歯科医学
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82 巻, 1 号
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  • 松﨑 悟士, 佐藤 正樹, 福本 貴宏, 鶴身 暁子, 龍田 光弘, 田中 順子, 田中 昌博
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 82 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    これまでに咬合発育各期での咬合接触の安定性についての研究は行われてきたが,いずれも咬合接触面積あるいは接触点の分布を解析したもので,咬合力による咬合安定性の評価は行われていない.T-Scanは,咬合力の時系列測定が可能な唯一の咬合検査機器であり,咬合力バランスを定量的に解析することができる. 本研究の目的は,T-Scanによる咬頭嵌合に伴う経時的な咬合力,時間および咬合力重心の移動軌跡の変化から,咬合発育各期での咬合の安定性を評価することである.被験者は,Hellmanの咬合発育段階のIIIIB期,IIIC期,IVA期,各期8名の男児とした.計測にT-Scanを用い,座位にてフランクフルト平面が床面と平行な頭位で,下顎安静位から,できるだけ速く,強く噛むように各被験者に指示した.計測項目は4項目とし,咬頭嵌合位における咬合力の左右差および前歯部と臼歯部の差,噛み始めから咬頭嵌合位に至るまでの時間および咬合力重心の移動軌跡の距離とした.咬合力の左右差および前歯部と臼歯部の差は,咬頭嵌合位での相対咬合力の差の絶対値(%)とした.咬頭嵌合位に至るまでの時間は,最大噛みしめを100%とした際の2%から90%まで上昇するのに要した時間(s)とした.咬合力重心の移動軌跡の距離は,最大噛みしめの10%から90%における移動距離(mm)とした.統計学的解析は,咬合発育段階を要因としたKruskal-Wallis検定を行い,統計学的有意差を認めた場合,Dunn-Bonferroni検定を行った(α=0.05).咬頭嵌合位における咬合力の左右差に統計学的有意差を認め,IIIB期がIIIC期,IVA期に対して有意に高い値を示した.咬頭嵌合位における咬合力の前歯部と臼歯部の差,噛み始めから咬頭嵌合位に至るまでの時間および咬合力重心の移動軌跡の距離に有意差を認めなかった.側方歯群交換期には最大噛みしめ時の咬合力分布の左右差に偏りは見られたが,嚙みしめに伴う咬合の安定性は保たれていることが示された.

  • 加納 慶太, 上根 昌子, 土居 貴士, 神 光一郎, 片岡 宏介, 三宅 達郎
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 82 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    近年,医療現場での感染予防対策は,年々その重要性を増している.特に,歯科口腔外科領域においては,直接患者の唾液や血液に曝露する機会が多く,病原体が患者から歯科医療従事者へ,歯科医療従事者から患者へ,あるいはある患者から別の患者への伝播といった院内感染につながる場合がある.そのため,受診患者の感染症を事前に知っておくことは重要である.しかし,そのスクリーニングに際し,血液血清学的検査が一般に行われない歯科医療機関においては,専ら問診に頼っているのが現状である.そこで筆者らは,歯科口腔外科受診患者における各種特殊感染症(HCV, HBV,梅毒)の有病率を調査するとともに,問診票による自己申告および歯科医師の問診による感染症の検出の有効性を明らかにすることを目的として本研究を行った.その結果,各種感染症の有病率は1,429 名中HCV 29 名(2.0%),HBV 8 名(0.6%),梅毒 2 名(0.1%),計39 名(2.7%)であった.それらの検出の有効性に関して,問診票を用いた場合は敏感度46.2%,特異度100%,歯科医師の問診を用いた場合は,敏感度47.6%,特異度100%であった.さらに,それらを併用した場合は,敏感度71.8%,特異度100%であった.患者申告に加え,厳密な問診を行うことによりその検出力は有意に増加したが,全ての感染症把握は不十分であることがわかった.以上より,今後もスタンダードプリコーションに基づいた感染防止対策を,進めていく必要があると考えた.

  • 小滝 真也, 植埜 修司, 辻 要, 池田 千浦子, 秋山 広徳, 四井 資隆, 井関 富雄, 富永 和也, 和唐 雅博, 清水谷 公成
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 82 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    口腔への転移性腫瘍は悪性腫瘍の約1%程度であり,診断には画像診断のみでなく,現症や既往歴も考慮する必要がある.今回われわれは,大腸癌再発に対する化学療法施行前に周術期口腔管理のための歯科治療を依頼されたことを契機に発見された大腸癌の下顎骨転移例を経験したので,画像所見及び臨床経過を報告する. 症例は70歳代の男性で,主訴は左側下顎骨の腫脹および疼痛であった.既往歴として2年前に大腸癌で大腸切除術および術後化学療法が施行されていた.その後,経過観察時のFDG‐PET/CT(18F‐fluorodeoxyglucose Positron Emission Tomography and Computed Tomography)検査で局所再発および周囲リンパ節転移が強く疑われていた. 初診時の画像所見として,パノラマX線画像で左側下顎骨に著明な骨変化は指摘できなかった.CTでは左側下顎骨に骨膜反応を認め,左側下顎骨骨髄炎と診断された.2か月後,左側顔面部の腫脹および疼痛が顕著にみられ,病変精査のためCT, Magnetic Resonance Imaging(MRI)が施行された.CTでは左側咀嚼筋間隙に筋よりやや低いdensityを示す腫瘤を認めた.MRIでは左側下顎骨骨体部にT1強調像で筋と比して低から等信号,脂肪抑制T2強調像で不均一な高信号を示す領域を認め,Apparent Diffusion Coefficient(ADC)mapで左側下顎部に腫瘤形成を認めた.口腔外科入院下での生検の結果,Adenocarcinomaと診断され,既存の大腸癌の検体と病理組織学的所見が一致した. 本症例ではパノラマX線画像で,左側下顎骨に明らかな骨破壊像や透過像を指摘できなかった.CT時にも膿瘍形成か腫瘤かの鑑別はやや困難であった.以上より,悪性腫瘍の既往があり,顎骨に腫脹や疼痛といった症状がある場合は,臨床所見も考慮したうえで,パノラマX線画像やCTで経過観察するのみではなく,MRIを組み合わせることで,より診断の一助となる可能性が示された.

  • 2019 年 82 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    1. 西川哲成, 今井弘一, 王宝禮, 松本秀範, 益野一哉, 坂下和子, 田中昭男, 川添堯彬. 4年次冬季強化合宿の実践.

    2. 安井由香, 田中順子, 覺道昌樹, 田中昌博. アイトラッカーを用いた若年層と高齢者における食形態の変化に伴う嗜好と視線の関連.

    3. 杉立尚城, 田中順子, 田中昌博. 試作した全顎咬合印象用トレーで製作した歯列模型の咬合接触の再現性: 通法と咬合印象用の比較.

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