日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
選択された号の論文の1055件中751~800を表示しています
  • 川上 恵典, 梅名 泰史, 田代 隆慶, 神谷 信夫, 沈 建仁
    p. 0751
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    光化学系II複合体(PSII)は太陽の光エネルギーを利用して水を分解し、酸素を発生させる超分子複合体である。好熱性シアノバクテリア由来PSIIは17種類の膜貫通サブユニットと3つの膜表在性タンパク質によって構成され、タンパク質以外にクロロフィル、カロテノイド、Mn、Ca、Fe、プラストキノンなど70以上の補欠因子を含む、単量体の分子量は350 kDaとなる巨大な複合体である。PSIIの構造は、好熱性シアノバクテリアであるThermosynechococcus elongatusとその近縁種のT. vulcanusからX線結晶構造解析法により解析され、これまで3.8 - 2.9 Å分解能で報告されている。しかし、これらの分解能はPSIIの全アミノ酸の詳細な構造を決定するには不十分であり、特に酸素発生中心であるMn4Caクラスターは、分解能の制限とX線損傷の問題により、未だ解明できていない。
    我々はPSIIの構造をより詳細に解析するため、PSII結晶の質の改善に取り込んでおり、この度高分解能を与える結晶の析出に成功したので報告する。
  • 加藤 信泰, 得津 隆太郎, 皆川 純
    p. 0752
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    植物の光化学系II超複合体は二量体のコア複合体の周囲を集光アンテナ(LHCII)が取り囲む形で構成されており(PSII-LHCII)、その構造は電子顕微鏡を用いた単粒子解析により報告されてきた。これまで、ホウレンソウやシロイヌナズナなど高等植物で三量体LHCIIが片側2個ずつ(計4個)結合した構造が観察される一方、緑藻クラミドモナスでは三量体LHCII が片側1個ずつ(計2個)結合した構造が観察されている。この違いはコア複合体と三量体LHCIIをつなぐ単量体LHCII(CP24、CP26、CP29)のうち、高等植物で見られるCP24が緑藻クラミドモナスには存在しないためであると考えられてきた。本研究では緑藻クラミドモナスのチラコイド膜可溶化条件を比較検討するなどにより、PSII-LHCII構造について再検討を行った。可溶化チラコイド膜をショ糖密度勾配超遠心法により分離し、得られたPSII-LHCII画分を酢酸ウランによってネガティブ染色した。単粒子解析の結果、高等植物と同様に三量体LHCIIが片側2個ずつ(計4個)結合した粒子が観察された。このCP24を必要としない新しいPSII-LHCIIの構造の詳細と、さらにLHCII変異株の解析結果を併せて報告する。
  • 垣内 秀介, 冨田 めぐみ, 井戸 邦夫, 伊福 健太郎, 野口 巧, 佐藤 文彦
    p. 0753
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    高等植物のPsbPタンパク質は、光化学系II(PSII)においてCa2+やCl-の結合とMnクラスターの安定化に関与する。これまでに単離PSII膜を用いた再構成実験とFTIR分析によって、PsbPの解離に伴ってPSIIのMnクラスター周辺の構造が変化し、PsbPの再結合によってその構造変化が回復すること、また、その構造変化にはPsbPのN末端が必須であることが明らかとなっている (Tomita et al. 2009, Biochemistry 48, 6318-25)。一方で、PsbPのC末端側ドメインの機能に関しては明確ではない。本研究では、PsbPの立体構造に基づいてPsbPのC末端領域にアミノ酸置換を導入し、変異PsbPタンパク質の機能をPSII活性再構成実験、及び、FTIRで評価した。その結果、生物種間で保存されたPsbPのC末端側His残基をAlaに置換した変異タンパク質(PsbP-H144A)において、酸素発生活性の回復能、及び、FTIRで検出される構造変化が大きく低下することを認めた。PsbP-H144AはN末端欠損型PsbPと異なり、野生株と同様にPSIIに結合し、PsbQ存在下でもPSII活性が回復しなかった。従って、PSIIにおけるイオン保持能回復には、PsbPのC末端領域も重要な役割を持つことが判明した。
  • 原田 紗代, Boussac Alain, 林 秀則, 杉浦 美羽
    p. 0754
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    Psb30はPSII複合体を構成するサブユニットとして見いだされた、膜を1回貫通する5 kDaのタンパク質である。Psb30はCyt b559から15~20 Aの距離に位置すると推定されるが、PSIIにおける役割は不明である。本研究では、Thermosynechococcus elongatusのPsb30欠損株を作製し、その性質を野生株と比較した。Psb30欠損株から精製したPSIIは野生株のPSIIと同じ酸素発生活性を示したが、Psb30欠損株の細胞では野生株より1.2倍高い活性を示した。強光照射条件下でタンパク質合成阻害剤を添加して培養すると、Psb30欠損株の失活速度は野生株よりも速かった。阻害剤を添加せずに培養すると、野生株では1時間で20%活性が低下したのに対し、Psb30欠損株は30%低下し、同時にカロテノイドの増加が認められた。Cyt b559のヘム鉄のEPRシグナルから、野生株では光照射によってHP型になるが、Psb30欠損株はLPのままであることが分かったので、Psb30の欠失によりCyt b559のレドックスが変化して副次的電子移動に影響を与えたために、強光照射下で水の酸化機能が低下したと考えられる。以上の結果より、Psb30はPSIIの機能には直接関わっていないが、複合体構造の保持、特に、機能的なCyt b559の構造保持に重要であることが明らかになった。
  • 川島 忠晃, 得津 隆太郎, 皆川 純
    p. 0755
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    植物は、光合成電子伝達を通して光エネルギーを化学エネルギーに変換している。電子伝達経路にはリニア電子伝達経路とサイクリック電子伝達経路の2種類が知られており、緑藻クラミドモナスにおいては、それらは光環境変化に伴うステート遷移により切り替えられる。フェレドキシンNADP酸化還元酵素(FNR)は光化学系I(PSI)からフェレドキシンを通じて電子を受け取り、ステート1ではNADP+の還元(リニア電子伝達)、ステート2ではプラストキノンプールの還元(サイクリック電子伝達)に関与することが示唆されている。しかし、ステート1やステート2においてFNRがどこに存在し、どのように働きかけているのかは明確ではない。そこで本研究では、緑藻クラミドモナスの野生株を用いてステート1、ステート2それぞれの条件下におけるチラコイド膜上のFNRの位置の特定を行った。その結果、ステート1においてはPSI複合体画分(A3)に存在し、ステート2においてはPSI/LHCII超複合体画分(A4)に存在することが示された。現在、Cytb6f欠損株(Fud6)やPSI欠損株(ΔPSI)を用いて行っている実験の結果も合わせて報告し、光合成電子伝達経路切り替えにおけるFNRの役割について議論する。
  • 松村 拓則, 小澤 真一郎, 高橋 裕一郎
    p. 0756
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    葉緑体の内膜であるチラコイド膜には、光合成に関与する多数のタンパク質が存在する。その内、光合成電子伝達系やATP合成酵素を構成するタンパク質の多くは巨大な複合体を形成している。近年、可溶化した膜タンパク質複合体を高度に分離できる電気泳動法の1つであるBlue-Native-PAGE(BN-PAGE)が広く用いられている。本研究ではBN-PAGEとSDS-PAGEを組み合わせた二次元電気泳動によってチラコイド膜を各複合体及びタンパク質に分離し、チラコイド膜上の複合体の量比を求めることを試みた。まず、チラコイド膜をn-Dodecyl-β-D-maltosideで可溶化した後にタンパク質複合体を分離し,その構成タンパク質を分離する条件の最適化を行った。次に、14C存在下で24時間培養し、均一にラベルしたチラコイド膜を単離した後、各複合体を二次元電気泳動で分離し、タンパク質複合体の構成タンパク質のラベル強度を定量的に分析した。その結果,光化学系I、光化学系II、シトクロムb6f、ATP合成酵素の存在量がほぼ等量であることが示された。さらに,光化学系IIの集光性タンパク質(LHCII)が反応中心あたり約28~30コピー存在することが分かった。また、ATP合成酵素やLHCIIを構成する各サブユニットの存在比も明らかにしたので報告する。
  • 鈴木 雄二, 土居(木原) 智仁, 河津 哲, 牧野 周
    p. 0757
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    ユーカリ・グロブラス (Eucalyptus globulus) の4.5ヶ月齢の実生を材料に,Rubiscoの量および生合成量,葉への窒素流入量およびRubiscoをコードする遺伝子のmRNA量の葉位の違いによる変化を調べた.単位葉新鮮重当たりのRubisco量は展開中の葉で若干増加し最上位完全展開葉においてほぼ最大となった後,最下位葉において若干低下するまで維持されていた.その一方で,Rubiscoの生合成量は上位葉で高かったが,葉位の低下に伴い急激に低下し,完全展開後の葉においては著しく低くなっていた.RBCSおよびrbcLのmRNAの量的変動はRubisco生合成のそれと概ね一致していたが,葉への窒素流入量の方がより高い相関関係にあった.以上のことから,ユーカリ・グロブラスの実生の葉におけるRubiscoの生合成は,これまでに報告されているいくつかの草本植物と同様に,Rubiscoをコードする遺伝子のmRNA量よりもむしろ葉への窒素流入量により決定されると考えられた.また,Rubisco量が展開中の葉で増加したのはその生合成が活発だったためであるが,完全展開後に維持されたのはその分解が生合成と同程度に低く抑えられていたためであること,さらに最下位葉において減少したのはその分解が促進されたためであることが示唆された.
