動物の循環器
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52 巻, 1 号
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総説
  • 勝田 新一郎
    2019 年52 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/05
    ジャーナル フリー

    循環系は,心臓のポンプ作用により高い圧をかけて血液を全身の組織に送るために必要不可欠である。血圧とは,心臓から駆出された血液が血管壁を押す圧力であり,心臓の収縮・弛緩に伴う変化を連続的に記録したものが圧脈波曲線である。血管は,弾性動脈,筋性動脈,小・細動脈,毛細血管,小・細静脈,静脈,大静脈に分類され,それぞれの機能を発揮するために適した構造をなしている。血圧は,心機能(心収縮力や心拍数など),血管壁の伸展特性,末梢血管の緊張度(末梢血管抵抗)などを反映しており,さらに,遺伝的素因や環境因子,ストレスなど様々な因子にも影響される。血圧は,低すぎると末梢からの血液需要に十分応えられず,高すぎると心臓,脳,腎臓などの重要な臓器に重篤な障害を与えうる。血圧測定を行うことで,心電図検査や心エコー図検査では得られない血管や末梢血行動態の状態も推定することができ,高血圧に伴う臓器障害の予測や治療効果の評価などに非常に有用である。

原著
  • 堀 泰智, 湯本 優希, 山下 洋平, 原口 純子, 榊原 啓一郎, 平島 康博
    2019 年52 巻1 号 p. 11-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/05
    ジャーナル フリー

    N-Terminal proB-type natriuretic peptide (NT-proBNP) is expected as a cardiac biomarker. However, it is unknown that the diagnostic accuracy of a point-of-care NT-proBNP ELISA kit in cats with heart diseases. In this study, we examined the diagnostic accuracy of the NT-proBNP test kit in cats with cardiac diseases and the relationship between this assay and blood NT-proBNP concentration. This study was enrolled 74 cats visiting from September 2017 until January 2019. Cats were divided into three groups; non-heart disease (non-HD; 41 cats), asymptomatic (22 cats), and heart failure (HF; 11 cats). Feline NT-proBNP ELISA kit was visually assessed as either positive or negative and blood concentration was measured using a commercial laboratory. Blood NT-proBNP concentrations in the asymptomatic and HF groups were significantly higher than those in the non-HD group. The test kit showed negative in all non-HD cats and in 6 of the asymptomatic cats, but positive in all HF cats. As a result, sensitivity and specificity for detecting cats with HDs were 81.8 and 100%, respectively (AUC = 0.91). The diagnostic accuracy of HDs was comparable between both methods. The NT-proBNP ELISA kit was able to detect cats with HDs with high accuracy. Although this kit can be useful as an additional method for detecting the HDs, echocardiographic examination is essential for final diagnosis. Further, it should be noted that negative results cannot completely exclude the HDs.

症例報告
  • 新家 俊樹, 新家 重隆, 斉藤 孝子
    2019 年52 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/05
    ジャーナル フリー

    ポメラニアンが咳をした後に失神するとの主訴で来院した。身体検査では,心雑音は聴取されなかった。胸部X線検査では,気管支パターンを認め気管支炎が疑われた。一般血液検査ではGPTの軽度上昇が見られた。心臓超音波検査では,異常は見られなかった。スカラ心電図検査では発咳後に1.9秒間の洞停止を認めた。アトロピン負荷試験は陽性であり,アトロピン注射後に発咳を誘発させたところ,発咳後の洞停止は認められなかった。ホルター心電図検査では,最大8.1秒間の洞停止が発咳後の失神イベントと同時に認められたため,発咳を起因とする神経調節性失神と臨床診断した。気管支炎に対する治療では,発咳頻度は減少したものの,失神の改善は見られなかった。また,心拍数の増加を期待してシロスタゾールの服用を開始したが,失神頻度に変化は見られなかった。そこで,抗コリン作用を有する抗ヒスタミン剤であるクレマスチンフマル酸塩の服用を行ったところ失神頻度は減少し,第650病日に急性肝不全で死亡するまで良好に失神の管理が可能であった。

  • 片山 智博, 細川 昭雄, 藤井 洋子
    2019 年52 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/05
    ジャーナル フリー

    雄のペルシャネコ,13歳2カ月齢が,左眼が見えないとの主訴で来院した。眼底検査にて,眼底動脈の蛇行と網膜剥離が認められたことから,高血圧を疑い血圧を測定したところ,収縮期血圧は250 mmHgと重度の高血圧であった。心臓超音波検査では,バルサルバ洞から上行大動脈にかけて大動脈壁のフラップと偽腔が認められたことから,大動脈解離と診断した。高血圧症の治療としてエナラプリルマレイン酸塩およびアムロジピンベシル酸塩を併用したところ,収縮期血圧は150 mmHgに低下した。第275病日に食欲の低下と体重の減少が認められ,血液検査では,腎数値の上昇と貧血が認められた。慢性腎臓病の治療を行ったが,第284病日に自宅にて死亡した。ネコの大動脈解離は稀であり,病態や予後は不明である。ヒトにおいて,大動脈解離は短期死亡率が高く緊急疾患である。本症例は大動脈解離の診断後約9カ月生存し,過去の症例報告においても同様の傾向が認められることから,ネコではヒトとは異なる転帰をとる可能性があると考えられた。

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