頭頸部腫瘍
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16 巻, 2 号
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  • 斉藤 匡人, 田端 敏秀, 垣内 弘, 横田 昌也, 神人 崇, 木村 貴昭, 藤原 啓次, 與田 順一, 新井 宏紀
    1990 年 16 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部腫瘍に対し recombinant Interleukin-2 (rIL-2) の局所投与と抗癌剤の動注の併用による免疫化学療法を試み, その有用性を検討した。rIL-2局所投与のみにて口唇癌2例に Complete Response (CR), 舌癌1例に Partial Response (PR) が得られ, 15%の有効率であった。その後の抗癌剤の動注によって82.4%の有効率が得られ, CR症例も多く認められた。rIL-2局所投与と引き続く動注化学療法は頭頸部癌集学的治療の一環として有用であると思われた。
  • 行木 英生
    1990 年 16 巻 2 号 p. 7-11
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    49歳女性の右眼の上眼窩裂を中心に生じた神経鞘腫の量的質的診断として各種の画像および頭蓋顔面外科手術による摘出法をビデオで供覧した。提示した画像は, 視束管撮影, 上眼窩裂断層撮影, CT, MRIおよびDSAの5種類で, 術前のCT, MRI, DSAの画像から髄膜腫よりも神経腫が, 海綿静脈洞の外側で硬膜に接し, 上眼窩裂から眼窩内に伸展している所見が得られた。術後のCTおよび3次元CT画像からは眼窩周辺の再建状況が把握できた。頭蓋顔面外科手術による腫瘍摘出術は拡大前頭骨頬骨経由法を応用したもので, 術前診断通り, 硬膜外の神経鞘腫を全摘しえた。術後の合併症はなく, 視力は光覚弁から0.01まで改善した。
  • 浅井 昌大, 菅澤 正
    1990 年 16 巻 2 号 p. 12-15
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    東京大学医学部付属病院耳鼻咽喉科における10年間の腺様嚢胞癌34症例について検討した。発生部位は, 鼻副鼻腔9例, 耳下腺8例, 顎下腺2例, 口腔9例 (口蓋3例, 口腔底3例, 舌3例), その他6例であった。予後は, 34例中20例に再発が認められ, うち13例が死亡している。5年生存率は50%であり, 10年生存率は35%と不良であった。組織学的に cribriform type (17例) と solid type (17例) に分類し, 比較検討したところ, 前者は5年生存率が67%であるのに対し, 後者は29%と有意な差が認められた。発生部位によっても予後に差が見られ, 大唾液腺原発は他に比べ予後が良好であった。化学療法の有効な例があり, 今後期待される。
  • 林 達哉, 高橋 光明, 熊井 恵美, 金井 直樹, 海野 徳二
    1990 年 16 巻 2 号 p. 16-20
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    パラフィン包埋材料から試料を作製し, 耳下腺腫瘍39例の細胞核DNA量を Flow cytometry (FCM) を用いて解析し, 組織型・病理組織学的悪性度・予後との関連を retrospective に検討した。
    多形腺腫内癌と扁平上皮癌では良性耳下腺腫瘍と比較して aneuploidy を認める率が高かったが, aneuploidy の出現率と予後, および病理組織学的悪性度との間に一定の傾向を認めなかった。
    G0G1ピークの4SD以上の細胞の割合 (%>4SD) を細胞の増殖能を表す指標として用い, 検討した結果, %>4SDは良性腫瘍と比較して悪性腫瘍で大きく, また, %>4SDが20%以上を呈する症例で予後不良例が多かった。
  • 今村 俊一, 今村 まゆみ, 荻野 純, 野沢 出, 山内 祥生, 村上 嘉彦
    1990 年 16 巻 2 号 p. 21-25
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 顎下腺より発生し, 副咽頭間隙に進展した polymorphous adenocarcinoma の1症例に対し, 頸部外切開により腫瘍摘出術を施行した。術後に再発を認めたが, 放射線療法, 化学療法を併用施行することにより十分な治療効果をおさめた。本症例の臨床経過を呈示するとともに, その特異な病理組織学的所見について国内外の文献を渉猟し検討した。
