歯科医学
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72 巻, 1 号
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  • 伊藤 秀高, 古川 麻希子, 國場 幸恒, 土居 聖, 加藤 尚, 松野 彰仁, 奥田 恵司, 田中 康隆, 紺井 拡隆, 前田 照太, 岡 ...
    原稿種別: 本文
    2009 年 72 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2009/03/25
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    日常臨床において義歯を装着した患者が,粘膜部の疼痛を訴えることがよくある.しかし,不適合義歯がどの程度,患者にストレスとなっているかの具体的指標はない.そこで健常者に実験的口蓋床を用いて口蓋粘膜の局所に圧刺激を与え,その時の唾液中のコルチゾール濃度とα-アミラーゼの活性変動を測定することにより,口蓋粘膜への不快刺激によるストレス反応を客観的に評価することを目的とした.被験者は,健常有歯顎者(男性6名,女性7名;平均年齢26.4±1.8歳)とした.実験は,口蓋床装着(以下D),局所加圧プレートを付与した口蓋床装着(以下DP)および口蓋床非装着(以下N)をランダムな順で各20分間装着させ唾液を採取した.局所加圧プレートは正中口蓋縫合線と左右第一大臼歯の近心頬側咬頭間線が交叉する点に直径2.5mm,厚さ0.5mmのアクリル板を口蓋床の内面に接着した.実験の前後に不安状態を測定できるSTAIを記入させた.各条件の終了後に疼痛および違和感についてのVASをDPおよびDの条件で記入させた.得られた唾液サンプルは,コルチゾールおよびα-アミラーゼ専用の分析キットを用いて測定した.測定結果を比較検討した結果,コルチゾール濃度およびα-アミラーゼ活性値は,DとNとの間には有意差はみられなかったがDPはNおよびDに比べ有意に増加していた(p<0.01).コルチゾール濃度,α-アミラーゼ活性値および,それぞれの増加の程度を表すDP/D比をそれぞれ求め,STAIおよびVASとの関係を調べた.α-アミラーゼとSTAI特性不安との間(r=0.658,p<0.05)およびα-アミラーゼのDP/D比と疼痛のVASとの間(r=0.603,p<0.05)に正の相関がみられた.以上の結果から,口蓋粘膜への局所圧刺激はコルチゾール濃度およびα-アミラーゼ活性値を上昇させることが明らかとなった.また,疼痛などの不快感を伴う不適合義歯は患者にとってストレッサとなることが示唆された.さらに不安傾向にある者は,不安傾向にない者と比較して,同程度の口蓋部への刺激でも,よりストレスを生じやすい可能性が示唆された.
  • 奥田 勝也, 中嶋 正博, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2009 年 72 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2009/03/25
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    下顎枝矢状分割術は顎変形症に対して広く用いられているが,術後経過中に後戻りを経験することがある.後戻りの原因の一つとして,術後咬合力などの生体力学的影響が考えられる.そこで,われわれは術後の咬合力や閉口筋筋力が下顎骨や骨接合プレートに及ぼす応力分布の推移について三次元有限要素法を用い経時的に応力解析を行い検討した.すなわち,CT画像データから下顎枝矢状分割術後1か月,3か月,6か月および12か月の下顎骨モデルを作製し,各モデルに咬合力および閉口筋筋力を付与し近位骨片,遠位骨片,骨接合部および骨接合プレートにおける相当応力を調べた.近位および遠位骨片における相当応力は術後1か月から術後12か月にかけて経時的に増大傾向を認めた.特に,各期間において下顎枝前縁部に高い応力の集中を認めた.骨接合部における相当応力は術後1か月から術後6か月にかけて応力の増大を認めたが,術後12か月では減少していた.術後の咬合力および閉口筋筋力により,近位骨片の下顎枝前縁部に応力の集中を認め,術後3か月から6か月の間に骨接合部の骨切り線の上端と下端に引っ張り応力の集中を認めたことから,術後6か月までは遠位骨片に時計回りの回転方向の応力が加わることが生体力学的解析で判明した.以上のことから,下顎枝矢状分割術を施行した際,術後3か月から6か月の間に後戻りの危険性のあることが示唆された.
  • 嶋田 景介, 蝿庭 秀也, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2009 年 72 巻 1 号 p. 18-33
    発行日: 2009/03/25
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,インプラント体周囲の歯槽骨に及ぼすPRP(Platelet-rich plasma)の影響を明らかにすることである.現在までPRPに関して様々な報告がなされているが,インプラント埋入後の骨形成初期過程においてPRP中のどのような成長因子が,インプラント体周囲の新生骨形成を促進しているのか,さらに,骨質,新生骨量および術前と術後の新生骨の骨石灰化速度の違いについては明確にされていない.そこで本研究は免疫組織化学的染色ならびに組織学的手法で上記の点を観察した.雌性ビーグル成犬6頭を用い,実験的にインプラント埋入時の骨裂開を想定した歯槽骨欠損を作製し,欠損部にインプラント体を埋入した.それぞれのインプラント体周囲の骨欠損部に血餅群,自家骨のみを移植した群,PRPのみを移植した群およびPRP+自家骨を移植した群に分けて比較検討した.インプラント体周囲の骨欠損部へPRPを併用することにより,以下の結果を得た.1.組織学的所見において,PRP+自家骨移植群に幼若な新生血管および新生骨を認めた.2.免疫組織化学的所見において,初期過程に放出される成長因子はいずれの過程においてもTGF-βおよびbFGFが高値を示した.また,PRP+自家骨移植群において早期のVEGF陽性反応を認めた.3.骨組織形態計測法による観察において,骨質,新生骨量および術前と術後の新生骨の骨石灰化速度が明らかになり,PRP+自家骨移植群では他の群と比較して骨質,新生骨量および骨石灰化速度のすべてにおいて高値を示していた.また,PRP移植群に比べ自家骨移植群に新生骨形成能があることを認めた.さらに,Villanueva bone stainは新生骨の観察には有効な手法であると考えられた.以上の結果より,インプラント体周囲の骨欠損部に対する自家骨移植にPRPを併用すると,組織の創傷治癒に必要な血管の増生を促進し,長期的な骨再生に効果があることが示唆された.
大阪歯科学会例会抄録
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
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