日本生気象学会雑誌
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44 巻, 4 号
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原著
  • 橋本 好弘, 森谷 きよし, 大塚 吉則
    2007 年 44 巻 4 号 p. 81-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,寒冷地で勤務する消防隊員の寒冷耐性を評価すること,また消防隊員の寒冷耐性と身体組成との関連を分析することである.北海道 S 市の男性消防隊員 62 名を対象に局所寒冷血管反応(CIVD)を測定し,S 市よりもさらに寒冷な A 市に居住する 2 群(1 群:警察官,2 群:アイヌ民族)の mean skin temperature(MST)・temperature at first rise(TFR)・time of temperature rise(TTR)・highest temperature(HT)報告値と比較した.身体組成は,8 電極式多周波インピーダンス式体組成計で測定した.その結果,消防隊員の CIVD は,1 群に比べて MST・TFR・HT,2 群に比べて MST・TTR・HT が有意に高かった.消防隊員の CIVD は,除脂肪量・筋肉量・骨格筋量・体脂肪率とそれぞれ有意な正相関を示したが,体脂肪率の相関係数(r)は筋肉量等に比べて低値であった.寒冷環境下の消防活動時に生じる隊員の負傷や活動能力の低下を防ぐためには,消防隊員の寒冷耐性を上げることが重要であり,それには筋肉量を増加させる必要があると考えられる.
  • 南 和広, 樫村 修生
    2007 年 44 巻 4 号 p. 89-96
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/07
    ジャーナル フリー
    肺水腫などの高山病は,低酸素性肺血管収縮(HPV)による肺高血圧が原因の一つと考えられている.しかし,HPV に肺血流量および粘性が与える影響の報告は少ない.我々は,運動時における肺血流量および粘性の増加が HPV を抑制すると仮定した.そこで,本研究は,摘出血管流量標本を用い,灌流液の流量および粘性増大が HPV に与える影響を検討することを目的とした.さらに,HPV に一酸化窒素(NO)が与える影響を検討した.灌流液は,補液用高張塩類液(PSS 栄養液)および PSS 栄養液に Dextran を添加した灌流液(PSSD)を用いた.灌流量は,安静時から運動時に相当する灌流量まで段階的に増加した.HPV は,流量依存性の増大を示さなかった.しかし,L-NAME(NO 合成酵素阻害薬)添加により HPV がずり応力依存性に増加した.このことから,運動時における HPV は,増大するずり応力にともなう NO 産生促進により抑制されていることが示唆された.
  • 張 明姫
    2007 年 44 巻 4 号 p. 97-104
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,気象要素とくも膜下出血罹患との関連性について検討することを目的とした.本研究における患者データとしては 2000 年 1 月から 2006 年 12 月までの 7 年間,順天堂大学付属病院及び関連病院での 1191 例のくも膜下出血入院患者の診療録を用いた.また,気象データとしては国土環境研究所いであ株式会社から提供された気象データを利用し,以下の結果を得た.(1) 対象は,男性 421 名(平均年齢 62.1±11.8),女性 720 名(平均年齢 68.0±13.6)であった.(2) 発症時間がはっきりした 776 例を観察すると,午前 6–10 時に最も多く,次に午後 16–20 時で,午前 0–6 時は少なかった.(3) くも膜下出血の発症は明瞭な季節変動があり,2 月,3 月に有意に多く(p<0.05),7 月,8 月に有意に少なかった(p<0.05).また,この季節変動は若年者が高齢者より明瞭であった.(4) 前日の日平均気温が低い時に発症が多くなる傾向が見られた(p<0.05).(5) くも膜下出血の発症は,年齢,高血圧症の既往歴有無に関係なく,前日気温日較差と有意な正の関連を示した(p<0.05).(6) くも膜下出血の発症は平均気圧,相対湿度,日照時間と有意な関連は示さなかった.
短報
  • 小崎 智照, 石橋 圭太, 堀之内 和彦, 野口 朱里, 橋冨 加奈, 安河内 朗
    原稿種別: 短 報
    2007 年 44 巻 4 号 p. 105-110
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/07
    ジャーナル フリー
    本研究は森林浴による生理的効果を検討するため,森林環境(熊本県阿蘇郡小国町)と都市環境(福岡県福岡市)におけるヒトの生理反応を比較した.12 名の若年男性(21–27 歳)がそれぞれの環境にて 20 分間の歩行もしくは椅座位安静を行うよう指示された.歩行もしくは椅座位安静の前後に心電図と血圧が測定され,唾液が採取された.各環境内を歩行させた場合において,森林環境では都市環境に比べ,歩行前の少ない心拍数と高い心臓迷走神経活動指標が観測された.椅座位安静を行わせた場合では,安静の前後どちらにおいても少ない心拍数と高い心臓迷走神経活動が認められた.また,歩行と椅座位安静の両条件において森林環境での低いコルチゾール濃度が観測された.これらの結果より,都市環境での自律神経系機能やコルチゾールに係わる生理機能の緊張が,森林環境において緩和されたことが示唆された.
  • 大塚 吉則
    原稿種別: 短 報
    2007 年 44 巻 4 号 p. 111-114
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/07
    ジャーナル フリー
    高齢者の介護予防,転倒予防等に温泉入浴と保健指導を組み合わせることの有効性を検討する目的で,専門家による講話,保健指導,入浴指導,運動指導訓練等を行う健康教室に参加した高齢者と,非参加で温泉入浴のみを行った高齢者において,体力測定,SF-36 によるアンケート調査を行い,比較検討した.その結果,健康教室非参加で温泉入浴のみの高齢者群では体力測定の協力は得られなかったが,SF-36 によるアンケート調査は施行でき,この群では全ての項目において有意の変化は認められなかった.一方健康教室参加群では,(1)身体機能,(2)身体の痛み,(3)活力において有意の改善が認められた.また,この健康教室参加群の体力測定では(1)開眼片足立ちの持続時間,(2)ファンクショナルリーチ到達度,(3)6 分間歩行距離などにおいて有意の改善が認められた.これらのことから,単に温泉入浴のみを行っても体力の増強,QOL の改善は得られず,保健事業を伴うことが重要であると考えられた.
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