歯科医学
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69 巻, 2 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 小室 崇, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2006 年 69 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー
    職域で13年間実施している歯科健康診査事業の継続受診効果を明らかにする目的で,歯科健康診査受診回数別に,口腔保健状態の変化を比較検討した.調査対象者は,1993年から2005年までに歯科健診事業を1回以上受診した者3,461名である.受診回数は,1回,2回,3〜4回,5〜6回,7〜8回,9回以上受診群に分類し,2回以上受診した群については,始めて受診した時をベースライン,2005年までの間で最後に受診した時を最終診査時とし,ベースラインから最終受診時の口腔保健状態の変化を受診回数群間で比較検討した.
      その結果,2回以上受診群の歯周組織状態は,最終診査時にはベースラインよリCPIコード0のセクスタント数が増加し,CPIコード最大値が軽減していることおよびその改善傾向は7回以上受診群でより顕著であることが明らかとなった.また,受診回数が多い群ほど歯周組織の改善者率も高く,9回以上受診群ではCPIコード最大値の軽減が46.8%の者に,また,77.7%の者にCPIコード0セクスタント数の増加が認められた.健全歯数およびDMF歯数では,最終診査時にはベースラインより健全歯数が減少し,喪失歯数および処置歯数が増加していたものの,健全歯数の減少や喪失歯の増加傾向は,受診回数群間で明確な差は認められず,受診回数が多い群では,健全歯数の減少および喪失歯数の増加が抑制されたものと推察された.また,2回以上受診者の最終診査時の未処置歯数および未処置歯所有者率は,ベースラインより有意に減少し,さらに受診回数が多い群ほど少なくなっていた.
      以上の結果より,歯科診療所を併設する事業所において,歯科健診事業を定期的に受診することは,口腔内の健康保持に有効であることが明らかとなった.さらに,受診を7回以上継続することで,歯周組織は増齢による悪化が認められず,健全に保持できることが明らかとなった.
  • 川上 富清, 川崎 弘二, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2006 年 69 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー
    異なる脱灰程度のエナメル質人工初期う蝕試料に対し,それぞれ異なる局所的フッ化物応用を試みたうえで経時的な再石灰化過程のモニタリングを行うことにより,脱灰程度に対するフッ化物応用の至適条件をin vitro環境下で検討した.試料として作製したウシ鏡面研磨エナメル質を24,48,72および96時間脱灰溶液に浸漬して人工初期う蝕試料を作製した.脱灰程度の異なる初期う蝕試料に対し,異なるフッ化物応用,すなわちコントロール群,フッ化物配合歯磨剤群,APF群およびフッ化物配合歯磨剤+APF群を設定し,28日間の再石灰化処理を行った.初期う蝕試料の再石灰化程度は光誘導蛍光定量法(QLF法)によって解析し,回復率を算出して評価を行った.その結果,再石灰化の過程において,コントロール群とフッ化物配合歯磨剤群,2つのAPF処理群はそれぞれ近似した傾向を示し,コントロール群とフッ化物配合歯磨剤群ではすべての脱灰時間群において最終的に90%程度の回復がみられた.一方,2つのAPF処理群においては,24時間脱灰群においては85%以上の回復がみられたが,とくにAPF群の96時間脱灰群では40%程度の回復であった.以上の結果から,ΔF値によって表現される低脱灰の初期う蝕に対しては,フッ化物応用の種類にかかわらず高い再石灰化を促進することができるが,高脱灰の初期う蝕に対しては,高濃度のフッ化物塗布を行わず,低濃度のフッ化物を継続的に作用させることでより高い回復を導く可能性のあることが明らかとなった.
  • 岩山 陽子, 柏木 宏介, 川添 堯彬
    原稿種別: 本文
    2006 年 69 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,伝導性感圧インクを応用した咬合接触検査装置T-スキャンII(ニッタ,大阪)を用いた咬頭嵌合位における咬合圧重心測定について信頼性ならびに反応性を検討した.