    Polymorphous adenocarcinoma は, 比較的新しい病型分類に属するものとされ, しかも極めて多彩な組織型を特徴としており, 大唾液腺に発生することは比較的稀とされている。また, 遠隔転移, 腫瘍死の症例の報告は少ないが, 臨床経過や治療方針からは悪性度の高い腫瘍の1つと見なして対応すべきものと思われる。
  • 鈴木 守, 高坂 知節, 粟田口 敏一, 橋本 省
    1990 年 16 巻 2 号 p. 26-29
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌組織におけるラミニン, タイプ4コラーゲン, フィブロネクチンの分布を免疫組織染色にて調べた。頭頸部癌原発巣未治療例28例, リンパ節転移部11例を対象とした。ラミニン, タイプ4コラーゲンは癌細胞塊と間質の境界部に存在した例が多かったが, 正常上皮とは異なり, 不連続的, 部分的であった。フィブロネクチンは間質にびまん性に存在した。各例について切片全体の癌細胞塊周囲の距離の和に対するラミニンが陽性である部分の距離の和の比を測定した。この比が80%未満の原発巣では臨床的に明らかなあるいは潜在的なリンパ節転移があり, またリンパ節転移のない原発巣ではこの比が80%以上であった。
  • 野崎 智嗣, 井上 健造, 納 一功, 星野 鉄雄, 西端 和哉, 天津 睦郎
    1990 年 16 巻 2 号 p. 30-33
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    昭和41年1月より昭和62年2月までの21年間に当科を受診した70歳以上の口腔中咽頭癌新鮮例175例を対象とし, 治療およびその転帰を検討し, 文献的考察を加えた。原発部位では舌70例, 口蓋扁桃19例, 口腔底19例であった。病期分類ではIII期とIV期で69%を占め, 病期進展例が多かった。治療内容は根治治療111例 (63%) で, うち放射線治療は85例で, 手術治療は26例であった。生存率でみると, I~III期とIV期, また80歳の前後で大きく違いがあった。病期分類がIII期以下で, かつ80歳以下の場合, 70歳以下と同様に積極的に治療すべきと思われた。80歳以上あるいはIV期の場合, 予後を考え, case by case と思われた。
  • 宮尾 源二郎, 窪田 哲昭, 牧野 義彰, 海野 博之, 田中 裕之, 井藤 博之, 高崎 宗太, 大谷 尚志
    1990 年 16 巻 2 号 p. 34-39
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    われわれは, ヒト甲状腺腫瘍組織中に存在する Thyroglobulin (Tg) の microheterogeneity の良性および悪性腫瘍別による変化を検討することを目的とし, ヒト甲状腺腫瘍組織よりTgを精製した。その方法は, 高速液体クロマトグラフィーのシステムにより行い, 分子量66万の19STgおよび分子量33万の12Sサブユニットを簡易に分離精製した。19STgには2種類あり, 2ケの12Sサブユニットの共有結合によるものと非共有結合によるものがある。このうち, 非共有結合型19STgの12Sサブユニットへの解離には, HPLCの溶出条件としての緩衝液のpH, 分析のためのPAGEの泳動条件の関与が考えられた。しかしながら, 腫瘍組織より精製したTgの場合は, ヨウ素含量の低下にもとづく非共有結合型19STgの占める割合が高く, われわれの精製方法では19STgのみを取り出すことは難しいと考えられた。
  • 奥村 隆司, 有賀 秀治, 松永 亨, 酒井 俊一, 伊東 真人
    1990 年 16 巻 2 号 p. 40-43
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    上顎洞癌T1症例14例について臨床的検討した。男9例, 女5例, 平均56.7歳で, 初発症状は主に鼻出血, 血性鼻漏, 頬部痛。平均罹病期間は7.4カ月であった。鼻Xpの上顎洞の片側性病的陰影は11例, 両側3例であった。発見の機会は試験開放術によるもの9例, 術前良性の病名で術後病理検査により癌と診断したもの5例であった。腫瘍存在部位は自然口部に10例, 外側上方2例, 不明2例であった。一次治療は放射線単独 (動注も含む) 8例, 放射線+手術2例, 手術単独1例, 三者併用3例であり, 再発は3例に認めた。片側性上顎洞陰影と鼻出血は要注意であり, 積極的に試験開放し, 癌の早期発見に努め, 早期癌であっても十分な治療が必要だと考えた。
  • 岸本 誠司, 木村 正, 甲藤 洋一, 小桜 謙一, 柿木 章伸, 斎藤 春雄
    1990 年 16 巻 2 号 p. 44-49
