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田中 将大, 幸田 泰則
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0704
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
頂芽優勢はIAAが側芽の休眠を誘導することにより生じ、CKはそれを打破する。IAAそのものは側芽の休眠を直接誘導できないことなどから、IAAは根で何らかのシグナル物質を生産させ、それが直接的に側芽の休眠を誘導している可能性が示され、その候補物質としてストリゴラクトンが単離された。我々はバレイショ根の抽出物中に種子発芽や側芽の生長を強く阻害する活性が存在することを見出した。しかし、純化過程での活性本体の挙動はストリゴラクトンとは異なるものであった。そこで、根で生成される側芽休眠誘導物質の単離を試みた。
[方法・結果] IAAは側根形成を促進し根量を増加させる。そこでIAA含む液体培地でバレイショ根を大量に単独培養し、抽出材料として用いた。一節を含むバレイショ茎断片を培地に移植すると頂芽優勢が打破され側芽が生長を開始する。この培養系を側芽休眠誘導活性の検定法として用いた。根の抽出物を溶媒分画法により分け、側芽休眠誘導活性を調べた結果、水溶性分画に強い活性が認められた。活性を指標として単離・精製を進めた結果、分子量434の物質が単離された。フラグメントパターンからこの物質は未知のものであると思われた。現在、この物質の頂芽優勢への関与を調べるため、IAAがこの物質の含量に及ぼす影響について検討中である。また構造決定を試みている。
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池田 美穂, 光田 展隆, 高木 優
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0705
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物の草丈はブラシノステロイド(BR)などにより制御されており、そのシステムには未解明な点が多い。我々はシロイヌナズナのキメラリプレッサー発現体の解析から矮性化に関与する転写制御因子としてHR0444を単離した。HR0444のキメラリプレッサー発現体(HR0444SRDX)においては細胞伸長が抑制され、強い矮性化が誘導された。また、HR0444SRDXはBRに対して非感受性であり、エクスパンシンなどを含むBR誘導性遺伝子の発現も低下していた。一方で、HR0444過剰発現体(HR0444ox)がHR0444SRDXと類似の表現型を示したことからHR0444はリプレッサーであると思われたが、HR0444には転写抑制活性がなく、DNAにも結合しない可能性が示された。そこで我々は、HR0444はアクティベーターと相互作用することでその機能を抑制すると仮定し、HR0444の相互作用因子を単離した。HR0444相互作用因子は細胞伸長を促進するアクティベーターであり、HR0444はこれらの転写活性化能を阻害した。このことから、実際に細胞伸長を誘導しているのはHR0444相互作用因子であり、HR0444はその転写活性を阻害していることが解った。また、HR0444の発現はBRのシグナル伝達因子BZR1によって抑制されており、BRはHR0444の発現阻害を介して細胞伸長を促進していることが解った。
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工藤 徹, 槇田 庸絵, 小嶋 美紀子, 徳永 浩樹, 榊原 均
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0706
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シスゼアチン(cZ)は、高活性サイトカイニンであるトランスゼアチン(tZ)のプレニル側鎖の二重結合における幾何異性体である。シロイヌナズナやタバコなどを用いた長年の研究成果から、一般的には、cZはtZと比較して生理活性が極めて低く、tZに変換されることで活性化されると理解されている。しかし、トウモロコシでは外来のcZがtZへの変換を介さずとも活性型として認識されることが示唆されている。また、イネやトウモロコシ、シロバナルピナス、ヒメツリガネゴケなど複数の植物種でcZやその誘導体が蓄積することが報告されており、植物におけるサイトカイニン機能の全体像を理解するためには、cZの役割・重要性を改めて検討する必要がある。本研究では、イネにおいてcZが活性型サイトカイニンとして機能している可能性を検証することを目的とした。幼植物の生育を指標としたバイオアッセイ等の解析結果は、イネが外来性cZ感受性であることを示唆した。そこで次に、内生cZの重要性を評価するためサイトカイニンの不活性化を触媒すると考えられているcZ-
O-配糖化酵素に着目した。cZ代謝の撹乱が期待される本配糖化酵素遺伝子過剰発現イネでは、地上部矮性などいくつかの可視的な表現型異常が観察された。本年会では、これらの結果からイネにおけるcZの役割について議論したい。
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伊ヶ崎 知弘, 辻井 伊久美, 渡辺 由美子, 小嶋 美紀子, 榊原 均, 篠原 健司
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0707
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ジベレリン(GA)は、高等植物の発芽や伸長成長、開花時期の制御等を行う植物ホルモンである。我々は、遺伝子組換え技術により、ポプラのGA合成量を制御し、成長量を調節できると考えている。高等植物では、GA12以降のGAの酸化に、2-オキソグルタル酸要求型酸素添加酵素ファミリーに属する酵素が関与している。我々は、シロイヌナズナなどの高等植物の既知の配列情報や既存のポプラゲノム情報を利用することで、合計28のGA生合成系酵素遺伝子を単離することに成功した。系統進化学的解析では、これらがGA20酸化酵素、GA3水酸化酵素、炭素数19のGA2水酸化酵素(C19GA2ox)、炭素数20のGA2水酸化酵素の4つのクレードに大別することができた。そこで、C19GA2oxの一つPnGA2ox1遺伝子を過剰に発現する組換えポプラを3系統単離した。これらの組換えポプラは、長日の人工光条件下では、野生型の約40%の伸長成長速度を示した。この他、生育特性や内性ホルモン量の変化、導入した遺伝子及びそれ以外のGA生合成系酵素遺伝子の発現量の変動についても調べている。
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勝又 卓己, 深澤 壽太郎, 真籠 洋, 軸丸 裕介, 神谷 勇治, 夏目 雅裕, 川出 洋, 山口 信次郎
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0708
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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CYP78Aサブファミリーはコケ植物を含む陸上植物に広く保存されており、被子植物では葉間期や器官の大きさを制御していることが報告されている。しかしながら、被子植物以外ではその機能は明らかでない。本研究では、コケ植物である蘚類ヒメツリガネゴケ (
Physcomitrella patens)の2つのCYP78A (CYP78A27とCYP78A28)の役割を調べるため、
CYP78A破壊株と過剰発現株を作製した。
CYP78A27もしくは
CYP78A28の片方を破壊した株では、原糸体および茎葉体の形成においては野生型に比べて変化は見られなかった。一方、
CYP78A二重破壊株では、原糸体の成長と茎葉体への分化が抑制された。また、
CYP78A27および
CYP78A28の過剰発現株では共に、茎葉体への分化が遅れる傾向が見られた。次に、野生型、二重破壊株、過剰発現株において植物ホルモン量を比較したところ、インドール-3-酢酸、イソペンテニルアデニン、トランスゼアチンの内生量が二重破壊株で大きく変化していた。以上の結果から、ヒメツリガネゴケにおいてもCYP78Aが植物の成長制御に関わることが示唆された。
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Takahashi Maho, Oono Yutaka, Rahman Abidur
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0709
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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Auxinic herbicide, 2, 4-D is a chemical analogue of auxin, IAA. Traditionally it is believed that IAA and 2, 4-D share a common signaling pathway. However, the isolation of 2, 4-D resistant mutant
aar1-1, identification of the gene SMAP1, which confers only 2, 4-D sensitivity, and 2,4-D specific degradation of root actin cytoskeleton and inhibition of cell division strongly suggest that 2, 4-D and IAA use both distinct and overlapping pathways to regulate Arabidopsis root growth. To provide a molecular explanation of 2, 4-D specific action, here we characterize the novel protein SMAP1. Our results revealed that SMAP1 acts as a positive regulator for 2, 4-D induced degradation of actin, cell division and cell elongation processes. The ubiquitin proteasome mutants,
tir1-1 and
axr1-12, which show enhanced resistance to 2, 4-D compared with IAA in root growth, were found to be resistant to 2, 4-D mediated actin degradation. Genetic interaction between SMAP1 and ubiquitin pathway was confirmed by analyzing the double mutant
aar1 x tir1, which shows enhanced resistance to 2, 4-D for both root growth and actin degradation compared with their respective parental lines.
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Li Weiqiang, Takeda-Kamiya Noriko, Umehara Mikihisa, Arite Tomotsugu, ...
