2種類の被覆タンパク質複合体(Sec23p/24p複合体、Sec13p/31p複合体)からなる。本研究では、COPIIコンポーネントのArabidopsis thalianaホモログについて、植物の発達における機能の解析を目的としている。
     現在、COPIIコンポーネントのうち、sec31p、sec13p、sec23p、sec24pのホモログであるATSEC31、ATSEC13、ATSEC23、ATSEC24についての解析を行っており、その結果を報告する。ATSEC31、ATSEC13のホモログはそれぞれ2つ、ATSEC23のホモログは7つ、ATSEC24のホモログは3つ存在していることがデータベースでの検索より推測されている。本研究ではこれらのホモログについて発現解析やタンパク局在解析などを行っている。
  • 成澤 知子, 福田 裕穂, 松岡 健
    p. 518
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
     小胞体からゴルジ装置への輸送を担うCOPII小胞は、Sar1p, Sec23/24p, Sec13/31pが小胞体上でアセンブリ-することにより形成され、この形成に関わるSar1, Sec23, Sec24, Sec13, Sec31遺伝子は総て出芽酵母では必須であることが知られている。植物においては、複数のSar1, Sec23, Sec24, Sec13, Sec31遺伝子がゲノム中に存在していることから、各々の相同遺伝子間での役割分担に興味がもたれる。そこでこの機能分担を明らかにする第一歩として、シロイヌナズナゲノム中に二個の相同遺伝子が存在する Sec31に注目し、これら二個の遺伝子の破壊株をもちいてそれらの関係を遺伝学的に解析した。At3g63460と At1g18830 (それぞれA, B遺伝子と標記)のT-DNA挿入による破壊株を掛け合わせて得られたヘテロ二重破壊株AaBbを自家受粉させ、次世代の分離を検討した。aabb,aaBbの遺伝子型の個体は得られず、aaBB,Aabbの個体は期待されるより低い割合でしか得られなかった。しかし、発芽率は野生型と遜色無く、発芽した個体は通常の生育を示した。また、ヘテロ二重破壊株の自家受粉後の莢を観察したところ、胚致死を起こしたものは見られなかった。従って、シロイヌナズナSec31遺伝子は花粉か卵細胞の形成から必須であると推定された。
  • 高田 沙織, 後藤 友美, 豊岡 公徳, 福田 裕穂, 松岡 健
    p. 519
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、タバコ培養細胞のゴルジ装置に存在するTypeII膜タンパク質であるプロリルヒドロキシラーゼ(PH)の機能と局在の解析を行っている。これまでに、細胞質側N-末端領域に存在するKSRGR配列中の塩基性アミノ酸を総て非電荷アミノ酸に置換したQSTGT変異体は小胞体に局在することから、この配列中の塩基性アミノ酸残基が輸送に重要な役割を果たすことを報告してきた. そこで今回、このタンパク質をモデルとして、塩基性アミノ酸残基のどのような性質が輸送に関わっているかを検討した。まず、KSRGR配列中の塩基性アミノ酸のうち1乃至2残基を上記変異と同じ非電荷アミノ酸残基に置換した変異体とGFPの融合タンパク質をタバコ培養細胞BY-2株で発現させたところ、2個の塩基性アミノ酸残基が1残基のアミノ酸を隔てて存在する場合には効率良くゴルジ装置へと輸送されるが、塩基性アミノ酸残基が1個の場合や、3アミノ酸残基により隔てられている場合には、ゴルジ装置への輸送の一部が阻害されていることを見出した。そこで、2個の塩基性アミノ酸残基の間隔を変えた変異体を作製し、それらの輸送を解析し、2個の塩基性アミノ酸残基の間のアミノ酸残基数が0、1、2の場合にはゴルジ装置への輸送効率の低下はおこらないという結果を得た。これらの結果をもとに、PH以外のTypeII膜タンパク質の小胞体からの輸送についても議論する。
  • 後藤 友美, 鈴木 由美子, 豊岡 公徳, 福田 裕穂, 松岡 健
    p. 520
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    植物細胞には、動物や酵母と共通なオルガネラと共に、プラスチド等の植物固有のオルガネラが存在するが、未だに細胞内には機能が明らかになっていない構造体や、分子マーカーまでも見いだされていない構造体が各種存在している。近年、分子生物学的解析と蛍光タンパク質や蛍光色素の利用により、エンドソーム等の概念が提唱されるようになってきており、これらの機能概念と構造を結びつける解析が待たれるところである。そこで本研究では、未分化細胞のモデルとして考えられるタバコ培養細胞BY-2株について、EST解析から得られた情報用いて抗体を作製し、それら抗体の認識するタンパク質の局在を解析することにより、未同定の植物オルガネラの同定を試みた。動物や酵母の研究から、各種のオルガネラ膜のマーカーとなることが期待されるグループを候補とし、ESTとマイクロアレイの解析データから、通常のBY-2 細胞で発現している複数の膜タンパク質ホモログを選抜した。次いで、これらタンパク質に対するポリクローナル抗体を作製した。得られた抗体を用いて、BY-2由来の膜画分に対する免疫ブロッテイングおよび蛍光顕微鏡法と免疫電子顕微鏡法により細胞内局在の解析を行った。その結果、既知のオルガネラとは異なる構造体に局在すると考えられる複数のタンパク質を見出した。
  • 桜井 寿之, 松島 良, 林 八寿子, 西村 いくこ
    p. 521
