歯科医学
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86 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • アンケート調査からの考察
    佐久間 泰司, 柿本 和俊, 山本 さつき, 吉川 一志, 渡辺 昌広
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 86 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    我々は大学生が歯科技工士・歯科衛生士となるために主体的な学びを行う前提として,学生が大学教育に何を求めているかをアンケート調査した.それを踏まえ学生が求める教育ニーズを明らかにし,学生が主体的に学び主体的に授業に参加する方法を検討した.

    その結果,両学生ともに入学目的は「歯科に関わる仕事がしたいから」,「歯科技工士(歯科衛生士)にあこがれていたから」が高得点を示し,多くの学生が歯科診療への関与あるいは歯科技工士・歯科衛生士資格取得を目的に入学していることが明らかとなった.主体的な学びの観点からは,専門知識を深め,興味ある分野を深く掘り下げる教育が必要であると考えられた.一方,大学教育は汎用的コンピテンシー育成も重要な任務であり,ジェネリックスキルを身につけることの重要性に気付かせる方略も必要であると考えられた.歯科技工士・歯科衛生士に必要なものを問うたところ,両学生ともに「歯科(技工)の技術」が高得点であった.歯科は技術的要素が大きく,確かな技術が患者の健康に直結するので,この認識は正しいであろう.「(歯科医師への)分かりやすい説明技術」,すなわちコミュニケーション・スキルについては,衛生士学生に肯定的な意見が多かった.理想自己として「なりたい歯科技工士・歯科衛生士像」を問うたところ,技術のみならず人間として評価されることを重視していた.

    教員は以上の視点を踏まえ主体的な学びを援助することが重要と考えられた.

  • 松本 恭子, 今井 弘一, 和唐 雅博
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 86 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    口腔扁平苔癬(Oral Lichen Planus: OLP)は口腔粘膜に好発し,病因は未だ明らかにはなっていない.多くは難治性であり,身体的苦痛,心理的不快感によって口腔衛生管理が低下する.本研究の目的は,口腔扁平苔癬を発症している患者に歯科衛生士が行う歯科保健指導,歯科予防処置の役割について検討を行った.

    OLPと病理組織検査にて確定診断を得た24名について,性別,年齢,来院理由,病変発現部位,臨床視診型,疼痛の有無,病変発現部位と接触している近隣歯の金属補綴の有無,口腔清掃状態,標準的な成人歯科健診プログラム・保健指導マニュアル(生活歯援プログラム)を用いた質問表の記入を行った.

    24名のうち男性7名,女性17名で,男女比は1 : 2.4,平均年齢は61.2歳(45歳~80歳)であった.大阪歯科大学口腔外科への紹介受診は22名であった.紹介患者の来院理由は精密検査希望が14名,疼痛ありが6名であった.発症部位は頬粘膜が最多で18名,他に舌が3名,歯肉が3名であった.臨床視診型分類は,白色型が20名,紅色型が4名であった.歯科保健指導が必要とされた13名の1回目のPlaque Control Record(PCR)結果は3%~82%(平均43.38%)であった.

    歯科衛生士は,専門的な技術と知識を理解して,患者と共に口腔衛生管理の維持や改善に参画する必要があると示唆された.

  • 田中 克弥, 吉本 仁, 閔 理泓, 窪田 亮介, 窪 寛仁, 大西 祐一
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 86 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    高齢者社会が急速に進んでいる昨今,90歳以上の超高齢者への外科手術はまれでなくなってきた.今回われわれは超高齢者MRONJ患者に対し,全身麻酔下で外科的療法を施行した4例について検討を行った.4例の年齢は平均94.3歳で,骨粗鬆症の治療に対して3例はビスフォスフォネート製剤の内服,1例はデノスマブ製剤の皮下注射を行っていた.すべての症例で重大な術後合併症なども認められず術後の経過も良好であった.しかし,超高齢者の手術では全身状態や社会背景から手術の適応をより慎重に判断し,quality of lifeの改善を最優先した治療を選択する必要があり,慎重に検討が必要であると考えられた.

  • 梶 貢三子, 前岨 亜優子, 大西 愛, 寺島 雅子, 尾形 祐己, 頭山 高子, 和唐 雅博, 田中 昭男, 今井 弘一
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 86 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    歯科衛生士は,近年,国民の多種多様なニーズに対応するために国民の健康維持・増進に係る多職種と連携をとることが必要とされている.大阪歯科大学の歯科衛生士養成教育は,2017年4月に3年制の専門学校から4年制の大学へ移行した.今回,3年間の修業年限を基盤とする専門学校生と4年間の修業年限を基盤とする大学生に質問紙調査を行い,学修意欲の変化を把握することで効果的な学修支援のあり方を検討した.

    2017年度に入学した大学生39名と2017年度第2学年の専門学校生41名を対象とし,卒業するまでに5回,質問紙を用い学修意欲の変化を追跡調査した.質問紙の調査項目は,「計画・目標がある」「意欲がある」「自主的である」「歯科衛生士への願望」「学外学修時間」の5項目である.「学外学修時間」は0~3点,そのほかの項目は1~5点で自己評価した.

