植生学会誌
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29 巻, 2 号
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原著論文
  • 服部 保, 南山 典子, 岩切 康二, 栃本 大介
    原稿種別: 本文
    2012 年 29 巻 2 号 p. 75-90
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.鹿児島県桜島の各種溶岩原の植生について,Tagawa(1964)他の文献を参考に遷移の進行,遷移系列,遷移年数に関する調査を2011年に行った.
    2.調査は昭和(1946),大正(1914),安永(1779) , 文明(1471)溶岩原および年代不明の溶岩原の腹御社の植生を対象とした.各溶岩原の植生は8種群によって各々クロマツ林(I),クロマツ林(II),タブノキ林(III),タブノキ林(IV),スダジイ林(V)としてまとめられた.昭和・大正溶岩原のIとIIは一次遷移途上のクロマツ林として,安永・文明溶岩原のIIIとIVは二次遷移途上のタブノキ林として,腹御社の樹林 (V)は極相に近いスダジイ林として認められた
    .3.上記のクロマツ林とタブノキ林・スダジイ林とは種組成,種多様性,最上層のDBH,樹林の高さ,階層構造等において大きく異なり,両クロマツ林が一次遷移の途上にあることをよく示していた.安永のタブノキ林と文明のタブノキ林は種組成等において大きな差は認められず,一次遷移系列の植生ではなく,両者ともに燃料革命以降放置された半自然林であった.
    4.国内の照葉樹林帯のスダジイ-ヤブコウジオーダー,スダジイ群団域における一次遷移系列として,地衣・コケ群落,草本群落,クロマツ林(マツ-ヤシャブシ林),タブノキ林,スダジイ林(スダジイ等混交林)が認められた.
    5.タブノキの樹齢や更新および先行研究等より推定して,裸地から極相に至る一次遷移に要する時間として,約600年程度が必要と考えられた.
  • 富田 啓介
    原稿種別: 本文
    2012 年 29 巻 2 号 p. 91-103
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    多くの日本の湧水湿地(湧水によって形成された泥炭の見られない貧栄養の小湿地)では,異なる植物群落が空間的にモザイクを成している.本研究は,この植生パターンの発達に関わる機構を明らかにするため,1960年代から大きな植生変化が確認された大根山湿地(岐阜県)を事例として,湿地内の植生パターンと地下水位および堆積物の移動の分布とを比較した.堆積物の移動のトレーサーとして,大気圏核実験に由来する放射性降下物^<137>Csを用いた.湿地内に出現する主要な3つの種(種群)の分布範囲をみると,ミカヅキグサ属は最も地下水位の高い部分,樹高1m以上の木本種(つまり灌木林)は最も地下水位の低い部分,ヌマガヤはその中間に位置していた.灌木林の主要構成種であるアカマツは,湿地全体に分布していたが,湿潤を好む群落内では生育が悪く,乾燥を好む群落内では生育が良かった.表層堆積物の状態は,地下水位の高い部分では侵食傾向で薄く,地下水位の低い部分では堆積傾向で厚かった.以上の結果から,湧水湿地内では,地下水位は植生タイプを決定する重要な因子の一つであると考えられた.また,地下水位は土砂の移動のような二次的な因子によって,湿地内において空間的な差異が生じることがある.この地形学的な構造が,湧水湿地での植生パターンの形成に関与していると考えられた.さらに,湧水湿地内の植生遷移は供給される地下水の変化によって引き起こされる場合があると推定された.
  • 原稿種別: 付録等
    2012 年 29 巻 2 号 p. 123-
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
短報
  • 水野 大樹, 竹崎 大悟, 百原 新, 沖津 進
    原稿種別: 本文
    2012 年 29 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1. ミツデウラボシの生育立地である乾燥した崖地は,胞子が雨水によって斜面下部へ流出しやすいだけでなく,前葉体が乾燥にさらされてしまうため定着しにくいと予想された.
    2. ミツデウラボシの生育立地に群落を形成していた蘇苔類に着目して,蘇苔類の被度とミツデウラボシの幼胞子体の分布を比較した.
    3. ミツデウラボシの幼胞子体は,蘇苔類群落が多く生育する小方形区ほど分布している割合が高かった.
    4. 蘇苔類群落内は露出した地表面に比べ,散布された胞子が雨水によって流出しにくいため,定着しやすいと考えられた.
    5. 蘇苔類群落内は湿潤環境が維持され,胞子の発芽や前葉体での受精が容易になるため,幼胞子体の分布密度が高くなると考えられた.
資料・報告
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