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    ER bodyは、シロイヌナズナの子葉や胚軸、根の表皮細胞に特異的に存在する構造体である。しかし、ER bodyをもたないロゼット葉にも、傷害や食害などのストレス処理、ジャスモン酸メチル処理によって、ER body形成が誘導される。現在までに、ER bodyは小胞体由来であり、小胞体から液胞へ液胞プロセシング酵素(VPE)や液胞プロテアーゼ(RD21)の前駆体およびβグルコシダーゼの一つであるPYK10を輸送していることを明らかにした(2001、2003年度大会にて報告)。これらの結果から、ER body形成は、防御機構と関連していることが示唆されている。ER bodyを可視化することができる形質転換シロイヌナズナ(小胞体残留シグナルを付加したGFP-HDELを発現する)を、EMS処理した後、子葉表皮細胞中のER bodyの形態が異常になったと思われる株を選別した(A2:凝集体を形成する変異体、A28:凝集体と小胞状の構造体を多数形成する変異体、B23:小胞状の構造体を多数形成する変異体)。これらの突然変異体について、GFP蓄積部位とER bodyとの関係を調べるために、共焦点レーザー顕微鏡と電子顕微鏡を用いた形態学的な解析を行ったので報告する。また、子葉の老化に伴うER bodyの挙動についても詳しい解析を行った。これらの結果から、ER body形成のメカニズムについて考察する。
  • 高橋 英之, 斉藤 雄飛, 北川 智也, 森田 重人, 田中 國介, 増村 威宏, 荻原 保成
    p. 522
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)
     イネ種子胚乳組織は、次代の栄養源となる貯蔵タンパク質を集積する2種類のプロテインボディ(PB)を含む。プロラミンは同心円上の構造を持つ粗面小胞体由来(rER)のPB-Iに集積し、グルテリンとグロブリンは高い電子密度を示す液胞由来のPB-IIに集積することが明らかにされている。本研究では貯蔵タンパク質の輸送経路を明らかにするために、登熟中期の胚乳組織の電子顕微鏡観察を行った。
    (方法と結果)
     イネ胚乳組織中にrER由来の新規ベシクルを発見した。この新規ベシクルはrER由来のPB-Iとも、ゴルジ体由来のデンスベシクルとも異なる構造をしていた。新規ベシクルの中心部はPB-IIと同じ電子密度を示し、その周囲には電子密度の低い層があり、外周部はポリゾームに覆われていた。免疫電子顕微鏡観察の結果、新規ベシクルは中心部にグルテリンとグロブリンを含むことが明らかになった。また、ER内在性分子シャペロンであるBiPは、新規ベシクルとPB-IIの両者に存在していた。以上の結果より、新規ベシクルはイネ胚乳組織においてrERから生じ、グルテリンとグロブリンのPB-IIへの輸送を仲介することが示唆された。
  • 吉本 光希, 花岡 秀樹, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 野田 健司, 大隅 良典
    p. 523
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    オートファジー(自食作用)は、栄養飢餓等に伴って細胞質成分を液胞に輸送して分解する細胞内分解システムである。我々は、酵母においてAtg8のC末端がAtg4プロテアーゼにより切断された後、ユビキチン化に類似した反応により脂質修飾されること、そして、このAtg8脂質修飾反応がオートファジー進行を担う分子機構の鍵になることを見いだしている。
     シロイヌナズナにはATG8, ATG4オーソログが存在し、その詳細が明らかになっていない植物のオートファジーにおいても同様の役割を担っていることが予想される。酵母Atg8はオートファジーの進行に伴い液胞内に移行することが知られている。そこで、GFP-ATG8融合タンパク質を発現させた形質転換植物を作製し、その挙動を観察した。GFP-ATG8は細胞質中のリング状構造に局在し、窒素飢餓条件下で液胞内への移行が観察された。また、2種のATG4のT-DNA挿入株をそれぞれ取得し、その二重変異株におけるGFP-ATG8の挙動を解析したところ、窒素飢餓条件下でも液胞内へ移行しなかった。このことは、ATG4二重変異株はオートファジー不能であることを示している。オートファジー能を欠損した二重変異株の表現型解析をしたところ、老化が早まり、窒素飢餓条件で根の伸長が阻害されていた。以上の結果から、高等植物においてオートファジーが果たす生理的役割について考察する。
  • 田原 寛, 五十嵐 久子, 横田 悦男, 矢尾 真樹, 橋本 隆, 新免 輝男
    p. 524
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    Physarum のミオシンII重鎖に対するモノクローナル抗体と交差反応する175 kDa成分がテッポウユリ花粉管に存在することが示されていた(Kohno 1991)。しかしユリ花粉管からその成分を単離してアミノ酸配列を検討した結果、クラスリンであることが分かった。タバコ培養細胞BY-2にもこの成分に対する抗体と反応する175 kDa成分が存在し、遺伝子を解析した結果クラスリンであることが分かった。クラスリンは細胞板形成において余分な膜成分の除去に関与している可能性が示唆されている。更に細胞板形成におけるクラスリンの役割を解析するために、タバコ培養細胞BY-2の細胞周期を同調し、各細胞周期におけるクラスリンの免疫染色を行った。クラスリンは分裂中期では紡錘体の極周辺に局在し、後期から徐々に細胞板の周辺に集積しはじめ、終期になると細胞板に局在するようになる。またクラスリンの三量体化に重要であるC末端部分を導入した形質転換細胞株を作成した。この株の細胞周期を同調したところ、分裂期の細胞の約半分が多核になっており、そのような細胞では細胞板とフラグモプラスト微小管の配向に異常が見られた。以上のことからクラスリンが細胞板形成に重要な役割を担っていることが明らかになった。
  • 水野 昇治, 水野 暁子
    p. 525
