動物の循環器
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39 巻, 2 号
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原著
  • 小山 秀一, 喜綿 和美, 松本 浩毅, 土肥 あずさ, 福島 隆治, 廣瀬 昶
    2006 年 39 巻 2 号 p. 47-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
    左脚ブロックは,刺激伝導障害であり,心疾患と関連してみられることが多い。ヒトにおいて,脚ブロックは左右心室間の収縮運動にずれ(非協調性)を生じ,心機能の低下に発展していくと推測されている1, 2)。我々は,左脚ブロックと診断された2頭のイヌにおいて,従来の心エコー法と組織ドプラ法(TDI法)による測定を行い,TDI法の有用性を検討した。従来の心エコー検査では,左右心室の前駆出時間(PEP)を測定した。TDI法による心室の収縮機能を測定するために,収縮期心筋運動速度のピーク値(Sm)と,左右心室の収縮運動の協調性を調べるために,QRS群の始まりからSmに達するまでの時間(Ts)を測定した。しかし,TDI法による測定値を考察するためのイヌにおける報告がなかったため,正常な心機能をもつ13頭のビーグル犬で同様の測定を行い,それぞれの値を比較した。左脚ブロックの症例において,左室壁,心室中隔壁のTs時間は,右室壁のそれに比較して,明らかに延長した。また,これらの値は,コントロール群と比較すると,明らかに長かった。また,左脚ブロックの症例の左室壁,心室中隔壁のSm値は,右室壁のそれに比較して,明らかに低い値を示し,またコントロール群と比較するとこれらの値は,明らかに低下していた。そして,左右心室壁のTs時間の差と,QRS持続時間の関係をみると,QRS持続時間が長いほど,左右心室壁のTs時間の差が大きくなっていることがわかった。この左右心室壁のTs時間の差とQRS持続時間との関係は,左右心室のPEPの差とQRS持続時間との関係と類似していることが確認された。以上より,左脚ブロックという伝導障害をもつ症例において,TDI法によるTs時間の測定は,左右心室の収縮運動の非協調性の評価に有用であり,またSm値の測定は,心室の運動性の評価に有用であると考えられた。そして,PEPのほか,TDI法によるTs時間を基にして,左右心室間の収縮運動のずれ,つまり非協調性をみることは,心電図検査による電気的な情報を得ることに加え,さらに病態の評価に有用であると思われた。
  • 才田 祐人, 田中 綾, 山根 義久, 鈴木 一由, 丸山 理恵, 鯉江 洋, 松本 力, 浅野 隆司
    2006 年 39 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,心の形態および機能評価に用いられるエコーパラメーターとvertebral heart size (VHS)を比較し,それらの間に相関性があるか否かを検討することにある。僧帽弁閉鎖不全(MR)の犬34頭をカルテより抽出し,心疾患が認められなかったビーグル犬18頭をコントロール群とした。VHSは,右側ラテラルX線画像より両群において計測した。VHSは,左心房-大動脈径比(LA/AO),拡張早期流入波,左房収縮期波,心拍出量-体表面積比(CI),左室拡張末期容積-体表面積比(LVEdV/BSA),一回拍出量-体表面積比(SVI)および心拍数に対して有意な相関性が認められた。単回帰直線において,LA/AO,拡張早期流入波,左房収縮期波,CI,LVEdV/BSA,SVIおよび心拍数に相当するVHS値は,それぞれ9.8-10.7,9.8-11.2,9.3-10.7,9.2-10.8,9.2-11.7,8.5-11.5および7.8-12.4であった。
    以上よりMR犬において,VHS値は左室容量負荷の病態と合致することが示唆された。
症例報告
  • 村上 隆之, 津田 茂浩
    2006 年 39 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
    一次口遺残を伴わない部分型房室中隔欠損が28日齢,メスのホルスタイン種で認められた。その心臓は流入部心室中隔が大きく欠損し,特徴的な“えぐり取り”所見を示していた。心房中隔は,線維輪と結合した二次中隔の卵円窩縁に一次中隔の底が結合し,一次口は存在しなかった。左房室弁の中隔尖は完全に前部成分と後部成分に離開していた。一方,右房室弁の中隔尖の離開は不完全で,分離した左右の房室口が形成されていた。両中隔尖の前半部同士は癒合して架橋尖を形成していた。左中隔尖の後部成分は左心室内に,右中隔尖の後部成分は右心室内に存在していた。この心臓には両大血管右室起始,二次口型心房中隔欠損,二重前大静脈および左鎖骨下動脈起始異常が合併していた。
  • 堀 泰智, 佐藤 真伍, 島村 俊介, 村上 寧, 樋口 誠一
    2006 年 39 巻 2 号 p. 70-74
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
    アメリカン・ショートヘアーが突然の後躯麻痺を主訴に当院を受診した。胸部X線検査では心陰影の拡大,血液生化学検査ではCPKおよび LDHの著増がみられた。心エコー図検査では左心室内腔の拡張と左心室壁の菲薄化ならびに左室内径短縮率の低下が観察された。このことから拡張型心筋症を疑い内科療法を行ったが,第56病日には左心房内に高エコーマスがみられ血栓形成が疑われた。血栓塞栓症は猫の心筋症に併発することが広く知られており,本症例でも左房内血栓が心室拡張期に僧房弁口を閉塞し,左室の血液充満を障害したと考えられた。本症例は第57病日に死亡したが,病理検査を行うことはできなかった。肥大型心筋症の猫においても末期には遠心性肥大を起こすことが報告されおり,拡張型心筋症との鑑別が重要であると考えられた。
  • 福島 隆治, 松本 浩毅, 小山 秀一, 廣瀬 昶
    2006 年 39 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
    症例はヒマラヤン,9歳,体重3.2 kgの避妊雌。近医にて心内膜の高エコー所見と胸水貯留などから拘束型心筋症(RCM)と診断され治療を受けていたが,臨床症状の改善がみられないため日本獣医生命科学大学付属動物医療センターに来院した。稟告では活力減退,食欲不振,多飲多尿,呼吸速拍および眼の変色が主訴であった。非観血的血圧測定では収縮期血圧,平均血圧および拡張期血圧はそれぞれ223 mmHg, 189 mmHgおよび158 mmHgであった。著者らは,超音波診断,血中ホルモン濃度測定および血液生化学検査などから,本症例を本態性高血圧症と仮診断した。しかし,この時点では,軽度の心室内膜の高エコー化と不整が認められるためRCMを完全に除外診断することはできなかった。塩酸ジルチアゼム,ACEI,ジピリダモールにより治療を開始した。収縮期血圧は治療前の210~230 mmHgから180~190 mmHgへと低下し,一般状態の改善が認められたため同様の治療を継続した。初診時に認められた心内膜の高エコー化所見は,その後の心エコー検査において認められなくなった。よって,RCMを除外することで本態性高血圧症の診断を下した。その後,一般状態は安定していたが,しばらくして再度,収縮期血圧 200 mmHg以上となり,活力低下と食欲不振などの臨床症状を呈した。そこで,塩酸ジルチアゼムからベシル酸アムロジピンに変更したところ,速やかな血圧下降と臨床症状の改善が認められた。そしてベシル酸アムロジピンの投与開始から5年以上が経過した現在も,収縮期血圧130~160 mmHgと良好な血圧コントロールと臨床状態を維持している。
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