歯科医学
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85 巻, 1 号
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  • 明田 泰江, 元根 正晴, 貴島 真佐子, 糸田 昌隆, 柿本 和俊
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    2016年の歯科疾患実態調査によると,高齢者の現在歯数は年々増加しており,口腔衛生管理がますます重要になっている.一方で,高齢者は身体能力の低下から歯ブラシ使用が困難になると思われる.そこで,本研究は高齢者の口腔衛生管理における電動歯ブラシの使用感,清掃性および歯周組織への影響と筋力や巧緻性との関連を明らかにすることによって,高齢者に対する電動歯ブラシの効果に関連する要因について検討した.

    歯科診療所に定期健診のために来院した満65歳以上の患者10人とリハビリテーション病院に入院する満65歳以上の患者7人を被験者として,健康状態や口腔清掃に関する質問紙による事前調査と検査を行った.検査項目は,歯周ポケット(PD),ポケット測定時の出血の有無(BOP),歯の動揺度,プラークコントロールレコード(PCR%),握力および巧緻動作とした.検査後,電動歯ブラシによる口腔清掃指導を行い,3週間自宅にて口腔清掃を実施した後,同様の検査を行い,その関連を検討した.なお,1人が電動歯ブラシの使用を中断したため,3週間後の調査は16人となった.

    電動歯ブラシの使用によってPCR,BOPともに有意に減少した(p<0.01).回帰の分散分析の結果,電動歯ブラシ使用前のPCRは,年齢が高い,握力が小さい,BMIが小さい,残存歯が少ないほど大きかった.BOPは,BMIが小さいほど大きかった.また,電動歯ブラシの使用によるPCRの減少は,年齢が高い,握力が小さい,残存歯数が少ないほど大きかった.

    以上の結果から,電動歯ブラシの効果には握力や残存歯数が関係していることが判明した.

  • 池田 千浦子, 岡村 友玄, 崔 晋豪, 磯野 治実, 山本 裕馬, 富永 和也
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    実験目的:科目試験(単位試験)に対し,学習者である学生はしばしば「一夜漬け」の試験勉強を行うため知識の定着が悪い.そこで本学では,形成的評価として各単元の区切りに中間試験を設定し,病理学では3回行っている.試験の方法として,多肢選択式と記述式とが一般的である.今回,試験時間内に自習時間を挟み,同じ試験範囲を2回試験する,いわゆる「サンドイッチ型」の方法を考案し,「サンドイッチ型」記述式と多肢選択式との中間試験の方法の違いによって学生の知識定着に差が生じるのかどうかについて,中間試験,実習試験および科目試験の採点結果を比較することで検討した.

    実験材料および方法:2018年度の中間試験では50分間の多肢選択問題を採用した.2019年度の中間試験では記述式問題を採用し,10分間の試験,約25分間の自習後,同範囲での10分間の試験とし,途中で自習時間を設け,1日(1度)の試験で計2回の試験を行った.各年度の中間試験,実習試験および科目試験の結果を対比し,中間試験の出題形式の違いによる知識定着率の差を解析した.

    実験結果:2019年度の中間試験得点率の平均は自習前が74%,自習後が87%と自習後の得点率が向上した.各年度の中間試験の合計得点率は,2018年度が84%,2019年度が81%と多肢選択問題を採用した年度のほうが高かったが,科目試験の合格者数はそれぞれ78%,91%と記述式問題を採用した年度のほうが高かった.

    考察および結論:中間試験に多肢選択式ではなく記述式の問題を用いること,そして,試験時間内に記述式の試験を2回行い,間に自習時間を設けることで,科目試験の合格者数が増加したことから,今回,考案したサンドイッチ型試験は学習者の知識定着に有効であることが示唆された.

  • 小滝 真也, 蒲生 祥子, 髙橋 梢吾, 財家 俊幸, 髙石 江里奈, 近藤 淳史, 森勢 里美, 秋山 広徳, 有地 淑子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    大阪歯科大学におけるレントゲン線学の授業開始および附属病院における診療開始は1917年に遡り,現東京歯科大学(1914年),現日本歯科大学(1916年)とほぼ同時期であった.現在まで,本学附属病院中央画像検査室において撮影検査ごとの検査数やその推移に関する調査は十分ではなく,中央画像検査室の役割に関しても本院内で明確に定義づけされていないのが現状である.そこで今回,過去10年間における中央画像検査室における撮影検査ごとの検査数およびその推移を提示し,今後の中央画像検査室の役割ならびに歯科放射線学講座の役割と課題について検討を加えたので報告する.調査は2010年4月1日から2020年3月31日までの間に本学附属病院を受診し,中央画像検査室において画像検査を受けた患者を対象とした.2010年以降の検査数に関しては年々増加傾向にあり,2019年度が最も多く33,403件であった.過去10年間で延べ269,170件の画像検査を施行していた.中央画像検査室としての過去10年間でMRIを含めた検査数は計24,106件から33,403件へと約1.4倍に増加しており,今後もさらなる検査数の増加が見込まれる.特に歯科用コーンビームCTの増加は著しく約6倍となった.

