日本画像学会誌
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52 巻, 2 号
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ノート
原著論文
  • 高島 永光, 米窪 周二, 新井 聖, 小河 秀幸, 阿部 隆夫
    2013 年 52 巻 2 号 p. 94-102
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    個人用産業用を問わずインクジェットプリンタにおいては,印刷スピードの高速化が重要課題である.印刷スピードの向上には,インク吐出用の微細なノズルをより多く備えた大型のプリントヘッドを用いることが有効な一つの手段となる.プリントヘッドは,精密な形状を持つ複数の板状のプレートを積層した構造から成る.この構造を用いてプリントヘッドを大型化すると,各プレートを構成する部材の線膨張係数の違いによりインク吐出部を形成するノズルプレートが時間の経過と共に変形する.変形したノズルプレートはインク吐出方向を不安定にして,プリント品質を劣化させる.そこで,ステンレス製ノズルプレートの変形を抑制するために,ノズルプレートと接合しているキャビティプレートの部材を従来から使用されていたシリコンからニッケルに変更して,基本性能を評価した.キャビティプレートの部材をニッケルに変更することにより,ノズルプレートの反りが低減された.しかしながら得られたプリントサンプルを観察すると,一部にドットサイズのばらつきによる濃度むらが肉眼で認められた.筆者らは,この濃度むらはインク滴の重量の大きなばらつきに起因するもので,インク滴の重量ばらつきが圧力室の深さのばらつきとキャビティ厚みに相関があると考えた.実験にて,圧力室の深さとその位置,インク滴の重量,キャビティ厚みについて測定を行った.キャビティプレートの工法を一部変更することにより,濃度むらは肉眼で認められない水準にまで到達した.ドットサイズのばらつきによる濃度むらの主原因は,圧力室の深さとインク滴の重量ばらつきにあることを解明することができた.
Imaging Today
  • 有村 貴男
    2013 年 52 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    世の中に熱転写記録方式の技術を応用して商品が開発されたのは,1970年代後半からであり,定期券発行機のプリンターやワードプロセッサ (いわゆるワープロ) として実用化された.特にワープロにおいては,電気機器大手メーカーが多くのワープロを市場へ販売するに至り,供給が足りない程の販売台数を伸ばしていた.しかし,1980年代後半になるとソフトウエアの進化によりパーソナルコンピュータ (いわゆるパソコン) がワープロに置き換わることとなり,パソコンとプリンター (端末プリンター) とに区分されて使用される様になった.
    現在では,この端末プリンターにおいては,利便性やコストから熱転写記録方式だけでなく,高品位の画像形成を競争しあうかたちとなり,インクジェット方式やレーザープリント方式のプリンターの台数が増加している.
    ただし,熱転写記録方式においては作業原理が簡単な上,比較的低価格での設計が可能であり,小型化できるという特徴があるため,端末プリンター以外の分野にも数多く利用されている.
    具体的には,熱転写記録方式には溶融型熱転写記録方式と昇華型熱転写記録方式の2つがある.
    前者は細かな印字性や印字物の耐久性が良いことから,ファクシミリやバーコードなど多くの分野に使用されており,後者においては,階調性を豊かに表現できる点から画像を形成するフォト分野に使用されている.
    この様な市場の変化に対して,機能性のあるインクリボンの開発が必要となり,インクの開発や塗工技術を向上することで,熱転写記録媒体としての性能も向上するに至っている.
    本稿では,特にファクシミリやバーコード用溶融型熱転写記録媒体のインク技術の移り変わりを中心に解説する.
  • 鈴木 千秋
    2013 年 52 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    デジタル化,カラー化,環境適性など,ニーズに対応した電子写真プロセスの進化に合わせて,トナー · 現像剤がどのように進化してきたかを解説する.
    トナー · 現像剤の機能を発現する構成材料が電子写真プロセス要求に応じてどのように変更されてきたか,混練粉砕トナーではどのような点を重視して開発がなされ,どのような進化を遂げてきたか,さらにその発展形としてのケミカルトナーの狙い,それぞれのケミカルトナーの特徴,ケミカルトナーの進化を解説し,今後の展望を述べる.
