植生学会誌
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17 巻, 1 号
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原著論文
  • 山田 麻子, 大野 啓一
    原稿種別: 本文
    2000 年 17 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.群植物社会学的な調査法と現存植生図をメッシュマップ化するグリッド法を併用して,三浦半島における植生景観の類型区分とその解析および評価を行った.
      2.三浦半島の植生景観は,沿海地域を分布領域とするA : イソギク-ハチジョウススキ=マサキ-トベラ総和群落区,内陸地域を分布領域とするB : イノデ-タブノキ=スダジイ総和群落区,二次植生のみで構成された景観域であるC : クサイチゴ-タラノキ=オニシバリ-コナラ総和群落区,植生が欠如した文化景観域であるD : 無植生区の4の基本的な植生景観単位に類型区分された.
      3.区分したAからDの総和群落区とその下位単位を含めた7総和群落亜区(a1, a2, b1, b2, b3, C, D)について,景観の自然性を評価した.出現群落の植生自然度とその占有面積を用いて相対植生自然度を,自然群落数と識別群落群数により相対自然植生多様度を算出した.これらに人口密度を加えた3変数を用いて,主成分分析により序列化した結果,自然性の高い方からa2, b3, a1, b1, b2, C, Dの順になった.
      4.景観の自然性は,小面積だが同時に多くの自然群落が見られる海岸植生を含む単位と,潜在自然植生の異なる森林群落を多く持つ単位で高くなった.
      5.AからDの総和群落区の立地特性について,地形,地質,土壌などの地理的環境情報を用いて解析した.これらの地理的環境情報をクラスター分析したところ,AとD, BとCで類似が見られた.7の総和群落亜区で見ると, a1, a2が第1,Dが第2, b1, b2とCが第3, b3が第4と計4グループに区分された.
      6.代償景観であるC, Dに関して構成群落と立地環境の類似性から,潜在自然景観を推定した.CはBが劣化したものであること,Dの少なくとも一部には,その潜在自然景観にAの自然景観を推定できると考えられた.
      7.区分した景観単位のうち景観の自然性が高い総和群落亜区は,半島南西部の海岸や急傾斜の山地に分布していた.さらに,自然性の高い景観単位の保全についての提言を行った.この群植物社会学的な植生景観解析の手法は,保全計画などの基礎資料作成に有効と考えられる.
  • 安島 美穂, 津田 智, 平塚 明
    原稿種別: 本文
    2000 年 17 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.岩手県釜石市東前地区のスギ林で1987年4月22日に発生した山火事跡地の焼失半年後と焼失1年半後,および対照地で埋土種子集団を調査し,山火事後の埋土種子集団の変化を明らかにした.
      2.対照地の埋土種子密度は1862.4粒/m^2で,スギが圧倒的に多く,そのほかタチツボスミレ,ヨウシュヤマゴボウなど30種が検出された.
      3.焼失当年の土壌サンプルからは8種, 1280.0粒/m^2の種子が検出されたが,粒数の85.3%はツユクサが占め,スギの種子は検出されなかった.
      4.焼失翌年の埋土種子集団は,密度は前年と同様だったが,種数は20種に増加した.
      5.焼失翌年には,焼失当年に著しく増加したツユクサが減少し,焼失以前に比較的多数含まれていたスギなどの種が増加の傾向を示した.
      6.火事後2年目の埋土種子集団には,撹乱直後に成立した群落構成種により生産された種子とともに,周辺の非撹乱地から散布された種子が参入することが明らかになった.
  • 山内 幸子, 林田 光祐
    原稿種別: 本文
    2000 年 17 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.照葉樹林の太平洋側北限域に位置する近接した宮城県椿島と八景島において,北限域のタブノキ純林と混交林の林分構造と更新様式を比較検討した.
      2.タブノキ純林の椿島では,タブノキの胸高断面積合計による相対優占度が約9割を占めていた.樹高分布は上層をタブノキ,下層をヤブツバキが占める2層構造を示した.タブノキ幼樹(樹高1.3m以上胸高直径5cm未満)は1 haあたり662本存在したが,その85%は萌芽由来であった.
      3.八景島はタブノキ,ユズリハ,モチノキが胸高断面積合計で3 : 1 : 1の割合で混交している林分であった.明瞭な階層構造を持たず,連続的な樹高分布を示した.1 haあたり1055本のタブノキ幼樹が存在し,そのほとんどが実生由来であった.
      4.両林分の林冠ギャップ率には大きな違いが見られなかったが,光環境には有意な差が見られ,タブノキ純林よりも混交林の方が良好であった.この光環境の違いは階層構造の違いによると推察され,混交林では複雑な階層構造がタブノキの良好な実生更新を促していると考えられる.
  • 安島 美穂, 津田 智
    原稿種別: 本文
    2000 年 17 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.静岡県富士市浮島ヶ原において,埋土種子集団と植生の比較をおこない,両者の組成の特徴を明らかにした.
      2.埋土種子集団の構成種は,浮島ヶ原における植生の構成種に限られていた.しかし,植生中の種すべてが埋土種子集団を形成しているわけではなかった.
      3.カヤツリグサ科植物は土壌中に種子を蓄積していたが,イネ科植物(チゴザサを除く)は種子を蓄積をしていないという傾向がみられた.
      4.地上部の植生と埋土種子集団の組成上の類似性が高まったことの理由として,冬季の低温と定期的に加えられる人為的撹乱(刈取り)により,埋土種子の存続性が低くなったことが考えられた.
      5.チゴザサ以外の単子葉植物ではいずれも種子発芽個体はみられなかったものの,植生中に普通にみられる双子葉植物では,ほとんどの種で種子発芽個体が観察された.刈取りによりもたらされる裸地的な環境が,特に双子葉植物の個体群維持に有効に働いている可能性が示唆された.
  • 鄭 容圭
    原稿種別: 本文
    2000 年 17 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    大韓民国において,先駆性のつる植物が優占する海岸マント群落をZ-M学派の方法によって研究した.大韓民国の海岸性マント植生は,北方タイプのハマナスオーダーと南方タイプのハマゴウクラスによって代表され,それぞれハマナスとハマゴウが優占している.大韓民国の海岸マント群落は二つの群落と三つの群集,すなわちハマナス群落,ハマゴウ群落,ウンラン-ハマゴウ群集,テリハノイバラ-ハマゴウ群集,チガヤ-ハマゴウ群集に分けられた.大韓民国においてこのような三つの群集は,日本で報告されているものと同じものである.この報告では大韓民国の海岸マント群落を群落体系的に,また群落生態的に特徴づけて説明した.
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