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0710
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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Previous studies using rice tillering dwarf mutants suggested that DWARF14 (D14), encoding a member of the Alpha/Beta-hydrolase superfamily, regulates shoot branching in a step downstream of strigolactone biosynthesis. To explore whether D14-related gene(s) acts in the strigolactone-dependent pathway in other plant species, we have been studying the physiological roles of D14 homologs in Arabidopsis through reverse genetics. We found that Arabidopsis mutants defective in a likely D14 ortholog are phenotypically similar to the strigolactone-deficient max1, max3 and max4 mutants, including increased axillary bud outgrowth and reduced petiole lengths in rosette leaves, but are insensitive to strigolactone. In contrast to d14, max2, another strigolactone-insensitive mutant defective in an F-box protein, shows extra phenotypes that are not observed in the strigolactone-deficient max mutants. Our recent results suggest that another D14-related gene might be involved in the MAX1/MAX3/MAX4-independent max2 phenotypes in Arabidopsis.
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宮地 朋子, 市川 尚斉, 松井 南, 中野 明彦, 浅見 忠男, 中野 雄司
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0711
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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ブラシノステロイドは細胞の分裂や伸長、葉緑体制御など、植物の生長に重要な植物ステロイドホルモンである。現在までに、Fast Neutron変異やアクティベーションタギングベクターのシステムを用いて、
bil (Brz-insensitive-long hypocotyls) 変異体の探索が試みられてきた。本研究では理化学研究所PSCで構築された、シロイヌナズナ完全長cDNAをCaMV35sプロモーターに接続して高発現させたFOX (Full-length cDNA over-expressor gene)ハンティングシステムによる変異体群から新しい
bil変異体の探索を試みた。現在、約8,000ラインより選抜を行い、約20ラインの
bil変異体候補を得ている。そのうち、各々独立して単離した変異体Y72、Y114、Y162は、導入cDNA解析の結果、同一の新規機能未知遺伝子の高発現が原因である可能性が推測された。また、これら3ラインはBrz上での胚軸伸長だけでなく、成熟形態において野生型より花茎長が長くなる形態が観察された。比較的穏やかなブラシノステロイド処理は花茎伸長を促進することが知られており、興味深い形態であると考えられる。現在さらに、発芽時における
bil形態と共に、成熟時に花茎数が減少する形態やslender dwarf形態を示す変異体なども得られており、解析を進めている。
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下田 洋輔, 坂口 達哉, 町田 美高, 岡 真理子
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0712
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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我々は、低窒素条件下で植物にアブシジン酸(ABA)を処理するとクロロフィル生合成が促進され、葉が緑色を呈することを報告してきた。従来より、クロロフィル生合成にはサイトカイニンが関与していることが知られているので、低窒素条件下におけるABAとサイトカイニンの相互作用とともに、葉の黄化への活性酸素種の関与を調べた。
低窒素条件下でキュウリ植物にカイネチン(KI)処理したところ、KI処理をしたキュウリの第一葉においてはクロロフィル含量が減少した。この時のクロロフィル生合成遺伝子の発現量を調べたところ、KI処理区は無処理区と比較してクロロフィル生合成の律速酵素である
GLUTAMYL-tRNA REDUCTASEの遺伝子発現量が減少していた。また、ABA生合成遺伝子の発現量を調べたところ、KI処理区は無処理区と比較してその発現量が減少した。低窒素条件下でKIあるいはABAを処理した植物の子葉と第一葉をDAB染色したところ、いずれにおいてもABA処理区ではH
2O
2蓄積量が少なく、KI処理区ではH
2O
2蓄積量が多いことが示された。
以上の結果より、低窒素条件下においては、ABAにより活性酸素の蓄積が抑制され、酸化ストレスが軽減されることが、クロロフィル量の維持にとって重要であることが示唆された。現在、低窒素条件下でのキュウリ葉のクロロフィル量と活性酸素消去系との関係を検討中である。
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沼田 光紗, 下嶋 美恵, 都築 朋, 木下 俊則, 太田 啓之
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0713
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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Phosphatidate phosphohydrolase 1/2 (PAH1/2)はphosphatidic acid (PA)を脱リン酸化しdiacylglycerolを生成する可溶性型のホスファチジン酸ホスファターゼであり、脂質の代謝において重要な役割を果たしている。pah1pah2二重変異体では、phosphatidylcholine、phosphatidylethanolamine、PAといったリン脂質が増加する (Nakamura et al. 2009 PNAS)。PAは脂質代謝において中心的な役割を果たす代謝中間体であり、高等植物ではストレス応答にかかわるabscisic acid(ABA)のシグナル伝達物質としても重要であることが知られている。
そこで本研究ではPAH欠損変異体を用いて、ABAに関与する様々なストレス応答の解析を行った。その結果、pah1pah2ではABA濃度依存的に、野生株に比べ著しく発芽率が低下し、少なくとも発芽においてpah1pah2はABA高感受性であることが明らかになった。しかしその一方で、ABA感受性について葉の気孔開口阻害についても調べたが、pah1pah2と野生株では差が見られなかった。したがって、ABAシグナル伝達を介したストレス応答におけるPAHの役割は、種子発芽時と葉の気孔閉鎖においては異なることが示唆された。
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渡邊 哲史, 伊藤 岳, 藤木 敬大, 深澤 壽太郎, 高橋 陽介
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0714
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ジベレリンは(GA)は高等植物の発芽、茎部伸長、花芽形成などを制御する植物ホルモンである。GAシグナル伝達において、DELLAタンパク質は負の制御因子として機能している。GAの添加にともないDELLAタンパク質は速やかに分解され、下流にGAシグナルが伝達される。GAF1はDELLAタンパク質のひとつであるGAIと相互作用する転写因子として単離された。DELLAタンパク質は明確なDNA結合領域をもたないが、酵母や植物において強い転写活性化能を示したことから、GAF1と複合体を形成することで遺伝子の発現制御に関与している可能性が示唆された。DELLAタンパク質はGA内生量が低いときに核内に蓄積するので、GAフィードバック制御を受けるGA生合成酵素遺伝子を標的とすると予測した。トランジェントアッセイによって、GAF1-DELLA複合体はGA 20-酸化酵素遺伝子の転写を活性化することが示された。また、GAF1とDELLAタンパク質の植物細胞内における相互作用はGAの添加によって消失することがBiFC法により明らかとなった。これらの結果から、GAF1は、GA内生量の変化にともない、その転写活性化能を調節する可能性が示唆された。本研究では、GA 20-酸化酵素遺伝子プロモーターのGAF1結合部位の特定とGAF1複合体による転写制御機構の更なる解明を試みた。
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Suwastika I Nengah, Im Chak Han, Bang Woo Young, Ohniwa Ryosuke L., Ba ...
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0715
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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NOG1 is a nuclear GTP-binding protein which is conserved among archaea and eukaryotes (including animals, plants and fungi). It has been shown that NOG1 homologues are involved in early steps of 60S ribosomal biogenesis in nucleus of Trypanosoma, yeast and mouse. Here we characterized the plant Nog1 protein in Arabidopsis. Arabidopsis has three NOG1 homologues, named AtNOG1-1, AtNOG1-2 and AtNOG1-3, but only NOG1-1 is constitutively expressed in all the tissues examined. Actually AtNOG1-1 seems to be essential for plant development. AtNOG1-1 is directed to nucleolus and nucleoplasm. FRAP analysis revealed that the distribution of NOG1-1 protein between nucleolus and nucleoplasm was sensitive to transcription and translation inhibitors, also carbon and nitrogen starvation, suggesting its role in early steps of ribosomal biogenesis. NOG1-1 shows a dynamic behavior during mitosis. The NOG1-1 protein disappeared in pre-metaphase, and is rapidly re-accumulated in peripheral chromosomal region in early anaphase. We also found a novel and plant-specific sub nucleolar structure named "nog1 body" which appears in nucleus region during late anaphase and early telophase.