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    植物の伸長生長時の一見能動的な吸水に際しては、アポプラストカナルに生ずるstanding osmotic gradientに起因する水吸収と溶質吸収とのカップリング現象が見られる(Katou & Furumoto 1986)。我々は以前にこの現象を記述する非線形常微分方程式の代数的近似解を求め、水吸収の静特性を明らかにし、アポプラストカナルの構成成分が細胞壁であることの必然性について考察するとともに、生理的な範囲の水吸収を行うためのアポプラストカナルの形態(厚さと長さ)の範囲を大まかに推測した(Mizuno & Mizuno 2002)。また一方、非線形偏微分方程式を近似的に解き、溶質吸収に対する水吸収の動特性を求めた(Mizuno & Mizuno 2003)。
    今回はさらに、溶質吸収にカップリングして起こる水吸収の静特性と、動特性(溶質吸収のステップ状の変化に対する水吸収の応答の時定数)との連立方程式を解くことによって、細胞壁で構成されるアポプラストカナルが採り得る形態(厚さと長さ)の範囲を以前よりはるかに明確にした。
  • 池田 己喜子, 大塚 智恵, 小八重 善裕, 前島 正義
    p. 526
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    カサノリは、緑藻類に属し、巨大な単細胞から成る海棲の生物体である。我々は、このカサノリの液胞膜にも、高等植物と同様に二つのプロトンポンプ、V-ATPase 及び V-PPase の存在を証明し、V-ATPase, proteolipid subunit については 6 種類の cDNA (VHAc1VHAc6) を単離した。これら V-ATPase, proteolipid subunit アイソフォームの機能について、酵母 VMA3 あるいは VMA11 欠損並びに ade 変異を持つ株を用いて解析を行った。その結果、6 種類のアイソフォームはすべて Vma3p として機能し、Vma11p としては機能しないことを見い出した。各アイソフォームの N 末端領域のオリゴペプチドに対するポリクローナル抗体を作製し、それぞれ対応する発現タンパク質を特異的に認識することが明らかになった。また、カサ形成前 (Adult) のカサノリの stalkから調製した粗ミクロソーム画分には、VHA-c2 及び VHA-c4 が検出された。Adult 細胞の whorl of hairs には、VHA-c2 のみが検出された。カサ形成後 (Reproductive) のカサノリのカサには、VHA-c1, -c2 及び -c4 が検出され、stalk 及び whorl of hairs の場合 Adult 細胞と同じ結果であった。V-PPase は、Reproductive 細胞の stalk, whorl of hairs 及びカサに同レベルで検出された。更に、免疫組織学的に観察した結果、カサの液胞膜が VHA-c1, -c2, -c4 に対する抗体で染色された。
  • 松田 信行, 小林 弘, 中村 辰之介, Bakker Evert, 加藤 大和, 小川 晃男, 魚住 信之
    p. 527
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    微生物や植物には、Ktr/Trk/HKT系Na-Kトランスポーターが存在する。我々はこれまでに、らん藻のKtrBをK輸送能欠損変異株大腸菌を用いて解析を行ってきた。KtrBは機能発現のためにKtrA、KtrEが必要であり、大腸菌内で発現されたKtrABEはNa依存性のK輸送を示すことを明らかにした。今回は、らん藻におけるKtrBの生体内での機能と役割を明らかにするために、らん藻のktrB破壊株と野生株を用いて解析を行ったところ、破壊株はK輸送能を失っていた。らん藻が高浸透圧を受けると細胞内からKの流出が起こることが分かった。この場合、野生株においてはKtrABEが機能して細胞内のK濃度を保つことができた。しかし、ktrB破壊株では細胞内へのKの取込みが行われないため失ったKを補うことができなかった。このことは、KtrABEが、浸透圧調節の初期段階において、Kを補充する役割を担っていることを示している。この知見は、高浸透圧応答について、数あるK輸送体(KチャネルやKdp系トランスポーターを含む)の中でKtr系が高浸透圧応答に関して機能することを示しており、浸透圧上昇の原因となるNaはKtr系Kトランスポーターの活性化を行うことが明らかとなった。
  • 岩崎 郁子, 佐藤 雅彦, 眞崎 聡, 中西 洋一, 前島 正義, 北川 良親
    p. 528
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    生物界には多様なK+チャネルが存在し,機能も多様である。イネにおけるK+チャネルの役割を理解する目的で,「ひでこもち」と「ひとめぼれ」の2品種を対象にし、クローニングして得られた共通の遺伝子(ROK,rice outwardly rectifying K+ channel)について、その発現と機能解析を行なった。ROKは外向き整流性を示すグループに入る。酵母に異種発現させたROKタンパク質の分子サイズは、約33kDであった。出穂期の約10日前および約5日前のそれぞれの穎花から得られた葯について、ROKのmRNA量をリアルタイムPCR法を用いて発現量を比較したところ、2品種いずれも出穂期の約10日前の方が5日前よりも約5-10倍高いことがわかった。出穂期の約10日前は冷温感受性期に相当するといわれる。ROKの生理学的機能について今後さらに調査検討を要する。
    一方、ROKタンパク質の細胞内局在を調べるために、GFP(green fluorescent protein)との融合タンパク質をシロイヌナズナの培養細胞を用いて作らせたところ、外液のK+イオン濃度の違いに応じて細胞内オルガネラおよび細胞膜への局在に変化が見られた。その結果はROKが機能的に外向き整流性を持つチャネルタンパク質であることを示唆した。
  • Makoto Ohnishi, Sachiko Fukada-Tanaka, Atsushi Hoshino, Jitsuya Takada ...
