本研究の目的は、看護教員の職業アイデンティティ(以下「職業アイデンティティ」と略す)に関連する要因を教員の背景に焦点をあてて明らかにすることである。質問紙郵送法により、看護教員327人より有効回答が得られた。その結果、職業アイデンティティに関して、以下の点が示唆された。
1. 職業アイデンティティに関連する要因には、性別・年齢・教員経験年数・教員継続意志・教員役割モデルがある。
2. 職業アイデンティティには、教員経験年数よりも教員継続意志がより強く影響する。
3. 男性看護教員は女性教員に比べて、年齢が低く、教員経験が短く、教員役割モデルが得られにくく、職業アイデンティティが低い者が多い。
職業アイデンティティを高めるためには、教員継続意志がより強められるよう、よい職場環境の確保、職務内容の整理、教員自らの研修・研究の実践等が必要と考える。
本研究ではN看護短期大学学生を対象に、看護師の職業に対する認識の経時的変化とその影響要因を検討した。その結果、看護師の職業に対する認識は『責任のある仕事』『学び続ける仕事』『自分が成長できる仕事』『やりがいのある仕事』が全調査とも「そう息う」が高率であり、社会的に認知された認識を持ち続けていることが明らかになった。また『給料の高い仕事』は「わからない」が卒業時に至っても16%を占め、経済的側面に対する認識の低さがうかがえた。経時的変化では『自分を主張できる仕事』、『自分自身の判断を必要とする仕事』は「そう思う」が学年進行とともに増加し、『やりがいのある仕事』は「そう思う」が減少した。看護師としての資質を認識しながら、やりがいを実感できない状況があると推察された。また看護師の職業の認識や看護観に影響を受けたと感じているエピソードは、認識の合計得点の高い群が低い群に比べて「あり」が多く、具体的な内容の記述も多かった。エピソードの内容は「患者との出会い」「看護師」などであった。