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室屋 誠人, 伊東 千賀子, 村中 厚子, 水谷 春香, 坂本 敦, 島田 裕士
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0716
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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Protein disulfide isomerase (PDI) 活性を有するシロイヌナズナタンパク質CYO1はチラコイド膜に局在し、子葉特異的な葉緑体形成因子として機能している(Plant Cell 2007, 19:3157-3169)。我々は本葉など子葉以外の緑色組織においてもPDI活性を有する未同定の葉緑体形成因子が機能していると推測し、その同定を試みた。アミノ酸配列情報とプロテオーム解析による細胞内局在情報から遺伝子の絞り込みを行い、緑色組織全体でPale greenの表現型を示すシロイヌナズナ変異体
cyo2を得た。
cyo2変異体は光合成の電子伝達活性、光化学系IIの最大活性が低下しており、ウエスタンブロット解析でも多くの葉緑体タンパク質の減少が観察された。GUSを用いた解析から
CYO2遺伝子は子葉を含む緑色組織全体で発現が観察されたが、興味深いことに暗所生育の子葉においても
CYO2遺伝子の発現が観察された。また、CYO2タンパク質はCYO1タンパク質同様PDI活性を有していることが示された。以上の結果からCYO2タンパク質は子葉を含む緑色組織全体における葉緑体形成因子として機能していることが示唆された。現在、CYO2タンパク質の機能について詳細に解析しており、その結果についても報告する。
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大西 美輪, 姉川 彩, 杉山 裕子, 七條 千津子, 深城 英弘, 三村 徹郎
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0717
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
液胞は植物細胞体積の約8割を占めるオルガネラであり、膨圧形成、無機イオンや代謝産物の蓄積、不要となったタンパク質の分解など細胞内恒常性の維持に重要な役割を果たしている。その機能から、液胞膜を介したさまざまな物質の輸送や液胞内における酵素の働きが予想されるが、それらを支える分子機構の解明はまだ十分ではない。我々は、植物細胞において重要なオルガネラである液胞の機能を支える分子基盤の解明を目指し、液胞のメタボローム解析とプロテオーム解析を行っている。これまでに我々は、植物細胞より液胞をインタクトな状態で単離し、CE-MSとFT-ICR-MSを用いて、液胞に含まれる物質について網羅的な解析と物質の同定を行ってきている。ターゲット分析では、これまで液胞には存在しないと考えられていたリン酸化合物の存在が示唆された。非ターゲット分析による液胞代謝産物のリスト化も進めている。液胞内に見いだされたタンパク質より、分解系に加え、様々な代謝反応が液胞で行われている可能性が示唆された。現在、液胞膜エンジニアリングとして、液胞膜のプロテオーム解析より同定された機能未知膜タンパク質について、過剰発現させた細胞の作製を行い、形質転換細胞と非形質転換細胞それぞれから単離した液胞の代謝物質の比較解析を行っている。また、オートファジー阻害剤添加による液胞代謝動態についても考察したい。
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文 順姫
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0718
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
核にコードされる新規葉緑体タンパク質の機能を解析するために、Ac/Dsトランスポゾンタグラインより単離された、アルビノ変異体apg11、apg12について解析した。APG11、APG12タンパク質は特別なドメインやモチーフを持たない高等植物に特異的なタンパク質である。お互いのアミノ酸配列は高い相同性を示し、C末端側の約100アミノ酸領域はidentityは51%、similarityは65%であった。APG11、APG12タンパク質はともに葉緑体に局在していた。プラスチドの電子顕微鏡観察の結果、apg11変異体はチラコイド膜が全く形成されず、液胞状のものや、プラストグロビュールが多く観察された。しかしapg12変異体ではプラスチド中に未発達な内膜構造が少し観察された。APG11、APG12遺伝子は、調べた植物体のすべての組織で発現が見られ、発現量に差が見られないことから、すべてのプラスチドで機能することが示唆された。変異体の光合成関連遺伝子の影響を調べた結果、葉緑体コードの遺伝子はmRNAの蓄積が減少していたが、核コードの遺伝子には影響がなかった。また、変異体では葉緑体のrRNAの蓄積が野生型の1/4に減少したが、スプライシング異常は観察されなかった。現在、ツーハイブリッド解析を用いて、APG11、APG12タンパク質と結合するタンパク質を探している。
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Crofts Andrew, Crofts Naoko
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0719
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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The messenger RNAs of the rice seed storage proteins prolamine and glutelin are targeted to distinct sub-domains of the cortical endoplasmic reticulum via a pathway dependent on both RNA sorting signals and the cytoskeleton. This RNA transport mechanism directly influences the final site of storage protein accumulation, with prolamines remaining within the ER lumen in spherical protein bodies while glutelins are exported to irregularly-shaped protein storage vacuoles. Developing rice seeds therefore represent a leading model for the study of RNA localisation in plants. Previous work using RNA affinity capture from cytoskeleton-enriched developing rice seed extracts has led to the identification of eighteen candidate prolamine RNA binding proteins (RBPs). Of these, RBP-A is a promising candidate for further study since its expression profile, intracellular localisation and
in vivo RNA binding specificity all support a direct role for this protein in storage protein gene expression. Recently, mouse antibodies against RBP-A and a second promising candidate, RBP-D, have been generated and co-localisation data will be presented for these two proteins.
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三好 皓之, 鐘尾 啓太, 深尾 陽一朗, 藤原 正幸, 佐藤 雅彦
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0720
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
SNAREは、単膜系オルガネラ間における小胞輸送に関与し、主に輸送小胞と標的オルガネラ膜の正確な膜融合を制御する役割を担っている分子である。シロイヌナズナにおいては、細胞膜に局在する9種類のQa-SNAREが、それぞれ異なった組織特異的発現を示す。その中でもSYP123は根毛細胞に特異的に発現し、更に根毛細胞の中でも特に根毛の先端部に強い局在性を示す事がわかっている。根毛細胞においては、SYP123の他に、SYP132も同時に発現しているが、SYP132は、SYP123とは異なって、細胞膜全体に均等に局在する。我々は、そこで、SYP123の極性確立機構を解明するためにSYP123と相互作用し複合体を形成するタンパク質の解析を行った。その結果、小胞輸送や細胞分裂に関与すると考えられているタンパク質SH3P1(SH3 domain-containing protein1)がSYP123と相互作用するという可能性が示唆された。SH3P1にGFPを融合したタンパク質を自己プロモーターの制御下で発現する形質転換体を作成し、解析した結果、SH3P1は、細胞膜、特に根毛の先端や分裂細胞の分裂面に強く局在することがわかった。
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望月 伸悦, 衣幡 春映, 岡 義人, 吉積 毅, 近藤 陽一, 松井 南, 長谷 あきら
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0721
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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高等植物では、葉緑体の発達が阻害されると葉緑体機能(特に光合成機能)に関わる核コードの遺伝子群の転写が強く抑制される。この調節にはプラスチドから核へのレトログレードシグナル(プラスチドシグナル)が関わっている。このシグナル伝達に関わる遺伝子の一つ
CHLH(
GUN5/
ABAR)はMg-chelataseのHサブユニットとしてクロロフィル合成に関わるだけでなく、ABA受容体としても機能する多機能タンパク質であることが分かっている。プラスチドシグナル伝達に対するABAの効果を再検証した結果、C. Voigtらの報告(Physiol.Plant, 2009)と同様に低濃度のABAによってプラスチドシグナルが部分的に回復することが分かった。本発表では、さらに
gun5変異体アリルを含む
gun変異体におけるABAの応答性について報告する。また、CHLHタンパク質の構造と機能の関係を明らかにするため、改変型CHLH遺伝子を用い、プラスチドシグナル・テトラピロール合成・ABA応答に重要な機能ドメインの相関関係を調べている。最後に、FOXハンティング系統(cDNA過剰発現ライン)を用いた新規プラスチドシグナル伝達系変異体スクリーニングで得られた候補株の解析についても報告を行う。
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山脇 隆一, 中束 賢譲, 村田 浩一, 加藤 朗
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0722
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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フリー
LONは原核生物と真核生物に広く保存されたAAAプロテアーゼであり,シロイヌナズナには細胞内局在性が異なる4つのLONが存在する。このうちペルオキシソームに局在するAtLon2(At5g47040)は,N末端側にシャペロンドメインを有し,乾燥や塩ストレス,ABAによって発現が上昇するストレス応答タンパク質である。本研究ではシロイヌナズナにおけるLon2の生理的役割を明らかにするために,RNA干渉によって作成した発現抑制株
lon2iとT-DNA挿入株
lon2-1を用いた機能解析を行った。その結果,
lon2iと
lon2-1では共にペルオキシソームタンパク質の輸送効率が低下すること,ペルオキシソームタンパク質の発現パターンが変動することが明らかになった。これらの変異体では,ペルオキシソームの主要な機能であるβ酸化活性が低下し,発芽後の生長が抑制された。また強光ストレスの負荷によって光化学反応の最大量子収率(
Fv/Fm)の低下が観察された。さらに
lon2-1変異体に塩ストレスを負荷すると,弱光下であっても
Fv/Fmが著しく低下した。ペルオキシソームが担う光呼吸は光阻害の回避機構の一つであることから,
lon2iと
lon2-1では光呼吸活性が抑制されていると考えられる。本報告では,Lon2変異体に見られるペルオキシソームタンパク質の輸送異常とストレス感受性との関連性について考察する。