    p. 529
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    The reddish-purple buds of the wild-type Ipomoea nil change into blue open-flowers. The color change is caused by vacuolar alkalization in the epidermal cells of the flowers. Although InNHX1 for Na+/H+ antiporter was thought to be a major gene responsible for the vacuolar alkalization, a mutant deficient in InNHX1 still shows partial increase the vacuolar pH and its reddish-purple buds become purple open flowers. We identified a novel gene for Na+/H+ antiporter, InNHX2, the deduced amino acid sequence of which showed 71% identity to that of InNHX1. Spatial and temporal expression of these genes and their response to NaCl treatment indicate that InNHX1 appears to be evolved specifically for blue coloration during flower-openning whereas InNHX2 is likely to perform dual functions: promote partial vacuolar alkalization in the petals and to confer salt tolerance on the plant. We will discuss the roles of InNHX1 and InNHX2 for blue flower coloration.
  • 河内 美樹, 森 美穂子, 前島 正義, 吉田 久美
    p. 530
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 空色西洋アサガオ(Ipomoea tricolor cv. Heavenly blue)のツボミは赤紫色で開花時に青色となる。既に我々は、この花色変化が液胞pHの上昇によることを明らかにしている1)。この現象は液胞膜上に存在する種々のポンプ、輸送体の働きによると考えられるので、これらのタンパクの局在および活性を調べた。
    [方法及び結果] 日本アサガオで花弁の青色化にNHX1が関わるとの報告2)を参考に、抗NHX1ペプチド抗体を作成した。花弁では表層の着色細胞の液胞pHだけが上昇する。そこでまず、開花ステージの異なる花弁から着色プロトプラストだけを得て液胞膜を調製した。開花花弁の液胞膜に抗NHX1抗体に反応する50 kDaのバンドが検出され、ツボミ花弁では検出されなかった。アサガオの各組織から粗膜を調製してNHX1の局在を調べたところ、やはり、開花花弁だけに局在した。NHX1は液胞膜に局在し、プロトンポンプによるH+濃度勾配を利用したNa+輸送能が検出できた。V-ATPase、V-PPase、NHX1が協調して液胞pHを上昇させる機構の存在が推定された。
    1) K. Yoshida et al., Nature, 373, 291 (1995). 2) T. Yamaguchi et al., Plant Cell Physiol. 42, 451-461 (2001).
  • 福田 篤徳, 原 奈穂, 土岐 精一, 宮尾 安藝雄, 廣近 洋彦, 矢崎 芳明, 柏木 孝幸, 石丸 健, 中村 敦子, 田中 喜之
    p. 531
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    液胞膜Na+/H+アンチポーターは、液胞膜を介したpH勾配をエネルギー源として利用し、細胞質に存在するNa+やK+を液胞内に輸送する対向輸送体である。当研究室では、イネの液胞膜Na+/H+アンチポーター(OsNHX1)が、イネの耐塩性や鉄欠乏耐性に関与することを報告してきた。今回、OsNHX1のプロモーター領域とGUSレポーター遺伝子を用いた組織化学的解析を行った。その結果、根では中心柱や側根基部、葉では孔辺細胞や維管束で発現が高かった。また、レトロトランスポゾンTos17の挿入によるOsNHX1の遺伝子破壊系統を選抜し、その表現型を解析した。破壊系統のカルス及び植物体について塩ストレスや浸透圧ストレス処理を行ったが、野生型との間で生育に差は見られなかった。また、カルスに存在する主要な元素を解析したが、野生型との間で顕著な差は見られず、植物体に存在するK+及びNa+についても差は見られなかった。本発表では、破壊系統における他のNHXタイプ遺伝子の発現の解析結果と併せ、OsNHX1の生理的役割について考察する。
  • 神谷 岳洋, 赤堀 太朗, 芦苅 基行, 前島 正義
    p. 532
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    Cation/H+対向輸送体(CAX)はプロトン駆動力を利用してカルシウム等の二価の陽イオンを輸送する能動輸送体である。これまでにイネよりOsCAX1aを単離し、酵母発現系を用いてCa2+/H+活性があることを確認している。本研究では、OsCAX1aの生理的役割を解明するために、mRNAおよびタンパク質レベルでの発現解析、細胞内局在と発現部位の同定を行った。
