1996年7月に北海道沙流郡で,寄生植物キヨスミウツボの花を訪れる昆虫を調べたところ,訪花したのはエゾトラマルハナバチのみであり,その大部分が女王であった.エゾトラマルハナバチの女王を個体識別し,キヨスミウツボの花約1080花からなるパッチでの訪花行動を調べたところ,5頭が終日断続的に訪れた.キヨスミウツボの花は,糖度が平均約10%ほどの蜜を平均1μl,多いものでは花からこぼれるほど含んでいた.エゾトラマルハナバチの女王はパッチ訪問時に花粉荷をつけているものもあり,花粉荷の一部を採集して分析したところ,花粉4847個中4846個がキヨスミウツボ花粉であり,蜜だけでなく花粉も資源として利用されていることが示された.エゾトラマルハナバチ女王が頻繁に訪花していたパッチでは,結果率が約90%であったが,訪花が見られなかったパッチではまったく実を結ばなかった.
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