動物の循環器
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29 巻, 2 号
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  • 小山 秀一, 竹村 直行, 本好 茂一
    1996 年 29 巻 2 号 p. 59-78
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/09/17
    ジャーナル フリー
    犬の慢性心不全(僧帽弁閉鎖不全症,フィラリア症および拡張型心筋症)に対するTKD-36(木防已湯)の有効性,安全性,有用性および至適投与量を検討するため多施設共同の臨床試験を実施した。TKD-36(75,150および300mg/kg/day)とプラセは,1日2回に分け,4週間経口投与した。その結果,TKD-36の150および300mg/kg/dayは,慢性心不全と診断された犬の臨床所見,身体所見,心不全重症度および胸部X線像をプラセボ群と比較して有意に改善あるいは軽快させたが,75mg/kg/day群では有意な差が認められなかった。安全度については,いずれの投与群においても重篤な副作用を認めず,TKD-36の高い安全性が確認された。
    また,TKD-36各投与群間の改善度,安全度および有用度を比較した結果,TKD-36の至適投与量は150ないし300mg/kg/dayと考えられた。
    以上の結果から,TKD-36は犬の慢性心不全に対して有効かつ安全な薬剤であると判断された。
  • 土井口 修, 松山 琢哉, 吉本 明美, 樋口 充宏, 坂田 美和子, 土井口 勝
    1996 年 29 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/09/17
    ジャーナル フリー
    実際の臨床において心機能を評価する場合に必要な基礎的データを得ることを目的として,動物病院に来院した健常犬96頭を用いて心機能影響因子,とくに加齢要因について心エコー検査および血圧測定による検討を加えた。その結果,
    1) 左室の収縮能の指標であるFS,EF値に関しては,いずれも4~7歳齢で最高値を示した。
    2) 左室の拡張能の指標であるE波およびA波は,加齢に伴ってE波は減少し,逆にA波の流速は増加する傾向が認められた。この傾向はヒトと同様である事から,心臓に対する加齢の影響はヒトとほぼ同様なメカニズムで発現するものと考えられた。
    3) 加齢と血圧との関係では,ヒトと同様に年齢を経るにしたがって上昇する傾向が認められた。この変化とヒトにおける変化が同一のメカニズムで発現する可能性があると思われた。
  • 村上 隆之, 萩尾 光美, 森友 靖生, 浜名 克己, 中井 政晶
    1996 年 29 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/09/17
    ジャーナル フリー
    心大血管奇形のウシ451例中5例(1.1%)に心臓逸所を認めた。5例中4例は頸部心臓逸所,1例は胸部心臓逸所であった。頸部逸所心のうち3例の心膜は頸部の皮下を前方へ伸び,その前端は後頭骨,下顎骨,第一頸椎,または前頸部の皮筋や骨格筋などに付着していた。これら3例の胸骨は幅広く扁平で,14-16個の胸骨片で形成されていた。胸部心臓逸所の症例では,胸骨の中央とその部の皮膚に径6cmの欠損があった。心膜は胸骨の欠損口縁に付着し,心臓は胸腔外に裸出していた。
  • 向井 真, 町田 登, 西村 昌晃, 中村 孝, 桐生 啓治
    1996 年 29 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/09/17
    ジャーナル フリー
    ロードアイランドレッド種鶏(RIR)における不整脈の好発生性と壁内冠状動脈の硬化性変化(内膜肥厚)との関連性を明らかにする目的で,RIR60羽および白色レグホン種(WL)60羽を用いて,不整脈と心室壁内冠状動脈における硬化性変化の発生時期に注目しつつ,孵化直後から12ヵ月間にわたって経時的な心電図検査および心室の病理学的検索を実施した。
    不整脈は7ヵ月齢~12ヵ月齢のRIR10羽に観察された(心房性期外収縮3羽,心室性期外収縮3羽および心室早期興奮症侯群4羽)。しかしながら,WLでの発生は認められなかった。また,壁内冠状動脈病変の発生率および程度はRIRにおいて月齢とともに増大する傾向を示した。重度内膜肥厚病変の累積発生率について両品種間で比較すると,RIRはWLよりも有意に高かった(p<0.001)。さらに,RIRにおいて不整脈例での重度内膜肥厚病変の発生率は,非不整脈例に比べて有意に高かった(p<0.01)。これらの検索結果から,RIRにおける不整脈の好発生性.には壁内冠状動脈の硬化性変化が密接に関わっていることが示唆された。
  • 中村 孝, 町田 登, 小田部 晶, 桐生 啓治
    1996 年 29 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/09/17
    ジャーナル フリー
    シバヤギ5例と日本コリデール種のヒツジ(日本コリデール)3例の冠状動脈が死後冠状動脈造影法,組織透徹法及び間断連続切片作成法の各方法によって形態学的に観察された。検索は洞房結節動脈の由来及びその走行を中心とし,シバヤギと日本コリデールの両者の所見を対比しながら検討した。
    1.4例のシバヤギの左冠状動脈回旋枝は中間溝の部位より冠状溝を外れ,洞下室間溝のほぼ1/2部分に向かって左心室遊離壁を斜めに下行し洞下室間枝となった。これに対して他の1例のシバヤギ及び3例の日本コリデールの左冠状動脈回旋枝は起始部から洞下室間溝に達するまで冠状溝に沿って走行していた。またシバヤギ5例の右冠状動脈は冠状溝に達した後,洞下室間溝のほぼ1/2部分に向かって右心室遊離壁を斜めに下行して終止していた。一方,日本コリデールの右冠状動脈は冠状溝に沿って走行し,洞下室間溝起始部に向かって走行して終止していた。
    2.シバヤギ5例の心房枝は左冠状動脈回旋枝から近位にL1,遠位にL2が存在していた。そして右冠状動脈由来分枝として近位にR1のみが存在していた。一方,日本コリデールにおいて,心房枝は6本より構成され,それらは左冠状動脈回旋枝由来の分枝としては,近位にL1,中間部位にL2,遠位部にL3,左冠状動脈洞下室間枝の後中隔枝からの1分枝としてL4,右冠状動脈由来の分枝としては近位にR1,遠位にR2であった。
    3.洞房結節動脈は,シバヤギ5例ではR1より成り洞房結節外を走行していた。日本コリデール3例においてはL1より成り立ち,1例は洞房結節内を走行していたが,他の2例はシバヤギと同様に洞房結節外を走行していた。このように冠状動脈の走行,および洞房結節動脈の由来及びその走行は動物の種類によって異なった所見を示すのみならず,品種間の違いによっても異なった所見を示す可能性が考えられた。
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