糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy:DN)の代表的な病型は,遠位性対称性多発神経障害であり,うち有痛性の割合は15~20%である.他にも有痛性のDNには複数の病型が存在し,治療誘発性糖尿病神経障害もその一つである.これら有痛性のDNに対しては,一般にプレガバリン,デュロキセチンなどの薬物治療が選択されるが,十分な効果を得ない場合は神経ブロック治療が考慮される.エビデンスが確立された神経ブロック治療は存在しないものの,病態に血流障害の関与が疑われる病型には腰部交感神経節ブロックも選択肢となる.今回,遠位性対称性多発神経障害に治療誘発性糖尿病神経障害が併発した両下肢痛に対し,高周波熱凝固と無水エタノールを用いた腰部交感神経節ブロックが有効であった症例について報告する.
症例は56歳,男性.慢性硬膜下血腫の診断で両側穿頭血腫除去術を施行されたが頭痛が改善せず,脳脊髄液漏出症を疑われ,当院紹介となった.当院へ転院直前に小脳扁桃ヘルニアによる急激な意識障害を示したため,当院で緊急硬膜外自家血パッチ(epidural blood patch:EBP)を施行し,その直後より,意識状態は改善した.EBP 5日後に再び中心性テント切痕ヘルニアによる意識障害を認め,穿頭血腫除去術を施行し,意識障害は改善した.意識障害を呈した両側硬膜下血腫合併脳脊髄液漏出症における治療では,EBPと硬膜下血腫除去術のどちらを優先するかが議論となる.今回,頭部CTが脳ヘルニアの治療方針決定の一助となった重症脳脊髄液漏出症の1症例を経験したので報告する.
パルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)は合併症が少なく,安全かつ低侵襲な慢性痛の治療法として知られている.今回,遷延性術後痛に対して傍胸骨肋間神経(parasternal intercostal nerve:PSI)–PRFが有効だった1症例を経験した.症例は45歳男性.Th2~4の胸髄腫瘍摘出術と術後髄液漏に対する閉鎖術を受けた.術後に同神経領域に沿った左背部,側胸部,前胸部の持続痛が出現した.左肋骨角部で肋間神経PRFを行い,背部,側胸部の痛みはほぼ消失した.左前胸部痛が残存したため,単回PSIブロック(超音波ガイド下,0.25%レボブピバカイン単独)を行い,数日間は痛みが軽減した.効果時間延長を期待してPSI–PRFを行ったところ,数週間の鎮痛効果が得られた.硬膜癒着剥離術を行うまでの15カ月間,痛みの程度に応じて3~5週間ごとにPSI–PRFを合計20回行った.PSI–PRFに伴う明らかな合併症は認めず,鎮痛コントロールに有用だった.