本研究は、看護教師の実習教育に対する教師効力とその関連要因について検討を行なうことを目的とする。看護系大学の助手245名を対象とし、属性と「実習教育に対する教師効力」との関連について相関分析を行なった。その結果、属性の中では「大学などにおける教育学履修歴」、「助手に就く前の実習教育の研修受講歴」、「助手に就く前の教師経験」、「助手に就いてからの教師経験年数」との間で有意な相関が認められた。重回帰分析の結果、これらの属性による「実習教育に対する教師効力」への寄与率は、15.3%であった。自己効力を高めるといわれている情報源項目のうち、「遂行行動の達成」、「言語的説得」、「生理的・情動的状態」の3情報の項目による「実習教育に対する教師効力」への寄与率は、43.7%であり、属性による「実習教育に対する教師効力」への寄与率の15.3%より高いことが明らかになった。
これらの結果から、教育学の履修や実習教育の研修受講などに加え、実際の経験に対する主観的な評価をポジティブに変化させうるようなアプローチあるいは自分の指導を評価し認めていくことにより「実習教育に対する教師効力」を高めうる可能性があることが示唆された。
1910年から1940年、1954年から1996年までの、沖縄を除くわが国における看護婦数、准看護婦数(総称して看護従事者数)の変化を経年的に分析し、看護従事者数の変化を生じる要因について検討した。データは衛生行政業務報告などの公的査料から抽出した。その結果、以下の結論を得た。
第二次世界大戦の終戦まで、看護従事者数は戦争の影響を受けた。戦後、看護従事者数は、都市部の衛生状態が改善することにより都市部では減少し、老年人口割合が高い地方で増加した。また、老年人口割合が高い地方においては看護が准看護婦に依存する割合が高かった。看護従事者の不足は准看護婦により補われていたが、1972年以後、看護従事者に占める准看護婦の割合は減少傾向が続いている。近年は訪問看護など看護従事者に対する新たな需要が生まれており、看護需要が医師数や病床数のみでは決定されなくなってきた。以上より、現時点では看護従事者数に影響を与える社会的要因として、老年人口の割合と高齢者医療の内容、訪問看護に対する需要の変化があると考えられる。