日本生気象学会雑誌
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43 巻, 2 号
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原著
  • 松山 洋, 堀江 祐圭, 泉 岳樹, 青木 健
    2006 年 43 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,温熱感覚とその時の気温ならびに個人的要素(性別,BMI,運動経験,居住歴に伴う気候,皮膚温)との関係について調べた.このために,2003年 4 月18日から 5 月13日までの 7 日間,2003年度東京都立大学学部新入生のうちの334名を対象に,温熱感覚に関するアンケート調査,サーモグラフィ画像の撮影および気象観測を体育館内にて実施した.
    温熱感覚に関する調査結果より得られた被験者の温熱的中立域は約 21~24℃であった.この温熱的中立域に含まれる被験者54名について詳細に解析したところ,前額部表面皮膚温よりも手部表面皮膚温の方が,温熱感覚とより密接な関係にあった.さらに温熱的中立域では,居住歴に伴う気候(気温)と温熱感覚との関係がより明確になった.特に,就学前幼少期に体験した年平均気温および年最高気温と温熱感覚との間に密接な関係がみられた.これらの結果から,温熱的中立域における温熱感覚の個人差には,生理的反応だけでなく温度環境履歴の違いも影響する可能性が示唆された.
  • 松尾 純太郎, 村山 崇, 栃原 裕
    2006 年 43 巻 2 号 p. 79-89
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は上下温度差の違いが温熱快適性および知的生産性に及ぼす影響を検討することである.人工気候室内に空調 BOX を設置することで,身体上部と下部の気温を独立して変化させた.健常な男子学生 8 名を被験者とし,すべての被験者は上下温度差(上部温度−下部温度)が −8.0℃,−4.0℃,0.0℃,+4.0℃,+8.0℃となる 5 条件にそれぞれ曝露された.直腸温,平均皮膚温および全身の温冷感は各条件間で有意な差は認められなかった.上下温度差 +8℃の条件において,温熱的不快感はもっとも高い値を示した.温熱的不快感と「ねむけ感」スコアおよび「ねむけ感」スコアと各作業成績の間にそれぞれ有意な相関が認められた.これらの結果は,いわゆる「頭寒足熱」型条件は,温熱快適性を向上させるものの,眠気を誘起し,作業成績を低下させることを示唆していると考えられる.
  • 土谷 彰男, 周 承進, 堀越 孝雄
    2006 年 43 巻 2 号 p. 91-101
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/13
    ジャーナル フリー
    土壌からの CO2 発生の昼夜の変化,気象環境との関係を調べるため,(1)腐葉土をライシメーターの 80–100 cm,(2)40–60 cm,(3)0–20 cm に充填し,潅水前と潅水後の土壌 CO2 濃度 SC,土壌水分 SW,地温 ST の鉛直分布を観測した.SC は大気側の飽差 SD と逆位相(ST-T と同位相)の関係にあり,主に50 cmや100 cmの深い場所で午後から夕方にかけての高温・低湿の時間帯に低濃度になり,夜間から早朝にかけての低温・高湿の時間帯に高濃度になった.一方,潅水によってすぐに深さ10 cm の SC が上昇し,水が深さ10 cm に到達すると SC10 は低下,水が下に通過すると SC10 は回復し,その後は同様の反応が SC30 に移行した.土壌 CO2 フラックスは腐葉土を充填した位置と潅水前後で −100~700 mgCO2/m2/h と大きく変化し,時間や深さによっては下向きに移動している事例が見られた.
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 野尻 佳代子, 栃原 裕
    2006 年 43 巻 2 号 p. 103-112
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,濡れた衣服を着用したときの体温調節反応について観察することであった.被験者は健康な成人女子11名であった.人工気候室は,気温30,25,20℃(相対湿度は80%一定)に制御された.衣服の様式は,スウェット上下(様式 S)と T シャツおよび短パン(様式 T)とし,気温と衣服の条件より 5 種条件(30S, 30T, 25S, 25T, 20S)を設定した.衣服の濡れ条件は,D(乾燥),W1(湿った),W2(びしょ濡れ)の 3 種とした.条件 D, W1, W2 における全衣服重量の平均は,様式 S では各々819, 1238, 2596 g,様式 T では各々356, 501, 759 g であった.各濡れ条件において,安静期と作業期を設けた.作業期における踏み台昇降作業のエネルギー代謝率は2.7であった.測定項目は,酸素摂取量,直腸温(Tr),平均皮膚温(Tsk),および主観申告値とした.酸素摂取量は,衣服重量および寒冷ストレスの影響を受けて変化した.Tr の値は,条件 25T と 20S では漸減した.Tsk は環境温に依存して漸減し,特に条件 20S においては著しく低下した.本研究の要点は次の通りである.1)濡れた衣服を着用した場合,気温30℃では着衣の工夫により温熱ストレスは最小に止めることができる.2)気温25℃以下では,軽装の場合,寒冷ストレスが生じ得る.3)衣類が乾燥状態であれ濡れた状態であれ,全身温冷感が中立であるとき,Tsk は約33℃であった.4)濡れた衣服条件における特色は,全身温冷感が「冷たい」側へシフトするとき,平均皮膚温が著しく低下することである.
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