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    中頭蓋底は顔面の深部に位置し, 同部の腫瘍に対する外科的アプローチは困難である。
    われわれは中頭蓋底腫瘍症例5例を経験したが, そのうち, Antero-lateral approach を用いた副咽頭間隙原発神経鞘腫と Anterior approach を用いた斜台原発脊索腫の手術法について呈示した。
    さらに中頭蓋底腫瘍に対するアプローチ法を Anterior (transantral, transpalatal, transmandibular) approach, Antero-lateral approach および Lateral (infratemporal fossa, transcervical) approach に分類し, 自験例, 過去の報告および体解剖所見から各々のアプローチ法の適応を検討した。
  • 藤田 昌宏, 真崎 規江, 清水谷 公成, 池田 恢, 又吉 喜伸, 村山 重行, 淵端 孟, 久保 和子, 古川 惣平
    1990 年 16 巻 2 号 p. 50-54
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1972年から86年までの15年間に大阪大学放射線科でブレオマイシン (BLM) またはペプロマイシン (PEP) 併用による放射線治療を行った頬粘膜扁平上皮癌64例および放射線単独の治療を行った18例について検討した。BLM90mg/6fr/3週またはPEP45mg/9fr/3週, 60mg/6fr/3週と放射線治療30Gy/15fr/3週投与した。非再発生存率は, BLM/PEP併用例は5年73%, 放射線単独例は67%であった。一次治療として放射線治療に引き続いて手術を行った症例を除くと, 2年局所制御率は, BLM/PEP併用例は80%, 放射線単独症例は57%であった。BLM/PEP併用例のCR率は52%であり, このうち一次治療として手術を追加しなかった症例の最終的な2年局所制御率は27/28 (96%) であった。
  • 川浦 光弘, 犬山 征夫, 田路 正夫, 田中 一仁, 藤井 正人, 田中 寿一, 高岡 哲郎, 細田 兵之助, 大熊 敦子, 川崎 和子, ...
    1990 年 16 巻 2 号 p. 55-59
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    昭和45年4月から平成元年3月までに当科頭頸部外来にて治療を行なった上咽頭癌87例を対象に臨床的検討を行なった。
    平均年齢は48歳で, 50歳台に多く見られ, 男女比は3.6:1であった。病理組織学的分類では低分化型扁平上皮癌と未分化癌が多く見られた。stage 分類ではIII (19例), IV (54例) と進行例が多かった。
    治療で Neo-adjuvant chemotherapy (NAC) を施行したものは24例であり, 化学療法の全体の奏功率は73%と高かった。
    しかし Kaplan-Meir 法による5年生存率は, NAC施行例44.7%とNAC非施行例45.3%と余り変わらず, 統計的にも有意差が見られなかった。
  • 甲能 直幸, 川井田 政弘, 福田 宏之, 内田 正興
    1990 年 16 巻 2 号 p. 60-64
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    CDDPと5-FUの併用療法は頭頸部扁平上皮癌に対して有効な regimen である。このうち, 5-FUは葉酸レベルの低い細胞では効果が少ないことが知られている。そこで, 葉酸誘導体であるLV (leucovorin calcium) の投与を加えることにより, CDDPと5-FUの併用療法の効果がどのような影響を受けるかをヒト喉頭癌由来のHEp-2細胞による単層培養細胞とMTSを用いて検討した。殺細胞効果はコロニー形成率で評価し, 併用効果は median effect plot analysis を用いて解析した。LVは単層培養細胞において5-FUの効果を増強したが, MTSでは不変であった。CDDPを先行投与することにより, LVのMTS深部への深達性が増加し, CDDPならびに5-FU, LVの3剤併用効果は増強され, 相乗的な効果が得られた。CDDP先行投与による3剤併用の臨床応用が期待される。
  • 中島 格, 倉富 勇一郎, 冨田 吉信, 勝田 弥三郎, 林 逸郎
