歯科医学
Online ISSN : 2189-647X
Print ISSN : 0030-6150
ISSN-L : 0030-6150
74 巻, 2 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 南野 友希, 大西 祐一, 渡辺 昌広, 宇垣 吉秀, 濱田 真智, 井上 洋士, 伊達岡 聖, 柚木 大和, 中嶋 正博, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2011 年 74 巻 2 号 p. 35-39
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    顎骨領域において,失われた骨を再生する治療方法の1つとして,分化多能性をもつ幹細胞を用いる方法が近年注目を浴びている.顎顔面骨のほとんどは,体幹骨格のように中胚葉由来の軟骨性骨化とは異なり,神経堤に由来する.そこで本研究においてわれわれは,マウスES細胞を選択的に神経外胚葉に分化させ,効率的な神経堤細胞への分化誘導を検討した.まず,ES細胞を無血清神経誘導培地中でsphere形成させ,特異的抗体を用いた免疫組織染色で神経前駆細胞および神経堤前駆細胞の存在を確認した.その結果,sphere中のほとんどの細胞はNestin陽性の神経前駆細胞に分化し,その中にAP2α陽性の神経堤前駆細胞が高頻度で観察された.これらの結果は,未分化ES細胞がsphere中で神経前駆細胞を経て一部が神経堤前駆細胞に分化したことを示している.以上の結果は,無血清培養系を用いたES細胞から効率的に神経堤前駆細胞に分化可能であることを示唆している.
  • 井上 博, 角倉 紗恵子, 泉谷 剛行, 内橋 賢二, 西川 泰央
    原稿種別: 本文
    2011 年 74 巻 2 号 p. 40-47
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    歯周炎に侵された歯周組織には,リンパ球をはじめとする免疫担当細胞の浸潤が認められることにより,局所的免疫反応が歯周疾患発症の要因であると考えられる.免疫担当細胞の中でもNK細胞は細胞内感染物質に対する初期防御に重要である.ヒトInterleukin (IL)-17は,1995年に活性化CD4^T細胞から産生されるサイトカインとして報告された.また,IL-17レセプターは好中球やマクロファージを含む多くの細胞に発現するため,IL-17は各種炎症病態に関係する多様な生理活性をもっているが,NK細胞に対する作用はほとんど解明されていない.そこで今回私たちは,NK92細胞を用いて細胞増殖能や細胞傷害能に対するIL-17の影響について検討した.NK92細胞を抗IL-17RAにて標識後,細胞表面におけるIL-17RAの発現をFluorescence-activated cell sorting(FACS)にて解析した.その結果,NK92細胞はIL-17RAを強く発現していることを確認した.NK92細胞を96穴プレートに播種し,IL-2とIL-17を各種条件にて添加後,72時間培養した.次にWST-1溶液を加え3時間培養した後,吸光度を測定することにより細胞増殖能を検討した.その結果,NK92細胞の細胞増殖能に対するIL-17の効果は単独刺激およびIL-2との協調作用の両方において認められなかった.カルセインAMにて標識したK562細胞をIL-2やIL-17にて刺激したNK92細胞と4時間共培養した後,NK92細胞が殺傷したK562細胞から培養上清中へ放出されたカルセインAMを測定することにより細胞傷害能を検討した.その結果,IL-17はNK92細胞の細胞傷害能に対して抑制的に働くことが判明した.以上の結果からIL-17はNK92細胞の細胞増殖能に対して効果はないが,細胞傷害能に対しては抑制的に働くことが明らかになり,IL-17刺激はNK92細胞に抑制性のシグナルを伝達する可能性が示唆された.
  • 藤本 幸永, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2011 年 74 巻 2 号 p. 48-55
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    高野槙68%エタノール抽出液の抗菌物質を部分精製するために,ヘキサン,ジイソプロピルエーテル,酢酸エチル,ブタノールで分画した.各層を乾固し,60%エタノールで溶解して抗菌活性を測定した.抗菌活性は,Staphylococcus aureus ATCC 12600を指示菌としてsoft agarとともに流し固めた平板上に,それぞれの試料の2培連続希釈液10μLずつを滴下して培養し,発育阻止が認められた最大希釈の逆数で表した.各活性画分はそれぞれSephadex^<TM>LH-20によるゲル濾過で分画した.またゲル濾過で得られた活性画分は高速液体クロマトグラフ分析に供した.さらに各抗菌活性画分の抗菌域についても検索した.最も強い抗菌活性が認められたのはジイソプロピルエーテル層(74.1%)で,ついでヘキサン層(19.7%),酢酸エチル層(6.2%)の順であった.ブタノール層と水層に活性はみられなかった.ヘキサン層をゲル濾過に供した結果,2つのピークが得られ,活性は第1ピークと第2ピークの間(Hb)にみられた.ジイソプロピルエーテル層のゲル濾過では3つのピークが得られ,抗菌活性は第1ピーク(Ea),第2ピーク(Eb)および低分子画分(Ec)に認められた.またHb,EbおよびEc画分について高速液体クロマトグラフで分析した結果,Hb,Eb画分では混在物のため抗菌活性のあるピークを分離することはできなかったが,Ec画分では4つのピークが得られ,活性は3番目のピークにみられた.したがって今後,このピークの成分について明らかにする予定である.Hb,Ea,EbおよびEc画分の通性嫌気性菌,好気性菌,真菌に対する抗菌域は,名画分間で相違がみられた.また嫌気性菌に対しても同様であった.これらの結果を総合してみると,高野槙68%エタノール抽出液は,極性,分子量,抗菌域の異なる抗菌物質を複数含んでいると考えられる.
