日本ペインクリニック学会誌
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30 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 長谷川 晴子, 廣瀬 彩名, 岩出 宗代, 古井 郁恵, 野原 穂波, 継 容子, 庄司 詩保子, 畔柳 綾, 樋口 秀行, 中川 雅之, ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 30 巻 4 号 p. 71-78
    発行日: 2023/04/25
    公開日: 2023/04/25
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    当院ペインクリニック外来(当科)を帯状疱疹関連痛で受診した患者の疼痛改善に及ぼす影響を後方視的に検討した.過去3年間に当科を受診した帯状疱疹関連痛症例130例を対象とし患者背景や治療経過を抽出した.当科での治療開始90日後の疼痛スケール(NRS)が初診時NRSと比較し(NRS改善率)50%以下となった症例を十分に疼痛が改善した群として,50%未満にとどまった群と抽出項目を比較した.さらに帯状疱疹発症から当科受診が31日以上の症例に関して当科受診前の治療内容についても検討した.結果はNRS改善率が50%未満の群で初診時NRSが高く,発症から当科受診までの日数が有意に遅かった.特に当科受診が発症から31日以上で当科受診前に神経障害性疼痛治療薬が開始されなかった症例で改善率が低かった.結論として,NRSが高い帯状疱疹症例は発症30日以内に疼痛専門機関を受診することが望ましく,発症31日以降となる場合は前医で神経障害性疼痛治療を開始することが望ましいと考えられた.

症例
  • 中村 瑞道, 八反丸 善康, 大岩 彩乃, 濱口 孝幸, 川村 大地, 大橋 洋輝, 倉田 二郎
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 4 号 p. 79-83
    発行日: 2023/04/25
    公開日: 2023/04/25
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    脊髄損傷後の難治性慢性疼痛に対して脊髄刺激療法は適応とされるものの,一般論として外傷性の脊髄損傷例に対しては,硬膜外腔の癒着もあるため,脊髄刺激療法自体の施行も難しく,また効果予測は非常に困難である.本報告の症例は交通事故による第12胸髄以下の不全麻痺と両下肢痛のため三環系抗うつ薬を内服していた.薬物治療は効果的であったが副作用による不整脈が出現したため,減薬を目的に脊髄刺激療法を導入した.三環形抗うつ薬の鎮痛機序は下降性抑制系の賦活であるため,脊髄刺激療法の選択においても下降性抑制系にも作用するとされるburst刺激を選択した.結果,良好な疼痛緩和が得られ,内服薬の減量が可能となり不整脈が消失した.本症例は脊髄不全損傷であり,後索機能の賦活化により本治療の効果を得た可能性がある.

  • 清水 貴仁, 人見 俊一, 塙 宏基, 高橋 良享, 山口 重樹, 濱口 眞輔
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 4 号 p. 84-87
    発行日: 2023/04/25
    公開日: 2023/04/25
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    片側の頚部交感神経幹損傷が疑われた外傷性頚部症候群の治療を経験した.症例は49歳の男性で,交通事故時に打撲した左側の顔面痛,顔面火照り,鼻閉と左頚部痛,上肢痛を主訴に受診した.脳神経科では複合性局所疼痛症候群I型とされたが,交感神経活動と関連した症状を評価した結果,われわれは外傷性の左交感神経麻痺を伴う頚椎椎間関節症と診断した.左交感神経遮断効果を減弱する目的で,右側の星状神経節ブロック(stellate ganglion block:SGB)を施行したところ,右SGB後に左顔面の火照りや鼻閉は軽減し,サーモグラフで右頚胸部の皮膚温上昇と左頭頚部の皮膚温低下の所見がみられた.以後,右SGBの反復によって左顔面の火照りは軽減し,頚部痛は椎間関節ブロックで軽減した.本症例で,健側のSGBによって患側の頭頚部交感神経遮断の症状が緩和した機序としては,胸部交感神経幹の交通枝を介した反対側の交感神経活動の賦活化などが関与していると考察した.

  • 林 文昭, 石川 慎一, 南 絵里子, 小橋 真司
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 4 号 p. 88-92
    発行日: 2023/04/25
    公開日: 2023/04/25
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    結核性脊椎炎による脊椎変形が基礎にありスポーツ外傷を契機として脳脊髄液漏出が生じた症例を報告する.症例は結核性脊椎炎による脊椎楔状変形の既往がある10代女性.校内活動中にサッカーボールが頭部に当たり,その後,起立性頭痛が出現し登校困難となった.大学病院脳神経外科を含む4軒以上の病医院を受診し,脳脊髄MRIを含む精査を施行したが確定診断には至らず8カ月間頭痛は継続し,当院へ紹介となった.脊髄MRIおよびCT脊髄造影を施行し,脊椎変形部位に一致した胸椎での髄液漏出を確認した.その後,硬膜外自家血注入治療を1回行った.起立性頭痛は速やかに改善し,登校が可能となり現在まで再発していない.前医では脊髄MRIによって髄液の漏出を指摘されなかった.漏出部位に一致した脊椎の楔状変形などを受傷前から示しているため診断が困難になったと推測される.思春期における脳脊髄液漏出症の診断の遅れは,通常の学校生活を送ることに支障をきたす場合がある.患児への精神的・社会的な影響が予想され,適切な診断が必要である.

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