職域で13年間実施している歯科健康診査事業の継続受診効果を明らかにする目的で,歯科健康診査受診回数別に,口腔保健状態の変化を比較検討した.調査対象者は,1993年から2005年までに歯科健診事業を1回以上受診した者3,461名である.受診回数は,1回,2回,3〜4回,5〜6回,7〜8回,9回以上受診群に分類し,2回以上受診した群については,始めて受診した時をベースライン,2005年までの間で最後に受診した時を最終診査時とし,ベースラインから最終受診時の口腔保健状態の変化を受診回数群間で比較検討した.
その結果,2回以上受診群の歯周組織状態は,最終診査時にはベースラインよリCPIコード0のセクスタント数が増加し,CPIコード最大値が軽減していることおよびその改善傾向は7回以上受診群でより顕著であることが明らかとなった.また,受診回数が多い群ほど歯周組織の改善者率も高く,9回以上受診群ではCPIコード最大値の軽減が46.8%の者に,また,77.7%の者にCPIコード0セクスタント数の増加が認められた.健全歯数およびDMF歯数では,最終診査時にはベースラインより健全歯数が減少し,喪失歯数および処置歯数が増加していたものの,健全歯数の減少や喪失歯の増加傾向は,受診回数群間で明確な差は認められず,受診回数が多い群では,健全歯数の減少および喪失歯数の増加が抑制されたものと推察された.また,2回以上受診者の最終診査時の未処置歯数および未処置歯所有者率は,ベースラインより有意に減少し,さらに受診回数が多い群ほど少なくなっていた.
以上の結果より,歯科診療所を併設する事業所において,歯科健診事業を定期的に受診することは,口腔内の健康保持に有効であることが明らかとなった.さらに,受診を7回以上継続することで,歯周組織は増齢による悪化が認められず,健全に保持できることが明らかとなった.
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