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加藤 麻衣子, 石井 健雄, 東 美由紀, 田中 寛, 華岡 光正
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0723
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
葉緑体は、独自のDNAとその転写・翻訳システムを持っている。これまでに、葉緑体分化や環境応答に際した転写制御の研究が行われてきたが、その多くは目的因子の欠損株を用いた遺伝学的手法が中心であった。しかし、対象因子が生育に必須であったり、重複した機能を持つパラログにより欠損の影響が相補されたりするなど、解析が困難である場合も多く見られた。これらの問題点を解決する手法として、目的転写因子の
in vivoでの結合状態を直接モニターすることが可能なクロマチン免疫沈降(ChIP)法が最近特に注目されている。
本研究では、ChIP法を利用してシロイヌナズナ葉緑体におけるシグマ因子の機能解析を行った。まず、ストレス応答シグマ因子SIG5とその標的遺伝子との関係を調べ、SIG5のターゲットとして既に知られている
psbAや
psbD BLRPに加え、新たに
psbBTなどのプロモーターにもSIG5が特異的に、かつストレスに応答して結合することを見いだした。また、シロイヌナズナでは必須のシグマ因子であるSIG1についても同様に解析を行い、イネでSIG1の標的として報告されている
psaABプロモーターなどへの特異的結合を確認することができた。以上の結果は、ChIP法が葉緑体の転写制御研究において有用であることを示しており、得られた結果をもとにストレス条件下でのSIG1とSIG5の機能分担について考察する。
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安原 裕紀, 川本 怜奈, 榊本 満里奈, 宮本 怜, 北本 一輝, 光武 翔, 浅田 哲弘
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0724
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
核の移動は、植物の細胞分裂や細胞分化に重要と考えられている。タバコ培養細胞BY-2では、細胞分裂に先立つ細胞表層から細胞中心部への核の移動には微小管とアクチン繊維が、細胞質分裂後の新しい隔壁から遠ざかる娘核の移動には主にアクチン繊維が関わると考えられているが、これらの細胞骨格と相互作用して核の移動を担う分子については明らかではない。我々はこれまでに、BY-2細胞からいくつかのキネシン様蛋白質のcDNAを単離し、これらと蛍光蛋白質の融合蛋白質の細胞内局在を検討してきた。これらのうち、NMK-1と名付けたキネシンが、細胞周期を通して核表面に局在することを見いだし、これを核の移動に重要な役割をはたす分子の有力候補と考えその解析を進めている。NMK-1の様々な部分欠損断片と蛍光蛋白質の融合蛋白質の細胞内分布を調べたところ、モータードメイン上流のコイルドコイルドメインを介して核表面に局在していることがわかった。NMK-1はN末端にCHドメインを持つが、MNK-1全長だけでなく、このドメインを持つ部分断片はいずれもアクチン繊維上には局在しなかった。また、rigor変異を導入したNMK-1とGFPの融合蛋白質は、核表面と微小管上に局在し、これの誘導発現により、完成した隔壁に付随したままの核を持つ細胞対が顕著に増加した。この結果は、NMK-1が細胞質分裂後の娘核の移動に関わる可能性を示している。
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Numata Takahiro, Kandasamy Muthugapatti, Meagher Richard, Rahman Abidu ...
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0725
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
The cell cytoskletal component actins, which regulate diverse biological functions during plant growth and development, are classified into vegetative and reproductive classes. Among the vegetative actins in Arabidopsis, ACT7 and ACT8 have been shown to regulate the root and root hair morphology respectively. However, the distinct role of ACT7 and ACT8 on root meristem development remains elusive. By analyzing the single mutant of ACT7 and ACT8, here we show that ACT7 but not ACT8 predominantly regulates the root meristem formation as judged by the root growth, cell length and cell production rate. On the other hand, ACT8 plays a major role in lateral root meirstem formation. A two-fold induction in lateral root number was observed in act8 mutant, suggesting that ACT8 is a negative regulator of lateral root development. ACT7, which is active in primary root meristem, affected the lateral root meristem development mildly. Further, act8 mutant but not act7 showed a reduced response to IAA or IBA mediated lateral root induction. Taken together, these results suggest that these two isovariants of actin play distinct role in root meristem formation.
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内藤 文雄, 藤田 真幸, 久家 徳之, 佐藤 成一, 金田 剛史
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0726
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
中間径フィラメント(IF)は、動物細胞では主要な細胞骨格として知られている。しかしながら、植物細胞ではIFを構成するタンパク質をコードする遺伝子はクローニングされていない。我々は、動物のIFタンパク質と推定アミノ酸配列レベルにおいて共通の特徴を持ち、タバコBY-2細胞内で過剰発現させたGFPとの融合タンパク質が蛍光顕微鏡観察レベルで核周辺の細胞質において細胞骨格様の繊維状の構造をとるシロイヌナズナIFMoP1を植物のIFタンパク質の候補と考えて研究を行っている。本研究では、IFMoP1の細胞質表層における局在及びその経時的変化について調べた。
定常期の形質転換タバコBY-2細胞内で過剰発現させたIFMoP1-GFPのとる構造について詳細に観察した結果、繊維状の構造に加えて、点状あるいは短い断片状の構造が細胞質表層付近において細胞長軸に対してほぼ垂直に並んで配列している様子が観察された。さらに、タイムラプス解析を行った結果、IFMoP1-GFPが形成する繊維状の構造物が複雑な挙動を示し、その後に点状あるいは短い断片状に分断され、細胞質表層付近に分散し局在していく様子が観察された。細胞質表層付近のIFMoP1が形成する断片状の構造がとる配列は細胞質表層微小管が細胞長軸に対して垂直に配列している様子と似ているので、今後、微小管との局在関係について検討していく予定である。
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寺尾 梓, 古川 純, 佐藤 忍, 岩井 宏暁
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0727
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
トマトは受粉をきっかけに子房を肥大させ果実形成を開始させるが、このとき小花柄に形成されている離層では果実を維持する接着強化が行われる。一方受粉が成功しなかった花では離層組織由来の脱離が促進され、落花が誘導される。受粉が成功した花では離層の接着強化により肥大した果実が維持されるが、その後成熟しきったトマト果実では逆に簡単に落果が起こるように器官脱離プロセスが促進される。こういった果実成熟過程に特徴的な現象に伴う器官脱離は、細胞壁の合成や分解が大きく関わっていることが考えられるが、明らかにされていないことが多いのが現状である。そこで、本研究では落花・落果期の離層について細胞壁成分であるぺクチンとヘミセルロース特異的な組織化学染色および免疫染色を行うことで、器官脱離における細胞壁多糖の変化を明らかにすることを目的とした。落花・落果期前後の離層を含んだ小花柄の切片を作成し、それらをルテニウムレッドによるぺクチン組織染色および各細胞壁成分特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行った結果、落花期の離層では受粉前の離層に比べてぺクチン性ガラクタン・アラビナンおよびキシログルカンが増加・蓄積していることが観察された。
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戸田 まどか, 岡 真理子
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0728
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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アッケシソウ(
Salicornia herbacea L.)は典型的な塩生植物であり、NaCl存在下において伸長促進が認められる。植物の伸長成長は、吸水と細胞壁伸展による細胞容積の増大により引き起こされることから、アッケシソウの芽生えを用いて、細胞壁の力学的性質およびそれに影響すると考えられる細胞壁多糖含量の変化を調べた。
胚軸の伸長は、連続照明下、暗所下で生育させた芽生えともにNaCl 100 mM処理により促進された。胚軸の細胞壁の伸展をクリープメーターを用いた応力緩和法により調べたところ、いずれの条件で生育させた芽生えにおいてもNaCl処理した胚軸の細胞壁において伸展が増加した。この時の粘性および弾性の解析を行った結果、NaClを処理した胚軸の細胞壁において粘性および弾性が低下した。細胞壁多糖の組成を調べたところ、連続照明下で生育させた芽生えにおいては、NaCl処理により単位長さあたりのペクチンの含量が著しく減少した。一方、暗所下で生育させた芽生えにおいては、NaCl処理によりペクチンおよびヘミセルロースの含量が減少した。これらの結果から、連続照明下、暗所下いずれの条件下で生育させたアッケシソウの芽生えにおいても、NaClが細胞壁多糖の含量を減少させることにより胚軸の細胞壁の粘性の低下をもたらし、それにより伸展性が増加して細胞伸長を促進することが示唆された。
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土井 みず保, 奥村 華子, 山本 拓海, 三井 涼子, 田中 良和, 三野 眞布
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0729
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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雑種致死は種間の遺伝子交換を確実に阻止する生殖隔離機構である。その原因遺伝子の特定は生物進化の原動力を知る上で重要であるだけでなく、遠縁間雑種を利用する植物改良技術の発展にも資すると期待される。これまで雑種致死を起こすタバコ種間F
1雑種(
N. gossei x
N. tabacum)より得た致死型(GTH4)および致死抑止型(GTH4S)の2種の培養細胞を用い、Suppression Subtractive Hybridization(SSH)法により、GTH4の発現遺伝子が優占的であるcDNAライブラリーを構築して、そのスクリーニングを継続してきた。今回、新たに2,016クローンをスクリーニングし、GTH4SよりもGTH4での発現が強い15クローンを特定した。BLAST検索により機能推定できた12クローンを半定量的RT-PCRによりGTH4とGTH4Sの間で調査した。その結果、Pre-pro-proteinase inhibitor I (Acc.#, Z12619)、Glycine-rich protein precursor(Acc.#, GU177460)、Inhibitor of microbial serine proteinase(Acc.#, X67075)が、GTH4で強く発現することを確認した。これらの遺伝子が雑種致死に直接関係するかの解析を進めている。
