歯科医学
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53 巻, 6 号
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  • 長谷川 彰則
    原稿種別: 本文
    1990 年 53 巻 6 号 p. 463-474
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
    口腔内から体性感覚入力を受ける後内側腹側核ニューロン, すなわち後内側腹側核における舌および歯根膜ニューロンの大脳皮質への投射を調べ, これらのニューロンの機能的意義を明らかにしようと試みた.
    実験にはウレタン・クロラローズで麻酔したネコを用い, 視床における単一ニューロン活動の導出には, 2% pontamine sky blue含有の0.5M酢酸ナトリウム溶液を充填したガラス毛細管微小電極を用いた. ニューロン活動の記録部位は, 電気泳動的に色素を注入し, 脳を灌流固定して組織学的に同定した. なお, 末梢受容野への刺激には非侵害性機械的刺激と, 鼓索神経を切断して舌からの味覚性入力を遮断した舌神経ならびに歯根膜に対する電気刺激とを用いた.
    舌神経電気刺激による大脳皮質誘発電位は, SI, SIIおよびSIIIに相当する大脳皮質体性感覚野のほか, 大脳皮質冠状回眼窩面からも記録された. 口腔内の非侵害性機械的刺激に反応するニューロンは, 小細胞部外側部と固有部内側部とから検出された. このうち, 小細胞部のものは同側の舌あるいは歯根膜への刺激に, また固有部のものは対側の舌あるいは歯根膜への刺激にそれぞれ反応した. 小細胞部ニューロンは, 冠状回の舌投射野に, また固有部ニューロンは大脳皮質体性感覚野SIに電気刺激を加えるとそれぞれ逆方向性に興奮した. また, 非勧化していないネコを用いて冠状回眼窩面を電気刺激すると開口運動が誘発されることがわかった.
    以上の結果から, 同側の口腔内体性感覚入力は小細胞部外側部に, 対側のものは固有部内側部にそれぞれ送られ, さらに両者は大脳皮質に投射することが証明された. また, 小細胞部外側部で中継されて冠状回眼窩面に送られる同側性入力は咀嚼運動の調節に関与する可能性が示唆された.
  • 岡本 卓士, 塚本 芳雄
    原稿種別: 本文
    1990 年 53 巻 6 号 p. 475-490
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
    ヒトの歯髄組織に由来する, 性質の異なる2種の線維芽細胞 (HPF-1およびHPF-2) の増殖能, タンパク合成能, アルカリホスファターゼ (ALPase) 活性, および走化性を検討し, ヒト歯肉由来の正常線維芽細胞株 (Gin1) と比較した.
    線維芽細胞は10%の割合でウシ胎児血清を添加したDulbecco's modified Eagle培養液中で培養して実験に用いた. 増殖は細胞数の増減で, タンパク量はprotein-dye binding法で, ALPase活性はフェニルリン酸法で, 走化性はmembrane filter法でそれぞれ測定した.
    その結果, HPF-1の増殖はHPF-2より活発であったが, タンパク量の増加率では差がなかった. HPF-1およびHPF-2のALPase活性は活性型ビタミンD3を添加するとそれぞれ約5倍および10倍以上に上昇した. HPF-1のconditioned mediumを添加した培養液中で増殖能が最も増強したのはHPF-1で, 続いてHPF-2, Gin 1の順に細胞数の増加率は低くなった. しかし, 総タンパク量を比較すると細胞間で差は認められなかった. また, conditioned medium添加によってHPF-1およびHPF-2のALPase活性はそれぞれ対照の約2倍および3.5〜5倍に上昇した. Conditioned mediumに対する走化性を比較した実験では, すべての細胞株にほとんど同程度の活性が認められた.
    以上の結果から, ヒト歯髄由来の線維芽細胞はヒト歯肉由来の線維芽細胞と比較して, 活性型ビタミンD3に対するALPase活性の反応性が大きく異なる. また, 歯髄の線維芽細胞には, 細胞の増加数と総タンパク量の比率やALPase活性の反応性が異なる細胞種が混在する. これらの細胞の性質を明らかにすることが歯髄組織の特殊な生物学的性質を解明する手がかりになると考える.
