植生学会誌
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39 巻, 2 号
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原著論文
  • 小川 滋之
    2022 年 39 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/10
    ジャーナル フリー

    1. オノオレカンバはカバノキ属の落葉広葉樹である.他のカバノキ属樹木とは種子形態や個体寿命など異なる特徴を有するが,これまで研究対象にされることが少なかった.

    2. 本研究では,埼玉県上武山地の城峯山天狗岩の急峻な尾根にみられるオノオレカンバ林が形成される立地条件と更新様式を考察した.

    3. 主要林冠構成種であるオノオレカンバとコナラ,ヤシャブシを対象に,傾斜角度と土壌厚の生育立地の計測,土壌の薄い場所と厚い場所におけるオノオレカンバ林の構造の調査を行った.

    4. 主要林冠構成種3種を比較すると,オノオレカンバは土層厚10 cm未満の緩傾斜地に,コナラは土層厚10 cm以上の緩傾斜地に,ヤシャブシは土層厚10 cm以上の急傾斜地に分布が偏った.オノオレカンバは,チャート岩による土壌の薄い場所において個体定着できる特性があること,この場所ではコナラなどの高木性樹木が分布しにくいこと,これらが関与することで林分を形成していると考えられた.

    5. 城峯山天狗岩のオノオレカンバ林は2つの更新様式がみられた.土壌の薄い場所では,構成種のほとんどが樹高10 m未満であり,主要林冠構成種であるコナラの相対優占度が低かった.林内でも後継樹が生育するのに十分な明るい林床が保たれ,幼樹から成木へと順次更新する様式により林分を維持していると考えられた.土壌の厚い場所では,樹高10 m以上に達する林冠構成種が多くみられ,コナラの相対優占度も高かった.林内では後継樹が生育していないことから,シラカンバなどの一斉更新のカバノキ林に近い様式がある.しかし,広範囲への散布に向かない種子の形態と生産量から,小林分や単木としてのみ分布していると考えられた.

    6. オノオレカンバは,急峻な尾根の落葉広葉樹林において土地的極相林を形成する樹種であると考察された.

  • 高槻 成紀
    2022 年 39 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    1. シカ(ニホンジカ)が生息する金華山島のシカ高密度な場所で,ススキ群落がシバ群落に移行した.この現象を説明するため,両種の摘葉実験により,摘葉間隔の違いが両種に与える影響を調べた.

    2. ススキは摘葉間隔が短くなるにつれて葉長,草丈,積算生産量が減少した.

    3. ススキは摘葉間隔が30日より短いと開花しなくなった.

    4. シバは摘葉間隔にかかわらず葉長,積算生産量に違いがなかった.

    5. このことから,シカの強い採食圧がススキ群落を減少させてシバ群落に移行・維持させていることが説明できた.

短報
  • 石田 弘明, 江間 薫, 黒田 有寿茂
    2022 年 39 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/10
    ジャーナル フリー

    We examined traditional semi-natural grasslands (TSGs), i.e., semi-natural grasslands primarily dominated by Imperata cylindrica var. koenigii on the levee slopes of traditional terraced paddy fields in Hyogo Prefecture, Japan. The species composition of TSGs was compared with that of semi-natural grasslands dominated by Miscanthus sinensis and Zoysia japonica. Four phytosociological associations (i.e., Arundinario pygmaeae–Miscanthetum sinensis Miyawaki et Itow 1974, Saussureo−Miscanthetum sinensis Suganuma 1970, Geranio–Zoysietum japonicae Suganuma 1966, and Centello−Zoysietum japonicae Itow 1970) were selected as Miscanthus sinensis- and Zoysia japonica-dominated semi-natural grasslands. The species composition of TSGs markedly differed from that of the four phytosociological associations. Majority of the differential species of TSGs were annual plants, such as Justicia procumbens var. procumbens, Acalypha australis, and Setaria pumila. In addition, comparison of life-form spectra revealed that the proportion of annual plants was higher in TSGs than in the four associations. These findings indicate that TSGs are characterized by the presence of annual plants.

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