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宮崎 祐子, 小林 正樹, 日浦 勉, 今 博計, 清水 健太郎, 佐竹 暁子
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0730
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ブナでは毎年コンスタントに花を咲かせず、間欠的に大量の開花・結実が起こることが知られている。このような間欠的繁殖が起こる要因として、主に気温等の外生要因や個体内資源量等の内生要因が考えられてきた。これらの要因は間欠的な花芽分化を引き起こすシグナルとして直接作用することが想定されている。一方、ブナのような落葉広葉樹では翌年に開葉・開花する芽は前年夏から分化が始まるが、シグナルを受容して花原基が分化すると考えられる時期には花原基の有無を形態観察からは識別できない。そこで本研究では、
LEAFYの相同遺伝子(
FcLFY)の発現量を花芽分化のマーカーとして使用することを試みた。
野外に生育するブナ5個体を用いて、2009年4月から2010年12月までの約2年間、2週間間隔で芽における
FcLFYの発現量をリアルタイムPCR法により測定した。また、形態観察が可能な時期については発現量測定に用いた芽での形態観察を行った。さらに、発現量測定に用いた芽に対応する枝内の炭水化物量および窒素量を測定し、これらの個体内資源量と
FcLFYの発現量の相関を解析して花芽分化に与える影響を調べた。本アプローチによって、間欠的繁殖の要因の評価が可能になると考えられる。
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今村 智弘, 樋口 敦美, 中塚 貴司, 西原 昌広, 高橋 秀行
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0731
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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リンドウは、初夏から晩秋にかけて開花し、主に切り花として市場に流通している。リンドウの開花生理に関する学術的な研究は行なわれておらず、その機構は未だ明らかにされていない。そこで我々は、リンドウの花成誘導機構の解明を目的に、花成への関与が報告されている
FT/TFL1遺伝子群のオルソログ(
GtFT1、
GtFT2、
GtTFL1)を単離した。単離した遺伝子をシロイヌナズナに導入したところ、
GtFT1、
GtFT2は開花が早くなり、
GtTFL1は開花が抑制されることが示された。リンドウでのこれら遺伝子の経時的な発現解析を行なった結果、花成直前の葉において2つの
GtFTの発現量が顕著に上昇し、
GtTFL1では栄養生長期の茎頂で高い発現量が確認された。さらに、開花期の異なる2系統(早生、晩生)について発現比較を行なった。その結果、2つの
GtFTは、両系統で花成直前に発現が上昇していたが、
GtTFL1では、晩生系統でのみ発現の変動が観察された。この
GtTFL1の発現パターンの違いについて詳細に解析したところ、早生系統においてプロモーター領域に320 bpの挿入配列があることが明らかとなった。今回の研究から、
GtFTの発現上昇がリンドウの花成誘導に重要であること、さらに
GtTFL1の栄養生長期での発現が花成誘導の時期を制御する要因の1つであることが示唆された。
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Takahashi Yasuyuki, Coupland George
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0732
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
Plants are sensitive to changes in their ambient environment and respond to these to determine the optimal timing of the floral transition. Under shade or high density of vegetation, plants positively change their morphology to compete for sunlight, by for example elongating their stems and leaves. Acceleration of flowering is also a typical shade avoidance response. Detection of changes in light quality is a major signal in responding to the surrounding shade condition. Plant leaves absorb red light, whereas far-red light is transmitted or reflected. Therefore the R:FR ratio of shady conditions is lower than that of unfiltered sunlight. This change of light quality is perceived by phytochrome, and particularly phyB represses the shade response. We showed previously that inactivation of phyB by mutation stabilizes CONSTANS (CO) protein, a transcription factor that promotes early flowering. This suggests that stabilization of CO in shade could be responsible for the observed early flowering. We are interested in the mechanism by which phyB and CO functions promote early flowering in shade and are using a combination of biochemical and genetic approaches to address these issues.
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久保田 佐綾, 村中 智明, 小山 時隆
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0733
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物の概日時計は、一般的に、明暗や温度などの同調因子により外的環境に同期する。我々は、ウキクサの概日時計システムの光パルスへの応答様式を、生物発光レポーター系の導入することで観測した。
1960年代にHillmanは、短日性植物であるアオウキクサの花成を指標にした骨格周期の実験を行った。その成果は、24時間暗期中2回の光パルスからなる同一骨格周期でも、最初の光パルスを受けるタイミングに応じて、光パルス間隔を夜または昼とみなす二重安定帯現象と解釈されてきた。実際に、概日時計の二重安定性は生物発光レポーター系を用いた概日遺伝子発現変動の測定により観察されている(伊藤‐三輪、小山)。一方で、概日時計システムの光パルスへの応答様式は、詳細な解析は進んでいない。我々は、概日発現遺伝子のプロモーターを持つ生物発光レポーター系を植物に導入することにより、暗期中の光パルスへの応答様式をリアルタイムで観測した。また、単一細胞における遺伝子発現測定系を用い、同一個体の複数の細胞について、概日発現遺伝子の光パルスに対する応答を観測した。加えて、RNAiによる発現抑制系を用いて、概日時計システムに異常がある場合の応答についても解析を行った。植物の概日時計の光への応答について考察を行ったので、ここに報告する。
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浅野 宏幸, 六車 一志, 小山 時隆
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0734
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シアノバクテリアは光合成機能をもつ原核生物であり、昼夜の光条件の変化に適応するため細胞内に概日時計を備えている。シアノバクテリアでは、概日時計中枢遺伝子として
kaiA、kaiB、kaiCが知られている。KaiCは自己リン酸化活性と自己脱リン酸化活性をもつ。KaiAはKaiCのリン酸化を促進し、KaiBはKaiCの脱リン酸化を促進する。これによってKaiCのリン酸化状態は約24時間周期で変動し、その状態変動を時刻情報として転写制御に変換し、細胞の概日時計システムが形成される。特に
kaiB、kaiCはオペロンを形成し、その転写活性はフィードバック制御を受け、概日リズムを示す。これらの成果は、主に淡水性シアノバクテリアの一種
Synechococcus elongatus PCC 7942(以下、
Synechococcus)を用いた研究から得られている。
一方、海洋性シアノバクテリア
Prochlorococcus類では
kaiAが欠損していることがわかっており、また恒常条件下において概日リズムが消失することが示唆されている。本研究では
Prochlorococcusの
kaiB、kaiCの時計遺伝子としての機能について検証するため、それらを
Synechococcusに導入し、
Synechococcus細胞内での概日時計システムに与える影響について解析した。
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能勢 美峰, 平岡 裕一郎, 渡辺 敦史
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0735
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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地球温暖化に伴い,林業主要樹種であるスギが炭素吸収・固定源として注目されている。炭素吸収・固定において光合成が重要な役割を果たしており,そのメカニズムの解明が求められる。本研究では,スギにおける光に対する光合成のメカニズムを明らかにするため,昼と夜の遺伝子発現をSuppression Subtractive Hybridization(SSH)とqRT-PCRを用いて解析した。その結果,ほとんどの光合成関連遺伝子の発現量には日中と夜間で差はみられず(例 Lhca4,PRK,PetC),統計解析の結果で有意差が認められたものであっても発現量の差は2倍以下であった(例 rbcL,ChlL,PsaB)。SSHの結果からは,細胞やキナーゼ関連遺伝子の発現量が夜間に増加しているが,光合成関連ではaldolaseを除いて差がないことが明らかになった。多くの高等植物において光合成関連遺伝子は光によって発現が誘導されると報告されていることから,スギの光合成遺伝子の転写制御は特異的なものであると推定される。
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丹羽 由実, 松尾 拓哉, 立川 誠, 小内 清, 石浦 正寛
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0736
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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私たちはクラミドモナスのいくつかの時計遺伝子に関して、プロモーター領域とルシフェラーゼを連結したレポーター遺伝子、コード領域とルシフェラーゼを連結したレポーター遺伝子を作製し,クラミドモナスを形質転換した(それぞれ時計プロモーターレポーター株、時計タンパク質レポーター株と呼ぶ)。時計プロモーターレポーター株の生物発光リズムは、mRNAの発現の位相が異なる遺伝子のプロモーターを用いたが、どれも同じ位相の振動を示した。この原因の一つは、ホスト株として用いた野生株の性質に起因していると推測された。一方、時計タンパク質ROC40、ROC75のレポーター株の生物発光リズムは、時計タンパク質の発現リズムとほぼ同じ位相を示した。例えば、ROC40は主観的夜明け前から主観的朝にかけて増加し、ROC75は主観的昼の中頃に増加する。これらの時計タンパク質レポーター株の生物発光リズムは、そのような時計タンパク質の発現リズムを極めて良く反映した。以上の結果から、ROC40とROC75の時計タンパク質レポーター株は、内在性のそれらの時計タンパク質の変動をモニターするためのレポーターとして今後の研究に有用であることがわかった。また、時計プロモーターレポーター株と時計タンパク質レポーター株が異なる生物発光リズムを示すことから、クラミドモナスにおける生物発光レポーターの複雑な制御機構が示唆された。
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村山 依子, 向山 厚, 今井 圭子, 尾上 靖宏, 角田 明菜, 野原 淳志, 石田 達郎, 前田 雄一郎, 寺内 一姫, 近藤 孝男, ...