     リアルタイムPCRおよび特異抗体を用いた発現解析の結果、OsCAX1aはmRNAおよびタンパク質レベルでCa2+に応答することが判明した。GFP-OsCAX1aのタマネギ表皮細胞での一過的発現と、ショ糖密度勾配遠心法を用いた細胞内局在部位の解析は、OsCAX1aの液胞膜への局在を示した。プロモーターGUSによる発現解析を行ったところ、維管束、気孔周辺の細胞、中心柱、胚とアリューロン層等で発現していた。また、Caは成熟した葉ほど多く蓄積するという知見があることから、各葉(第三から第七葉)における発現量をGUSとリアルタイムPCRにより観察した。その結果、成熟した葉ほど多く発現しており、Caの蓄積量とOsCAX1aの発現量に相関性があることを見いだした。以上のことから、OsCAX1aはさまざまな組織、特に高濃度のCaに曝される組織におけるCaホメオスタシスに関与していることが示唆された。
  • 岩渕 功誠, 金子 智之, 八嶋 宗夫, 菊山 宗弘
    p. 533
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
     機械刺激による受容器電位の発生機構を車軸藻類を用いて解析した。本研究では、細胞を押しつぶしたときと離したときとで、応答に違いがあるかどうかを検討するため、節間細胞を長時間押し続けるという機械刺激を行った。刺激に対しては節間細胞と節の両方で膜電位応答が見られたが、本研究では節間細胞の応答に注目をした。
     細胞を押し続ける時間が長いほどその膜電位応答が大きくなった。そこで本研究では、押し続ける時間を10秒間に固定した。長時間押し続けたときの膜電位応答は(1)細胞を押しつぶしたときと離したときの両方で膜電位変化がみられ、(2)押したときの変化の大きさよりも離したときの変化の方が大きい。エクオリンを用いた細胞質内Ca2+濃度 ([Ca2+]c) 変化の測定では、押したときと離したときの両方で[Ca2+]cの上昇が確認されたが、ここでも押したときよりも離したときの方が大きな[Ca2+]c上昇がみられた。これらのことから、長時間押しつぶし実験の際のイオンチャネルの挙動を考察した。
  • 林 村, 角野 貴志, 古市 卓也, 吉塚 和治, 河野 智謙
    p. 534
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    カルシウムチャネルを経由したCa2+流入を誘導することが知られる低浸透圧刺激とサリチル酸処理による細胞内Ca2+濃度上昇の誘導に対する希土類(原子番号:39,57-60,62-71;Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd, Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb, Lu)とAlの塩化塩の影響を、Ca2+感受性発光蛋白エクオリンを発現したタバコBY-2(Nicotiana tabacum)懸濁培養細胞を用いて解析した。ほとんどの金属塩はCa2+流入に対して強い阻害効果を示した。なかでもNd,Sm,Eu,GdとTbは最も強い阻害効果を示した。興味深いことに、サリチル酸誘導のCa2+流入において低濃度(0.1mM)のPrと高濃度(5-10mM)のAlによる選択的阻害が観察された。また上記の阻害剤の効果をTPC1タイプのCa2+チャネルの発現を制御した細胞を用いて解析を行ったので報告する。
  • 山中 拓哉, 中川 祐子, 寺島 明日香, 片桐 健, 岸上 明生, 古市 卓也, 辰巳 仁史, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 哲之, ...
    p. 535
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
     シロイヌナズナのAtMID1A遺伝子産物(AtMid1A)はCa2+透過性伸展活性化陽イオンチャネル活性をもつことを前回の本学会で発表した。そのデータから、AtMid1Aは機械刺激のセンサーとしてはたらき、細胞内にCa2+シグナルを発生させることに関与するものと考えられる。我々はシロイヌナズナゲノム上にAtMID1AのホモログであるAtMID1Bを発見した。両者はアミノ酸レベルで73%の相同性をもち、類似した疎水性プロファイルを示した。よってAtMid1BもAtMid1Aと同様に伸展活性化陽イオンチャネルの機能をもつと予 想される。本研究では、両タンパク質の植物体における機能を解析するため、両遺伝子にT-DNAの挿入が起こったシロイヌナズナの二重欠損株を作製し、その表現型を解析した。得られたatmid1a/b二重欠損株は、通常の育成条件下で生育に1~2日程度の遅れを示した。また、この二重欠損株の生育は、高濃度のMgSO4またはMgCl2を含む培地で野生型株の生育よりも著しく抑制された。この表現型はMg含有培地中にCaCl2を添加することにより緩和された。Mg2+は天然のCa2+チャネルブロッカーとして知られる。これらの結果から、AtMID1AAtMID1Bの欠損が細胞内へのCa2+の流入の減少をもたらし、植物体におけるカルシウム欠乏を引き起こしていることが示唆された。
  • 佐々木 孝行, 山本 洋子, Emmanuel Delhaize, Peter R. Ryan, 有吉 美智代, 松本 英明
    p. 536
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    アルミニウム(Al)耐性のコムギ品種では、Al存在下においてのみ根端からリンゴ酸が放出される。我々は、Al耐性コムギからALMT1遺伝子を単離し、その遺伝子発現量とAl耐性の間に強い相関があることを明らかにした。そしてALMT1を過剰発現させたタバコ培養細胞が、Al依存性のリンゴ酸の放出と高いAl耐性を示したことから、ALMT1がAl活性化型のリンゴ酸トランスポーターをコードし、コムギのAl耐性遺伝子であると結論した。本年度はALMT1が植物体においてもAl耐性を付与する可能性について検討するため、単子葉植物のオオムギや双子葉植物のタバコに遺伝子導入を行い、その機能発現とAl耐性度から評価した。オオムギはコムギよりもAl耐性が低い。オオムギのALMT1形質転換体では、根端の高いリンゴ酸放出能と共に、水耕によるAl処理や酸性土壌においてAl耐性コムギ品種と同程度まで生育の向上が認められた。さらに、タバコのALMT1形質転換体でも、水耕栽培におけるAl耐性の向上が認められた。従って、コムギのAl耐性遺伝子ALMT1はコムギ以外の植物体においてもAl耐性を付与でき、酸性土壌耐性遺伝子であることが示された。