  • 東 竜太, 松田 祐介
    p. 0758
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    近年、海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutumにおいて、cAMPがセカンドメッセンジャーとしてCO2上昇に応答し、カーボニックアンヒドラーゼ遺伝子の転写を抑制することが明らかとなった。このことから、cAMP代謝系酵素の環境因子センサーとしての役割が注目されている。本研究ではP. tricornutumにおいて、cAMPを分解するホスホジエステラーゼ(cAMP-PDE)に着目し、その特徴付けを目的とした。珪藻破砕液内のcAMP-PDEの活性を測定した結果、可溶型と不溶型のcAMP-PDEの存在が示唆された。そこで、ゲノム情報からcAMP-PDE候補遺伝子を検索した結果、膜連結型は10種、可溶型は2種存在すると予測され、EST解析結果から、発現していることが確認された膜連結型8種についてクローニング及び半定量的RT-PCRを用いて、高CO2環境下と大気環境下での転写量を比較した。その結果、候補の多くが高CO2環境下で転写量が増加しており、興味深いことに8種全てがPDE活性ドメイン上流にサイクリックヌクレオチド合成酵素(NC)の活性ドメインと考えられる配列を有していた。NC/PDEの二機能性構造の意義とcAMPシグナル伝達機構の関係を解明するために、珪藻細胞内で候補遺伝子を発現させた。
  • 木村 あゆみ, 井上 拓也, 北原 悠平, 松田 祐介
    p. 0759
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    海洋性珪藻 Phaeodactylum tricornutum の葉緑体β型 carbonic anhydrase (PtCA1)は、cAMP を介し、CO2 シグナルによって発現制御を受けることが明らかとなっている。ptca1 プロモーターの CO2 応答性シスエレメントには、bZIP 型の転写因子が結合することがわかっているが、その上流シグナル系は不明である。本研究では、 P. tricornutum で cAMP シグナルを受けて ptca1 プロモーター領域内の CO2 / cAMP 応答性配列 (CCRE) へ結合する転写因子の網羅およびこれらの局在解析を行った。ヒト ATF6 ファミリーの P. tricornutum のホモログ配列 (PtbZIP1~8) をクローン化し、大腸菌での発現を行った。また、すでに CCRE 結合能が判明している PtbZIP7 については GFP 標識による局在解析を行ったところ、核への局在が示された。一方、 cAMP シグナルの発生部位を特定するためのツールとして、ヒト Epac1 を蛍光分子 CFPと YFP / Venus の間に挿入し、大腸菌 BL21 (DE3) および P. tricornutum に発現させた。この融合タンパク質のFRET 強度と cAMP 濃度との関連を検証した。
  • 丸田 隆典, 水内 香那, 大鳥 久美, 多淵 知樹, 田茂井 政宏, 重岡 成
    p. 0760
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    高等植物の炭素(C)と窒素(N)の代謝はそれらの絶妙なバランス(C/Nバランス)により厳密に制御されている。我々は、C/Nバランスの制御機構の解明を目的として、100 mM ショ糖を含む培地上で子葉が黄化するシロイヌナズナ変異株(sicy-192)を単離し、プラスチド型の塩基性/中性インベルターゼをコードする遺伝子(INV-E)に点突然変異(Cys294がTyrへ置換)が生じていることを明らかにした。INV-Eノックアウト株ではsicy-192の表現型が現れなかったが、INV-Eノックアウト株へ変異型INV-E(INV-E:C294Y)あるいはCys294を持たないラン藻INVSsINV)を発現させると、sicy-192株と同様の表現型が現れた。一方、INV-E:C294Yの酵素学的性質は、野生型INV-Eと同じであった。100 mMショ糖添加培地上において、sicy-192では光合成関連酵素の発現抑制が認められたが、硝酸還元酵素の活性上昇とともに、硝酸およびグルタミン酸レベルの上昇が認められた。以上の結果より、INV-EのCys294は、光合成装置構築時おけるC/Nバランス制御に重要であることが示唆された。現在、INV-Eへの点突然変異が生体内におけるINV-Eの活性および安定性に及ぼす影響について解析している。
  • 北山 陽子, 西脇 妙子, 近藤 孝男
    p. 0761
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    多くの生物は昼夜の環境変動に適応するため、体内に約24時間周期のリズムを発生する概日時計を持っており、シアノバクテリアは概日時計をもつ最も単純な生物として知られている。これまでの研究からシアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942の概日リズム発生にはkaiABC遺伝子群が必須であり、なかでも時計タンパク質KaiCが中心的役割を担っていることがわかっている。私達はKaiCに結合するタンパク質のスクリーニングを行い、DNA複製因子DnaAを同定した。DnaAを破壊したSynechococcusはその概日リズムの周期が短周期になり、DnaAとKaiCは細胞内において時刻特異的に複合体を形成していることがわかった。また、dnaA破壊株は環境の明暗変化に対して野生株と異なる応答を示すことがわかった。これらの結果から、SynechococcusのDnaAは、概日時計の光同調機構に関与することで概日リズムを調節する機能をもつことを示唆している。
  • 小林 真理, 砂村 栄一郎, 紺野 宏記, 久堀 徹
    p. 0762
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    ATP合成酵素(FoF1)は、ATPの合成活性に加え加水分解活性をもつ。光合成生物では、暗期において光合成によるプロトン勾配形成が途絶え、逆反応であるATP加水分解が進行する可能性がある。εサブユニットはATP加水分解を阻害する内在性の阻害サブユニットだが、葉緑体やシアノバクテリアのεは他の生物に比べ阻害効果が高いと報告されている。さらに、葉緑体やシアノバクテリアの特徴として、γサブユニットに30~40アミノ酸の挿入がある。シアノバクテリアのFoF1におけるεとγサブユニットの生理的役割を明らかにするため、εサブユニットのC末端ドメイン欠損株(εΔC株)、γサブユニットの挿入配列欠損株(γΔ198-222株)、およびこれらの二重変異株をSynechocystis sp. PCC 6803を用いて作製し、変異株の表現型の解析を行った。
    各変異株の細胞内ATP量は明暗条件に対して異なる変動を示し、特に二重変異株で暗所におけるATP量の低下が顕著であった。また、明暗周期条件での変異株の増殖速度を比較した結果、γΔ198-222株とεΔC株は野生株と同等であったが、二重変異株では遅れが見られた。これらの現象とこれまでに明らかにしたεとγサブユニットの機能を総合すると、シアノバクテリアFoF1のATP加水分解制御には両サブユニットが補完的に働いていると考えられる。
  • 仲本 準, Huq Saaimatul, 末岡 啓吾, 有坂 文雄
    p. 0763
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    大腸菌と異なり、シアノバクテリア(藍藻)のほとんどのゲノムには二種類のgroEL遺伝子が存在する。groEL1は、大腸菌のそれと同様にgroESとオペロンを形成するのに対して、groEL2は形成しない。GroEL2のアミノ酸配列は、GroEL1に比べ、種間差が大きい。葉緑体にも二種類のシャペロニンが存在する。なぜ二種類のGroEL(シャペロニン)が存在するのかについては不明である。我々は、GroEL1が通常の生育に必須の働きをするのに対して、GroEL2はストレス下で重要な働きをするという作業仮説をたてた。本発表では、シアノバクテリアのGroEL2が通常の培養条件では必須ではないが、ストレス下で重要な働きをすること、これらGroELタンパク質の構造や機能が異なること等について報告する。
  • 赤井 政郎, 小内 清, 森下 めぐみ, 草野 都, 佐藤 繭子, Redestig Henning, 小林 誠, 大槻 瞳, 松岡 健, ...