  • 長山 智男
    2013 年 52 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    電子写真プロセスにおいてその中核を担っているデバイスとして感光体が挙げられる.感光体は,導電性基体上に光導電性絶縁膜が設置された構造を持ち,その光導電性により静電潜像を形成する.感光体に利用されてきた材料は,発明初期には無機材料であったが,機能分離の考え方に即した分子設計のし易さの点から,有機材料に置き換わってきた.本報告では,感光体の機能を軸として,開発されてきた材料について概説する.
  • 加藤 勝
    2013 年 52 巻 2 号 p. 122-131
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    電子写真用記録メディアの歴史について概説する.1962年にゼロックス914が国内で発売されたことから国内の環境に適した記録メディアの開発を開始した.'60年代に酸性抄紙により商品化された後,'84年に保存性から中性紙に転換した.'80年代後半からカラー · 複写機やカラー · プリンターが市場に投入され,用紙からは画質の向上,定着ロールからの剥離性,加熱カールの発生に対応した.
    '90年代には電子写真方式のカラーPOD印刷機が発売され,即時性,可変印刷,小部数対応の印刷用途での市場開拓が進められている.POD市場に向けカラーPPC用紙では両面印字への対応技術を開発した.また定着でブリスターの発生しない塗工紙が開発された.同時期には液体トナーを利用するPOD印刷機も登場した.これは数ミクロンと薄いトナー層厚のためドットの再現性が向上してオフセット印刷に近い画質となった.
    さらに最近の機器の向上に対応したメディアに関する技術も合わせて報告する.
  • 大西 勝
    2013 年 52 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    水性インクから実用化が始まったインクジェットインクはソルベントインク,ソリッドインク,油性インク,UVインク,ラテックスインクと,使用するインク材料の幅を広げつつある.インクの多様化により紙以外の色々なメディアにもプリントできるようになった.インクの進化により,インクジェット技術の応用分野がパーソナルから高速PODプリンタやテキスタイル,屋外サイングラフィクス分野からプラスチック加飾等の産業分野まで急速に拡大しつつある.
    本稿では,インク材料に着目して,歴史的な進歩とその応用の広がりを概説する.そして,インクジェット技術の今後の開発課題や応用展開について考察する.
  • 大倉 浩和
    2013 年 52 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    インクジェットは,写真画像出力の重要な技術の一つである.
    初期の染料インクに対応して開発されたマットコート紙は,顔料インク,フォトインクといった新インク,誤差拡散に代表される新しいハーフトーン制御技術への対応で変化しつつも基本構成は大きく変わることなく,汎用性の高いメディアとして今日まで存続している.
    写真画像出力は,その後開発されたマイクロポーラスタイプが主流となり,追いかけてきた銀塩写真に画質でも見劣りしないレベルに到達した.しかし,写真出力環境を大きく変化させたインクジェット技術ではあるが,画像ビューアーとしてのライバルは,既に銀塩写真ではなく,液晶に代表される電子媒体に代わってきているのも事実である.
    インクジェット記録メディアとしての高画質化対応の基礎技術は,マットコート紙の開発で培われたものも多い.
  • 原田 大輔, 森本 尊仁
    2013 年 52 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/04/13
    ジャーナル フリー
    印刷技術の進化 · 発展と共に,それに使用される顔料も様々改良がおこなわれてきた.印刷分野に使用される主要な顔料の開発の歴史を振り返ると共に,主に印刷インキに使用されている顔料種の特徴,また電子写真トナー · インクジェットインクに使用される顔料種の特徴などを振り返る.また最新の電子写真トナー技術 · インクジェットインク技術に合致する顔料の開発やその改良に関して考察する.また環境意識の高まる昨今,各国各地域の法令 · 規制等,顔料を取り巻く市場環境はますます厳しくなるが,各顔料メーカーもその動向を追いながら,最大限の開発 · 改良を市場に提案していく事である.
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