  • 深尾 正
    原稿種別: 本文
    1990 年 53 巻 6 号 p. 491-522
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
    低濃度のフッ素を徐放するIntraoral fluoride releasing device (以下IFRD) の使用を想定して, 脱灰過程のエナメル質における脱灰抑制効果を検討した. フッ化ナトリウムを含む酢酸緩衝液 (pH4.4, フッ素濃度0.3, 1.0, 10.0および100.0ppm) でウシエナメル質を脱灰した. また, 同様のフッ素濃度の浸漬液に長期間 (30, 60および90日) 浸漬した試料をフッ素を含む酢酸緩衝液で脱灰することにより, フッ化物溶液浸漬による脱灰抑制と脱灰液へのフッ素添加による脱灰抑制との複合効果について実験的に検討し, 以下のような結果を得た.
    1. 脱灰液中のフッ素濃度が高いほどエナメル質の脱灰量は減少した. また, 脱灰時間が経過するに従って脱灰量は減少傾向を示し, その傾向は脱灰液中のフッ素濃度が高こほど著明であった.
    2. Abrasive法により脱灰エナメル質に取り込まれたフッ素量を測定したところ, 脱灰液中のフッ素濃度が高いほどエナメル質深部にまで多量にフッ素が取り込まれていた. また, いずれの実験群においてもエナメル質の脱灰層に多量のフッ素が認められた.
    3. 脱灰後の反応生成物をエックス線回折法により定性分析したところ, 脱灰液中のフッ素濃度が100.0ppmでは, エナメル質の最表層部にフッ化カルシウムの形成が認められた.
    4. フッ化物溶液に浸漬したエナメル質をフッ素を含む脱灰液で脱灰すると, 脱灰量は著明に減少した.
    以上のことから, IFRD法を想定し, エナメル質の脱灰過程にフッ素を作用させると, フッ素は脱灰部に取り込まれて同部を強化し脱灰を抑制するとともに, フッ素濃度100.0ppmではフッ化カルシウムが形成されることが明らかになった.
  • 島田 勝弘, 嘉藤 幹夫
    原稿種別: 本文
    1990 年 53 巻 6 号 p. 523-531
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
    乳歯の痛みを誘発させる外来刺激となる温・冷熱食品, 冷風 (温度刺激) を加えたとき, どれくらいの温度変化で乳歯に痛みが発現するかについての研究はまったく行われていないのが現状である.
    そこで, 私たちは, 下顎第二乳臼歯の咬合面窩洞の深さと修復材料の熱伝導係数の変動による修復物および歯質内の温・冷熱分布の相違について有限要素法で解析し, 歯痛との関連について解明しようとした.
    その結果, 以下の結論を得た.
    1. 正常な下顎第二乳臼歯の咬合面では, 約56℃の温熱荷重, 約21℃の冷熱荷重のときそれぞれ歯痛が発現する閾値に到達し, その閾値は髄角部で最初に発現した.
    2. 下顎第二乳臼歯の修復時には, 温度刺激が一定であれば, 熱伝導係数の低い修復材料ほど歯痛の発現が低くなり, 熱伝導係数の低い修復材料ほど窩洞が深くなるにつれて歯痛の発現がいっそう低くなった.
    今回の研究によって, 歯痛の発現という観点から修復材料は熱伝導係数の低いものが最適であることが実証された.
  • 阪本 貴司, 植野 茂, 梶 隆一, 井関 富雄, 大竹 智子, 城戸 仁博, 白数 力也
    原稿種別: 本文
    1990 年 53 巻 6 号 p. 532-536
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
    下顎歯内に発生した粘液線維腫の2例を電顕的および組織化学的に検索した. 病理組織学的に腫瘍はすう疎な粘液性結合組織で構成され, 星状あるいは紡錘形の細胞が散在性に観察された. 電顕的にはミトコンドリア, r-ERおよびゴルジ装置が豊富なpale cellと細胞内小器官の乏しいdark cellの2種類の細胞が観察された. Pale cellはアルカリフォスファターゼ活性が陽性で, 粘液分泌細胞であると考えられた.
大阪歯科学会例会抄録
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