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0737
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シアノバクテリア
Synechococcus elongatus PCC. 7942 は概日リズムを示す最も単純な生物であり、その時計機構は時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiC からなる。3 つのKai タンパク質とATP を試験管内で混合するだけでKaiC のATPase 活性やリン酸化状態が安定な概日振動を示す。この化学振動子において時刻情報を保持し、最も重要な役割を持つのはKaiC である。そこで、私たちは分光学的手法(X 線小角散乱、トリプトファン蛍光)と変異体解析を駆使し、時刻依存的なKaiC の構造変化の可視化を試みた。KaiC はダンベル型のプロトマーがリング状に会合した6 量体を形成する。今回、KaiCのATPase やリン酸化状態に依存して、C 末側のリングが膨張・収縮することがわかった。このC 末側のリングの状態はKaiA, KaiB との結合、解離のタイミングを決め、安定な概日振動の実現に寄与すると考えられる。KaiC のArg393 はリングの膨張に必須なアミノ酸であるが、これをCys に置換するとリズムが高温で短周期化することがわかった。概日時計の基本的な特性の一つである周期の温度補償性に関して、この変異型KaiC を用いた解析についても報告する。
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吉田 彩香, Gerd Juergens, 高田 忍
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0738
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物胚の発生は動物胚の場合とは異なり、細胞系譜よりもその位置に強く依存することが、レーザーアブレーション実験やセクター解析などから示唆されている。しかし、細胞の運命を決定する位置情報の正体およびその伝達経路についてはよくわかっていない。本研究では、植物胚における位置情報伝達経路を理解するために、表皮特異的に発現するホメオボックス遺伝子
ATML1の発現制御に注目して研究をおこなった。
ATML1は一細胞期の胚から発現し、16細胞期以降では胚の最外層の細胞にのみ発現が限定される。
ATML1の最外層特異的な発現には、オーキシンシグナルや細胞系譜が不要であることから、位置情報によって発現が制御されていることが期待できる。
ATML1プロモーターの欠失実験により、
ATML1の表皮特異的な発現には自身の結合配列 (L1 box) の他にいくつかのシス配列が関わっている事が分かった (Takada and Juergens, 2007)。このことは、ATML1自身を含むいくつかの因子が
ATML1の発現制御に関わっている可能性を示唆する。そこで、二成分転写誘導系を用いて、
ATML1の発現制御に関わると予想される候補遺伝子について初期胚で過剰発現実験を行い、
ATML1の発現に与える影響を調べた。これらの過剰発現実験の結果を報告し、植物胚で表皮特異的な発現を決める分子機構について考察する予定である。
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加藤 遼, 吉田 隆浩, 瀬尾 光範, 神谷 勇治, 南原 英司, 豊増 知伸, 岡田 勝英, 岡上 伸雄, 丹野 憲昭
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発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ヤマノイモ属のムカゴには、GAによって休眠が誘導されるGA-誘導休眠がある。ABAもまた、ムカゴの発芽を抑制する。これまで、1)ヤマノイモ(
Dioscorea japonica)の芽生えからABA合成の鍵酵素遺伝子である
DjNCED1と
2、とABA異化の鍵酵素遺伝子である
DjABA8’ox1、
2と
3のORF全長配列を単離し、2)
ABA8’ox1と
2のリコンビナントタンパク質には、ABA8’ox活性があり、3)非休眠ムカゴのGA処理は
DjNCED1と
2の発現を高め、
DjABA8’ox3の発現を低めること、を明らかにした。本研究では、ヤマノイモの低温処理した非休眠ムカゴをGA
3で培養し、ムカゴのABAとその異化物質の内生レベルをLC-MS/MSによって定量し、同時にABA代謝遺伝子の発現レベルを半定量的RT-PCRによって調べた。GA処理によって
DjNCED1と
2の発現は増加し、
DjABA8’ox2と
3の発現は減少した。GA処理によってABAの内生レベルは顕著に増加した。ヤマノイモのムカゴでは、GA処理がABA代謝遺伝子の発現を調節することによってABAの内生レベルを高めて、休眠を誘導することが示唆される。ABAなどの定量には、軸丸祐介博士(理研)にご協力いただきました。記して謝意を表します。
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名川 信吾, Xu Tongda, Zhang Xingxing, Fu Ying, Dhonukshe Pankaj, Scheres B ...
