本研究の目的は、看護系大学を卒業した就職直後の新卒看護師が、医療チーム内や臨床判断を伴う場面、特に実践に困難を伴う場面、看護技術の原理原則に基づかない実施、チームメンバーとの意思疎通がうまくいかない状況においてどのような看護を実践し、またなぜそのように行うのかを明らかにすることである。帰納的記述的研究により、6名の新卒看護師からデータ収集を行った。その結果、新卒看護師は日常の看護実践を行う場面において、【苦手な実践のため自分の行動にしか目が向かない】【知識を実践場面に応用できない】【習慣化した方法を優先する】【先輩看護師に遠慮する】という特徴を持っており、これらにより、新卒看護師は適切な看護技術の提供や、複数の患者を受け持ちながら業務を遂行することに困難を伴うことが明らかになった。この結果から、新卒看護師の看護実践能力を培う医療現場での指導、および看護基礎教育と看護継続教育が連携をとる必要性について示唆が得られた。
大規模災害発生直後の災害現場における負傷者に対する救助者の望ましい関わり方を明らかにするために、航空機事故訓練に負傷者役として参加した学生のレポートから、救助者の関わりについて、感じ、考え、思ったことを表す記述を抽出して帰納的に分析した。救助者の関わりで負傷者役に引き起こされた感情は安心・落ち着き・期待などの「正の感情」と怒り・嫌悪感・不安・恐怖感などの「負の感情」であった。「正の感情」をもたらした関わりは【負傷者を尊重した関わり】【一人ではないと感じさせる関わり】【助かる見通しをもたらす関わり】であり、共感的対応が基盤にあった。「負の感情」をもたらした関わりは【救助者本位の関わり】【負傷者に対する無視・無関心な関わり】【早く助けてもらえないと思わせる関わり】【未熟な救助技術による関わり】であった。救助者は負傷者に「正の感情」をもたらすように関わることが望まれる。そのためには十分なトレーニングが必要である。