  • 福山 幸樹, 佐々木 孝行, 山本 洋子, 松本 英明
    p. 537
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    酸性土壌ではアルミニウム(Al)が、毒性をもつイオンとして溶け出すため植物の生育が阻害される。しかしコムギやライムギでは、根端から有機酸を放出することでAlを無毒化し生育することができる。コムギはAlに応答してリンゴ酸のみを放出するが、ライムギではリンゴ酸に加え、Alとのキレート能が高いクエン酸も放出し、コムギに比べてより強いAl耐性を示す。これまでに私達は、コムギからAlに応答するリンゴ酸トランスポーターの遺伝子ALMT1を単離し、それがAl耐性遺伝子であることを明らかにした。本研究ではライムギにおけるAl耐性と、有機酸放出の分子機構を明らかにすることを目的に、ライムギのAlに応答したクエン酸およびリンゴ酸の放出量と、ALMT1遺伝子をプローブにしたライムギの、ALMT1様遺伝子の発現量について経時的に調べた。その結果、Alによって促進されるクエン酸およびリンゴ酸放出量の上昇と、ALMT1様遺伝子発現量の増加のパターンが類似していた。本発表では、ライムギのALMT1様遺伝子のクローニングとその機能解析についても報告する。
  • 井上 晴彦, 小池 慎太郎, 水野 大地, 高橋 美智子, 鈴木 一正, 中園 幹生, 中西 啓仁, 森 敏, 西澤 直子
    p. 538
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物は鉄を土壌から吸収する方法として、2種類の鉄獲得機構を進化させてきた。イネ科植物は、三価鉄のキレーターであるムギネ酸類を分泌する。ムギネ酸類は土壌中の不溶態鉄をキレートして可溶化し、「鉄-ムギネ酸類」錯体として特有のトランスポーターにより根で再吸収される。この「鉄-ムギネ酸類」錯体のトランスポーターであるZmYS1遺伝子はトウモロコシの変異株を用いた研究により単離された。イネにおける「鉄-ムギネ酸類」錯体の輸送の機構を明らかにするため、ZmYS1遺伝子のイネのホモログを単離し解析した。イネゲノム情報をもとにZmYS1遺伝子と相同性の高い遺伝子の検索を行った結果、18個のZmYS1-like遺伝子、OsYSL(1-18)を見出した。OsYSL(1-18)の発現が鉄栄養によって制御されているかどうかを調べるため、鉄十分または鉄欠乏条件で育てたイネを用いてノーザン解析を行った。OsYSL2, OsYSL6, OsYSL13, OsYSL14, OsYSL15, OsYSL16において発現が見られ、OsYSL2, OsYSL15, OsYSL16が鉄欠乏誘導性であった。また、発現の組織特異性を調べるため、Laser Microdissection(LMD)法を用いて、根を中心柱、皮層、表皮の各組織に分け、全てのOsYSLに関して網羅的にRT-PCRを行った。
  • 桜井 淳子, 石川 文義, 前島 正義, 山口 知哉, 岡田 益己
    p. 539
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    アクアポリンは植物体内の水輸送に重要な役割を果たす分子として注目されている。植物は30種類以上のアクアポリンを持つことがすでにシロイヌナズナやトウモロコシで明らかにされているが、イネのアクアポリンの全容は解明されていない。そこで本研究では、イネの全アクアポリン遺伝子を明らかするとともに、その発現及び機能解析を行った。まずイネゲノム情報を利用してイネアクアポリン遺伝子32種類を同定した。これら遺伝子の推定アミノ酸配列をもとにクラスター解析を行ったところ、イネアクアポリンは4つのサブファミリーに分類され、11個の細胞膜型(PIPs)、10個の液胞膜型(TIPs)アクアポリンの他、機能未知のアクアポリンNIPsとSIPsがそれぞれ9個と2個であった。次にこれらのアクアポリン遺伝子発現を半定量的RT-PCR法にて解析したところ、それぞれのアクアポリンは特徴的な発現パターンを示し、葉身、根、葯等で一様に発現しているものや、器官特異的に発現しているものが存在した。また発育ステージや、明暗日周により発現量の変動するアクアポリンも存在した。さらに低温ストレスを受けた幼苗の根では多くのアクアポリン遺伝子発現量が減少したが、減少程度はアクアポリンの種類によって異なった。現在、個々のアクアポリンの水透過活性についても検討を進めており、これらの結果から、イネにおけるアクアポリン機能を考察したい。
  • 石川 文義, 須賀 しのぶ, 植村 知博, 佐藤 雅彦, 中西 洋一, 前島 正義
    p. 540
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナは35種の水チャネルをもつ。これらは、PIP(細胞膜), TIP(液胞膜), NIP, SIPの4つのグループに分けられる。本研究では、この中で知見の乏しいSIP(SIP1-1, SIP1-2, SIP2-1)に焦点をあてた。3種のSIPそれぞれをGFP遺伝子と融合させてシロイヌナズナの培養細胞(東大梅田正明先生ご提供)から調製したプロトプラストに,PEG法により一過的に発現させるとER局在を示す明瞭な蛍光シグナルが観察された。また、シロイヌナズナの茎から粗膜画分を調製してショ糖密度勾配により分画し、イムノブロットを行ったところ、SIPはERマーカーと同じパターンを示した。したがって3種のSIPはいずれもER局在と判断される。さらに,SIPを酵母で発現させ、膜画分を調製してストップトフロー光散乱法によって水輸送活性を測定したところ、SIPは水透過能をほとんど示さなかった。また,SIPのpromoter-GUS解析ではSIPが組織特異的に発現していることが分かった。SIPはERに局在し、緩やかな水透過、あるいは他の基質の輸送を通してERの恒常性維持に関与しているのかもしれない。
