日本生気象学会雑誌
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26 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 樫村 修生, 上田 五雨
    1989 年 26 巻 3 号 p. 125-133
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    ラットにおける急性寒冷暴露時の熱産生に及ぼす運動トレーニングの影響を検討した.トレーニングラット (T群) には運動トレーニングを9週間実施させた.また, T群, 温暖対照群および寒冷馴化 (C) 群には, それぞれ-5℃の急性寒冷暴露を課した.
    急性寒冷暴露後の結腸温は, 対照群で有意に低下をしたが, T群およびC群では低下しなかった.NE投与による体温反応は, C群よりT群で小さかった.寒冷暴露時hexamethonium投与による結腸温の低下は, 対照群およびT群よりC群で大きかった.寒冷暴露時2-deoxyglucoseの投与後のC群は, T群より高い結腸温を維持した.寒冷暴露後の血中グルコース濃度は, 対照群よりC群およびT群で小さかった.一方, 血漿FFA濃度は, 対照群およびT群で上昇が大きいが, 両者の上昇量には有意差がなかった.寒冷暴露時の血漿NE濃度, 尿中NEおよびE排泄量の増大は, 対照群よりCおよびT群で小さかった.ラットにおいて運動トレーニングは, 耐寒性を増強させるが, 寒冷時の熱産生の亢進は, 主に糖質を利用したNE以外に依存する熱産生の増大によると推論する.
  • 森谷 〓
    1989 年 26 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    3年から5年の運動歴を持つ (現在ラグビー部部員) 運動鍛錬青年を被験者として, 彼らの最大運動量の64-93% (平均74%) に相当する最大下運動を30分間自転車エルゴメーターで負荷した.その結果以下のことが明らかになった.
    (1) 直腸温は運動開始10分後に有意な上昇を示し, 30分後に最高に達した.上昇の程度は+1.0±0.2℃であった.
    (2) 大腿前部皮膚温は運動開始初期に全員で一過性下降を示し, その後上昇に転じたのに対し, 前胸部では2名のみ, 上腕外側では3名のみで一過性下降を示した後全員で上昇に転じた.三点法で求めた平均皮膚温の30分後の上昇は+2.8±0.4℃であった.
    (3) Ht値は運動開始3分後には有意な上昇が認められ, 30分後まで持続した.この血漿水分の血管外への移動は非温熱性要因によるものではないかと推測される.
    (4) 血漿乳酸値, 血漿グルコースとFFA濃度の測定結果から, 本運動負荷条件では, 好気的エネルギー代謝と嫌気的エネルギー代謝機構が両方動員されていると推測された.
    (5) 血中グルカゴン濃度は本運動負荷で上昇したが, インスリン濃度には運動による変動を検出できなかった.
  • 丸山 康子, 田村 照子
    1989 年 26 巻 3 号 p. 143-154
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    身体部位別に取り外しのできる分割式密着衣服を作製し, これを用いて身体表面に不均一温熱刺激を与えた場合の皮膚温・温冷感への影響を検討した.被検者は成人女子3名, 環境条件は気温20℃, 湿度50%一定である.全身被覆状態での実験衣服の保温力はサーマルマネキンによる測定で1.21cloである.着衣条件は, 全身被覆状態から体幹, 四肢, 腕脚, 手足, 下肢全体, 下腿と足, 足, 上肢全体, 前腕と手, 手の各部衣服を取り外した10条件とした.
    人体の体幹部を冷却した場合の皮膚温, 局所温冷感, 全身温冷感, 快適感への影響は, 末梢部を冷却した時のそれに比べて大であること, また, 背部, 上腕部の皮膚温, 温冷感が全身温冷感を支配する重要な因子であることを明らかにした.全身温冷感と平均皮膚温の間には, Vokacらの値より低い0.60の相関係数が得られた.
  • 平沢 邦彦, 神山 昭男, 山村 晃太郎
    1989 年 26 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    内陸の旭川圏における過去10年間の気候と急性心筋梗塞の発症との関係について検討した.
    旭川圏内で発症した581症例の月別発症頻度をX2検定した結果, 月別発症数は等しいという帰無仮説は否定されなかった (p>0.05) .過去10年の最高気温と最低気温を5℃毎に群別し, 各群の心筋梗塞発症期待値と発症実例値とをX2検定で比較したが, 有意差はみられなかった (p>0.05) .
    旭川圏の例年の平均気温が0℃以下になる11.月7日から4月16日までを寒冷期と定義した.過去10年間の寒冷期に発症した269例の発症日を調べ, 心筋梗塞発症例のあった245日の気候10項目を心筋梗塞発症例のなかった対照245日の気候10項目と比較し, 正準判別分析を行なった.また寒冷期の屋外で発症例のあった37日の気候10項目についても同様に対照37日との間で正準判別分析を行なった.その結果, 正準判別分析のF値はそれぞれ0.0003, 0.0155と低かった (≪F19 (0.25) =1.51) .したがって日本で最も寒い旭川圏においては, 寒冷期の気候10項目によって心務梗塞発症日になる可能性と非発症日になる可能性とを判別することは困難であった.
  • 小川 徳雄, 山下 由果, 菅屋 潤壹, 大西 範和, 夏目 恵子, 今村 律子, 梅山 孝江, 一石 典子, 沼田 克雄
    1989 年 26 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    一側頭部, 頚部皮膚面を冷気送風により冷却すると, 多くの例で同側の鼓膜温が対側より低くなり, またその半数以上で冷却側の前腕発汗量が対称部位のそれより軽度ながら低くなった.これは脳温に左右差が生じたこと, 及びそれが鼓膜温に反映されたと解釈される.また一側星状神経節ブロックにより同側の鼓膜温が他側よりわずかながら低くなった.これは脳血流が交感神経の緊張性支配を多少とも受けること, 脳血流が増した側で脳温が低下し, それが鼓膜温に反映されることを示唆する.これらの観察は, 鼓膜温が脳温の指標としての価値が高いとする見解を裏付ける.
  • 本村 明江, 鵜原 玲子, 春木 英一, 柳下 三郎, 貴邑 冨久子
    1989 年 26 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 1989/11/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ラットを用いて新生期から緩徐な条件で長期にわたり反復して酸素曝露を行い, 諸生理機能を観察して幾つかの変化を見いだした.すなわち, 生後5日令から63日令まで1日3時間の大気圧下での純酸素曝露を断続的に37回行った酸素群と, 同様にして空気曝露した対照群とを比較すると, 酸素群では対照群より血圧が有意に約10mmHg高く, 腎湿重量が16%低下していた.しかし肺, 心, 腎, 肝のHE染色標本の光学顕微鏡像には異変は認められなかった.また, 血液中のSOD活性および過酸化脂質濃度には統計的に有意な変化が見られなかったが, 酸素曝露中には動脈血酸素分圧が平常時の3倍であった事から, 幼若期の反復酸素曝露が何等かの機序で生体諸機能に慢性的効果を与える可能性が推測された.
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