与えられた半無限系列について効率的な符号化法とその性能限界を求める問題が個別系列の符号化問題である.小文では,まず個別系列を一定長のブロックに分割し,各ブロックを固定長の符号語に符号化する固定長符号化について解説し,符号化による誤りを許さない場合,1記号あたりの符号長で定まる最小許容符号化レートがトポロジカルエントロピーなどの情報量と一致することを説明し,具体的な符号化法を示している.一方,ブロック長を長くしたとき誤り率が零に漸近する符号化については,最小符号化レートが個別系列のZivエントロピーなどの情報量によって特徴付けられることを説明するとともに,効率的な符号化法を示している.次に,各ブロックを可変長の符号語に符号化する可変長符号化についても解説し,1記号あたりの最小符号長を表す可変長最小符号化レートが個別系列の重なりを許した経験分布のエントロピーに一致することを説明し,LZ78符号によって可変長最小符号化レートが達成できることを示す.更に,可変長最小符号化レートと一致するほかの情報量についても述べるとともに,これらの情報量を利用することで,可算無限アルファベット上の個別系列の集合が可変長ユニバーサル符号化できる条件を示す.最後に,Zivが2008年に提案した有限ブロック長における最良符号の条件を紹介し,この条件の下でLZ77符号や文脈木を用いたユニバーサル符号化が最良であることを述べる.
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