    今回の結果から,将来展望として歯科医療における歯科用コーンビームCTの役割がさらに増大し,顎関節症や口腔病変の診断におけるMRIの適応も拡大しつつある.歯科用コーンビームCT・MRIに付帯する装置原理・画像解剖・画像診断等の知識も必要とされる.それらを踏まえたうえで,中央画像検査室の本院内および歯科放射線学講座の学内での役割を果たすためにも,今後も臨床・教育・研究に力を注いでいきたい.

  • 大下 修弘, 三谷 早希, 内田 琢也, 新井 由起子, 金田 一弘, 安留 輝之, 真鍋 庸三, 中嶋 正博, 百田 義弘
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    周術期管理での胃管は術中に挿入・抜去される場合が多く,胃管管理の情報は,麻酔記録への記載が頼りとなる.今回,我々はチェックリストを作成し,胃管挿入・抜去時の情報の記載を簡潔に行えるようにした.当院では,全症例数の47.4%,年間278例の症例に胃管を挿入していた.チェックリスト使用率(記載率)は53.6%であった.胃管情報に加え,挿入を難しくする患者要因,難易度,挿入やり直し回数,使用器具などの記載を行うようにした.回収したリストを検討すると,再挿入を数回行うものは20例(13.9%)あったが,挿入の難易度は「普通」と評価していた.栄養用の胃管挿入時は,全例ガイドワイヤーを使用していたが,排液用の挿入時に比べ,喉頭鏡の併用率が高く,挿入時の注意が伺えた.

    チェックリスト内には,誤挿入を減らすべく方法も列挙し,留置時の確認方法の記載を重要視した.チェックリストの記載率に対して,チェックリスト未使用の症例の麻酔記録への情報記載で,挿入後の確認方法は23%と低かった.確認方法は,吸引法や聴診法など現行の方法が多かったが,吸引した液体のpHを測定する新たな確認方法が12.5%の症例で使用された.1例のみpHの高い胃液が確認された.今回,栄養胃管で術後のレントゲン撮影後,誤挿入ではない再挿入が1例確認されたのに対し,チェックリスト未使用症例では,誤挿入を含む再挿入が2例確認された.

    結論として,チェックリスト使用率は,53.6%に留まったが,現行の麻酔記録への記載の正確性も低く,チェックリスト使用へ移行する方が良いと思われた.チェックリストは,詳細な記載ができることから挿入困難の検討などのフィードバック材料になった.さらに胃管留置部位の確認を行うことで医療安全上,気管支,肺への誤挿入を軽減でき,臓器損傷や誤投与を予防できる.

  • 柳田 沙織, 貴島 真佐子, 前岨 亜優子, 筧 恵子, 大森 あかね, 今井 美季子, 永久 景那, 糸田 昌隆
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 28-38
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下機能のうち,嚥下反射惹起運動は末梢からの求心性刺激が必要である.嚥下反射惹起において,口腔器官は重要な運動器官であり感覚器官でもある.運動機能は,感覚のフィードバックのもとにコントロールされるため,口腔からの求心性刺激は摂食嚥下機能に影響を及ぼす.本研究では,口腔粘膜への感覚入力が随意的嚥下反射惹起運動に及ぼす影響を検討した.

    対象は2020年12月から2021年7月までの期間わかくさ竜間リハビリテーション病院回復期リハビリテーション病棟入院加療中患者のうち,3食経口摂取可能な満65歳以上の高齢者とした.脳血管疾患,神経疾患および三叉神経領域に神経損傷の既往のある者,顎顔面領域に自他覚的に異常感覚がある者および認知機能が低下した者を除外し,参加の同意が得られた者に実施した.対象者を伸張刺激群と振動刺激群とにランダムに割付け,刺激前後でRSST,RSST積算時間,口腔粘膜湿潤度および最大舌圧等を測定し刺激の違いによる変化を調べた.

    RSSTにおいては,伸張刺激群と振動刺激群ともに刺激前と比較して有意に嚥下回数の改善を認めた(p<0.05).また,刺激間で有意差は認めなかった.RSST積算時間は3回目までの嚥下反射運動について測定し,伸張刺激群のみ有意に改善した(p<0.05).口腔粘膜湿潤度と最大舌圧においては両刺激ともに刺激前後で有意差を認めなかった.振動刺激群において刺激前後でRSST積算時間に有意差を認めなかったことは,振動刺激の受容器が速順応性であり一時的に感覚鈍麻になった事によると考えられる.そのため,順応による感覚鈍麻や振動刺激の効果の検証にはRSST積算時間において4回目以降の変化を測定し,再度検証する必要があると考える.

    本研究により,口腔粘膜への伸張と振動刺激は,末梢からの求心性入力により嚥下反射惹起運動を促進する可能性があると考えられた.