      被検者として健常有歯顎者男性12名を選択した.測定はセンサシートを保持するセンササポートのみで測定する条件(以下,センササポートのみ)とセンササポートとシリコーンコアを併用する条件(以下,シリコーンコア併用)を設定した.計測は2回の測定日を設けた.測定2日目には,左石いずれかの上顎第一大臼歯近心舌側咬頭の咬合接触部位に実験的咬合干渉を付与した状態で反応性の測定を行った.解析は,最大咬みしめ(Maximum voluntary contraction,以下MVC)時の荷重値を100%とする咬みしめ開始から最大咬みしめに至る25,50,75,90,ならびに100%MVCにおける前後ならびに左石方向の座標値を求めた.信頼性の検討は測定日内と測定日間の再検査信頼性について,分散分析,測定の標準誤差ならびに級内相関係数を使用して評価を行った.反応性はGuyattの反応性インデックスを算出した.
      測定日内信頼性について,すべての咬みしめ強度において,シリコーンコア併用の条件では,センササポートのみよりも高い信頼性を示し,測定の標準誤差が測定範囲に対して3.7%以下であった.級内相関係数は0.80以上であった.測定日間については,測定日内と比較して,全体的にやや大きい測定誤差を示し,すべての咬みしめ強度において,シリコーンコア併用の条件で高い信頼性を示した.反応性についても,シリコーンコア併用の条件で左右方向について大きな値が得られた.
      以上のことから,T-スキャンIIを用いた咬合圧重心測定において,シリコーンコア併用することによりさらに高い信頼性と反応性を有する計測が可能となることが明らかとなった.
  • 毛利 大介, 島津 薫, 城戸 仁博, 城山 明宏, 青木 秀哲
    原稿種別: 本文
    2006 年 69 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー
    アミロイドーシスは,生理的に存在しない線維性の特異タンパクであるアミロイドが臓器に沈着することによって,臓器の機能障害を生じる疾患で,原因は不明である.
      72歳,男性において部分義歯による舌の咬傷と口内炎による慢性炎症が原因と推察された全身性反応性舌アミロイドーシスを経験した.主訴は味覚障害,嚥下障害,摂食障害であった.舌は巨舌で,色は蒼白で黄色味をおびており,全体に硬く,舌圧子で圧排困難であり,舌縁部は歯による圧痕が著明であった.咬傷による潰瘍は認めなかった.また,舌の挙上や前突などの運動障害が著明であった.尿中にBence Jones protein-κを認めた.しかし,舌の生検による病理組織学的所見から舌に沈着したアミロイドはAAタンパクであった.
  • 青木 秀哲, 毛利 大介, 城山 明宏, 島津 薫, 湊川 徹, 古跡 孝和, 川崎 靖典
    原稿種別: 本文
    2006 年 69 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー
    近年,耳鼻咽喉科外来患者の中で,味覚障害を訴える患者が急増している.しかし,多忙な外来診療のなかで味覚異常を切実に訴える患者にどのように対応するかは,頭を悩ませる事項であった.とくに,原因不明の味覚障害症例では,症状を裏付ける検査結果が得られることは概して少なく,患者を満足させ,納得させることと,実際に治療効果をあげることは非常に難しい.
      そこで,当科では平成16年9月1日より味覚障害外来を開設した.味覚障害を訴えて来院する患者に,以前より原因のーつといわれている亜鉛量について検査しても,ほとんどの症例で亜鉛不足は認められなかった.また,亜鉛不足が証明された場合でも亜鉛の投与のみで症状が改善した例にはいまだ遭遇していない.
      今回,われわれは味覚障害外来来院患者の病態を検討し,ドライマウス性味覚障害患者において,M3型ムスカリン受容体に高い親和性を示すアゴニストである塩酸セベメリンをドライマウス性味覚障害患者に使用することによって良好な結果が得られた.
      ドライマウス性味覚障害患者9名を対象とし,塩酸セベメリンによる含嗽を指示した.塩酸セベメリンによる含嗽で,口腔内の環境が著明に改善され,舌表面の湿潤度を示すムーカス値は全例31%を越え正常値となった.また,睡液pHも9名中7名にpH6.8以上の改善傾向がみられた.自覚的な味覚の回復は,9名中8名にみられた.しかしながら,味覚検査において正常な結果が得られても,旨味がわからないと訴える症例が5名と半数以上にみられ,今後の検討課題であると考えられた.また,ドライマウス性味覚障害患者9名のうち,4名がシェーグレン症候群と診断された.
      味覚障害を主訴に来院する患者に対しては,常に口腔乾燥症の潜在的存在を疑って診療を行うべきである.また,シェーグレン症候群の存在も念頭においておくことが重要であると考えられた.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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