日本生気象学会雑誌
Online ISSN : 1347-7617
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46 巻, 2 号
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原著
  • 大橋 唯太, 竜門 洋, 重田 祥範
    2009 年 46 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,都市域内の活動空間によって変化する熱中症リスクの違いを定量的に評価するために,運動場,体育館(屋内),スポーツトラック,芝広場,ビル街および住宅地の6種7ヶ所の空間で,熱中症予防の指針に用いられる WBGT を計測した.その結果,熱中症が発生しやすい気象条件下であった観測期間中の日最高 WBGT には,スポーツトラックと体育館のあいだで最大4.0℃,屋外空間に限ればスポーツトラックとビル街のあいだで最大3.4℃もの差異が認められた.これは主に黒球温度の影響であり,すなわち活動空間における人体への入力放射量の違いに起因することが示された.熱中症救急搬送数と日最高 WBGT の相関分析から,活動空間の違いによる WBGT の差異は,発症リスクを評価する上では定量的に無視できない大きさであり,乾球温度と湿球温度のみから WBGT を推定する手法の利用には注意が必要であることが示唆された.
  • ―韓国ソウル市清渓川を事例として―
    松本 太, 一ノ瀬 俊明, 白木 洋平, 李 龍太
    2009 年 46 巻 2 号 p. 69-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,内陸都市における河川復元後の「風の道」による冷却効果について検証することを目的とした.そこで2006年の夏季にソウル市清渓川周辺を対象として,気象観測を行った.主な結果をまとめると以下のようになる.
    (1)河道に沿った西よりの風が卓越する時,卓越風が河川に直交する南北の街路に分散して進入していると同時に,気温低下をもたらしていることが明らかとなった.
    (2)(1)の気温低下の影響範囲は,1時間の平均気温でみた場合,最大で河川周辺60 m位まで達することが確認された.また,気温低下の程度は,風速1 m/sにつき約0.3~0.4℃と想定された.
    以上のことから清渓川復元後の「風の道」による周辺地域への気温低減効果が認められた.よって,内陸都市の中小河川でも卓越風の『風の道』を利用した暑熱環境の改善の可能性があり,都市計画等に有効であることが示唆される.
  • 島﨑 あかね, 樫村 修生, 南 和広, 柏木 朋也, 一場 博幸
    2009 年 46 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/27
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,尾瀬国立公園におけるトレッキング時の生理的負担度と景観鑑賞時の自律神経活動を調べることである.健康な中高年者男性(53±5歳)12人を対象とし,トレッキング時の運動量,立位開眼安静時および仰臥位閉眼安静時における心拍数の R-R 間隔から心拍変動を測定し,交感神経および副交感神経活動状態を評価した.トレッキングによる総運動量は905 kcal,算出された運動量は1日で30.3エクササイズであった.一方,開眼時および閉眼時とも「牛首」ポイント休憩時において,副交感神経活動の評価指標である高周波数成分が他の測定地点よりも高い傾向を示し,副交感神経の活動が優位となりリラックス効果が得られたことがわかった.また交感神経活動の評価指標である低周波数成分/高周波数成分は,開眼時および閉眼時とも他の測定地点より低い傾向であった.これは,視界の開けた木道での休憩や自然を感じながらの休憩が副交感神経活動を高めることを示唆している.以上の結果から,生活習慣病の予防・改善および精神的な健康を改善する観点から,尾瀬国立公園のトレッキングコースは,健康日本21を目指す日本の現状に適した条件が備えられている場所であることが明らかとなった.
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