本稿は、Schön理論に依拠した『反省的看護実践』の基礎的理論を提示することを目的とした研究の第一部である。Walker & Avantの理論展開(theory derivation)の方略に基づき、Schön理論の主要な概念、陳述を分析し、看護の文脈における概念、陳述として意味づけし直した。扱ったものは、「実践における反省」、「実践についての反省」、「反省」の機能、「反省的実践」を展開する上で求められることであった。『反省的看護実践』は、看護職者が患者と関わる中で生じてくる問題状況を見極め、その再構成に向けた取り組みであり、その取り組みをさらに吟味する営みであることが示された。次いで、これら概念間の相互関連を分析し、『反省的看護実践』の枠組みとモデル図の提示を試みた。これにより基礎的理論の構造的な理解が増し、多くの看護職者に自らの実践を見つめ直す視点を提示することができるのではないかと考える。
今後の課題は、試案した基礎的理論を看護の具体的事象においてどのように展開できるのかを検討することであり、本研究の第二部として次稿で論じたい。
本稿は、Schön理論に依拠した『反省的看護実践』の基礎的理論を提示することを目的とした研究の第二部である。フィールドワークを実施し、得られた事例分析を通して、試案した基礎的理論が看護の具体的事象においてどのように展開できるのかを検討した。
その結果、以下のことが明らかになった。1)看護職者の問題状況への取り組みには三つのパターンが見出され、それぞれのパターン別事例は、『反省的看護実践』の枠組みに基づき解釈可能であった。2)いずれの事例においても、看護職者には起こった出来事の意味づけと、自分自身の取り組みがどうであったのかを吟味するという、深い「反省」が促された。これらのことから、『反省的看護実践』の基礎的理論は、看護実践を通した学びを深める理論として活用できる可能性が高いことが示唆された。
今後はこの基礎的理論を洗練させ、その有用性を検証していくことが課題である。