電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review
Online ISSN : 1882-0875
ISSN-L : 1882-0875
最新号
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表紙
目次
ごあいさつ
レビュー論文
IT研究会提案
  • 植松 友彦
    2025 年19 巻2 号 p. 46-54
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    与えられた半無限系列について効率的な符号化法とその性能限界を求める問題が個別系列の符号化問題である.小文では,まず個別系列を一定長のブロックに分割し,各ブロックを固定長の符号語に符号化する固定長符号化について解説し,符号化による誤りを許さない場合,1記号あたりの符号長で定まる最小許容符号化レートがトポロジカルエントロピーなどの情報量と一致することを説明し,具体的な符号化法を示している.一方,ブロック長を長くしたとき誤り率が零に漸近する符号化については,最小符号化レートが個別系列のZivエントロピーなどの情報量によって特徴付けられることを説明するとともに,効率的な符号化法を示している.次に,各ブロックを可変長の符号語に符号化する可変長符号化についても解説し,1記号あたりの最小符号長を表す可変長最小符号化レートが個別系列の重なりを許した経験分布のエントロピーに一致することを説明し,LZ78符号によって可変長最小符号化レートが達成できることを示す.更に,可変長最小符号化レートと一致するほかの情報量についても述べるとともに,これらの情報量を利用することで,可算無限アルファベット上の個別系列の集合が可変長ユニバーサル符号化できる条件を示す.最後に,Zivが2008年に提案した有限ブロック長における最良符号の条件を紹介し,この条件の下でLZ77符号や文脈木を用いたユニバーサル符号化が最良であることを述べる.

解説論文
NLP研究会提案
SIS研究会提案
  • 成枝 秀介
    2025 年19 巻2 号 p. 60-69
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    IoT(Internet of Things)システムの無線通信インフラとして期待されている技術が,Sub-GHz帯(我が国では920 MHz帯)を用いるLPWAN(Low Power Wide Area Network)である.著者らはこれまでに,Sub-GHz帯LPWANの特性改善を目的として,キャリアセンス期間中の平均電力を用いる電力検出キャリアセンスの特性を理論的・実験的の両面から性能評価・解析してきた.その結果,ノイズフロア以下の受信信号についても検出可能であり,従来用いられていたキャリアセンス期間中のピーク電力を用いるピーク検出キャリアセンスと比較してLPWANの特性を大きく改善できることを示してきた.本稿では,著者らによるこれまでの解析結果を元に,電力検出キャリアセンスの特性やこれを用いたSub-GHz帯LPWANの特性,誤警報確率などの信号検出パラメータが電力検出キャリアセンスに与える影響など解説する.

ITS研究会提案
  • 須藤 克弥
    2025 年19 巻2 号 p. 70-77
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    情報がもつ意味の伝達に焦点を当てるセマンティック通信は,情報理論に基づく通信方式とは異なる新たな通信パラダイムとして注目されている.近年の人工知能技術,特に深層学習や知識表現の進展により,タスクに必要な意味のみを抽出・符号化・伝送することが可能となり,通信の効率化・低遅延化・知的なインタラクションの実現が期待されている.本稿の前半では,セマンティック通信の理論的背景,深層学習に基づく実装例,ユースケースを紹介する.本稿の後半では,画像伝送におけるセマンティック通信にとって必要な機能やその実装例を紹介する.特に,セマンティック画像伝送の実現に有効なアプローチである情報源通信路深層結合符号を概説する.

BioX研究会提案
  • 長坂 晃朗
    2025 年19 巻2 号 p. 78-86
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    生体認証の一つである指静脈認証技術の研究開発を例にとり,技術の創生から社会実装に至るまでの様々な挑戦を,昨今注目されている総合知の観点から考察しつつ解説する.生体計測と画像認識の融合による指静脈認証の世界初の実用化から,精度と使い勝手を磨いての製品化,価値観の異なる市場での競争から学びを得た新技術の開発と金融機関での採用,そして更なる社会実装の拡大を目指しセキュリティ技術と融合して実現した大規模生体認証基盤サービスまで,一連の開発史について概説していく.

HWS研究会提案
  • 倉地 亮
    2025 年19 巻2 号 p. 87-96
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    Software-Defined Vehicle(SDV)は,ソフトウェアによって機能が定義される次世代自動車であり,そのアーキテクチャはゾーン型へと移行しつつある.本稿では,まず従来型車両との構造的な違いと,SDVを支える仮想化,マイクロサービス,OTAといった技術基盤を解説する.次に,コネクティビティの増大やサプライチェーンの複雑化に伴い拡大するサイバー攻撃の脅威を分類し,具体的な攻撃シナリオを論じる.その上で,SBOMによる構成の透明化,Uptaneやin-totoを用いたサプライチェーン全体の信頼性確保,HSM/TEEといったハードウェアセキュリティに至る多層的な対策技術を詳述する.最後に,UN-R155などの国際標準への対応やDevSecOps体制の構築といった産業的課題と今後の展望を考察する.

CAS研究会提案
CCS研究会提案
  • 赤井 恵
    2025 年19 巻2 号 p. 105-113
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    ソフトウェアとして実装されてきた今の人工知能は,これからも大きい発展の期待を抱かせるものではあるものの,メモリとCPUが解離した中で人工知能計算を我々の身近なところで利用するには,その電力効率の悪さや通信量増大の面で大きな課題がある.一方で我々の脳は高度なリアルタイム処理を圧倒的に省電力で行えており,これは脳の構成単位である神経細胞(ニューロン)とそれらを繋ぐシナプスが織りなす高密度な三次元ネットワークがもたらすダイナミクスに起因していると考えられている.近年,人工知能処理を加速させる次世代ハードウェアとして,脳の仕組みを物理的に模倣したアナログ脳型コンピュータが注目されているが,提案されているそれらの機構は実際の脳の三次元構造とは大きく解離している.意外なことに,三次元の配線技術は我々の科学技術におけるミッシングテクノロジーである.何もない空間を任意に配線する技術は高い需要があるにもかかわらず実現されていない.脳のニューラルネット構造を三次元構造によって創造することにより,より低コストで低エネルギー消費でありながら非常に複雑な計算を解く人工知能的な構造を構築し得るのではないか,と考えている.本稿では,これらの物質科学と情報科学の融合によって構成する高分子ニューラルネットワークについて,研究分野,現状の課題と筆者らの研究を紹介および解説する.

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