日本生気象学会雑誌
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42 巻, 2 号
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原著
  • 松本 太
    2005 年 42 巻 2 号 p. 65-75
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,イロハカエデの紅葉過程に及ぼす都市の温暖化(ヒートアイランド)の影響について,苗木を用いた実験により検証することを試みた.実験内容は夜間温室内を都心的と類似した環境,野外を郊外部と類似した環境と想定し,それぞれの環境にイロハカエデの苗木を置き,紅葉過程と気温との関係について調査を行った.その際,紅葉過程を葉緑素計の測定値(SPAD値)によって評価した.
    その結果,SPAD値は野外では減少の度合いが大きいのに対し,夜間室内ではゆるやかに減少する傾向がみられた.この傾向は両者におけるある種の低温量の積算(ここでは日最低気温8℃以下)と関係していることが考察された.また,野外,夜間室内におけるSPAD値と低温量との関係は松本(2004)で考察された熊谷市の都心部と郊外部における,それらの関係と類似していることが明らかとなった.
  • 垣鍔 直, 石橋 龍吉, 石橋 外史
    2005 年 42 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    筆者らは,開発中の団地の微気候を調査するために愛知県日進市にある香久山団地を1994年から1998年に継続的に調査し,その結果を本誌に報告した.本研究では,微気候形成に及ぼす要因分析を目的に,2001年~2003年に追調査を行った.移動観測では気温,湿度,風向・風速,日射量を測定し,同時に集合住宅の屋上で定点観測を行った.その結果,標高の影響を排除すると,気温分布を決定する要因は周辺の緑被率と平均建物高さであることを確かめた.また,小規模な建物が建設された場合でも,気温形成にある程度の影響を及ぼす可能性があることを示唆した.
  • 土谷 彰男
    2005 年 42 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    2003年1~10月にかけて7回にわたり広島大学構内のコンクリート製の橋で温湿度・放射パラメーターを観測した.正味放射は太陽高度の季節変化と同時に晴天・雨天の天気に左右された.日総量レベルでは橋表側の熱流量(Gs)が-65.1に対し,裏側(Gr)は-34.9の比率で,GsからGrを差し引くと,正味放射は顕熱フラックスに41.6,潜熱フラックスに45.5,熱流量に-12.9の割合で分配された.潜熱フラックスと橋の表面温度から推定した可能蒸発量は晴天日の夜間にマイナスになる時間帯があり,結露(凍結)の可能性が示唆された.逆に,橋裏面に大気がない(G=Gs)と仮定した場合,夜間にマイナスになることはほとんどなく,日可能蒸発量はG=Gs-Grによる推定に比べて約11%多かった.
  • 三上 功生, 吉田 燦, 青木 和夫, 蜂巣 浩生
    2005 年 42 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    交通事故等で頸椎を骨折し,ほぼ全身に及ぶ発汗障害と温冷感麻痺,末梢部の血流調節障害等の重度体温調節障害を持つ頸髄損傷者の温熱環境に対する意識・実態把握を目的としたアンケート調査を行った.回収数は338人であった.その結果,(1)暑さ,寒さを苦手に感じている者がほとんどであった.(2)体調が悪くなってから暑さ,寒さに気付くことを経験している者が多かった.(3)自室の冷暖房使用率はほぼ100%であったが,トイレ,脱衣所は低く,冷暖房の必要性を感じている者が多かった.(4)様々な公共施設の冷暖房に対して不満を感じていた.(5)夏季と冬季の外出時,体温上昇予防と寒さ対策として様々な手段を必要としていた.(6)体温調節障害のために,生活行動範囲が狭まっていると感じている者が多かった.本調査より頸髄損傷者が日常生活で,体温調節障害のために多くの困難に直面していることが明らかとなった.
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