日本生気象学会雑誌
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33 巻, 4 号
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  • 松本 孝朗, 山内 正毅, 田井村 明博, 金田 英子, 土屋 勝彦, 嶋津 宗典, 曹 宇, 羅 宗偉, 李 丁範, 大渡 伸, 乙益 絹 ...
    1996 年 33 巻 4 号 p. 123-130
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    放射鼓膜温計 (クイックサーモ) による鼓膜温平熱基準値を得る目的で, 健常人107名の鼓膜温を測定した.クイックサーモによる鼓膜温の平均値は, 36.88℃ (標準偏差0.46℃) で水銀体温計で測定した舌下温 (5分値) とほぼ等しく腋窩温 (10分値) よりも約0.2℃高かった.本邦において有熱基準値として一般に用いられている腋窩温の37℃に相当する鼓膜温37.3℃が実用的な有熱判定基準として推奨される.このような基準値をもって測定値を判定することにより, 放射鼓膜温計の有用性は増す.しかし, 分散は舌下温, 腋窩温の分散より大きく, 現時点での放射鼓膜温計の測定精度は水銀体温計にやや劣る.外耳道内の剛毛や狭小外耳道など放射鼓膜温計による測定が困難な例が約5%存在した.また, 正確な測定のためには測定手技にある程度習熟することを必要とする.短時間に安全に検温できる点で放射鼓膜温計の有用性は高く, 今後, より簡便に高精度の測定が可能となるよう更なる改良が望まれる.
  • 苗村 晶彦, 土谷 彰男, 福岡 義隆, 中根 周歩, 佐久川 弘, 高橋 日出男
    1996 年 33 巻 4 号 p. 131-136
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海沿岸部の山の都市側斜面の標高100-150mでは, 大気中のNO2濃度が相対的に高く, この影響が森林衰退を引き起こす1つの要因と推測されている.本研究では, 広島県西部に位置する極楽寺山の南側斜面140mに位置する宮島サービスエリアにおいて, 夏季と冬季に係留気球による気温勾配の観測と, また, 極楽寺山において長期暴露・短期暴露によるNOx濃度測定を行い, 森林衰退地域の斜面上における逆転層と大気汚染の関係について調査した.結果, 夏季・冬季ともに夜間から早朝にかけて高度20m (海抜160m) に接地逆転層が形成されていることがわかった.NO2濃度の夜間12時間測定では, 夏季に標高150mで32.2ppb, 300mで10.7ppb, 冬季に150mで27.2ppb, 300mで4.3ppbとなり, 標高差によるNO2濃度の相違は冬季に際立った.また, NO2濃度測定の結果から, 逆転層内では大気汚染物質が拡散されにくく, 夜間滞留しやすくなると考察される.従って, 標高100-150m近辺では, 夜間NO2を起因とした複合連鎖反応が進むと推測され, こうしたメカニズムのもとで森林衰退を助長している可能性が示唆される.
  • 山中 伸一, 中村 泰人
    1996 年 33 巻 4 号 p. 137-145
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    山中伸一, 中村泰人.地域差から見た循環系及び呼吸系疾患の患者数と気候の関係.日生気誌33: 137-145, 1996.―厚生省の「患者調査」から得られる患者数から, すでに検証が繰り返されてきた式を用いて都道府県別に総患者数を推計し, 更に年齢階級別総受療率と年齢調整受療率を算出し, 循環系疾患を中心に, 主として平年気温との関係について考察した.その結果, 循環系疾患の35歳以降のすべての年齢階級の総受療率と年齢調整受療率には平年気温との強い負の相関が認められた.その回帰係数の絶対値は, 高年齢になるほど大きくなっていた.また調査毎の比較では, (75―) の年齢階級を除く各年齢階級とも回帰係数の絶対値は徐々に小さくなる傾向が認められた.一方呼吸系疾患の年齢階級別総受療率, 年齢調整受療率では平年気温その他の気候要素との関係は調査毎に異なった結果となった.
  • 岡山 寧子, 木村 みさか, 奥野 直, 森本 武利
    1996 年 33 巻 4 号 p. 147-155
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    高齢者の脱水予防のための基礎的な資料を得る目的で, 健康な在宅高齢者男性9名, 女性25名の計34名 (平均年齢73.1歳) を対象に, 日常生活の中で水分出納はどの程度であるかを, 特に脱水に陥りやすい夏期を選んで検討し, 以下の結果を得た.1.1日の水分総摂取量は平均2.71であった.摂取水分の内訳は, 飲用水は1.61 (60.0%) , 食物による摂取が0.91 (33.1%) , 燃焼水は0.21 (6.9%) であった.飲用水の主な内容は日本茶と麦茶であった.2.排尿量は1.31であった.水分総摂取量≒総排泄量と仮定して, 水分蒸発量を求めると1.51であった.3. 1, 2の結果に男女差は認められなかった.4.水分総摂取量は, 健康な成人よりもやや多かったが, これは調査期間の気候が猛暑であったため, 飲用水の摂取が増加したためと考えられる.5.尿量や尿浸透圧は正常範囲を示したので脱水は生じていないと推察される.以上の結果から, 夏期では, 高齢者においては, 日本茶や麦茶等の飲用水を1日に1-2l摂取する限り, 脱水を予防できることが示唆された.
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