1.群植物社会学的な調査法と現存植生図をメッシュマップ化するグリッド法を併用して,三浦半島における植生景観の類型区分とその解析および評価を行った.
2.三浦半島の植生景観は,沿海地域を分布領域とするA : イソギク-ハチジョウススキ=マサキ-トベラ総和群落区,内陸地域を分布領域とするB : イノデ-タブノキ=スダジイ総和群落区,二次植生のみで構成された景観域であるC : クサイチゴ-タラノキ=オニシバリ-コナラ総和群落区,植生が欠如した文化景観域であるD : 無植生区の4の基本的な植生景観単位に類型区分された.
3.区分したAからDの総和群落区とその下位単位を含めた7総和群落亜区(a1, a2, b1, b2, b3, C, D)について,景観の自然性を評価した.出現群落の植生自然度とその占有面積を用いて相対植生自然度を,自然群落数と識別群落群数により相対自然植生多様度を算出した.これらに人口密度を加えた3変数を用いて,主成分分析により序列化した結果,自然性の高い方からa2, b3, a1, b1, b2, C, Dの順になった.
4.景観の自然性は,小面積だが同時に多くの自然群落が見られる海岸植生を含む単位と,潜在自然植生の異なる森林群落を多く持つ単位で高くなった.
5.AからDの総和群落区の立地特性について,地形,地質,土壌などの地理的環境情報を用いて解析した.これらの地理的環境情報をクラスター分析したところ,AとD, BとCで類似が見られた.7の総和群落亜区で見ると, a1, a2が第1,Dが第2, b1, b2とCが第3, b3が第4と計4グループに区分された.
6.代償景観であるC, Dに関して構成群落と立地環境の類似性から,潜在自然景観を推定した.CはBが劣化したものであること,Dの少なくとも一部には,その潜在自然景観にAの自然景観を推定できると考えられた.
7.区分した景観単位のうち景観の自然性が高い総和群落亜区は,半島南西部の海岸や急傾斜の山地に分布していた.さらに,自然性の高い景観単位の保全についての提言を行った.この群植物社会学的な植生景観解析の手法は,保全計画などの基礎資料作成に有効と考えられる.
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