日本ペインクリニック学会誌
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30 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例
  • 青木 亜紀, 遠藤 涼, 湊 弘之, 倉敷 達之, 大槻 明広
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 12 号 p. 271-274
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/25
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    先天性表皮水疱症は軽微な外力で皮膚に水泡やびらんを形成する遺伝性の難病である.今回,優性栄養障害型先天性表皮水疱症を有する60歳男性の広範囲のびらんの処置時の疼痛管理を経験した.オピオイドや塩酸ケタミンも検討したが,麻酔科医が連日対応できないため,悪心や呼吸抑制などの合併症に十分な対応ができない懸念があった.そこで麻酔科医が留置した硬膜外カテーテルを利用して,皮膚科医が硬膜外ブロックの管理を実施したところ,安全に良好な鎮痛が得られた.また,十分な注意を払い硬膜外カテーテルを固定することで,新たな皮膚病変を作ることなく管理できた.

  • 佐々木 美圭, 中村 尚子, 内野 哲哉, 奥田 健太郎, 北野 敬明
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 12 号 p. 275-278
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/25
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    経口血液凝固活性化第X因子阻害剤であるアピキサバンの末梢神経ブロック時の休薬は個別な対処が望ましいとされている.今回,アピキサバン内服中の患者で内転筋管ブロックを施行したところ,広範囲に及ぶ血腫がみられた症例を経験した.症例は70代女性,左膝人工関節置換術後2日目より心房細動のため内服していたアピキサバン5 mg/日を再開したが,術後8日目に下肢静脈血栓を認めたため20 mg/日に増量し,術後16日目に10 mg/日へ減量された.術後17日目に膝関節屈曲時の痛みが続くため神経ブロック療法を施行した.血栓症のリスクを考慮し,アピキサバン継続の状態で超音波ガイド下左内転筋管ブロックを行い,カテーテルを留置した.留置直後より刺入部からの出血がみられ,圧迫止血を試みたが止血困難であり,カテーテルを抜去したうえで圧迫止血を継続した.翌日,皮下出血と内転筋管周囲の血腫がみられていたが,術後22日目には血腫が臀部や膝まで増大し,貧血の進行を認め,血腫の改善に1週間を要した.本症例では下肢静脈血栓治療に対するアピキサバン増量と腎機能低下による血中濃度上昇により,遅発性出血がみられたと考えられた.

  • 小糠 あや, 安部 睦美, 大槻 明広, 中右 礼子
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 12 号 p. 279-283
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/25
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    BCG膀胱内注入療法(BCG膀注)後の排尿時痛は,合併症の中でも最も頻度の高い症状である.BCG膀注後の難治性排尿時痛に対してオピオイド処方が行われる場合があるが,痛みが慢性化した場合は不適切使用につながる可能性がある.今回,オピオイド不適切使用に陥ったBCG膀注後の難治性排尿時痛に対して,ステロイド内服や経尿道的膀胱腫瘍摘出術にて疼痛が軽減し,オピオイド使用に関する患者教育や排尿時痛以外の併存する痛みに対処することで徐々にオキシコドンに対する依存状態が改善し,最終的にオキシコドンを中止することができた症例を経験したので報告する.

  • 清水 礼佳, 西田 茉那, 岡田 薫, 後藤 友理, 河内 順, 井関 雅子
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 12 号 p. 284-287
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/25
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    71歳男性,X−4月に肺がんに対し右下葉,胸壁合併切除・再建術を行い,X−1月からの左季肋部痛[numerical rating scale(NRS)7]で第8胸椎病的圧迫骨折が判明し,疼痛緩和のために入院となった.オピオイド鎮痛薬(以下,オピオイド)の副作用が忍容できず,緩和的放射線治療やオピオイド増量でも鎮痛効果が得られない難治性がん疼痛としてペインクリニックに紹介となり,胸部硬膜外ブロックで一時的効果を得た.MRIで神経浸潤が疑われ,神経障害性疼痛に特徴的な電撃痛や神経支配に一致する限局的な痛みを示していた.全身状態,治療目標と予後について担当医,緩和ケアチームと協議し,左第8,9胸部神経根へのパルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)を透視下腹臥位,斜位法で実施した.実施後,NRSは改善し,オピオイドを調整し自宅退院となった.胸神経領域の限局したがん性痛に対するPRFが疼痛軽減と生活の質(quality of life:QOL)改善に有用である可能性が示唆された.

  • 江島 美紗, 山田 信一, 合原 由衣, 兵頭 彩子, 永田 環, 平木 照之
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 12 号 p. 288-291
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/25
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    ナルデメジン併用後に,オピオイドの鎮痛効果や退薬症状が出現した症例を経験した.【症例1】50歳台,男性.肺腺がん,頭蓋底転移に対して加療中だった.転移性腫瘍による右後頚部から右肩にかけての痛み症状の増強に伴いオキシコドン徐放錠の増量とナルデメジンの併用開始となった.痛みは緩和されず,悪心・嘔吐が続いた.オピオイドの増量や種類の変更を行ったが症状は改善しなかった.ナルデメジンによるオピオイドの拮抗作用を疑い,ナルデメジンのみ中止した.翌日から悪心・嘔吐は消失し,痛み症状も改善した.【症例2】40歳台,女性.多発性神経鞘腫による腫瘤性病変が脊髄硬膜嚢内や硬膜外,骨盤内に多発し,下腹部や両下肢の痛みが強い状態だった.フェンタニル貼付剤の使用と増量に伴い便秘がひどくなり,ナルデメジンの内服を開始した.ナルデメジン内服後1時間で悪心・嘔吐,多量の下痢,痛みの増強をきたした.原因が不明のまま経過をみていたが,右顔面神経麻痺が出現し,右小脳橋角部腫瘍が判明した.【まとめ】ナルデメジンの投与後にオピオイドの鎮痛効果減弱と離脱症状が出現する場合,脳腫瘍の存在を疑い,念入りな診察を行うべきである.

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