    専門学校生は,どの質問項目についても自己評価は臨地実習開始時に高く臨床実習期間中に下降し国家試験翌日には高くなる傾向があった.一方,大学生は,質問項目のうち「意欲がある」「歯科衛生士への願望」が臨地実習開始時には高いが,臨床実習期間中から国家試験翌日まで低いままであった.入学時の「歯科衛生士国家試験受験資格取得」のモチベーションを強く継続するためにも大学生の自主性,目的意識を入学時から継続して引き出しながら学修支援を行うことが必要であると示唆された.

  • 田代 悠一郎, 三宅 晃子, 小正 聡, 松本 卓巳, 前川 賢治
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 86 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    義歯を使用する高齢者の健康維持には,補綴装置を清潔な状態に保つことが重要である.その一助となる基礎的検討として,補綴装置に対する汚れの付着メカニズムの理解が有用となる可能性がある.我々は補綴装置に付着する汚れの付着メカニズムの解明のため,共振周波数の減少量から物質の吸着量を経時的に測定できるQuartz Crystal Microbalance(QCM)システムを使用し,義歯に対する汚れの吸着挙動を検討してきた.本研究では,汚染物質として義歯洗浄剤の開発で汚れの指標として用いられる牛脂汚垢を使用し,義歯床に対する牛脂汚垢の吸着挙動に関して比較・検討することを目的とした.

    市販のAu QCMセンサ(initium社製)にポリメチルメタクリレート(PMMA)を成膜してPMMA QCMセンサを作製した.まず,QCMセンサの表面を走査型プローブ顕微鏡およびX線光電子分光分析装置で観察した.また,QCM装置(AffinixQNμ: Initium,東京,日本)を使用し,Au QCMセンサおよびPMMA QCMセンサにおける牛脂汚垢付着量を定量化した.

    PMMA QCMセンサを表面解析したところ,Auセンサ表面にPMMAが均一に成膜されていることが明らかとなった.また,QCM測定結果では,AuとPMMA QCMセンサともに,牛脂汚垢滴下直後より共振周波数の減少が見られ,センサ表面上に牛脂汚垢の付着を認めた.滴下30分後の共振周波数の減少量をSauerbreyの公式にあてはめた結果,Au QCMセンサでは約60.64ng cm-2, PMMA QCMセンサでは約1271.1ng cm-2となり,PMMA QCMセンサはAu QCMセンサと比較して,牛脂汚垢付着量が有意に多かった.以上の結果より,義歯床用レジンには,過去に明らかとされている他の因子と同様に,牛脂汚垢も付着しやすいことが明らかとなった.

臨床報告
  • 窪田 亮介, 柚木 大和, 井奥 雄介, 田中 克弥, 竹信 俊彦
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 86 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    今回われわれは抜歯後出血を契機に,著明なPT-INR 延長の症例を経験したので報告する.79歳女性,慢性心房細動にてワルファリン1.5mg/日を内服していた.凝固因子の血液検査は4か月前が最終でPT-INRは1.66だった.2か月前から食思低下があり,血清アルブミン値は2週間前の検査で2.8g/dLであった.9月某日,近歯科医院にて右上側切歯と第一大臼歯を抜歯.その当日抜歯後出血にて本院を紹介され来院した.酸化セルロースを挿入し縫合を行い,止血を確認後施設に帰宅した.翌朝,同部からの再出血を認めたため来院し,血液検査したところ,PT-INRが10以上の延長を認めた.入院の上,再度止血処置を行い,ビタミンK 20mgを点滴.その後出血は認めなかった.貧血の進行と食思低下が低アルブミン血症を招いたと思われる.

  • 谷口 諒至, 吉田 博昭, 池田 隼人, 高杉 典史, 石川 敬彬, 姫嶋 皓大, 覺道 昌樹, 小滝 真也, 富永 和也, 井関 富雄
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 86 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    梅毒はTreponema pallidum(以下T.p)による性感染症である.近年,性感染症に対する予防意識の低下や性行動の多様化により,罹患率の急増が指摘されている.更に梅毒は口腔粘膜病変を契機に診断へ至る機会も多く,歯科医師も診断,治療について熟知し,遭遇した際には見逃してはならない重要な感染症である.

    義歯性線維腫は不適合な義歯の床縁による持続的な慢性刺激によって生じるものと言われている.外科的処置にて切除されることが多く,病変が広範な症例では口腔前庭形成術,歯槽堤形成術なども行われる.

    今回,未治療の梅毒患者にみられた上下顎歯槽部全体に及ぶ広範な義歯性線維腫の1例を経験したので報告する.

    患者は56歳の男性で上下顎歯槽部全体に及ぶ広範な腫瘤が認められた.腫瘤は義歯性線維腫であった.血液検査から未治療の梅毒感染であることが判明した.腫瘤の切除およびアモキシシリン水和物の内服投与を行い,経過良好である.

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