    1990 年 16 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性腫瘍のうち, 扁平上皮がんおよび甲状腺がんを対象に, コハク酸脱水素酵素活性 (SD活性) を測定し, がん組織の抗がん剤感受性試験を行った。生検あるいは手術的に採取したがん組織に対するADM, THP-ADM, ACR, CDDP, CQ, 5-FU, HCFU, VLBの8種類の抗がん剤に対するSD活性阻害率および感受性陽性率は, HCFUを除いて, 甲状腺がん, 大腸がんより高かった。扁平上皮がんを病理組織分化度別に検索した結果, 低分化扁平上皮がんほど高感受性を示した。
  • 青笹 克之, 堀内 敬介, 佐々木 良二, 前田 一, 松永 亨, I. FRIEDMANN
    1990 年 16 巻 2 号 p. 69-72
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    進行性鼻壊疽は, 組織学的にみると, Wegener 肉芽腫 (WG), 悪性リンパ腫 (ML), polymorphic reticulosis (PR) を含む。WGは炎症性疾患であり, PRはTリンパ腫である。本研究では進行性鼻壊疽におけるWG, ML, PRの頻度を本邦および英国例について調査した。組織学的および臨床的所見より, 本邦例ではWG 68例, PR 129例, ML 92例, 慢性炎症44例, その他が7例であった。外来患者10万人あたりのWG, PR, MLの頻度は, 本邦で4, 8, 6であり, 英国では8, 4, 1であり, リンパ球増殖疾患とWGの比は本邦では3.5:1と英国に比して高い。文献的にも mongolian ethnic group には鼻のリンパ球増殖性疾患が多いようである。
  • 増田 元三郎, 川辺 良一, 海野 智, 小野 繁, 藤田 浄秀
    1990 年 16 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科において, 最近10年間に登録された口腔癌と他臓器の多重複癌は27例あった。口腔癌の発生部位は, 舌, 下顎, 中咽頭, 上顎, 口底, 頬, 唾液腺と様々な部位で認められたが, 舌癌が最も多かった。重複した悪性腫瘍は, 食道, 胃, 膀胱, 乳房, 大腸, 子宮, 肺, 腎臓, 甲状腺, 眼に認められたが, 多くは食道癌, 胃癌であった。胃癌が先行し, ついで口腔癌, 後に食道癌が発生するという傾向があった。放射線誘発癌と考えられる症例は6例あった。背景因子として, 性別, 年齢, 家族歴, 飲酒, 喫煙, 職業, 学歴, 白板症の有無, 口腔清掃の良否をあげて, 多変量解析を用いて分析した。白板症が多重複癌発生の背景因子として考えられた。
  • 高橋 久昭, 内田 正興, 鎌田 信悦, 井上 哲生, 川端 一嘉, 中溝 宗永, 加藤 孝邦, 清水 佐和道
    1990 年 16 巻 2 号 p. 78-81
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頸動脈との癒着が疑われる転移リンパ節を有する頭頸部扁平上皮癌患者41例について, 術前のCT所見と手術所見および病理組織像とを比較し, 頸動脈から腫瘍の手術的剥離が可能か否かについてのCT診断を検討した。
    CT所見では, (1) 腫瘍に接する部分での動脈壁像の状態, (2) 腫瘍が動脈壁を取り囲む程度, の2点を診断基準に定めた。
    その結果, CT像で腫瘍が頸動脈に接していても, ある程度, 動脈壁の確認ができる症例では剥離が可能であったが, 動脈壁の消失している症例や腫瘍が頸動脈を半周以上巻き込んでいる症例では手術を試みても腫瘍が残存した。
    放射線治療後の症例では, 診断の難しい場合もあるが, 転移リンパ節と頸動脈との関係についての診断にCT検査はきわめて有用であった。
  • 岩淵 康雄, 清田 隆二, 昇 卓夫, 大山 勝
    1990 年 16 巻 2 号 p. 82-85
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頸部腫瘤を呈する先天性形成異常のなかで頸部胸腺嚢胞を経験することはまれである。これまで, 外国では100例ほど, 日本では17例の報告があった。今回われわれは, 4歳女児で, 右側頸部の無痛性腫瘤を訴え, 手術により頸部胸腺嚢胞と判明した症例を経験した。腫瘤は多房性で, 総頸動脈, 内頸動脈との間で複雑な局在を示していた。病理組織学的検査で, 嚢胞壁には Hassal 小体を伴う正常胸腺組織やコレステロール肉芽腫などが散見された。術後経過は良好で, 2年有余を経た現在も再発の兆候はない。あわせて, 日本における頸部胸腺嚢胞報告例18例について若干の文献的考察を加えた。
  • 山崎 滋, 江浦 正郎, 吹上 忠祐, 福田 功一, 村上 公輝, 猪川 勉, 石川 哮
    1990 年 16 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    養子免疫療法を施行した16症例について治療前後における皮内反応および細胞性免疫検査を実施し, その結果に検討を加えた。