  • 水谷 政博, 小八重 善裕, 石川 文義, 須賀 しのぶ, 前島 正義
    p. 541
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    水チャネルは生体膜を介した迅速な水の輸送に必須の膜タンパク質である。シロイヌナズナには35種類もの水チャネル分子種が存在する。我々は多様な植物水チャネル分子種から,細胞膜型水チャネル(PIP)8種、液胞膜型水チャネル(TIP)2種を選び,その生理的役割を明らかにするために,シロイヌナズナ植物体および培養細胞を用い,各分子種の器官別,細胞成長段階別、環境応答性について特異抗体を用いて解析した。
     培養細胞では,培養2週間目以降では培地の糖濃度が極端に低下し、細胞の総重量、および細胞数の減少が見られる。同時期に水チャネルの蓄積量の著しい増加が見られた。また培養細胞と植物体間での水チャネルの蓄積量の比較から培養細胞では植物体に比べ水チャネルの蓄積量が顕著に少ないことが明らかになった。この現象は、細胞の培養方法(液体培養、プレート培養)を変えても同様に見られた。さらに各水チャネル分子種の浸透圧,塩ストレスに対する応答性をみると,PIP1型はストレス応答性が無いのに対し,PIP2型では塩ストレスによる蓄積量の増加が見られた。TIP型2種についても応答性が見られたが,とくにTIP1;1は塩ストレスによる蓄積量の増加が顕著であった。本研究およびこれまでの知見を総合して,各分子種の役割を推論したい。
  • 前田 智秀, 渡壁 百合子, 徐 承姫, 高瀬 尚文, 平塚 和之
    p. 542
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナAtRAD51遺伝子はγ線やX線などにより生じたDNA鎖切断により遺伝子発現が上昇することが示されている。その遺伝子発現制御領域を利用して植物細胞内に伝達されるDNA鎖切断シグナルを可視化し非破壊的に連続観察可能な系の開発を試みた。AtRAD51プロモーターの下流にホタル由来改変ルシフェラーゼ遺伝子(Fluc+: modified firefly luciferase) を連結した融合遺伝子 (AtRAD51::Fluc+) を作製し、アグロバクテリウム法を用いて、タバコ培養細胞、タバコ植物体、シロイヌナズナ植物体に導入した。これらの形質転換体を用いてDNA傷害応答実験を行った。AtRAD51::Fluc+形質転換体にDNA二重鎖切断誘導剤であるブレオマイシンを様々な濃度で添加したところ、ブレオマイシン濃度依存的なレポーター遺伝子の誘導が観察された。また、AtRAD51::Fluc+形質転換タバコ葉に対して、各種刺激処理を行ったところ、DNA鎖切断を引き起こす刺激であるUV-Bあるいはブレオマイシン処理特異的なAtRAD51の発現誘導が観察された。一方、重金属や植物ホルモン、病害応答遺伝子誘導剤などの処理においては、植物組織への生体異物反応が観察されたもののAtRAD51の発現誘導は観察されなかった。これらの結果から、AtRAD51の発現誘導は形質転換植物葉においてDNA鎖切断刺激に特異的であり、そのDNA傷害応答制御は細胞自律的であることが示唆された。
  • Seunghee Seo, Tomohide Maeda, Yuriko Watakabe, Hisabumi Takase, Kazuyu ...
    p. 543
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    We investigated the tissue specific expression and DNA damage-responsiveness of AtRAD51 gene in Arabidopsis to uncover the mechanisms involved in regulated expression of the DNA damage-responsive gene. Transgenic Arabidopsis plants harboring AtRAD51 promoter-β-glucuronidase (GUS) were used to study the detailed expression pattern of the AtRAD51 gene. A histochemical GUS assay of bleomycin-treated plants showed that the AtRAD51 promoter in young tissues is actively expressed particularly in meristematic cells of the root and shoot apex of seedlings. In mature plants, the activity of the AtRAD51 promoter is mainly expressed in flower bud, petal and stigma. Reporter gene expression pattern similar to bleomycin-treated plants was also observed in UV-treated plants. In the absence of genotoxic stress, only very low GUS activities were detected in these organs. These results suggest that the tissue-specific expression levels of AtRAD51 gene promoter are also controlled by the DNA damage-responsive regulation.
