本研究では,イロハカエデの紅葉過程に及ぼす都市の温暖化(ヒートアイランド)の影響について,苗木を用いた実験により検証することを試みた.実験内容は夜間温室内を都心的と類似した環境,野外を郊外部と類似した環境と想定し,それぞれの環境にイロハカエデの苗木を置き,紅葉過程と気温との関係について調査を行った.その際,紅葉過程を葉緑素計の測定値(SPAD値)によって評価した.
その結果,SPAD値は野外では減少の度合いが大きいのに対し,夜間室内ではゆるやかに減少する傾向がみられた.この傾向は両者におけるある種の低温量の積算(ここでは日最低気温8℃以下)と関係していることが考察された.また,野外,夜間室内におけるSPAD値と低温量との関係は松本(2004)で考察された熊谷市の都心部と郊外部における,それらの関係と類似していることが明らかとなった.
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