    p. 0764
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    アクアポリンは生体膜を介した急速な水の輸送を担う膜タンパク質で、細胞の浸透圧調節に関与していると考えられている。しかし、特に細菌においてアクアポリンの生理的な役割は未だ不明な点が多い。ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803(GT株)においても同様にアクアポリンの生理的存在意義は不明である。我々は、ラン藻のアクアポリン欠損株がグルコース条件下(光混合栄養条件)で著しく生育阻害を引き起こすことを見いだした。そこで、GT株とアクアポリン欠損株を用いて、生育、糖の取り込み、形態、細胞内構造を比較解析した。アクアポリン欠損株がグルコース条件で示す生育阻害は、グルコーストランスポーターによって細胞内にグルコースが取り込まれることによっておこることがわかった。さらにアクアポリン欠損株では効率的な糖の代謝が進行せず、細胞内に過剰にグリコーゲンが蓄積し、細胞内構造の異常を引き起こしていることがわかった。これらの結果からアクアポリンが細胞の糖応答に関与していることが示唆された。現在、グルコース処理したGT株とアクアポリン欠損株の細胞内代謝産物の変動を解析しており、これらの結果と併せて糖応答におけるアクアポリンの生理的機能について考察する。
  • 小野田 美穂, 鈴木 英治, Colleoni Christophe, Ball Steven, 藤田 直子, 中村 保典
    p. 0765
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    ほとんどのシアノバクテリアは光合成産物として可溶性の多糖であるグリコーゲンを生産する。しかし、一部の単細胞、窒素固定種ではデンプン様の不溶性多糖を生産することが見出された。本研究では、シアノバクテリアCyanobacterium sp. NBRC 102756株、Cyanothece sp. ATCC 51142株、CLg1株 (未同定株) を材料とし、各株からPercoll密度勾配遠心法により貯蔵多糖を精製した。走査型電子顕微鏡により、いずれの標品においても直径約 0.5 μmの小粒が観察された。多糖分子内のα-1,6結合を酵素的に切断した後、キャピラリー電気泳動により鎖長分布を解析した結果、各株由来の多糖において、グリコーゲンには見られないDP (重合度) ≥ 37の長鎖が認められた。この長鎖はゲル濾過解析により、アミロペクチンのクラスター構造単位を連結するB2鎖以上の画分として検出された。この長鎖画分の比率は株間で有意に異なっていた。さらに、CLg1株においてはアミロース様の直鎖成分が検出された。示差走査型熱量測定により、各標品について明確な糊化ピーク温度が認められ、この値が高いほど短鎖比率が低いという相関が見られた。以上、シアノバクテリアに見出される不溶性多糖はデンプンに酷似した構造、物性を有し、その特性は種間で多様であることが示唆された。
  • 松井 信太郎, 石原 靖子, 井戸 邦夫, 伊福 健太郎, 佐藤 文彦
    p. 0766
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    高等植物には光化学系II (PSII) 酸素発生系の構成タンパク質であるPsbPに加えて、複数のPsbPパラログ (PsbP-likeタンパク質:PPL, PsbP-domainタンパク質: PPD) が存在する。このうち、PPL1タンパク質は、その配列からシアノバクテリアのPsbPホモログ (cyanoP) に最も近いホモログであると考えられる。これまでに我々のグループではシロイヌナズナppl1変異株を用いた解析により、PPL1が強光照射下においてPSII修復過程に関与する因子であることを明らかにした (Ishihara et al. 2007, Plant Physiol 145, 668-679)。一方、ATTED-IIを用いた共発現解析において、PPDのひとつであるPPD3がPPL1とよく似た発現プロファイルを示すことを認め、PPD3もPPL1と同じく強光照射時にPSIIの修復に関わっている可能性が考えられた。そこでAtPPD3が破壊された変異体の表現型解析を進めた。ppd3変異株は通常光下、及び、強光下で野生株と同様の生育を示したが、通常光下においてもPPL1の発現量が増加している傾向が認められ、PPL1とPPD3の間で機能的相関が示唆された。現在、PPL1、及び、PPD3の分子機能と発現調節機構を明らかにすべく研究を進めている。
  • Yamori Wataru, Takahashi Shunichi, Evans John, Price Dean, Badger Murr ...
    p. 0767
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    In C3 plants, photosynthesis is classically considered to be limited by the slower rate of two processes: (1) Rubisco activity, or (2) RuBP regeneration (Farquhar et al. 1980). RuBP regeneration rate has been believed to be determined by chloroplast electron transport rate, but it is possible that chloroplast ATPase and some enzymes of the Calvin cycle, other than Rubisco, could also be involved. In order to clarify what steps in RuBP regeneration are limiting, gas exchange and chlorophyll fluorescence was examined in antisense tobacco with either reduced contents of cytochrome b6/f complex for determination of electron transport rate or reduced contents of ATPase relative to wild-type plants. Reductions in cytochrome b6/f complex or ATPase contents were accompanied with decreases in the RuBP regeneration rate estimated from the C3 photosynthesis model and the light saturated photosynthetic rate at ambient CO2 concentration over a broad temperature range. This study clearly showed that both cytochrome b6/f complex and ATPase potentially co-limit the RuBP regeneration rate and the light saturated photosynthetic rate over a broad temperature range.
  • 齋藤 彰宏, 樋口 恭子, 園池 公毅
    p. 0768
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    鉄欠乏条件では、鉄を多量に保持する光化学系I(系I)量を維持することができず、光化学系II(系II)は過還元状態になって光阻害を起こしやすい。鉄欠乏に強いオオムギ品種エヒメハダカの新葉では、系IIの主要な集光性アンテナタンパク質であるLhcb1量を維持しながら、光阻害を回避することができる。これまでに、Lhcb1の維持が鉄欠乏条件下における過剰光の熱放散(NPQ)に貢献することを見出していた。そこで、Lhcb1に依存した鉄欠乏特異的なNPQ誘導機構を明らかにする目的で、チラコイド膜タンパク質の解析を行った。ショ糖密度勾配超遠心解析により、鉄十分条件に比べて鉄欠乏オオムギ葉では特に単量体のLhcb1が増加することが明らかになった。また、チラコイド膜をグラナ画分とストロマラメラ画分へ分画したところ、鉄欠乏条件下ではグラナのみならずストロマラメラにもLhcb1が多く存在することが明らかになった。その一方で、77 Kクロロフィル蛍光測定では、系I由来のピークが鉄欠乏により青色光側へわずかにシフトしており、系Iと結合するアンテナ量はむしろ減少することが示唆された。これらのことから、Lhcb1は系IIから脱離して系I側へと移動するものの、単純に系Iに結合してエネルギー分配を調整するのではなく、系IIや系Iの周辺部位に位置しながら熱放散に特化した立体配置を取る可能性が示唆された。
  • 宗景(中島) ゆり, Eymery Francoise, Rumeau Dominique, Cuine Stephan, 小栗 将輝, 中 ...