  • 川崎 順二, 寺西 美佳, 日出間 純, 熊谷 忠
    p. 544
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    これまで我々は、イネ(ササニシキ)葉から分画した核画分と葉緑体画分を用いて、各画分におけるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)光回復酵素活性の有無を調べた。その結果、光回復酵素活性は核では認められたが、葉緑体では認められなかった(2003年度年会)。本研究では、生葉を用い、上記のことを確認し、さらにミトコンドリアにおけるCPD光回復の有無について調べた。UV-B照射によって、各オルガネラDNAにコードされている遺伝子に生じるDNA損傷の生成とその光修復及び暗修復をReal-time quantitative PCR法により定量解析した。核ゲノムにコードしているrbcS, cab, phr (CPD photolyase)、ミトコンドリアゲノムにコードしているcox3, cob, orf288 (open reading frame 288)、葉緑体ゲノムにコードしているatpB (ATPase beta subunit), rbcLを解析の対象とした。UV-B照射によりこれら全ての遺伝子には損傷が生じた。光修復は、核においては認められたが、葉緑体では認められなかった。一方、ミトコンドリアでは、核と同様光修復能が認められた。また、各オルガネラにおける暗修復は、光修復に比べ低いか又は無いため、検出は困難だった。
  • 岩松 優, 高橋 正明, 日出間 純, 孫 伝清, 熊谷 忠
    p. 545
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    イネのUVB感受性は品種間で大きく異なる。UVB照射量の多い地域で栽培されているイネが必ずしも強い抵抗性を示すのではなく、日本型水稲の中にも強い抵抗性を示す品種が多数存在する。日本型イネのうち、ササニシキは抵抗性を示すが、近縁な農林1号は感受性である。また、サージャンキ(indica)は農林1号よりもさらに感受性である。UVB誘導シクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)の光回復酵素活性は、ササニシキで最も高く、次いで農林1号、サージャンキでは最も低かった。イネCPD光回復酵素は506残基のアミノ酸からなる。アミノ酸配列には品種間で変異が見られ、ササニシキの126番目のアミノ酸はGlnであるが、農林1号、サージャンキではArgである。また、296番目のアミノ酸はササニシキ、農林1号がGlnであるのに対して、サージャンキではHisである。これらの結果、イネのUVB感受性の差異は、CPD光回復酵素の構造の変化による酵素活性の強さの違いによってもたらされる可能性が考えられた。このような違いは、野生イネでも見られるのであろうか?本研究では、アジアのOryza rufipogon、オーストラリアのO. meridionalis、アフリカのO. barthiiの各種野生イネのUVB感受性、CPD光回復酵素活性とそのアミノ酸配列の株間における違いを検討した。
  • 大石 竜也, 石川 優一, 遠藤 真咲, 刑部 敬史, 阿部 清美, 市川 裕章, 安西 弘行, 土岐 精一
    p. 546
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    UVによる主なDNA鎖上の傷として、シクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)と(6-4)光産物が知られている。これら光産物は複製や転写を阻害し、結果として突然変異や細胞死を引き起こす。植物ではこれら光産物はphotolyaseとNERによって修復されている。また、photolyaseとNERによって修復されなかったUV光産物は相同組換え修復(HR)によって修復されると考えられている。
    本研究では、アラビドプシスのAtRAD1 欠損変異体(uvh1 )とAtRAD2 欠損変異体(uvh3 )における染色体内相同組換え(ICHR)頻度を解析した。その結果、uvh1 ではICHR頻度は抑制され、逆にuvh3 ではICHR頻度が向上していることが解った。現在我々はアラビドプシスのCPD photolyase欠損変異体(uvr2-1 )とuvh1 又はuvh3 を交配し、uvr2-1 / uvh1 uvr2-1 / uvh3 の二重欠損変異体を作成し、これら二重欠損変異体のICHR頻度を解析している。
  • 五百城 幹英, 中嶋 信美, 玉置 雅紀, 馳澤 盛一郎, 近藤 矩朗
    p. 547
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
     太陽光に含まれる短波長の紫外線(UVB)はシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を主とするDNA損傷を引き起こし、その結果植物の生育を阻害すると考えられている。したがって、CPD光回復酵素によるCPDの速やかな修復は、植物のUVB耐性を決定づける生理学的に重要な要因である。キュウリCPD光回復酵素遺伝子(CsPHR)の転写は光により誘導されることが示されているが、これは地上に到達するUVB量に応じた光回復酵素活性の日周変化をもたらす環境適応機構であると考えられる。そこで本研究はCsPHRの光依存的発現機構を明らかにすることを目的とした。CsPHRの発現がどの波長の光で誘導されるのかを検証するために単色光照射実験を行った結果、CsPHRの転写は310nm付近の波長をもつUVBにより最も効率良く誘導されることが明らかになった。さらに、光誘導に関与するcis因子を特定するために、CsPHRプロモーターをレポーター遺伝子(β-glucuronidase遺伝子[GUS]およびluciferase遺伝子[LUC])につないでシロイヌナズナに導入した組換え体を作製した。これまでに、これらの組換え体においてレポーター遺伝子の発現が光照射により誘導されることを確認している。GUS活性を指標とした組織化学的な解析およびLUCを用いたプロモーターデリーション実験の結果についても報告する。
  • 長谷 純宏, Khuat Huu Trung, 田中 淳
    p. 548
    発行日: 2005/03/24
    公開日: 2006/01/11
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、紫外線に耐性を示すシロイヌナズナの変異体を4系統(uvi1-4)単離することに成功している。今回は、uvi4変異体の解析について報告する。uvi4はUV-B照射下で育成した時、野生型に比べて新鮮重が最大で2倍以上大きい。紫外線吸収物質の含量は野生型と差がみられず、また、UV-B照射により生成されるシクロブタン型ピリミジン二量体の量およびその修復の速度にも顕著な差がみられなかったことから、これら以外の新規の要因によって紫外線に耐性を示すと考えられた。我々は、uvi4変異体の葉では、野生型に比べて核内倍加サイクルが1回多く進むことを見いだし、倍数性レベルの上昇が耐性の原因である可能性が示唆された。uvi4遺伝子は第2染色体下部にマップされ、現在、遺伝子の単離を進めている。
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