  • 閔 理泓, 長谷 小町, 濱田 翔央, 藤井 智子, 本橋 具和, 正重 裕一, 大西 祐一, 蝿庭 秀也, 中嶋 正博
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    現在,顎矯正手術は口腔外科の中で大きな位置を占めるようになっている.今回われわれは過去26年間当科で行われた顎矯正手術について臨床統計的検討を行ったので報告する.患者は1993年4月から2019年3月まで当科で行われた1,556例を対象とし,年度別に見た1.性別,2.手術時年齢,3.手術術式,4.手術時間,5.術中出血量について調査した.また,過去26年間のうち1993年4月から2006年3月までを期間I,2006年4月から2019年3月までを期間IIと分けた.内訳は期間Iで735例,期間IIで821例であった.男女比はのべ男性466名,女性1,090名とほぼ1:2であり,期間I・II間で大きく差はなかった.年齢別では,最少齢15歳,最高齢64歳であった.患者の大半は10〜30歳代で,期間I・IIのどちらも20歳代が最も多かった.手術術式は,期間I・IIともに両側下顎枝矢状分割術が最も多く,次いで上下顎移動術であった.期間Iと比べて期間IIは上下顎移動術が約3倍に増加していた.手術時間は各症例において期間Iより期間IIが約10〜20分の短縮があった.術中出血量は期間I・II間で大きく差はなかった.以上より,顎変形症に対する外科的矯正治療は認知度の上昇とともに,当科においても症例数の増加傾向を認め,特に30代,40代の症例数が増加した.また,症例数の増加とともに上下顎同時移動術やオトガイ形成術の症例数が増加し,症例が多様化する傾向が認められた.さらに熟練度が増すととともに,手術時間,出血量の減少が認められた.

  • 牛窪 李紗, 鳥井 克典, 糸田 理沙, 山本 真由, 田中 順子, 柏木 宏介
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    近年,患者の歯に対する審美的な要求は非常に高くなっており,「白くて綺麗な歯」を求める患者が多数いる.本研究では女性の笑顔における歯冠色の違いが歯学部学生の印象に及ぼす影響を,印象測定方法のひとつであるSemantic Differential Methodを用いて明らかにすることを目的とした.

    調査対象者は,参加への同意が得られた大阪歯科大学歯学部学生38名(男性26名,女性12名,平均年齢25.1±3.7歳)とした.印象評価に用いた刺激画像は,成人女性10名(平均年齢27±1.5歳)の歯冠色をシェードガイド(Noritake Shade Guide, Kuraray Noritake Dental)のC4,A2およびNW0に画像処理した笑顔のそれぞれの平均顔とした.印象の測定方法は,刺激画像を1画像ずつランダムに調査対象者へ提示し,各画像から受ける印象を15種の形容詞対を用い,それぞれ7段階で評価させた.評定値が高いほどポジティブ,低いほどネガティブな印象であると定義した.その後,評定値の平均値をプロットしたSDプロフィールを作成し,各形容詞対でのC4,A2およびNW0の評定値を比較した.統計学的解析は各形容詞対においてFriedman検定を行い,有意となった場合,多重比較検定(Dann)を行った(α=0.05).(大歯医倫第111045号)

    比較を行った結果,NW0では「積極的」「さわやか」「きちんとした」「明るい」「若々しい」といったポジティブな印象を多く受けるが,自然感や現実味に欠けるという印象を受けることも分かった.A2では「最も自然で現実的である」といった印象を受け,C4ではNW0およびA2と比較して多くの項目でネガティブな印象を受けることが分かった.以上のことから,女性の笑顔における歯冠色の違いは歯学部学生の印象に影響を及ぼすことが明らかとなった.

  • 吉松 英樹, 伊達岡 聖, 大本 博樹, 岩山 和史, 新井 是英, 岡村 知彦, 松川 綾子, 田中 佑人, 小野 圭昭
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 85 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    障害者や要介護者に対して均質な歯科医療を提供するには,障害者歯科医療の主体を一次医療機関だけに求めるのではなく,適切な医療連携すなわち,かかりつけ歯科医院と大学病院や総合病院とのシームレスな連携に基づくべきである.こうした背景を受け,当科は高次医療機関として,一次医療機関で対応困難な症例に対応していく必要がある.今回われわれは,本学附属病院障がい者歯科受診患者の実態を調査することを目的に,2018年1月1日から2020年12月31日の3年間の初診患者統計を診療録をもとにまとめた.調査対象期間は,2018年1月1日から2020年12月31日の3年間とした.診療録をもとに,患者の年齢,疾患(障害)の種類,障害者手帳,居住地,来院経路,行動調整法,歯科処置内容について調査した.

    当科の初診患者の特徴として,幅広い分布を示し,特に20歳以下と70歳以上の年齢層の患者数は年次ごとに増加傾向を示した.また,当科へ受診した患者のなかで,重度障害のあるものの割合が多かった.今後,障害者・有病者の口腔衛生を改善し,さらにはQOLをより向上させるために,地域医療の中核として貢献していきたい.

  • 原稿種別: 会議報告
    2022 年 85 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 会議報告
    2022 年 85 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
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