    p. 0769
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    光化学系I循環的電子伝達は、C4種植物において、活性が高くC4光合成に必要なATP供給を行っていることが示唆されている。Flaveria属植物には、NADP-ME型C4種、C3-C4中間種、C3種が存在し、C4光合成の進化プロセスの解析に広く用いられている。C3からC4種への進化の過程で、どのようにでは光化学系I循環的電子伝達が発達したのかを調べるために、2つ循環的電子伝達経路にそれぞれ関わるタンパク質、PGR5、NDH-Hの発現解析を行った。PGR5、NDH-Hはともに、C3-C4中間種ではC3種と発現量が変わらなかったが、C4種において発現量が高くなっていた。免疫染色によりC4種ではATP要求量が高くなる維管束鞘細胞においてPGR5、NDH-Hの発現量が高いことが明らかになった。また、P700の酸化速度測定より、C4種FlaveriaはC3種Flaveriaよりも循環的伝達活性が実際に高いことが明らかになった。これらの結果からFlaveria属植物ではC4種へ進化した際に、PGR5やNDH複合体の発現量を上昇させることで、2つの光化学系I循環的電子伝達活性を上昇させ、C4光合成に必要なATPを供給していることが示唆された。
  • 三宅 博久, 塚腰 裕太, 小村 理行, 山岸 篤史, 柴田 穣, 小杉 真喜子, 佐藤 和彦, 伊藤 繁
    p. 0770
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
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    地衣類は菌類に藻類あるいはシアノバクテリアが共生している。他の光合成生物に比べ乾燥や低温に強く、乾燥下で強光耐性を示す。これは過剰な光エネルギーを高速で熱に変換する独自の機構によることが最近明らかになった。我々は極低温での時間分解蛍光測定により、消光分子が光化学系II光捕集アンテナとコアアンテナの両方に存在していると推定した。緑藻Trebouxiaを共生する地衣類では、乾燥時には、740 nmに蛍光を出す色素がエネルギーを受け取ることで、消光現象に寄与していると予想した。今回は地衣類イワカラタチゴケから単離した緑藻Trebouxiaを用いた結果を報告する。単離直後の乾燥緑藻で、乾燥地衣類同様の測定を行った結果、地衣類で観測されるような高速でのエネルギー消失現象は確認されなかった。イワカラタチゴケに含まれる糖類を単離直後の緑藻に加え乾燥させると、乾燥地衣類と似た高速蛍光減衰を示した。このことは糖類の影響で光化学系II色素タンパク質内の環境が変化し、消光がおこるという機構を示唆する。
  • 高谷 信之, 柘植 康甫, 笹川 周作, 前田 真一, 小俣 達男
    p. 0771
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    AtNRT2.1は、シロイヌナズナの低窒素条件下での硝酸イオン吸収において主要な役割を果たす高親和性硝酸イオン輸送体である。AtNRT2.1遺伝子の発現は、硝酸イオンによる誘導とアンモニア等の窒素同化産物による抑制、糖に応答した活性化を受けていることが知られている。近年、硝酸イオン応答に関与する因子として硝酸イオンセンサーであるCHL1、転写調節因子であるNLP7が同定された。しかし、これらの因子がどのようにAtNRT2.1の発現を制御しているか明らかにされておらず、また窒素同化産物や糖による制御に関わる因子については未同定である。本研究ではAtNRT2.1の発現制御機構を解明するためにAtNRT2.1の上流配列におけるシス因子の同定を試みた。AtNRT2.1の翻訳開始コドンから-2066bpまでの上流配列をGUS遺伝子と連結させた融合遺伝子を導入した形質転換植物のGUS活性は、硝酸イオンを窒素源として与えた植物体に比べて硝酸イオンとアンモニアを与えた植物体において有意に低くアンモニアによる発現抑制が確認された。そこでAtNRT2.1の上流配列を上流から削った結果、-966bpから-495bpまでの領域がアンモニアによる発現抑制に関与していることが示唆された。この領域は、以前にGirinらが報告した領域(-245~-95bp)よりはるかに上流に位置している。
  • 大岩 優貴, 佐々木 和浩, 吉田 圭吾, 松岡 香矢, 早川 俊彦, 佐藤 雅志, 山谷 知行, 小島 創一
    p. 0772
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物が利用できる土壌中の窒素栄養の主要な分子形態は、硝酸やアンモニウムといった無機態イオンである。アンモニウムを単一の窒素源として植物へ与えると、多くの植物の生育は阻害される。しかし、アンモニウムと硝酸を同時に植物へ与えると、植物はアンモニウムを優先的に吸収する。また、水田などの還元的な農地や、よく成熟した森林の土壌で成育する植物にとって、アンモニウム態窒素が主要な窒素源である。アンモニウム態窒素栄養は、硝酸態窒素栄養と比較して、硝酸還元分のエネルギーを節約できるという点で、より効率よく利用できる窒素栄養である。
    我々は、植物がアンモニウム態窒素栄養をより効率よく利用できる機構を明らかにするために、様々なシロイヌナズナ環境型群について、アンモニウムを主要な窒素源とする培地で栽培し、根の形態と地上部の新鮮重量を比較した。その結果、アンモニウム態窒素で地上部の生育が阻害される環境型と、アンモニウム態窒素が主要な培地であっても地上部の生育が阻害されない環境型があることを見出した。アンモニウム態窒素で地上部の生育が阻害される環境型は、アンモニウム態窒素による側根の形成が少なく、主根の伸長が著しい傾向を有することが判明した。これら二つの環境型間の違いについて、分子遺伝学的な解析を試みた。
  • 宮澤 真一, 増本 千都, 宮尾 光恵
    p. 0773
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    アンモニアは根で同化される事が通説である。しかし、イネの導管液のNH4+濃度を調べた実験で、植物を低窒素から高窒素条件に移した際に(施肥など)、過剰のNH4+が地上部に流入し、葉身で顕著なNH4+同化が起こる可能性が示された。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)は窒素同化に必要な炭素骨格(有機酸)の供給を担う。葉身NH4+同化における葉緑体型PEPC(Osppc4)と細胞質型PEPC(Osppc2a)の機能解析のため、Osppc4またはOsppc2aの発現抑制形質転換イネ(それぞれ4iと2i)と非形質転換体(NT)を用い、1 mM NH4Clを含む水耕液で栽培し、最上位最大展開葉の葉身と導管液のNH4+含量を測定した。また、植物を2 mM NH4+を含む水耕液に移し(高N処理)、約6時間後にサンプリングした。導管液のNH4+濃度は高N処理により上昇し、系統間で大差なかった。4iの葉身面積あたりNH4+含量は、高N処理によりNTの約2倍に上昇し、この差は植物を暗下に置くと見られなくなった。光条件によらず、2iの葉身NH4+含量はNTに対し常に高い値を示したが、この差は4iとNTとの差に比べると小さかった。以上から、イネでは葉身に流入したNH4+を同化する際、暗下では細胞質型PEPCが、光照射下では葉緑体型PEPCが主な炭素骨格供給系として機能する事を示している。
  • 竹田 恵美, 尾形 有香, 小島 秀夫, 岡田 亜希子, 中村 薫
    p. 0774
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物は、光合成により光エネルギーを用いて物質変換を行っている。われわれは光合成を利用した不斉反応系の開発を目的として、植物個体あるいは培養細胞を生体触媒として用いたケトン類の不斉還元を行っている。今回、シロイヌナズナ芽生えを触媒に用いて、種々の条件下における収率およびエナンチオ選択性の検討を行った。
    基質のケトンとしてtrifluoroacetophenone またはt-butyl acetoacetate (tBAA)を加えた反応液に、無菌培養したシロイヌナズナ芽生えを加えて振盪した。24時間後、反応液を回収し、ガスクロマトグラフィーで還元反応の生成物であるアルコールの収率およびエナンチオ選択性の定量を行った。
    その結果、シロイヌナズナ芽生えはケトン類の不斉還元の触媒としてはたらくことがわかった。特にtBAAの場合、エナンチオ選択性は99%以上であった。どちらの基質においても、収率は光照射下で高いこと、光合成器官において高いことから、この還元は光合成に依存した反応であることが示唆された。また、収率とエナンチオ選択性は芽生えの齢による差がほとんどなく、生成物の85-90%は反応液中へ分泌されるという生体触媒としての優位性も認められた。以上の結果より、光合成を利用した不斉還元の触媒として、シロイヌナズナ芽生えが有用であることを示した。
  • 境 あゆち, 西 雅知, 鈴木 俊哉, 中村 研三, 石黒 澄衞
    p. 0775
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物の成熟花粉の表面は、エキシンと呼ばれる外郭構造によって覆われている。エキシンは植物種によって特徴的な構造を持ち、雄性配偶体の保護、乳頭細胞による同種・異種の花粉認識など、植物の生殖において重要な役割を担うと考えられている。しかし、その形成機構はまだよくわかっていない。EMS処理をしたシロイヌナズナのスクリーニングによって得られたkns7 変異体は、野生型で見られるエキシンの網目構造が不連続になるという表現型を示した。Auramine Oを用いてエキシンの形成過程を観察した結果、kns7 変異体の網目構造は、エキシン形成の早期から不連続であることがわかった。またkns7 のヘテロ接合体のエキシンは正常であったことから、原因遺伝子KNS7 は2倍体の細胞すなわち花粉母細胞またはタペート細胞で発現すると考えられた。エキシンはその主要な構成成分であるスポロポレニンが小胞子自身と葯壁のタペート細胞から放出され、エキシンの骨組みとなるプロバキュラに沈着することで成長すると考えられている。従ってKNS7 遺伝子は、スポロポレニンの生合成や分泌、あるいはプロバキュラの形成に関与すると推定された。マップベースクローニングの結果、KNS7 の候補遺伝子を同定することができた。
  • Tang Lay Yin, Sakamoto Wataru
    p. 0776
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Pollen, the angiosperm male gametophyte is composed of three haploid cells, namely, a single vegetative cell and two enclosed sperm cells. During pollen maturation, drastic degradation of organellar DNA in the vegetative cell can be visualized by staining pollen with a DNA-specific fluorescent dye such as 4,6-diamidino-2-phenylindole (DAPI). This degradation results in the exclusion of organellar DNA from male gametophytes and could contribute to maternal inheritance of organellar genome. However, the regulatory mechanism and the underlying biological significance of organellar DNA degradation in vegetative cells remain unclear. Our laboratory has screened for mutants defective in pollen organellar DNA degradation (dpd). One of the mutants obtained, dpd2, show pleiotropic phenotypes. The DPD2 gene encodes one of the enzymes involved in nucleotide biosynthesis. Interestingly, we found that other nucleotide biosynthesis pathway-related mutants exhibit pollen organellar DNA degradation phenotypes similar to dpd2. Our study suggests that there is interplay between organellar DNA degradation and nucleotide de novo synthesis during pollen maturation.
