日本看護学教育学会誌
Online ISSN : 2436-6595
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19 巻, 1 号
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研究報告
  • 高橋 佳子, 荒木 美和
    原稿種別: 研究報告
    2009 年19 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     当事者参加型カンファレンスは、患者・家族(当事者)がカンファレンスに参加し、自らの健康課題に取り組むことを支援できる企画である。本研究では、参加型カンファレンスを実際に企画・運営した学生の実施前後の記録の中から学びとして記述されたものを抽出し、質的帰納的方法を用いて分析した。

     学生が参加型カンファレンスを企画・運営したことで得た学びは、「意思表示が保障される環境をつくる」「参加型カンファレンスの準備性を高める」「看護専門職者としての面接技術を高める」の3つであった。未経験な学生の企画・運営であっても、参加型カンファレンスは慢性看護学実習において学生の当事者理解と、当事者主体の意味が体験を通して深まると共に、看護過程の学習効果を高めるという意義が得られた。

  • 岡村 典子, 藤井 徹也, 堀 良子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年19 巻1 号 p. 13-27
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護系大学の基礎看護学領域における基礎看護技術の学内演習の現状、看護実践能力の育成に向けた教育の取り組み状況について明らかにすることである。そこで、看護系大学にて基礎看護技術演習を担当している教員(各校1名)を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は、提示した技術項目に関する演習時間と時間内での体験回数、到達目標などである。その結果、平均演習時間が最も多かったのは【ヘルスアセスメント】で673分であった。各技術項目の到達目標では、“対象者の個別性やおかれた状況に合わせて技術の一部を応用し実施できる”に到達目標をおいている大学が多かった。技術項目によっては、実施手順の複雑さ、学習内容の分量、臨床現場との乖離等が影響して、到達目標と体験回数の間にずれをきたしていることが考えられた。したがって、今後は限られた状況のなかで技術修得を可能にするための教育方法の精選が必要である。

  • 今井 多樹子, 池田 敏子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年19 巻1 号 p. 29-44
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、クリティカルケア領域における臨床看護師が新人看護師に期待する実践能力を明らかにする事である。研究方法は、実践能力の構成要素を「看護技術」領域、「対象理解」領域、「統合力及び関連内容」領域、「看護師としての態度」領域として、4領域の構成要素毎に作成した質問紙による調査を行った。調査対象は、当該領域に1年以上勤務する臨床看護師304名である。分析は、4領域の構成要素毎に探索的因子分析を行い、臨床看護師の期待構造を抽出した後、各因子の平均得点を期待値とした。更に、「看護技術」領域への期待値を中核として、残り3領域の各因子との関連を検討した。分析の結果、内容的妥当性のある期待構造が得られた。その構造からみた期待値では、臨床看護師は、クリティカルケアに必要な高度な能力よりも基礎的な能力を期待している事が明らかになった。又、「看護技術」領域と残り3領域の各因子との相関は有意であり、特に「対象理解」領域の全因子と「統合力及び関連内容」領域の【看護過程を展開する能力】【生命危機に対応する能力】との相関が強かった。

  • 村井 文江, 三木 明子, 江守 陽子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年19 巻1 号 p. 45-59
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、臨地実習で生じている暴力への教育的支援の基礎資料を得るために、患者から看護学生が受けている暴力の状況を明らかにすることである。A県内の看護師養成学校の最終学年にある看護学生を対象とし、暴力体験の有無、実習領域、暴力への嫌な思いを質問紙調査した。712名に質問紙を配布し、593名から有効回答が得られた。

     結果、352名(59.4%)の学生が臨地実習で暴力を体験しており、体験した学生の55.1%が嫌な思いを抱いていた。学生が体験した暴力は、精神的暴力670件(44.7%)、性的暴力645件(43.1%)、身体的暴力183件(12.2%)であった。暴力はすべての実習領域で体験されており、精神看護学領域で29.9%、成人看護学領域で28.7%、高齢者看護学領域で22.0%が体験されていた。精神看護学領域では性的暴力、成人看護学、高齢者看護学、基礎看護学領域では精神的暴力の割合が高かった。また、小児看護学および在宅・地域看護学領域では、身体的暴力の割合が高かった。

  • 山本 裕子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年19 巻1 号 p. 61-70
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、良い看護教育ストラテジーに対するアメリカの看護教員の認識を明らかにすることである。アメリカのA大学に所属する看護教員10名を対象に半構成的面接を行い、類似した内容をカテゴリー化した。その結果、良い看護教育ストラテジーとしては【学生-教員関係を築く】【興味を喚起する】【例を示して学習内容への理解を促す】【モデルを示す】【学習プロセスへの参加を促す】【学生による学習の差異を理解する】【経験からの学習を促す】【思考を促す演習】の8つのカテゴリーが明らかとなった。また、学生の卒業時の教育目標として【学士号を取得する】【看護師に必要な基礎能力を備える】【キャリアアップに備える】の3つのカテゴリーが明らかとなった。アメリカの看護教員が考える良い看護教育ストラテジーは教育目標の達成と整合性があり、学習者中心アプローチに一致していることが示唆された。

資料
  • 内海 香子, 水野 照美, 山本 洋子, 村上 礼子, 清水 玲子, 棚橋 美紀, 中村 美鈴
    原稿種別: 資料
    2009 年19 巻1 号 p. 71-78
    発行日: 2009/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     看護系A大学成人看護学領域での学生の卒業研究における困難と学びの内容を明らかにし、卒業研究の指導について検討することを目的に、平成17年度、成人看護学領域で卒業研究を行った22名の学生を対象に、当領域で作成した卒業研究に関する自記式アンケート調査を行った。15名から回答があり、卒業研究における困難と学びに関する記述内容を質的帰納的に分析した。卒業研究における困難として、【研究プロセスを一つ一つ実施していく困難】、【自分の考えを整理し、他者にわかるよう表現できない困難】、【見通しがつかず、長期間、意欲を維持できない困難】の3つのカテゴリーが抽出された。卒業研究における学びとして、【研究プロセスを一つ一つ体験して得られる学び】、【自分の考えを他者に伝えることについての学び】、【研究がもたらす可能性や看護の奥深さへの学び】、【研究プロセスをやり遂げた達成感・成長】の4つのカテゴリーが抽出された。これらの困難と学びを踏まえ、卒業研究における困難を乗り越えやすくする指導の工夫が示唆された。

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