日本生気象学会雑誌
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53 巻, 1 号
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総説
  • 平田 耕造
    2016 年 53 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/04/18
    ジャーナル フリー
    本研究は熱負荷時に手から還流する皮静脈血流が,どの程度前腕からの蒸散性(E)及び非蒸散性(R+C)熱放散量に影響するか明らかにすることを目的とした.両腕は,一側ずつ手血流量と手からの還流静脈血を手首のカフ加圧(250 mmHg)により 30 分間遮断する加圧側としない対照側とした.食道温が 0.82℃上昇する間,手の血管拡張後,対照側の前腕皮膚温は 3.2℃上昇したが,加圧側では上昇が認められなかった.これに伴って,対照側の前腕発汗量は 0.21 units まで増加したが,加圧側では 0.13 units に留まった.これらの結果から,手の血管拡張による AVA 血流量の増加は,前腕の発汗量増加と皮膚温の上昇による熱放散量亢進に著しく寄与することが判明した.
原著
  • 北村 恵理奈, 柴田 祥江, 松原 斎樹
    2016 年 53 巻 1 号 p. 13-29
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/04/18
    ジャーナル フリー
    冬期のヒートショックは高齢者に健康被害をもたらす恐れがあるのでその対策は急務である.本研究は居住者視点からヒートショック対策を検討するために,(1)トイレ・脱衣室の温度認知調査,(2)住宅内の温湿度測定,(3)簡易断熱の効果測定を実施した.結果,(1)高齢者の温度認知はあまり正しくなかった.その理由は,高齢者の温熱感覚が低下していることと,滞在時間が短いためと推測される.(2)各住戸の温度の実測値は 17℃以下,高齢者に限ると 10℃以下が多かった.(3)簡易断熱調査では,全住宅でわずかな熱的性能と居住者の熱的快適感の向上をもたらした.居住者に室内温熱環境の改善への意欲を引き出せた事例が観察された.温度計による室温の正しい認知と,簡易な断熱による効果の認知は,居住者視点の有効なヒートショック対策と考えられる.今後は対策実施の有効性,経済的費用など具体的な情報発信が重要である.
  • 山下 直之, 伊藤 僚, 中野 匡隆, 樊 孟, 田井村 明博, 松本 孝朗
    2016 年 53 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/04/18
    ジャーナル フリー
    対象者の熱中症への理解度が乏しい場合,自己記入式の調査では熱中症既往者数を過小評価する可能性がある.本研究の目的は熱中症の事前教育が熱中症既往者数に影響するか否かを検討することであった.大学生 90 名を対象に,約 1 時間の熱中症教育の前後で小学校から高等学校までの熱中症既往をアンケートにて調査した.83 名(92.2%)から有効回答を得た.熱中症既往有と回答した者は,講義前 16 名(19.3%)に対して講義後では 31 名(37.3%)と有意に増加した(p<0.05).平均既往回数は,講義前 1.31±0.79 回に対して講義後 1.83±1.18 回であった(p=0.12).講義前後の既往者数の変化では,熱疲労は 4 件から 20 件(p<0.05),熱けいれんは 1 件から 7 件(p<0.05)と有意に増加したが,熱射病(2 件から 1 件)と不明(9 件から 3 件)には有意差はなかった.熱中症に関する情報を提供することで熱中症既往者数をより正確に把握できることが示唆された.
  • 苗村 晶彦, 渡邉 善之
    2016 年 53 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/04/18
    ジャーナル フリー
    東京圏の中心地に位置する東京タワーにおける 2009 年の春季~夏季および秋季~初冬の夜間高 NO2 濃度時を解析したところ,ポテンシャルオゾン(以下,PO)濃度について季節別に特徴があり,春季~夏季では時間帯によっては高濃度が確かめられ,秋季~初冬には一様な濃度低下が認められた.また,春季~夏季および秋季~初冬の夜間 PO 濃度が平均 80 ppb を越えた時はいずれも春季~夏季において認められた.その際,翌日の日中 PO 濃度が平均 80 ppb を越え,その 3 例の内 1 例の前日に山梨県で日中に熱的低気圧が生成し,光化学スモッグ注意報が発令される事例があり,東京圏からの汚染の輸送と推測された.
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