  • 須藤 恵亮, Park Jong-In, 石水 毅, 諏訪部 圭太, 増子 潤美, 箱崎 宏和, 鈴木 剛, Nou Ill-Sup, 渡辺 ...
    p. 0777
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    UDP-glucose pyrophosphorylase (UGPase)は、全ての原核生物と真核生物に存在する糖代謝に重要な酵素であり、glucose 1-phosphateとUTPをUDP-glucoseとphosphateに転化する可逆反応を触媒する酵素である。植物においては、細胞壁成分であるカロース、セルロース、ペクチンの前駆体であるUDP-glucoseを合成する鍵酵素として知られており、シロイヌナズナゲノムには2つのUGPase遺伝子(AtUGP1AtUGP2)が存在している。本研究では、T-DNA挿入変異体(atugp1atugp2)を用いた逆遺伝学的及び生化学的手法により、シロイヌナズナにおけるUGPase遺伝子の機能解析を行なった。atugp1atugp2各変異体は、栄養成長・生殖成長ともに野生型と同じ表現型を示したことから、機能相補していると考えられた。それに対して二重変異体においては、植物の矮小化と花粉稔性の消失が観察された。スクロース添加培地で二重変異体を育成すると、矮性は回復するが稔性は回復しなかった。これらの結果は、UGPase活性は植物の栄養生長及び生殖生長において必須な役割を担っているが、各生長期において機能分化していることを示唆している。
  • 板橋 悦子, 岩田 夏子, 藤井 壮太, 風間 智彦, 鳥山 欽哉
    p. 0778
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    細胞質雄性不稔性(Cytoplasmic male sterility:CMS)はミトコンドリア遺伝子の変異により引き起こされる雄性不稔性であり、母性遺伝する。また、核ゲノムにコードされる稔性回復遺伝子(Rertility of restorer:Rf)の作用により稔性が回復する。イネLD型CMSはビルマ稲「Lead Rice」の細胞質由来するCMSであるが、Rf遺伝子はクローニングされていない。交配実験の結果、LD型CMSはインディカ品種「Kasalath」由来の単一遺伝子Rfkが配偶型に作用する事で稔性回復する事が分かった。Rfkに対するマップベースクローニングを行った結果、Rfkは152アミノ酸から成るglycine-rich proteinをコードする事が明らかになった。組織別発現解析の結果、Rfkは2細胞期葯、成熟葯において強く発現していた。細胞内局在調査の結果、Rfkはミトコンドリアに局在するタンパク質である事が分かった。また、Rfkの78番目のIleがrfkではThrに置換しており、この1アミノ酸の置換が機能欠失の原因である可能性が示唆された。
  • 時野谷 嘉恵, 久保 雄昭, 福澤 秀哉
    p. 0779
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    ヘテロタリックな性をもつ緑藻クラミドモナスの性決定は、雄株に特異的に存在するMID遺伝子が性特異的な遺伝子群の発現を制御することで行われているが、その詳細な分子機構は不明である。我々はMIDによる性決定機構の解明を目指し、生化学的及び遺伝学的アプローチによる解析を進めている。MIDの相互作用因子の同定を目的として、FLAGタグを付加したMIDを発現するコンストラクトを構築し、MID欠損変異株に形質転換後、表現型が部分的に相補した株を2株取得した。これらの株から,抗FLAG抗体レジンを用いてMID-FLAG複合体を回収し,その複合体構成因子について解析を行っている。また、性決定に関与する新奇因子の同定を目的として、ルシフェラーゼ・レポーターによる遺伝子タギング法を進めている。MIDの制御により雄株のみで発現するアグルチニンタンパク質遺伝子SAD1のプロモーター領域 約2.0-kbにルシフェラーゼ遺伝子(LucNC)を連結し野生株に導入したところ,雄株特異的にLuc活性を誘導するSAD1p:LucNC株を得た。この株にハイグロマイシン耐性遺伝子のタグを導入し、992個の形質転換株を取得した。このうちの3株は、配偶子誘導時に宿主株と比較してLuc活性が1/10、配偶子形成率が1/3の表現型を示した。
  • 長谷川 博, 山田 瑞樹, 竹能 清俊
    p. 0780
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    アサガオは短日条件または貧栄養などのストレスに応答して花成を誘導されるが、品種キダチでは16時間明期-8時間暗期条件下で栄養塩培養液で培養しても、3週間以上経過すると9節目付近以上の上位節で花成が起こることを我々はすでに報告した。今回は、この加齢に伴う花成反応をさらに検討した。キダチを連続光下で培養した場合、5週間培養しても花成は起こらなかった。16時間明期-8時間暗期条件で5週間培養したとき、暗期の中央での光中断を毎回繰り返すと花成は抑制された。連続光下で2~4週間培養後8時間暗期条件に移すと、連続光下での培養が長くなるほど花成時期は遅れ、8時間暗期条件から連続光に移すと、花成は起こらなくなった。これらのことから、この花成は短日花成の一形態であり、一般に長日条件と考えられる8時間暗期条件が短日条件として作用するものと思われる。そこで、4、6、8時間の暗期条件で4週間育てたところ、4時間暗期では花成は起こらないが、6時間暗期で花成が誘導され、8時間暗期では100%が花成を誘導された。異なる齢の植物に1回の8時間暗処理を行うと、0週齢では花成が起こらないが2週齢では95%が花成を誘導された。これらの結果から、キダチでは、加齢の進行に伴い限界暗期が短縮することがわかった。
  • 今村 智弘, 樋口 敦美, 中塚 貴司, 西原 昌宏, 高橋 秀行
    p. 0781
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    リンドウは、宿根草であり、主に切り花として市場に流通している。リンドウは、初夏から晩秋にかけて開花する。リンドウ栽培において、天候による開花時期の不安定性や、特定品種の出荷期間が短いことなどが問題となっており、開花期調節技術の確立が求められている。しかし、リンドウの開花生理に関する学術的な研究は行なわれておらず、その機構は未だ明らかにされていない。我々は、リンドウの花成誘導機構を明らかにするため、まず花成に関連するFT /TFL1 遺伝子の単離を試みた。他の植物のFT/TFL1タンパク質のアミノ酸配列を基にしてDegenerate PCR法を行った結果、リンドウから、FTTFL1TSFのオルソログを1つずつ単離することができた。これら単離した遺伝子について、経時的な発現解析をリンドウの葉を用いて行った。その結果、花芽が誘導される時期においてFT遺伝子の発現量が顕著に上昇していることが明らかとなった。一方、TFL1TSF遺伝子は、FT遺伝子ほど大きな発現量の変動は見られなかった。この結果から、今回単離したFT遺伝子がリンドウの花成誘導に関与していることが示唆された。これら遺伝子についてさらなる解析を行うため、リンドウとシロイヌナズナに遺伝子を導入した過剰発現体を作製した。これら形質転換体の解析結果についても報告する予定である。
  • 大宮 泰徳, 松田 修一, 高田 直樹, 上村 松生, 斎藤 秀之, 赤田 辰治
    p. 0782
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、ブナ (Fagus crenata) 開花・結実の周期的な変動のしくみを明らかにするため、研究代表者が保有する開花・結実の周期性を保持するクローンと周期性が失われ毎年開花・結実するクローンに対して、比較ゲノム解析や遺伝子多型解析などの手法を用い、豊凶の制御に関わる遺伝子変異を同定することにある。その手始めとして、ブナより花芽形成の基幹的な役割を担う CO, FT 相同遺伝子をクローニングした。東北育種場内に保存されている変異クローンを含む38クローンについて、これらの遺伝子多型の解析を進めている。 CO 遺伝子のコード領域には、その機能に影響を与えるような多型は見出されなかった。さらに両遺伝子を解析するため、ゲノム配列の単離を試みるともに、季節変化に伴って発現変動する両遺伝子の挙動について解析を行った。
  • 島田 尚久, 針金谷 尚人, 鎌田 博
    p. 0783
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナでは、胚発生から栄養成長相への移行期にクロマチンリモデリングによって胚的形質が抑制されることが明らかにされている。我々はシロイヌナズナの種子にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるTrichostatin A(TSA)を処理すると種子発芽後も胚発生関連因子の発現が継続し発芽実生に不定胚が形成されることをこれまでに報告した。そこでTSA処理による不定胚誘導が他の植物種においても見られるかを検討した。
    まず、シロイヌナズナへのTSA処理により得られた不定胚からの個体再生を試みた。得られた不定胚をB5培地上で培養すると、正常に成育し種子が得られた。また、この種子は正常発芽し次世代が得られた。次に、TSA処理による不定胚誘導の汎用性を検証するため、シロイヌナズナの近縁種Olimarabidopsis pumila, Capsella bursa-pastris, Arabidopsis griffithianaを用いて実験を行った。その結果、シロイヌナズナと同じTSA処理によりC. bursa-pastrisでは不定胚が誘導されたがA. griffithianaO. pumilaでは誘導されなかった。現在、A. griffithianaO. pumila における最適TSA処理濃度と処理期間の検討、及び各近縁種におけるTSA処理後の胚発生関連因子の発現解析を行っている。
