Methicillin-resistant, coagulase-negative staphylococci (MRCNS) の病原性状を知る目的で, 上皮細胞への付着性, 赤血球凝集性, 酵素産生性および enterotoxin 産生性について検討した.
すべての菌株が上皮細胞への付着性を示した. Mannitol 発酵株では, 1細胞あたりの平均付着菌数は331.5個であった. 一方, mannitol 非発酵株では, 病院環境, ヒト鼻粘膜由来の双方とも供試菌株の50%以上が, 1細胞あたり500個以上の付着性を示した. これらの値は, mannitol 発酵株, 非発酵株ともこれまで報告されている methicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) の付着性よりもはるかに高く, 付着性の面からは, MRCNSは MRSAより病原性が強いと考えられる.
上皮細胞に対して強い付着性と弱い付着性を示す菌株を選び, 表層構造を比較した結果, 両グループとも線毛様構造がみられる菌株や表層構造に凹凸が多い菌株などが観察された. しかし, それぞれのグループで特徴のある形態を見いだすことはできなかった. また, 両グループの赤血球凝集性を比較したところ, 両者の間に明瞭な相違は認められなかった. これらの結果は, MRCNSの上皮細胞への付着性と赤血球凝集性とが異なる因子によって仲介されていることを示唆している.
MRCNSの加水分解酵素産生性を検討した結果, lecithinase, lipase, DNase, β-lactamase あるいは hyaluronidase を産生する菌株がみられた. 病院環境由来株, ヒト鼻粘膜由来株ともに, mannitol 発酵株と非発酵株との間で酵素産生性が異なっていた. Mannitol 発酵株では hyaluronidase 産生株がみられたのに対し, 非発酵株ではみられず, 逆に, mannitol 非発酵株では50%以上の菌株が lecithinase を産生したのに対し, 発酵株では産生しなかった.
以上の結果から, MRCNS には MRSA に匹敵する病原性があると推定される.
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