本論文は, 建築学・環境工学の視点に立った生活環境にかかわる生気象学の思想の系譜に基づいて環境作りの問題点を探り, 今後の研究展望と思想について論じたものである.今世紀, 近代建築は工学と共に発展し, 空気調和と人工照明の室内環境調整技術に支えられて人工環境を創ってきた.しかしいま我々に求められているのは, 自然と共生した環境づくりではないかと考えられる.そこで, 人間が生態系のなかでどう生存し他の生物や自然環境と係わってゆくかが探られることこそ, もの作りのなかでは必要である.生気象学的・生気候学的デザインの方法論の確立が健康な建築や都市づくりの中で望まれている.その意味で生気象学は, 生活文化を含めた, 人間の適応能に基づいた低いエネルギーレベルで実現する生活環境のあるべき姿を提言できる数少ない学問分野であると考えられ, 来世紀に向けて担うべき課題は大きい.
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