  • 北川 宗典, 松崎 潤, 佐藤 良勝, 藤田 知道
    p. 0784
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物の形態形成の基礎をなす細胞の運命決定には、個々の細胞の位置情報が重要である。この位置情報の伝達手段の1つである原形質連絡は、自身のSEL(サイズ排除限界)を調節し高分子シグナルの輸送を制御することで、結果的に植物発生に重要な役割を果たしていると考えられている。
    原形質連絡のSEL制御は被子植物において解析が進められており、植物体の特定の部位や発生段階に応じてその時空間的な制御が確認されている。しかし被子植物の体制は様々な種類の細胞が3次元的に積み重なって構築されているため、細胞間連絡は複雑であり細胞レベルでSEL制御を解析することは困難である。
    そこで私達は細胞レベルでの観察が簡便なヒメツリガネゴケを用いてこの問題に取り組んでいる。特に原糸体と呼ばれる組織は細胞が1つ1つ一列に並んだ1次元、もしくは分枝を形成した2次元の体制からなる単純な組織である。これまでにその原糸体において光変換型蛍光タンパク質Dendra2を構成的に発現させることで、高分子の細胞間移動の細胞レベルでの可視化に成功した。またこの観察から原糸体の頂端から2番目の細胞と5番目の細胞では各々の隣接細胞へのDendra2の移動速度に違いがあることを見出した。この結果はヒメツリガネゴケにおいても細胞の発生段階に応じたSEL制御が存在することを示唆しており、現在細胞の分化状態とSEL制御の関係の解析を進めている。
  • 山本 章子, 加賀谷 安章, 村瀬 祥子, 松島 良, 西村 いく子, 黒谷 賢一, 武田 真, 服部 束穂
    p. 0785
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    lec1 等、シロイヌナズナleafy cotyledon 型変異体では、胚発生過程において種子成熟プログラムが正常に作動しない一方、子葉でのトリコーム形成など、発芽後成長過程の事象が胚形成過程において発現するため、ヘテロクロニック変異体として位置づけられる。しかしこのような異時的性質の分子メカニズムに関する知見は限られている。我々はマイクロアレイにより、これら変異体胚において異時発現する遺伝子を多数同定した。今回は、胚において特に強く異時発現する遺伝子PYK10 に着目した。ERボディー局在型β-glucosidaseをコードするこの遺伝子は、発芽直後から表皮組織で発現するが、胚形成過程では強く抑制されている。野生型胚では発現しないPYK10 プロモータ:GFPlec1 背景に導入すると、初期ハート胚においてstochasticな GFP発現が1細胞単位、あるいは隣接する数細胞単位で観察されはじめ、胚発達とともに発現細胞数が細胞列に沿って増加した。このような発現パターンは、エピジェネティックな発現抑制の解除を想起させ、LEC1がこのような発現抑制の維持に機能している可能性が示唆された。さらに我々はPYK10:GFP 植物を用いて、GFPが胚において異時発現する新奇変異体を複数単離しており、その性質も含めて胚発生における時間依存的な遺伝子発現抑制について考察したい。
  • 北川 佳名子, 栗波 滋, 隠岐 勝幸, 真田 直美, 藤澤 由紀子, 北野 英巳, 岩崎 行玄
    p. 0786
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネ種子の縦方向の伸長に関与する遺伝子として、3量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子、ブラシノステロイド生合成パスウエイを触媒するD11遺伝子やD2遺伝子などが報告されている。昨年度、新奇種子形変異体srs3-1の変異原因遺伝子が、キネシン13グループに属することを報告した。SRS3遺伝子は12個のエキソンより構成され、全鎖長cDNAは819個のアミノ酸をコードしていた。モータードメイン領域はエキソン3からエキソン10に位置した。srs3-1は、モータードメイン領域内の第9エキソン内に1アミノ酸置換が生じていた。本年度、新たに2種類のアリルを同定した。srs3-2は、エキソン11とイントロン11のスプライシング領域に変異があり、翻訳産物はエキソン11で終結した。この変異体も短粒を結実するので、欠損したエキソン12は、機能発現に重要であることが明らかになった。srs3-3は、エキソン5内に終結コドンを生じ、大部分のモータードメイン領域を欠いていたため、ヌル変異体と考えられた。C末端側、267アミノ酸残基に対するタンパク質を大腸菌にて合成後、特異抗体を調製した。この抗体は、ウエスタンブロット解析により、約110kDaタンパク質と反応した。このタンパク質は、主に、100 kg沈殿画分に局在していた。
  • 草野 博彰, シャク タカシ, 羽方 誠, 内藤 夏佳, 鶴巻 由美, 八重島 充弘, 佐々木 忠将, 青山 卓史, 佐藤 光, 山川 博幹 ...
    p. 0787
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネ登熟期の高温は胚乳の白濁化と収量の減少を引き起こすことが知られている。我々はこの現象の分子メカニズムを解明するため、これに似た表現型を持つflo2変異体との比較を行った。網羅的遺伝子発現解析では、物質貯蔵や細胞機能制御に関わる遺伝子のほか、リボソームタンパク質遺伝子やATPの代謝に関わる遺伝子の発現が共通して減少していることが示唆された。そこで3種類の栽培種とflo2変異体について高温および常温環境下での登熟期のイネ種子のATP量をモニターした。ATP濃度は登熟期に上昇していたが、このATP濃度はflo2変異体と高温環境下で生育した野生型では低い値を示した。また栽培種のひとつである金南風は高温環境下でも登熟中期のATP濃度に差が無く、白濁化や粒重の減少がみられなかったため、高温による登熟障害に抵抗性を有することが示唆された。このATP代謝に関わる遺伝子を同定するため、マイクロアレイ解析により抽出されたATP代謝に関わる遺伝子の発現を解析したところ、あるF1ATPase様遺伝子は登熟期に発現が上昇し、高温下ではこの上昇が抑制されることが明らかとなった。
  • 矢野 亮一, 軸丸 裕介, 神谷 勇治, 瀬尾 光範
    p. 0788
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    種子は登熟後に生長を停止し、休眠性を獲得する。一般に、休眠性を保持する種子は、生育に適した温度・光環境で吸水しても発芽しない。しかし、休眠種子が後熟や低温吸水、硝酸処理などを受けると、休眠性が打破され発芽できる状態となる。このうち後熟は、登熟種子が乾燥保存を経ることにより起こる現象である。現在、遺伝リソースが充実しているシロイヌナズナ・アクセッション(Columbia-0, Landsberg erecta)は、いずれも数週の後熟で休眠性を喪失する。このため近年では、半年以上の後熟を経ても休眠性を維持するCape verde islands-0(Cvi-0)が注目されている。一方、種子休眠性は、種皮が胚の生長を抑える能力(種皮休眠性)と胚自体が休眠性を維持する能力(胚休眠性)のバランスにより決まる。Cvi-0は登熟直後には種子および胚の休眠性を示すが、4週の後熟を経ると、種子休眠性を保持したまま胚休眠性を喪失することがわかった。つまり、後熟したCvi-0種子の休眠性は、種皮に大きく依存している。そこで、後熟を経ても胚休眠性を維持する高休眠アクセッションを選抜した。最も胚休眠性が深い系統では、胚がジベレリンや硝酸に非感受性を示した。本発表では、胚休眠種子と種皮休眠種子における内生ホルモン分析と遺伝子発現解析の結果を紹介する。異なるタイプの休眠性を規定する要因について議論したい。
  • 氣多 澄江, 中川 彩美, 小島 久恵, 堀口 吾朗, 塚谷 裕一, 中村 研三, 町田 泰則, 町田 千代子
    p. 0789
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    植物の葉は、基部先端部軸、向背軸、中央側方軸の3方向軸への細胞分化と細胞増殖によって形成される。シロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES1 (AS1) およびASYMMETRIC LEAVES2 (AS2) は、葉の向軸側において背軸化因子群の発現を抑制して向軸化させる機能をもつ。最近、リボソームタンパク質や低分子RNAの生合成関連因子が、AS1AS2と共に向背軸分化に関わることが報告された。これらの因子は核小体に局在すること、またAS1、AS2も核および核小体の周縁部に塊状に共局在する(AS2 body)ことから、向背軸分化において核小体が重要な役割を果たす可能性が推測される。しかしながら、葉の発生・分化における核小体の役割についてはほとんどわかっていない。近年、核小体は、リボソーム合成以外にDNA損傷応答系、老化およびストレス応答にも重要な機能を持つことが示されており、核小体機能解明の重要性が示唆されている。ヌクレオリンは核小体に局在し、真核生物で高く保存され、機能解明が進んでいるタンパク質である。本研究ではまず、ヌクレオリンとas1との二重変異体を作成し、ヌクレオリンがas1単独変異体の葉の表現型異常を亢進することを明らかにした。AS1と共に葉の向背軸極性分化に関わる核小体タンパク質ヌクレオリンの役割について考察する。
  • Pitaksaringkarn Weerasak, Asahina Masashi, Azuma Katsuya, Yamazaki Tak ...
