問題状況をかかえたユーザの意思決定を真に支援するDSSとして提案したactDSSの枠組みで, 生産管理における主要問題と考えられる, 能力計画問題, 生産計画問題, スケジューリング問題を三つの部分問題とする総合的生産管理問題の解決を支援するDSSを構築した.ここで構築したシステムは, 数値処理と記号処理を有機的に結合する枠組みを提供し, ユーザとシステムの共同作業による問題解決というDSSの思想に一歩近づこうとしたものである.また, 環境の変動に対処できるようなシステムを構築するために, 従来主に研究されていた二階層のモデルにさらに適応層を加えた, 3階層のモデルを実現している.

抄録全体を表示

製造企業における生産部門の責任者は, 生産経営の手段としての"生産システム"の構築と運用により職責を果たしている.その際, 生産システムは常に外部環境に整合させるよう構築ないしは再構築されねばならない.ここに生産システムを外部環境, とりわけ顧客要求に整合させるための経営技術的行為としての"生産システム変更"が要請される.製造企業にとり, このシステム変更に関わる意思決定は困難かつ重要な課題といえよう.本研究では, かかる観点から生産システム・モデルの構築と操作に工夫を凝らし, 生産システム変更に関する1つの意思決定支援ツールを提案している.このツールは, 代替性を有するシステム変更を検討する際の全体性(統合性)と簡便性をねらい, 顧客が要求する数量と価格の変動を考慮に入れ, 新規設備費, 労務費, システム開発費の3者を関連させて検討できる"しくみ"c-z-k関連図)とその運用からなっている.

抄録全体を表示

本研究は品切期間中の需要がバックオーダ(backorders)と遺失販売(lost sales)される状況の下で, 単一段階, 単一品目, 確率的調達期間, 確定的需要をもつ(Q, r)在庫モデルを提示している.このような状況の下で時間に比例するバックオーダ費用と遺失単位当り固定ペナルティー費用を定義することにより平均年間可変費用を表わす目的関数が得られている.平均年間費用を最小化する最適運用政策変数が反復的な解法により算出されている.また, バックオーダ率βが0と1のとき, 本モデルは各々従来の遺失販売とバックオーダモデルに一致する.

抄録全体を表示

あいまいな状況下の意思決定問題をファジィ理論によって解くには, 様々なメンバーシップ関数型を定めなければならないため, 意思決定者にとって必ずしも容易ではない.このため, 最近, 係数のあいまいさを区間によって表した線形計画問題が定式化され.その計算法が提案されている.他方, 非線形整数計画問題を0-1線形計画問題に変換する際に生じるGUB制約条件を十分考慮した効率的な計算法が最近報告された.このような効率的な計算法は, CPUの計算時間や必要なメモリ量を小さくするためにも有効である.本稿では, 区間係数を伴う非線形整数計画問題が, GUB制約と区間係数を伴う0-1線形計画問題に変換されることを示し, このGUB構造を十分に考慮した効率的な計算法を報告する.また, 数値実験例において, 従来の実係数の場合との比較検討を行い, さらに区間係数の幅が小さくなると, 従来の実係数の場合に対する解に収束する傾向が見られることを示す.

抄録全体を表示

本研究では, 多段階生産在庫システムに対する生産指示方式のうち特に引張り型生産指示方式について, 生産工程内の要因が生産量変動および在庫量変動に与える影響を明らかにすることを目的としている.そのためにまず, 引張り型生産指示方式に関する従来の研究を整理した後, 単一の製品を生産する多段階生産在庫システムに対して, 引張り型生産指示方式を適用したモデルを構築した.その際, 生産指示に用いる情報の違いから2種類の生産指示モデルを構築している.構築した2種類のモデルに対して生産工程内の要因が生産量変動や在庫量変動に与える影響を数値実験により解析した.その結果, 工程の生産能力や機械のダウンタイムといった生産工程の条件により両モデルの変動の大小関係が逆転することを明らかにし, その条件を示した.

抄録全体を表示

ジョブの加工時間が確率的に変動する場合, 加工時間の変動は各ジョブの完了時刻の変動となって後工程の作業計画に影響を及ぼす.前報では, 総滞留時間の期待値と分散を最小化する2目的スケジューリングを扱ったが, 納期遅れの発生確率を小さくすることも重要である.そこで, 本研究では, 総滞留時間の期待値, 分散および最大納期遅れ確率を最小化する3目的スケジューリングにおいて非劣スケジュール集合を求める解法を提案した.また, 提案法の有効性を検討するため, 数値実験を行い, 分岐限界法による非劣スケジュール集合と比較検討した.その結果, 提案法は非劣スケジュールの数, 近接度および計算時間において非常に優れていることを示した.

抄録全体を表示

閉待ち行列ネットワーク・モデルでフレキシブル製造システム(FMS)の稼動率を十分よく近似できることがこれまでの研究で知られている.本研究では, ジョブのパレットへの脱着ステーションと搬送装置を備えたFMSを閉待ち行列ネットワークでモデル化し, 脱着時間および搬送時間がFMSの稼動率に及ぼす影響を解析した.その結果, 脱着時間および搬送時間の各影響による稼動率の低下を5%以内に収めるために必要な脱着装置の台数と平均脱着時間, 搬送台車数と平均搬送時間を求める関係式を導いた.また, 関係式が成立するためのパレット数の範囲を求めた.

抄録全体を表示

コンピュータの進歩による生産管理資源の能力増大と生産環境の複雑化により, よりよい計画・管理を可能とする解決アプローチが必要となっている.本研究は特定の問題構造に限定しない汎用の方法として, 人間の問題解決の方法を基調とし, さらにコンピュータの演算能力を生かした"二重先読み探索法"を提案する.この探索法は2種類の先読み機能をもつこと, すなわち詳細な方法による近い将来の予測, および荒い方法ではあるが問題解決の最終的な状態である目標状態の予測により効果的に探索を進めるという特徴を有する.本研究では提案手法のパフォーマンス, および計算時間などを評価するために, ジョブ・ショップ・スケジューリングに適用し, コンピュータ・プログラムによる数値実験を実施した.他手法の実行を含むこれらの結果を比較, 考察することにより, この手法のもつ長所, および解生成能力を確認することができた.

抄録全体を表示