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0740
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
オーキシン極性輸送の制御機構を明らかにすることは、植物の形態形成を解析する上での最重要課題の一つである。オーキシン排出能を持つ PIN タンパク質群の極性を持った細胞内局在性が、オーキシン極性輸送の方向性の決定に貢献していると考えられているが、その極性局在の決定に関わるシグナル伝達経路に関する知見は不足している。シロイヌナズナ葉の表皮細胞は、凹凸の入り組んだジグゾーパズルのピース状の形態を持つ。我々は、オーキシンが Rho family に属する低分子量 GTPases である ROP の活性化を通じて凹凸の入り組んだ構造の形成に寄与していることを明らかにしてきた。葉の表皮細胞において PIN1 は凸部の先端に局在し、その欠損変異体では凹凸の形成に異常が生じる。また、ROP 関連変異体では PIN1 の局在に異常が生じていた。そこで、ROP を介したシグナル伝達経路が PIN1 の細胞内輸送に関与していると考え、PIN1 のエンドサイトーシス及びリサイクリング過程における ROP の寄与を検定した所、両過程への寄与を示唆する結果が得られた。それらの結果より、オーキシンによる ROP の活性化と、活性型 ROP による PIN の局在制御によりもたらされる局所的なオーキシンの蓄積が正のフィードバックループを構成し、表皮細胞の形態形成に寄与していることが示唆された。
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田中 悠里, 杉山 正夫, 大島 良美, 光田 展隆, 高木 優, 寺川 輝彦
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0741
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シクラメン(
Cyclamen persicum Mill.)は主要な園芸鉢花であり、我々は花器官の形成制御によるシクラメンの花形改変を目的として研究開発を進めている。
AGAMOUS(
AG)相同遺伝子は、雄ずいおよび心皮形成に関わる転写因子をコードすることが知られており、花器官形成のメカニズムを明らかにする上で重要な因子である。前年度までに、シクラメンにおける
AG相同遺伝子の単離及び機能解析を行い、シクラメンにおいて2種類のAG(CpAG1、CpAG2)転写因子の存在を明らかにした。
CpAG1、
CpAG2がコードするアミノ酸配列間では90%の一致がみられたにも関わらず、この二つの転写因子はCpAG1が雄ずい、CpAG2は心皮のそれぞれ異なる器官で機能を有していることが示唆された。この2種類の転写因子が花の形態形成においてどのような機能をもつのか明らかにするため、今回
CpAG1、
CpAG2とリプレッションドメインを融合したキメラリプレッサーを作製し、シロイヌナズナおよびシクラメンへの導入を行った。これらの結果、これらの2つの転写因子の分子機能が異なっている可能性が示唆されたので報告する。なお本研究は「生研センターイノベーション創出基礎的研究推進事業」によるものである。
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橋田 慎之介, 高原 健太郎, 淨閑 正史, 庄子 和博, 後藤 文之, 吉原 利一, 川合(山田) 真紀, 内宮 博文
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0742
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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NAD(H)やNADP(H)は細胞内の酸化還元反応に不可欠な補酵素であり、植物生長制御や環境適応性において重要な役割を担う。これまでに我々のグループではNAD前駆体の合成酵素遺伝子(
NMNAT)やNADP合成酵素遺伝子(
NADK2)を過剰発現する植物体を作出し、様々な環境ストレス耐性が付与される事を報告した。本研究ではNAD合成酵素遺伝子(
NADS)を過剰発現するシロイヌナズナを作出し新たな表現型が観察されたので報告する。栄養生長期の
NADS過剰発現株ではNADS合成酵素活性が41~72%増加していたが、NAD(H)およびNADP(H)量に変化はなく、野生型株と比較して顕著な表現型差異は観察されなかった。この時、NAD前駆体とNAD分解産物の蓄積およびサルベージNAD生合成経路の遺伝子発現が誘導されていたことから、
NADS過剰発現株ではNAD代謝回転も同時に促進されることでNAD恒常性が維持されると考えられた。これに対して生殖生長期の
NADS過剰発現株では老化進行が促進され、ほとんどの個体は開花前に死滅した。抽苔前後のNAD(H)およびNADP(H)量を比較すると、抽苔後の
NADS過剰発現株ではNAD+分解が促進されていた。本講演ではその他の一次代謝産物の解析結果と併せてNAD恒常性と老化との関連について議論する予定である。
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長島 幸広
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0743
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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シロイヌナズナの膜結合型転写因子bZIP60は通常は小胞体膜に存在し、ツニカマイシン処理等の小胞体ストレスにより核へ移行し、BiP等の小胞体品質管理に関わる標的遺伝子の転写を誘導する。動物では小胞体ストレスが緩和されることなく続いた場合、プログラム細胞死に至る。植物でも小胞体ストレスとプログラム細胞死の関係を示す複数の報告があるが、bZIP60の関与は不明である。私達は、bZIP60が動植物でプログラム細胞死の誘導剤として用いられるFumonisin B1(FB1)により転写誘導されるとともに、タンパク質レベルで切断されることを見出した。またbZIP60の遺伝子破壊株はFB1に対して野生型よりも高い感受性を示した。しかし、FB1処理によるBiP等の小胞体ストレス応答で誘導される遺伝子の転写活性化は見られなかった。野生型とbZIP60遺伝子破壊株を用いてマイクロアレイ解析を行いFB1によりbZIP60依存的に誘導される複数の遺伝子を同定した。これらはツニカマイシン処理による小胞体ストレス応答において誘導される遺伝子とは異なっており、bZIP60が小胞体ストレス応答とは異なる情報伝達系を制御することが示唆された。
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米倉 円佳, 田中 倫子, 村本 伸彦, 松井 恭子, 光田 展隆, 小山 知嗣, 高木 優, 光川 典宏, 近藤 聡, 大音 徳
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0744
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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持続可能な循環型社会の実現方法の一つとして、植物バイオマスの利用が注目されている。中でも種子貯蔵油脂は、バイオディーゼル燃料やバイオプラスティックスの資源として利用されているが、種子中の油脂貯蔵メカニズムには不明な点が多く、油脂生産量の向上に結びつく分子育種の例は少ない。我々は主要油糧作物ナタネの近縁植物であるシロイヌナズナに、CRES-T (Chimeric Repressor Silencing Technology) 法に基づくキメラリプレッサー転写因子融合遺伝子を導入し、1H-pulse NMRを用いて種子油増産に寄与する新規遺伝子を探索した。その結果、AP2/ERFファミリーに属する機能未知の遺伝子を用いて作製したAt5g07580-SRDXを導入した第一世代系統で、種子中の油脂含量が平均6%、最大で11%増加した。さらに次世代の植物を育成すると、種子収量に加え植物体バイオマスが増加し、個体あたりの油脂生産量は平均32%、最大で70%増加した。At5g07580-SRDXのバイオマス増産メカニズムを明らかにするため、転写発現解析やプロモーターの発現組織特異性解析を行った。またイネを用いてAt5g07580-SRDXの油脂増産効果も検証したので、合わせて報告する。
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佐々木 隆太, 羽生 剛, 田尾 龍太郎, 米森 敬三, 山根 久代
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0745
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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多年生植物は秋に生長を停止し、芽は自発休眠と呼ばれる休眠状態に入る。自発休眠に入ることで、植物は冬の低温や乾燥といった厳しい環境下においても生存可能となることから、多年生植物のライフサイクルにおいて自発休眠は非常に重要な形質である。しかしながら、多年生植物の自発休眠に関する分子生物学的知見は未だ少ない。これまでに我々は、シロイヌナズナの
SVPに相同な
DORAMCY ASSOCIATTED MADS-box (
PmDAM)が、温帯果樹ウメの自発休眠に関与することを示してきた。今回、我々は、複雑に制御されていると考えられる自発休眠制御機構に関与する新たな遺伝子を単離するため、ウメESTおよびモモゲノムデータベースからウメカスタムマイクロアレイ(180Kx3)を設計し、葉芽における網羅的発現解析を行った。マイクロアレイ解析結果について報告するとともに、
PmDAMと同様に休眠と同調的な発現パターンを示す遺伝子について報告する。
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近藤 衣里, 杉山 宗隆, 岩元 明敏
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0746
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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私達は倍数化の影響を詳細に明らかにするため、シロイヌナズナの4系統、Columbia、Landsberg
erecta、Wassilewskija、C24で人工倍数体系列を作出し、その根端成長について細胞レベルでの定量的な解析(動力学的解析)を行った。
2倍体と4倍体の根端成長を解析して比較した結果、どの系統でも4倍体の方が細胞体積が大きく、体積増大速度も高くなっていた。一方で、細胞増殖率については、どの系統においても2倍体と4倍数体との間に大きな差がなかった。このことから、4倍体化は細胞増殖にはあまり影響せずに、体積増大速度を高め、その結果として細胞体積の増大をもたらしたと考えられる。
Columbia系統については、より高次の倍数体(6倍体、8倍体)の解析も行った。6倍体は細胞体積、体積増大速度ともに4倍体を上回っており、成長の変化には2倍体から4倍体への倍数化の場合とある程度同じような傾向が見られた。8倍体になると成長はかえって鈍化したが、その程度は一様ではなく、6倍体より体積増大速度がやや低いものと非常に低いものの2群に分かれた。後者に由来する次世代個体がすべて4倍体であったことから、8倍体では倍数性が安定せず、染色体異常と関連して体積増大速度の著しい低下が起きている可能性が示唆された。
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河野 貴文, 江崎 文一
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0747
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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アルミニウム(Al)は植物の著しい生育阻害を起こす。耐性機構と共に遺伝子レベルでの発現応答機構の解明は重要である。我々は、Al誘導性遺伝子AtGST11の発現応答機構、特に転写調節因子(以下TF)を介した発現制御を解析している。またAtGST11は、重金属処理や酸化ストレスでも誘導されるので、これらのストレス間には共通した応答機構が存在するかも検討した。既に我々はAtGST11のプロモーターに結合する4つのTF候補を単離している。[putative bZIP TF (#11-1-1)、 ERF 2 (#11-1-3)、putative ring Zn finger TF(#13)、 ATHB 6 (#43)]まずゲルシフトアッセイで、プロモーターと結合することを確認した。次にルシフェラーゼアッセイを用いてこれらTFの作用を検討した。その結果、#11-1-1と #11-1-3は、アクチベーターとしてAtGST11の発現を誘導し、逆に#13と#43はレプレッサーとして抑制することが示唆された。さらに、TFの変異株を用いて各TFのストレス特異性をReal-time PCRで解析した。その結果、#11-1-1はAl、Cd処理時に誘導し、#13、#43はcold、heat処理時に抑制することが示唆された。現在、#11-1-3について解析中である。
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Badejo Adebanjo A., Arita Miki, Shibata Hitoshi, Sawa Yoshihiro, Smirn ...
