動物の循環器
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40 巻, 1 号
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原著
  • 中尾 周, 清水 美希, 松本 英樹, 千村 収一, 小林 正行, 町田 登
    2007 年 40 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/10
    ジャーナル フリー
    犬における心房細動(AF)の発生にかかる形態学的基盤について明らかにする目的で,生前にAFを示した犬5例の心臓について,心房筋および洞結節を中心に組織学的検索を実施した。症例1は雑種,10歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の4カ月間持続した。症例2はマルチーズ,14歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の10日間認められた。 症例3はゴールデン・レトリーバー,雌,2歳,右室二腔症および三尖弁異形成を有しており,AFは死亡時まで6カ月間持続した。症例4はゴールデン・レトリーバー,5歳,孤立性AFであり,交通事故により死亡するまで4週間持続した。症例5はゴールデン・レトリーバー,10歳,孤立性AFであり,心不全により死亡するまで36カ月間持続した。肉眼的に,症例1および2では左心房の重度拡張ならびに右心房の中等度拡張,症例3では右心房の重度拡張がみられたが,症例4および5の心房に著変は認められなかった。心房の組織学的変化は,顕著な変化が認められなかった症例4を除く4例に見いだされた。心房病変はいずれの例においても間質性心筋線維化に総括されるものであり,種々の程度に心筋線維の伸長・萎縮・脱落を伴っていた。間質性線維化の程度(ごく軽微±~重度+++)は,症例1:左心房(+++)/右心房(++),症例2:左心房(+++)/右心房(++),症例3:左心房(±)/右心房(+++),症例5:左心房(+)/右心房(+)であった。なお,全例において洞結節に著変は認められなかった。以上の検索結果から,小型~中型犬では心房の拡張がAFの発生要因になるが,心房が一定以上の容積を有している大型犬の場合は心房に器質的変化がなくてもAFは発生しうること;AF症例の心房にみられる間質性心筋線維化はAFの結果として生ずるものではないこと;AFの発生に洞結節の器質的変化は必須要件ではないことなどが示された。
  • 中尾 周, 小林 正行, 町田 登
    2007 年 40 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/10
    ジャーナル フリー
    日常の病理解剖時に採取した22例の犬の腹部大動脈を用い,通常の組織学的検索に免疫組織化学的手法を加えることにより,犬の大動脈に発生する硬化性病変の本態ならびにその形態病理発生について検討した。その結果,大動脈の硬化性病変は内膜に主座しており,平滑筋細胞および/あるいは膠原線維の増殖に伴う内膜の顕著な肥厚を特徴としていることが明らかになった。内膜肥厚病変は,その構成成分の量的な割合から,平滑筋細胞主体の内膜肥厚(細胞性内膜肥厚),平滑筋細胞と膠原線維の両者からなる内膜肥厚(細胞・線維性内膜肥厚),膠原線維主体の内膜肥厚(線維性内膜肥厚)の三つに大別された。また,それぞれの病変が好発していた犬の年齢層を勘案すると,これら三つのタイプの内膜病変は,平滑筋細胞の遊走・侵入ならびに増殖によって始まった硬化性変化が,最終的に膠原線維主体の線維性瘢痕組織形成に帰着するまでの一連の過程を表現しているものであることが明らかになった。また,その形態病理発生には,platelet derived growth factor をはじめとする各種成長因子ならびにアポトーシスが密接にかかわっている可能性が示唆された。
症例報告
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