日本看護学教育学会誌
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33 巻, 3-2 号
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原著
  • 佐藤 章伍
    原稿種別: 原著
    2024 年 33 巻 3-2 号 p. 85-98
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    〔目的〕看護師における情動知能と倫理的行動との関係を明らかにすることである。

    〔方法〕看護師2,000名を対象に質問紙調査を実施し、統計解析は基本統計量の算出および相関分析、重回帰分析を行った。

    〔結果〕331件を分析対象とした。情動知能尺度得点は4.59±0.65、倫理的行動尺度得点は4.43±0.49であった。重回帰分析の結果、情動知能の4つの下位因子による調整済み決定係数は【リスク回避】が.124、【善いケア】が.238、【公正なケア】が.087であった。【リスク回避】に対しては【自己の情動評価】(β=.151, p=.012)、【善いケア】に対しては【他者の情動評価】(β=.221, p<.001)で標準偏回帰係数が最大であった。

    〔考察〕情動知能の倫理的行動への影響度には下位因子ごとに差がみられ、【他者の情動評価】と【情動の利用】を高めることで倫理的行動につながることが示唆された。

  • 西岡 久美子, 森田 夏実, 平野 道枝
    原稿種別: 原著
    2024 年 33 巻 3-2 号 p. 99-110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    〔目的〕保存期慢性腎臓病(保存期CKD)患者のエンパワメントをもたらす看護実践の臨床指針を示す。

    〔方法〕透析看護認定看護師221名にデルファイ法調査を実施した。質問紙は西岡・中野(2017)を基に81項目とし「とても大切(4点)~大切ではない(1点)」の4件法での回答と追加意見を求めた。第1次調査結果に基づき71項目へ修正し、CKD病期G1~G5の特徴と同意率を記載した第2次調査、第1次と第2次の同意率を記載した第3次調査を実施し最終的な同意率を算出した。

    〔結果〕最終回答者55名(回収率24.9%)、第3次同意率90%以上62項目、70%以上90%未満5項目、70%未満4項目だった。同意率50%以下の項目はなかった。

    〔考察〕全項目同意率51%以上で臨床指針になりうる。同意率90%以上の項目は保存期CKD全病期に共通する重要な指針となり、他項目は個別状況を判断し適切な内容を選べるよう臨床指針の提示が求められると示唆された。

研究報告
  • 長屋 江見, 竹下 美惠子, 魚住 郁子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 33 巻 3-2 号 p. 111-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    〔目的〕新人看護教員のレジリエンスの個人特性および環境特性要因による関連と、レジリエンスの実態、レジリエンスが職場適応へ及ぼす影響について明らかにする。

    〔方法〕全国の看護系大学263校の勤務年数3年未満の常勤の教員を対象に、個別回収法による無記名自記式質問調査を実施した。

    〔結果〕回収数は352名からなり、有効回答数306名を分析対象とした(有効回答率86.9%)。レジリエンス総得点は職位や相談できる上司の存在などに有意な差があった。職場適応を従属変数とした重回帰分析の結果、レジリエンスの下位尺度の【感情調整】(β=.320, p=.000)や【肯定的な未来志向】(β=.304, p=.000)が有意な影響を示した(R2.361)。

    〔考察〕新人看護教員が職場適応していくためには、自己の感情を調整し、将来に希望を持つ肯定的な未来志向の重要性が示された。

  • 織田 裕子, 升田 由美子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 33 巻 3-2 号 p. 123-135
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    〔目的〕大学病院に勤務する3年目看護師が2年目に自分を成長させたと考える経験を明らかにし成長につながる支援を検討する。

    〔方法〕A大学病院に勤務し成長を自覚した3年目看護師6名に半構成的面接を行い、質的統合法(KJ法)を用いて分析した。

    〔結果〕3年目看護師は2年目時、先輩の目が新人へ向き解放感と不安・責任感を実感した。新たなことに対処できず未熟さも実感したが、周囲に支えられ努力し先輩や同期の承認を感じた。再び未熟さを自覚したが経験を積み重ね、一人前の看護師へ向かって成長したと実感していた。

    〔考察〕2年目看護師は未熟さの実感をきっかけに主体的に患者と関わり役に立っていると感じ、周囲と人間関係を形成し居場所を獲得したことが成長へつながった。新たな課題に取り組む際の早期からの支援、居場所を実感できる支援、未熟さを実感した経験を成長に向けての経験と2年目看護師自身が理解できる支援が必要である。

  • -分岐点に着目したイマジネーションにみる展結(Transduction)-
    田中 千尋, サトウ タツヤ
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 33 巻 3-2 号 p. 137-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究は、看護教員の経験に着目し力量形成プロセスを明らかにすることを目的とした。

    〔方法〕教育実践経験18年の看護教員を対象に半構造化面接を行い、複線径路等至性アプローチ(TEA)を用いて分析した。さらに分岐点に着目し、看護教員がイマジネーションの助けを借りてどのように新たな次元を見出しているか可視化した。

    〔結果〕看護教員の力量形成プロセスには7つの分岐点が見出された。さらに力量形成において重要と考えられる分岐点には「学生と衝突し関りを振り返る」ことをきっかけとし、様々なせめぎ合いの中で「卒業後の学生の活躍」や「生活体験が乏しい学生の現状」がリソースとしてはたらき【教員は知識を一方的に教授する者ではない】という展結的解として見出された。

    〔考察〕一連の分析により、相互性の場を通して成長し続ける一人の看護教員の姿が明らかとなった。

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