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0748
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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The Smirnoff-Wheeler pathway is the pivotal pathway for the biosynthesis of L-ascorbic acid (AsA) in
Arabidopsis. Reproduction of GDP generated by phosphorylation of GDP-L-galactose in this pathway to GTP is catalyzed by nucleoside diphosphate kinase (NDPK; EC 2.7.4.6). We found the activity of NDPK to be light responsive with correlation to changing AsA levels in
Arabidopsis. The expression levels of genes in the AsA pathway were analyzed using an
Arabidopsis ndpk1 knock-out mutant. The mutant showed 25-30% lower AsA content compared to the wild type. The reduction in AsA level was found to correlate with NDPK activity as well as the expressions of some vital AsA biosynthetic genes in various tissues of the plants. The redox status, but not oxidized AsA, of the wild type was significantly different from that of the mutants. The mutant was not impaired in the activities of its major antioxidant enzymes. The activity of L-galactono-1,4-lactone dehydrogenase activity was reduced in the mutant but feeding with AsA precursors caused AsA level to increase. These results suggest that NDPK1 may be implicated in the overall biosynthesis of AsA in
Arabidopsis.
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曾根 俊之, 兼崎 友, 華岡 光正, 田中 寛
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0749
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は硫酸酸性の温泉に生息する光独立栄養性の単細胞紅藻であり、一細胞当たりに核、葉緑体、ミトコンドリアをそれぞれ一つずつ有する単純な細胞構造をとる。シゾンは核と葉緑体において多くの遺伝子が明暗により制御されることに加え、遺伝子構成が単純であることから、光情報伝達機構の解明に優れたモデル植物として期待される。
高等植物では、DET1は暗所において光応答性遺伝子発現を負に制御する因子として知られ、発生や分化など幅広い細胞機能に深く関わる。DET1はクロマチンと結合能を有し、Cul4-DDB1と複合体を形成してクロマチン構造を介した転写制御を行っていると予想されているがその詳細な機構は明らかとなっていない。
シゾンのゲノム上にはDET1が存在し、DET1が光応答性遺伝子群の発現調節に関わることが予測された。そこで、DET1が担う分子機構を解明することを目的とし、シゾンにおいて
det1破壊株を作製した。まず、この株を明暗条件下で培養したところ、増殖の阻害が認められた。次に明暗における光応答性の遺伝子についてノーザン解析を行ったところ、高等植物と同じように一部の核、葉緑体コードの遺伝子が暗条件においても高いレベルで蓄積していた。現在、転写抑制の代表的なマークであるヒストンH3K9のジメチル化とDET1との関連についての解析を進めている。
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原 拓人, 西村 崇史, 小俣 達男
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0750
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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Synechococcus elongatus PCC 7942のLysR型転写調節因子CmpRは、CO
2欠乏条件下において高親和性HCO
3-輸送体BCTIをコードする
cmpABCD、Na
+依存性高親和性HCO
3-輸送体SbtAをコードする
sbtAなどのCO
2濃縮機構(CCM)関連遺伝子群の転写を促進する。RubisCOのオキシゲナーゼ反応の生成物である2-ホスホグリコール酸(2-PG)が低濃度(~10μM)でCmpRのターゲット遺伝子の上流領域への結合を促進させることから、2-PGがCO
2欠乏のシグナルであり、CmpRのco-inducerとして作用することが示唆されている(Nishimura
et al., 2008)。我々はこれまでの研究で、
cmpA上流領域に2-PG依存的な複数のCmpR結合領域を同定したが、今回、これらの各領域へのCmpRの結合が600μMのリブロース1,5-ビスリン酸(RuBP)によっても促進されることを明らかにした。この結果は2-PG依存的およびRuBP依存的なCmpR結合部位が同一のものであることを意味しており、CO
2応答に対するRuBPの影響を示唆する結果である。
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武田 誠也, 原 拓人, 西村 崇史, 前田 真一, 小俣 達男
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0751
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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ラン藻はCO
2濃縮機構(CCM)を持っており、これによって外界から無機炭素(CO
2/HCO
3-)を効率的に取り込んで同化する。CCMの成分をコードする遺伝子群のうち、
cmpオペロン、
ndhF3オペロン、
sbtAはCO
2欠乏時に転写が活性化される。LysR型タンパク質であるCmpRはCO
2欠乏のシグナルとして2-ホスホグリコール酸(2-PG)を感知して
cmpオペロンの転写活性化に関与する因子であるが、最近CO
2充足条件下でCmpRが2-PG非依存的に
ndhF3の転写開始点付近に結合して、
ndhF3オペロンを抑制することが明らかになった。CmpR自身をコードする遺伝子(
cmpR)もCO
2充足条件下でCmpRによって抑制されており、その上流側の短い遺伝子間領域(70 bp)には、
ndhF3上流の2-PG非依存的な結合領域と類似した配列が見いだされたので、ゲルシフトアッセイによって解析したところ、CmpRがこの領域に2-PG非依存的に結合することが確認された。さらに上流側ORFを含む領域をプローブとしたゲルシフトアッセイにより、第2のCmpR結合部位が検出され、その領域を
cmpR翻訳開始点120 bp上流までの範囲にしぼりこんだ。この第2の結合部位は2-PG非依存的に結合するが、2-PGによって結合能は増加した。現在、上流側の結合配列を同定し、
cmpRの自己制御機構の解明を進めている。
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小澤 藍子, 今枝 真二郎, 柘植 康甫, 辻本 良真, 高谷 信之, 前田 真一, 小俣 達男
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0752
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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ヒメツリガネゴケは硝酸イオン能動輸送体であるNRT2を8分子種もつが、NRT2;1~NRT2;4が主要成分で他はほとんど発現していない。すべての
NRT2の発現は硝酸イオンによる活性化とグルタミンによる抑制を受ける。しかし、主要
NRT2のうちで比較的高親和性の
NRT2;1,
NRT2;2,
NRT2;4のmRNAの量が無窒素条件で増加して硝酸十分条件で減少するのに対して、やや低親和性のNRT2;3のmRNAの量は硝酸十分条件で増加して無窒素条件で減少する。
NRT2;1と
NRT2;3の発現様式の違いについてルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとして解析したところ、
NRT2;1プロモーターが無窒素条件で高い活性を示したのに対して、
NRT2;3プロモーターは高濃度の硝酸イオン存在下で高い活性を示した。これらの結果より、異なる窒素条件下におけるNRT2転写産物の選択的蓄積が、主に
NRT2遺伝子のプロモーターの活性制御によるものであることが示された。
NRT2;1と
NRT2;3のプロモーター領域をそれぞれ転写開始点からの長さが1169 bpと1243 bpまで削っても、特徴的な窒素応答は失われなかった。しかし、
NRT2;3プロモーター領域を633 bpまで削ると硝酸への応答が弱まり、
NRT2;3の転写開始点から上流 -1243~ -634に硝酸応答に必要な領域が存在することが示された。
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西 雅知, 河合 都妙, 徳田 剛史, 前尾 健一郎, 中村 研三
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0753
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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シロイヌナズナのDouble-AP2転写因子WRINKLED1(WRI1)は、種子の油脂合成に必須の役割を担う。WRI1は、種子登熟中期に強く発現し、葉緑体内での脂肪酸合成に関わる多くの酵素の遺伝子の上流近傍域に保存されたAW-boxに結合して転写を活性化し、流入する炭素骨格の油脂への転換を促進する
1)。脂肪酸合成系遺伝子
Pl-PKβ1の転写開始点近傍2カ所のAW-boxに変異を導入すると、
Pl-PKβ1p::GUSの登熟種子での発現が失われただけでなく、栄養組織や花器官での発現も失われ、WRI1以外のAW-box結合因子がこれら組織での発現に関わることを示唆する。WRI1と最も近縁のDouble-AP2転写因子であるWAT1とWAT2は、栄養組織や花器官で発現し、少なくともWAT1はWRI1とほぼ同じコンセンサスDNA結合配列を示した。WRI1サブファミリーDouble-AP2転写因子の、各種組織における脂肪酸合成その他における機能と分担を明らかにするため、
wri1, wat1, wat2 の単独、二重、三重変異株を単離し、それらに
Pl-PKβ1p::GUSを導入した。また、WAT1とWAT2の過剰発現により引き起こされる遺伝子発現パターン変動を、WRI過剰発現と比較した。
1)Maeo et al.,
Plant J.
60: 476 (2009)
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