    p. 0790
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Tissue reunion is known to be a natural phenomenon in plant which occurs during wounding or grafting. In order to understand the tissue reunion process in molecular level, morphological and gene expression analyses were performed using the Arabidopsis cut flowering stem. In wild type plant, the cell division in tissue reunion process has been found to start in 3 days after cutting and almost complete in 14 days after cutting. Microarray analysis showed up-regulation of the genes for cell division etc. in cut and flowering stems during tissue reunion process. In this study, we focused on the genes encoding transcription factors and cell wall modification enzymes. The gene expression analysis revealed that xyloglucan endotransglucosylase/hydrolase (XTH) and NAC-type transcription factor (NAC) were up-regulated at 1 and 3 days after cutting. Moreover decapitation and/or auxin application showed that NAC and XTH are inducible by auxin. We also found that in NAC:SRDX, the expression level of XTH decreased in comparison with wild type plant. These results suggest that the involvement of XTH under the control of NAC transcription factor
  • 高野 翔, 新濱 充, 田坂 昌生, 相田 光宏
    p. 0791
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物は大部分の地上部器官を茎頂分裂組織(Shoot Apical Meristem : SAM)から作り出す。我々は、SAMが継続的に肥大化する劣性変異体gorgongor)をシロイヌナズナから単離した。この変異体では、SAMの形成と維持を促進するホメオボックス遺伝子SHOOT MERISTEMLESSSTM)にミスセンス変異が生じていた。しかし、既知のSTMの機能喪失型変異体ではSAMの欠失や縮小が起こり、gor変異体とは表現型が大きく異なる。STM遺伝子上に生じたミスセンス変異が実際にgor変異体の表現型の原因になっているかどうかを明らかにするため、まず野生型STMゲノム断片をgor変異体に導入したところ、表現型が相補された。また、gor変異を含むSTMゲノム断片をstm機能喪失変異体に導入するとgorと同じ表現型が生じた。これらのことは、gor変異体の表現型が確かにSTM遺伝子上のミスセンス変異に起因することを示している。本発表では、gor突然変異体の詳しい表現型について報告するとともに、遺伝解析から明らかになったこの変異アリルのユニークな特徴について詳述する。
  • 宮田 麗香, 金田 剛史
    p. 0792
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    アズキの「エリモショウズ」は、収量、品質ともに安定し食用として栽培されており、植物ホルモンの基礎研究にも利用されている有用な栽培品種である。しかし、「ベニダイナゴン」や「きたのおとめ」などの品種よりも組織培養系による形質転換体作製の効率が低いという報告がある。そこで、「エリモショウズ」において、形質転換体作製に利用する目的で、上胚軸より切り出した外植片からのシュート誘導条件を検討した。
    培地の基本組成においては「ベニダイナゴン」や「きたのおとめ」の組織培養に用いられる1×ムラシゲ・スクーグ(MS)培地混合塩類、3% スクロース、0.8% 寒天を含む培地よりも、1/2×MS培地混合塩類、1% スクロース、1.2% 寒天を含む培地の方が「エリモショウズ」の組織培養に適していることがわかった。また、培地への0.05% MES-KOH(pH 5.7)緩衝液の添加によってシュート誘導率が向上することがわかった。
    培地に添加するサイトカイニンは、t-ゼアチン,チジアズロン,カイネチンを用いるよりベンジルアデニンを0.3 mg/lの濃度で用いた方がシュート誘導率は高かった。また、0.01 mg/lの濃度のIAAを添加することによってシュートがより高率に誘導され、シュートが誘導されたカルスの割合は90%だった。現在この培養条件を利用して、「エリモショウズ」において形質転換体の作製を試みている。
  • 根岸 直希, 南藤 和也, 大石 正淳, 河岡 明義
    p. 0793
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    Eucalyptus globulusは成長性、パルプ化適性に優れた樹種であり、商業植林では重要な樹種である。しかし、E.globulusは発根率が低いことから、挿し木による増殖が難しい。そこで、E.globulusの組織培養物を用いて、不定根形成にオーキシンが及ぼす影響について調査した。高CO2条件下で、E.globulusの7系統をIndole-3-butyric acid(IBA)で発根処理することによって、発根率の増加を確認した。一方、オーキシン極性輸送阻害剤であるN-1-naphtylphthalamic acid(NPA)処理により濃度依存的に不定根形成は抑制された。また、不定根形成能の異なる9系統のE.globulusについて重力屈性を調査した結果、不定根形成能の低い系統ではほとんど重力屈性を示さず、不定根形成能と重力屈性の間に強い相関が認められた。これは、E.globulusの不定根形成には、オーキシンの極性輸送が重要であることを示唆している。また、内生オーキシン量について調査した結果、不定根形成能の高い系統では内生IAA量が高く、発根処理8日後にはIAA-Asp量が顕著に増加した。現在、E.globulusからオーキシン合成に関与するP450系遺伝子とIAA-アミノ酸複合体合成酵素GH3遺伝子を単離し、不定根形成能と遺伝子発現との関連性について調査している。
  • 樋口 智文, 武智 克彰, 沖田 友美, 宮島 兼佑, 山本 慈恵, 滝尾 進, 南澤 直子, 塚谷 裕一, 高野 博嘉
    p. 0794
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのANGUSTIFOLIA(AN)は、葉の細胞の横方向への極性伸長に関わることが示唆されている。ANは動物の発生に重要なCtBP/BARSの、植物ホモログであり、CtBP/BARSには存在しない約200アミノ酸のC末端配列をもつ。またANは細胞内でゴルジ体近傍に局在する(南澤ら、本大会)。我々はヒメツリガネゴケから、AN相同遺伝子PpAN1-1,1-2と、植物特有のC末端領域を持たないPpAN2-1,2-2を見出した。ノーザン解析から、PpAN1-1,1-2は茎葉体、原糸体共に発現し、PpAN1-1の発現量が多いこと、PpAN2-1,2-2は茎葉体での発現が強く、特にPpAN2-1の発現量が多いことが、明らかとなった。プロモーターGUS法により発現様式を解析したところ、PpAN1-1は茎葉体の茎の上部から基部まで強く発現する一方、PpAN2-1は茎の上部で強く発現していた。4つのPpAN遺伝子の単一破壊ライン、およびPpAN1-1/1-22-1/2-2二重破壊ラインを作製中であり、形態観察を行なう予定である。4つのPpAN遺伝子をシロイヌナズナan-1変異ラインに導入し、機能相補解析を行っている。C末端領域の重要性を確認するためにC末端領域を欠失したAN遺伝子も用い、an-1ラインに導入した結果、PpAN2-1、2-2、C末端領域を欠くANで表現型の回復が見られた。
  • 小野 公代, 大関 悠子, 川崎 真澄, 鎌田 博, 光田 展隆, 高木 優, 小野 道之
    p. 0795
