日本生気象学会雑誌
Online ISSN : 1347-7617
Print ISSN : 0389-1313
ISSN-L : 0389-1313
40 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 土谷 彰男, 佐久川 弘
    原稿種別: 原著
    2003 年 40 巻 4 号 p. 183-195
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/16
    ジャーナル フリー
    本研究では広島県の西条盆地を事例に里山のアカマツが衰退した後の亜高木・下層木個体の応答を群落構造,年輪クロノロジー,エネルギー収支,導管パラメーターから調べ,枯死アカマツ材積を推定した.群落構造からはアカマツの枯死によって林冠層が消失し,樹高階がスギ・コナラ・コシアブラ・クロガネモチなどの中層に下がったこと,年輪幅からはそれらの肥大成長が拡大していること,エネルギー収支からは下向き短波放射が中層まで到達し,光合成に有効な放射量が確保されていること,導管パラメーターからは加速する成長を補うために導管面積率の上昇が起こっていることが確認され,これらの現象は1970年代後半から始まっていた.しかし,林床付近のヒサカキ・ネジキ・イヌツゲなどの下層木は若齢のアカマツも含めて被圧されたままであった.また,枯死アカマツのバイオマスは最小で2,204 t/km2,最大で10,870 t/km2と推定された.林冠層を形成していたアカマツの枯死が林内に留まっていた亜高木個体の成長を加速させた一方,小個体の成長の改善までは至らず,両者を引き離す結果になった.
  • 徳永 英治, 美馬 佳奈, 橋口 暢子, 加地 正英, 栃原 裕
    原稿種別: 原著
    2003 年 40 巻 4 号 p. 197-202
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/16
    ジャーナル フリー
    航空機により長距離移動が可能となった.その際長時間座位を余儀なくされ,エコノミークラス症候群を引き起こすと考えられている.一方,航空機内は低圧や低湿度環境であるが,これらの環境を組み合わせた,低圧および低湿度環境が長時間座位時の生理変動に及ぼす影響を検討した研究は見ることができない.そこで本研究では,これらの点を解明すべく健常男子学生9名を対象とし,以下にあげる4条件で2時間安静椅座位を行った(A:0m相当高度・60%RH,B:0m相当高度・20%RH,C:2000m相当高度・60%RH,D:2000m相当高度・20%RH).実験前後に体重及び下腿周径を測定し,さらに静脈血を足部から採取した.その結果,実験後に下腿周径は全条件有意に増加し,低圧時に増加度が高いことが認められた.アルブミンおよび総蛋白は条件B,C,Dにおいて,赤血球数は条件B,Dにおいて,ヘマトクリットは条件Dにおいて有意な増加が認められた.以上から,低圧及び低湿度環境での長時間座位はうっ血や血液濃縮を促進させる可能性が示された.
  • 土谷 彰男, 遠山 貴久
    原稿種別: 原著
    2003 年 40 巻 4 号 p. 203-217
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/16
    ジャーナル フリー
    広島県西条盆地の三永水源池で3月を除く2001年11月~2002年5月にかけて水面の放射収支観測と係留気球・熱気球による温湿度観測を実施した.11月は昼間の正味放射起源の水体貯熱量が十分で,同時に日没後の放射冷却で気温が露点温度に達し,翌朝にかけて地上100m以上が放射霧に覆われた.12月・1月・2月の寒候期は夜間の冷却は強いが,昼間の正味放射が弱いため,放射霧が発生してもその厚さは限定的であった.4月・5月は正味放射は十分であったが,気温の低下が不十分で霧の発生まで至らなかった.期間を通して夜間の負の正味放射を規定しているのは地表からの放射冷却による水体貯熱変化量で,この水体からの放熱・水蒸気の供給と水塊以外の地表からの放射冷却による気温の低下が霧の発生をもたらした.盆地底の溜池面積4.1km2,霧の到達高度,絶対湿度の低下量を組み合わせて放射霧の凝結量を推定したところ,最大の11月の事例では一晩に844.6t,12月の事例では114.8t,2月は49.2tであった.
総説
  • 佐藤 純
    原稿種別: 総説
    2003 年 40 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/16
    ジャーナル フリー
    著者らは慢性痛が前線通過や気温低下の際に悪化する現象の科学的実証とそのメカニズムを明らかにする目的で,慢性痛モデルラットを用いた人工環境曝露実験を行ってきた.これまでに,天気変化でみられる程度の気圧低下(大気圧から27hPa減圧)と気温低下(22°Cから7°C冷却)により単関節炎モデルと神経因性疼痛モデルの疼痛行動が増強することを明らかにし,いわゆる「天気痛」を動物モデルで再現することに成功した.そして,気圧低下の疼痛増強作用には交感神経活動が重要であること,また気温低下による疼痛増強のメカニズムにおいては,病態時に出現する皮膚冷感受性線維の感作が重要な役割を担っていることも見出した.さらに,内耳破壊を施した神経因性疼痛モデルを用いた気圧低下実験の結果から,気圧の変化を検出する機構(気圧検出センサー)がラットの内耳前庭部に存在することを示唆する結果を得た.
  • 高田 暁
    原稿種別: 総説
    2003 年 40 巻 4 号 p. 225-234
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/02/16
    ジャーナル フリー
    これまでにさまざまなタイプの人体熱モデルが提案されてきている.本稿では,各モデルの特徴を概観する.人体形状のモデル化,血流による伝熱のモデル化の手法などに相違点があるが,人体各部を複数の節点で離散的に表現しその各々について熱収支式を構成している点,血流・発汗・ふるえによる調節反応の式を皮膚温と深部温の関数で表現している点,その際,皮膚温・深部温の基準値を決めて調節量を表現している点において,共通の考え方が用いられている.人体熱モデルによる計算例,それに対応した被験者実験の結果を示し,体温調節反応の予測に用いていくための問題点について考察し,今後の課題を展望する.
feedback
Top