    皮内反応では, 免疫療法後, SK-SD, SU-PSの反応に上昇傾向を認めたが, PPDでは明らかな反応を認めなかった。
    細胞性免疫検査では, OKT11に上昇, OKT-3に軽度上昇がみられた。OKT8にも上昇傾向があり, OKT4/OKT8に下降化が認められた。Leu11, OKla1, NK細胞活性にも上昇傾向があった。
    これらの免疫学的検査値の変動と臨床効果について検討を加えたが, 今回の16症例では明らかな相関は得られなかった。
  • 藤枝 重治, 久保 富隆, 鹿野 佳子, 坂下 勤武, 岩城 詠子, 大坪 俊雄, 斎藤 等, 星野 孝
    1990 年 16 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性腫瘍60症例および消化器癌27症例に対して, NK活性, LAK活性, OK-AK活性, およびPPD, SU-PS皮内反応を測定した。頭頸部癌において, NK活性, LAK活性, OK-AK活性とも, stage の進行につれて有意に低下した。LAK活性 (患者自己血清を含む系) とPPD皮内反応, OK-AK活性とSu-PS皮内反応とは有意な相関を認めた。消化器癌 stage IV患者の活性分布は頭頸部癌とは異なっていた。
    今回の結果より, これら Killer 活性は担癌患者免疫能判定に有用であり, 測定不可能な施設においては皮内反応でも十分指標になりうると考えられた。
  • 量的再建と動的再建
    吉田 豊一, 佃 守, 久保田 彰, 金子 まどか, 古川 政樹, 前川 二郎, 青木 文彦, 安藤 晋一郎, 古川 滋
    1990 年 16 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部のおもな再建の対象となる機能は“嚥下”および“構音”である。舌, 中咽頭, 軟口蓋の欠損が再建の対象となる組織である。舌では残存組織の運動を障害しない“大きな被覆皮弁”や, 舌でも運動すべき組織の少ない亜全摘以上の大きな切除例では嚥下・構音機能のために残存組織の小さな運動によりその機能を発揮できるように“volume”の付加を行った。中咽頭でもこれまでにも報告をみているが, volume を強調して再建し, 機能的にその意義が感じられた。軟口蓋再建では, 最近, 長掌筋腱付前腕皮弁などによる再建組織自体の運動する“動的再建”と仮称した再建を4例に行い, 鼻咽腔閉鎖機能獲得に予想以上の好結果を得ている。
  • 田部 哲也, 井上 鉄三, 小倉 雅実, 北原 哲, 田中 英一, 西沢 伸志
    1990 年 16 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    声門部癌T1・T2新鮮例72例に対して, レーザー治療と放射線治療との比較検討を行い, 以下の結論を得た。
    声門癌T1a症例は, レーザー治療単独でも放射線治療と同等, あるいはそれ以上の治療成績が得られ, さらに放射線を併用することにより喉頭を保存して根治できる可能性がある。声門癌T1b症例は, レーザー治療単独または放射線の併用により, 放射線単独と比べて喉頭保存率の向上が期待できる。ただし, 両側声帯の広範な切除を要するものは術後の音声に問題を残す。声門癌T2症例のレーザー治療には症例の選択が必要である。
  • 山本 信和, 高橋 裕子, 児玉 章, 石井 哲夫, 大川 智彦
    1990 年 16 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1981年から1988年の8年間に当科で一次治療を行った喉頭癌104症例の治療成績を検討した。男女別では男性97人, 女性7人で, 圧倒的に男性に多かった。発生部位別では声門上癌は28例で, これは比較的進行例が多かった。声門癌は76例で, 反対に比較的早期例が多かった。治療成績は声門上癌で5年生存率51.8%, 喉頭保存率46.4%であった。声門癌では同様に5生率は85.1%, 喉保率は77.6%であった。死因は声門上癌は原病死が多く, 声門癌は他因死, 特に重複癌が多かった。したがって, 今回の検討では声門上癌の治療の徹底と重複癌監視のための計画的経過観察が必要であると思われた。
  • 篠原 正徳, 嶋田 誠, 原田 猛, 竹之下 康治, 岡 増一郎