  • 柳瀬 香, 山中 武志, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2011 年 74 巻 2 号 p. 56-65
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    これまでに歯周炎病巣から分離したPrevotella intermedia(P.intermedia)が菌体外多糖を産生してバイオフィルムを形成する際,熱ショックタンパクの1つであるDnaK遺伝子転写レベルが上昇していることを報告してきた.近年の研究で,細菌由来のDnaKは宿主細胞に対する様々な生物学的活性をもった分子として働いていることも明らかにされつつある.本研究では,P. intermedia DnaKのバイオフィルム形成における役割と,宿主免疫に与える影響をさらに検討するため,リコンビナント化と特異抗体の作製を試みた.供試菌には既に全ゲノム配列が明らかにされているP.intermedia strain 17(strain 17)を用いた.データベース上の配列をもとに,strain 17のゲノムDNAをテンプレートとしてDnaK遺伝子のPCR増幅を行い,得られたPCR産物をTOPO cloning vectorに挿入し,配列がデータベース上のdnaKと相同であることをシークエンシングにより確認した.得られたDnaK遺伝子DNAをタンパク発現ベクターpETにligationし,目的遺伝子を含むpDAKを作製した.10ngのpDAKを50μLのコンピテント化したEscherichia coli(E.coli) BL21(DE3) pLysSに加え,通法に従い熱ショックにより形質転換した.目的タンパクの発現はSDSゲル電気泳動とN末端アミノ酸シークエンス分析によって確認した.得られた精製リコンビナントDnaKタンパクを免疫原として家兎ポリクローナル抗体を作製した.抗体価の上昇はリコンビナントタンパクとELISA法にて確認した.Strain 17のdnaK ORFを挿入したpDAKにより形質転換したE.coli BL21(DE3)pLysSの培養菌液をSDSゲル電気泳動したところ,分子量70kD付近に目的タンパクの発現を認め,N末端10残基の配列はstrain 17 DnaKと相同であった.家兎にリコンビナントDnaKを免疫して得られた抗体と,超音波破砕したstrain 17の菌体,培養上清ならびにリコンビナントタンパクを用いてウエスタンブロッティングを行ったところ,70kD 付近に特異的なバンドが認められた.今回の結果から,strain 17のdnaK ORFを基に得られたリコンビナントタンパクはDnaKと相同であること,これを免疫原として得られた抗体はwild-typeのP.intermedia DnaKを認識していることが示唆された.
  • 水野 博之, 真下 千穂, 福島 久典
    原稿種別: 本文
    2011 年 74 巻 2 号 p. 66-77
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー
    近年の研究により,Actinomyces属は歯垢形成におけるinitial colonizerとして重要な働きをしていることが分かってきた.そこで,Actinomyces属が保有する病原遺伝子を同定し,その機能を解明することは,歯垢形成メカニズムを明らかにするために非常に意義がある研究と考える.細菌が保有する個々の遺伝子機能を明らかにするためには,安定して利用できる遺伝子改変ツールが必要不可欠である.しかし,Actinomyces属において,有効なツールはほとんどないのが現状である.これまでにActinomyces属で複製できるプラスミドとして報告されているものは,pJRD215のみである.本プラスミドはグラム陰性菌のwide host-range conjugative cosmidベクターとして開発されたもので,グラム陽性のActinomyces属に必ずしも最適なツールとはいえない.本研究では,Actinomyces属に適したプラスミドベクターの開発のために,pJRD215全長の塩基配列を決定し,その遺伝学的背景を明らかにすることを試みた.得られた情報を基に,新たに薬剤耐性遺伝子をクローニングし,その発現を評価することにより,本プラスミドを基盤にした遺伝子発現系構築の可能性を検討した.また,本プラスミドを口腔由来の様々なActinomyces属細菌に形質転換し,pJRD215の適用範囲を調べた.pJRD215の塩基配列を解読した結果,全長10,317bpのプラスミドであることが明らかになった.プラスミド上には,複製,接合,薬剤耐性に関与する遺伝子やλファージ由来cosサイト,マルチクローニングサイトなどが内在していた.得られた遺伝情報を基に,pJRD215に内在するカナマイシン耐性遺伝子の終止コドン直後に,別の新たな薬剤耐性遺伝子(チオストレプトン耐性遺伝子あるいはトリメトプリム耐性遺伝子)をIn-Fusion cloning法によりクローニングし,2つの薬剤耐性遺伝子が直列につながったプラスミドを構築した.構築したプラスミドをActinomyces oris MG-1株(MG-1株)に形質転換し,新たな薬剤耐性化の有無を調べた結果,チオストレプトンあるいはトリメトプリム耐性化が確認できた.また,pJRD215を用いて口腔由来Actinomycesを形質転換した結果,pJRD215はMG-1株だけでなく,Actinomyces viscosusやActinomyces naeslundiiのいくつかの株においても複製することが分かった.本研究結果により,pJRD215はActinomyces属細菌での遺伝子発現系基盤ツールとして利用できることが証明された.今後は,pJRD215の内部配列を改変し,Actinomyces属でさらに良好に働くプラスミドを開発することが期待できる.
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
feedback
Top