〔目的〕看護師養成所(3年課程)の学生を対象とした臨地実習における学習成果尺度(以下、学習成果尺度)を作成し、その信頼性・妥当性を確認することを目的とした。
〔方法〕看護師養成所(3年課程)に所属する3年生533名を対象に、平成26年9月~平成27年1月に自記式質問紙調査を行った。尺度作成にあたっては、因子分析を行い、内容的妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性、Cronbach’sα係数と再テストによる検討を行った。
〔結果〕調査票回収率は81.2%、有効回答率81.8%であった。因子分析の結果、【患者の個別性をふまえた看護過程展開のための知識と行動の獲得】、【看護師をめざす者としての自己成長観の獲得】の2因子からなる臨地実習学習成果尺度が作成でき、Cronbach’sα係数は.856~.926であった。学習成果尺度の高得点群の方が満足感、学習意欲、学習活動得点の全てが有意に高かった。再テストの相関は.872であった。
〔考察〕学習成果尺度は、看護実習が看護過程と人間関係構築が不可欠であるという特徴を示していた。分析の結果、尺度の信頼性、妥当性が確認できた。
〔目的〕看護基礎教育において効果的に基本的コミュニケーション・スキルを育成する指針を得るために、スキル・タイプを判定する手法を策定する。その上で、看護師を志して入学した初年次生の基本的コミュニケーション・スキルの特徴を明らかにする。
〔方法〕研究1では社会人と一般大学生に、研究2では看護学科初年次生に、ENDCOREsを用いた調査を行った。
〔結果〕研究1で、基本的コミュニケーション・スキルとして9タイプを同定した。この結果を基にタイプ判定法を考案した。研究2で看護学科初年次生は統制系・反応系スキルが高く、社会人や一般大学生と比べ、万能型、均整型、自制型、受動型が多かった。
〔考察〕同定されたスキル・タイプは、表出系スキルと反応系スキルの高低の組み合わせにより特徴づけられる。これらの判定法が定まったことで、今後は調査サンプルによらず共通の基準でスキル・タイプを特定することができる。看護基礎教育では入学時にスキル・タイプの判定を行い、自制型や受動型を持つ初年次生に対してアサーション・スキル・トレーニングを実施する必要がある。
〔目的〕受け持ち患者が亡くなる過程における学生に対する実習指導者のかかわりを明らかにする。
〔方法〕実習指導者5名を対象とし、半構造的面接を行った。データは実習指導者ごとに時間性に沿ってかかわりを再構成した後、コードを抽出し、カテゴリ化した。さらに全データから類似するかかわりをまとめ、特徴について質的分析を行った。
〔結果〕実習指導者は学生に対し、患者の容態が悪化して亡くなるまでの間、【差し迫る患者の死に向き合えるよう支える】かかわりと、【最期まで生きぬく患者・家族を支えるケアを体感させる】かかわりをしていた。そして患者の死後には、【患者の死が否定的な体験とならないよう働きかける】かかわりをしていた。
〔考察〕実習指導者は、学生を気遣いながら、最期まで生きぬく患者へのケアを伝えていた。しかし、死に対する学生の反応に実習指導者が戸惑いを感じることがあった。学生の心の機微を捉える上で、実習指導者と教員の協働の必要性が示唆された。