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    CRES-T法(Chimeric REpressor gene-Silencing Technology)は、任意の転写因子に転写抑制ドメイン(SRDX)を連結する事により転写抑制因子に改変し、機能が重複した転写因子が存在してもターゲット遺伝子の発現を効率よく抑制することが可能である。しかし、導入遺伝子によっては、キメラリプレッサーの過剰発現により生育不良や種子の稔性低下がみられる。そこで、本研究では、遺伝子組換え花きの実用化に向け、導入遺伝子の発現を時・空間的に制御する技術の開発を行なった。酵母のGAL4転写因子の転写システムを利用し、エタノール誘導または熱ショック誘導プロモーターによりGAL4SRDXを適切な時期に発現させ、35S::GAL4 UAS制御下で過剰発現している導入遺伝子の発現を一過的に抑制させるベクターを構築した。導入遺伝子としては、八重咲きに関わるAGのキメラリプレッサー(AGSRDX)及びAGのアサガオ相同遺伝子DUPLICATE(DP)のキメラリプレッサー(DPSRDX)をシロイヌナズナ及びアサガオに導入した。35S::DPSRDX導入アサガオは再分化中に成長が停止し枯死してしまうが、再分化中にGAL4SRDXを用いて発現抑制することにより正常に個体再生し、八重咲きのアサガオを咲かせる事に成功した。この技術は基礎研究や育種への応用が期待される。
  • 四方 雅仁, 山口 博康, 佐々木 克友, 鳴海 貴子, 間 竜太郎, 光田 展隆, 高木 優, 大坪 憲弘
    p. 0796
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    花の発生、分化、形態形成には多くの転写因子が関与している。これらが花きの形質改変に利用できること、機能解析の先行するシロイヌナズナの転写因子を用いることで遺伝子単離の手順を簡略化できることなどが、我々の形質転換トレニアの解析から明らかになってきている。一方でどの転写因子が有用形質を付与するかは形質転換体を作出しなければ評価できないという問題がある。そこで有用形質花きをより効率よく作出するため、多種類の発現ベクターを一括して導入するバルク感染を行い、得られた形質転換体から有用な表現型を持つ個体を選抜し、どのような遺伝子が形質改変に有効であるかを調査した。器官発生や細胞分化に関わると考えられるシロイヌナズナの転写因子50種類に転写抑制ドメインを付加したキメラリプレッサーを構築して本手法でトレニアに導入し、402系統の形質転換体を得た。花の形質に着目して選抜した結果、花冠サイズが大きくなったもの、ブロッチ(下弁のカロテノイド斑)の幅が拡大したもの、花弁縁片が内反あるいは鋸歯化したもの、花弁の配色パターンが変化したものなどが得られた。本手法により、効率的な花きの形質改変が可能となるだけでなく、形質転換体で見られた表現型が遺伝子の機能から推測されるよりも遙かに多彩であることから、モデル植物では明らかにならなかった転写因子の新たな機能の解明にもつながると期待される。
  • 佐々木 克友, 山口 博康, 間 竜太郎, 四方 雅仁, 大坪 憲弘
    p. 0797
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    我々はアゼナ科のトレニアをモデルに遺伝子組換えで花形等を改変する技術開発を進めているが、トレニアでは花器官形成に関する分子生物学的な情報がまだ十分に整備されていない。そこで我々は花弁や雄ずいの形成に重要な機能を有する2つのクラスB遺伝子TfGLOGLOBOSA)およびTfDEFDEFICIENS)の植物内での機能に関する情報を得ることを目的に、組換えトレニアを作出して解析を行った。
    TfGLOの過剰発現系統では萼に花弁と同様のアントシアニンの着色が観察されたが、TfDEFでは顕著な変化は観察されなかった。また、TfGLOのキメラリプレッサーを導入した抑制系統は花弁が鋸歯化したのに対し、TfDEFでは花弁の配色パターンが変化するなど異なる表現型が観察された。一方、我々は、シロイヌナズナにおいてクラスB遺伝子で制御されるXEGおよびCABのホモログ遺伝子をトレニアから単離した。これら下流遺伝子の発現パターンは、TfGLOおよびTfDEF組換え体の間で同様である一方、シロイヌナズナの結果とは一部異なっていた。これらの結果から、2種のトレニアクラスB遺伝子は花器官形成に関してそれぞれ異なる機能を有するのみならず、シロイヌナズナのクラスB遺伝子とも異なる新たな機能を有することが確認された。
    本研究は、生研センターイノベーション創出事業によるものである。
  • 田口 文緒, 川越 靖, 加藤 浩, 小野寺 治子, 宮尾 安藝夫, 廣近 洋彦, 矢野 昌裕, 土岐 精一
    p. 0798
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    半矮性で且つ穎花数が増加するイネ密穂型変異体Dense panicle 1 (Dn1)のアレール間の比較を行った。塩基配列から、DN1-1はC末のシステインリッチ領域の大半を欠失した短いポリペプチドで、DN1-3はN末のcoiled coilと核移行配列以外は機能的でないポリペプチドであると推定された。DN1遺伝子の茎頂と根端での発現量は、Dn1-1では野生型より2~3倍、Dn1-3では10倍以上多く、同じ内生プロモータで発現している野生型mRNAより分解され易いことが示唆された。日本晴背景でDn1-1Dn1-3の表現型を比較したところ、両者とも半矮性となるが、穎花数が増加するのはDn1-1のみであることがわかった。
    DN1のN末またはC末にGFPを融合させたタンパク質を発現させた形質転換体を用いてDN1タンパク質の局在を調べたところ、少なくともDN1-1は膜貫通タンパク質であること、野生型とDN1-1のいずれもN末約4kDaが切断されて細胞質に存在していることがわかった。
    Dn1-1アレールを戻し交雑で異なる遺伝的背景に導入すると穂あたり穎花数は増加するが、コシヒカリ背景では一次枝梗数が、日本晴背景では二次枝梗につく穎花数が増加しており、遺伝的背景によってDN1遺伝子の効果が見られる時期に違いが見られた。
  • 中川 仁, 田中 惇訓, 七夕 高也, 藤岡 昭三, 森 昌樹
    p. 0799
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、イネのアクティベーションタギングにより同定した短粒遺伝子Short grain 1 (Sg1) について、新規なタンパク質をコードすること、イネで過剰発現するとブラシノステロイド(BR)欠損変異体と類似の短く直立した葉を持つ半矮性の表現型を示し、ラミナジョイントがBR非感受性になることを報告した。本研究において、SG1過剰発現イネは、葉や籾が短いだけでなく、短桿で密穂になることを見いだした。にもかかわらず、過剰発現体の器官の細胞のサイズは野生型と同等であり、器官の縮小の原因は主に細胞数の減少であると考えられた。一方SG1過剰発現体におけるBR含量はWTと差がなかったことから、BRのシグナリングまたは応答が抑制されていると考えられた。GUSレポーター系統を作製しSG1の発現部位を調べたところ、実生の根、茎の節、幼穂の下部の枝梗と枝梗分岐で検出された。発現とSG1過剰発現の表現型を考え合わせると, SG1 は細胞分裂の抑制を介してイネの穂の伸長を抑制すると考えられる。現在、SG1の機能を明らかにするためにSG1とその相同遺伝子の発現を抑制したRNAi系統を作成している。
  • 川勝(池田) 恭子, 佐藤 光, 井澤 毅, 前川 雅彦, 長戸 康郎
    p. 0800
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    イネの花序は小穂を着生することから収量性に直接関わる器官である。しかしその形態制御因子の報告は少ない。我々のこれまでの解析からAPO1遺伝子の発現量に応じて一穂着生小穂数が変動することが明らかになっている。今回我々は、化学変異原処理イネから穂形態に異常を示す変異体を同定し機能解析を行った。得られたaberrant panicle organization 2 (apo2) 変異体は短穂で、apo1変異体と類似した特徴を示した。穂軸の先端には野生型に見られない頂端花が着生し、一穂小穂数は野生型の15%にまで減少した。幼穂の初期発生を観察したところ、幅の狭い穂軸分裂組織から野生型よりも少ない枝梗原基を分化していた。またapo2変異体は、葉間期の短縮、花器官アイデンティティーの異常など、多面的な表現型を示した。ポジショナルクローニングにより原因遺伝子を単離したところ、APO2遺伝子はシロイヌナズナLEAFYのイネオーソログRice FLORICAULA (RFL)であった。空間的発現解析およびAPO1遺伝子との相互作用について解析した結果、両遺伝子は同一の経路で花序分裂組織のアイデンティティー転換を制御していることが示唆された。またシロイヌナズナLEAFYは花への転換を促進する因子であるが、イネのAPO2は抑制因子であることが本研究により明らかとなった。
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