    1990 年 16 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    原発巣の組織学的悪性度より転移リンパ節での腫瘍の病態を推測しえるか否かについて検討すべく, 原発巣生検材料での腫瘍の浸潤様式と転移リンパ節での腫瘍の浸潤様式ならびに増殖進展様式について検索した。その結果, 原発巣の浸潤様式程度は症例あたりの転移リンパ節個数, 転移リンパ節での腫瘍の浸潤様式, 節外浸潤頻度と強く関連し, 予後判定因子として重要であることが示唆された。特に高度浸潤型では転移巣での発育も早く, 節外浸潤しやすい傾向がみとめられた。また, 頸部リンパ節転移巣の治療法決定に際しても重要な指針になりえると考えられた。
  • III. 所属リンパ節転移症例の原発巣の臨床像および病理組織像について
    堀越 勝, 草間 幹夫, 岸 豊子, 小野 富昭, 藤林 孝司, 名倉 英明, 榎本 昭二, 岡田 憲彦
    1990 年 16 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    下顎歯肉扁平上皮癌患者28例の原発巣の臨床像および病理組織像とpNとの関連性について検討し, 以下のような結果を得た。1. Tの進行度とpN陽性率は必ずしも相関しなかった。2. 原発巣の視診型が潰瘍型のpN陽性率 (55.6%) は, 隆起型のそれ (30.0%) より高値を示した。3. X線的骨吸収度あるいは骨吸収像とpN陽性率との関連性は明らかではなかった。4. 浸潤様式が小胞巣性のpN陽性率 (58.3%) は, 大胞巣性浸潤症例のそれ (38.5%) より高かった。5. 所属リンパ節転移は28例中の13例 (46.4%) で, そのうち顎下リンパ節のみへの転移は10例 (35.7%) であり, pN+の13例中の10例 (76.9%) が顎下リンパ節のみへの転移であった。
  • 高崎 宗太, 窪田 哲昭, 海野 博之, 宮尾 源二郎, 田中 裕之, 井藤 博之, 大谷 尚志
    1990 年 16 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性黒色腫 (MM) 5症例に対して Interferon (IFN) の局所投与を行い, うち4症例に Complete Response (CR) をみとめた。鼻腔症例は, DAV療法, Linac 照射が奏効せず, IFN-αの局所投与のみでCRを得た。鼻副鼻腔症例は術後の局所再発部位にIFN-βの局所投与を行い, わずかな色素沈着を残すのみとなった。鼻中隔症例, 鼻前庭症例, 鼻背症例に対しては, 当初よりIFN-βの局所投与のみでCRとなった。頭頸部領域におけるMMの治療上, 広範囲全摘が不可能であっても, IFNの局所投与が部位的に確実に行える症例に対しては, IFNの位置付け役割は特記すべきものと思われた。
  • 宮原 隆雄, 荒木田 郁夫, 長谷川 裕, 谷口 尚, 大山 喬史, 竹田 正宗, 渋谷 均, 堀内 淳一
    1990 年 16 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    われわれは, 1980年以来, 104症例に対してさまざまな放射線治療補助装置を製作してきた。これらには線源を正確な位置に固定し, 確実な線量分布を得ることを目的とした carrier, その機能に正常周囲組織の防御の機能を併せ持った mould, 舌癌の密封小線源治療の際に下顎骨を保護する目的に使用される spacer, 照射部位から正常周囲組織を保護する protector がある。上記の症例にはこれらの裝置を用いることにより, 腫瘍組織に対しては予定した線量を与えつつ, 正常周囲組織に対しては可及的に被曝を減少させることが可能であった。放射線治療補助裝置は応用範囲が広く, 放射線治療の適用範囲を広げ, その利点を最大限に引き出すのに有効であると考える。
  • 波田野 洋一, 花沢 秀, 東 紘一郎, 戸川 清, 今野 昭義
    1990 年 16 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 1990/03/20
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科開設以来の16年間に経験した10例の聴器癌について検討した。原発部位は耳介4例, 耳介・外耳道1例, 外耳道2例, 外耳道・中耳2例, 中耳1例であった。外耳道骨部より内方に腫瘍が存在するかによって聴器内癌, 聴器外癌とする臨床分類があるが, この分類によると, 聴器内癌6例, 聴器外癌4例であった。この分類法は, 臨床像, 治療方法, 予後を考える上で有用と考えられた。外耳道深部または中耳原発と考えられる聴器内癌3例のうち2例に慢性中耳炎の既往があり, 関連性が想像された。当科では外科的切除を第一選択としてきたが, 全症例の Kaplan-Meier 法による5年生存率は66.7%と満足すべき成績であった。
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