日本ペインクリニック学会誌
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18 巻, 4 号
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原著
  • 裏辻 悠子, 入江 潤, 森川 修, 伊福 弥生, 末原 知美
    2011 年18 巻4 号 p. 361-366
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    各種有痛疾患(n=456)にトラマド-ルをシロップ製剤として経口投与し,鎮痛効果,至適維持量,副作用,安全性を検討した.痛みの程度が5段階の言語式評価スケール(verbal rating scale:VRS)で3以上の症例を検討の対象とした.トラマドールを0.5-2 mg/kg/日(分2-4)で服用を開始し,2日から84日後まで服用量を調節した.トラマドールの服用量は20-450 mg/日であった.全体の50%の症例で,痛みはVRSで2以下になった(38.2%は痛みが軽快し,トラマドールの服用が不要になり,11.8%ではトラマドールを服用し,痛みが軽減していた).トラマドールは,帯状疱疹,帯状疱疹後神経痛で有効例が多く,複合性局所疼痛症候群,血管病変,がん性痛では,他の薬剤や治療法へと変更した症例が多い傾向であった.トラマドールの服用後に,嘔気・嘔吐,ふらつき,便秘が生じたのは全体平均で2-12%であったが,重篤な副作用はなかった.トラマドールでは,侵害受容痛,神経障害痛ともに良好な鎮痛効果が得られたので,各種難治性の痛みの治療法の一つとして,幅広い臨床応用が期待される.
症例
  • 谷口 友佳子, 西島 薫, 小野 まゆ, 橋本 典夫
    2011 年18 巻4 号 p. 367-370
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    関節リウマチでプレドニゾロンとメトトレキサートを投与されていた患者が帯状疱疹を発症し,中枢神経系の障害と,その後に全身状態が悪化したので報告する.79歳の女性で,左頸部と上肢に痛みが発現し,3日後に同部位に帯状疱疹の小水疱が生じた.皮疹発現から7日後に受診し,入院となった.入院後にアシクロビル750 mg/日を開始したが,翌日の入浴中に左上肢,両側下肢の筋力が低下し,立位が困難となった.アシクロビルを1,000 mg/日に増量し,計14日間投与した.入院後6日目より肺炎,真菌症,菌血症を合併し,全身状態が悪化した.集中治療により全身状態は改善し,入院後13日目よりリハビリテーションを開始した.左上肢と両下肢の筋力は改善し,つたい歩きは可能になったが,帯状疱疹発症前の日常の活動性を取り戻すことは困難で,リハビリテーション病院に転院となった.
  • 山上 裕章, 塩見 由紀代
    2011 年18 巻4 号 p. 371-376
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    (目的)頸椎後縦靭帯骨化症(以下,OPLL)による愁訴を有する 8症例に対して神経ブロック治療を行い,その有用性について考察した.(方法)神経ブロックは,主として硬膜外ブロックと神経根ブロックをX線透視下で施行した.治療開始6カ月後の効果,2年後の転帰を調べた.日本整形外科学会頸髄症治療成績判定基準(以下,JOAスコア)と愁訴スコアを用いて評価した.(結果)対象の年齢は37~82歳で,頸髄症が3症例,脊髄神経根症は5症例であった.治療開始6カ月後のJOAスコアは12.4±1.1から14.3±1.3へ有意に改善を示した(P<0.05).愁訴スコアは10から5.1±2.3へ有意に改善し(P<0.01),3症例は著明な改善を示した.8症例中5症例は治療に満足していた. 5症例は2週に1回, 3症例は1月に1回の神経ブロック治療で愁訴が軽減した.2年後には,6症例が社会復帰し8症例中7症例が治療に満足していた.(結論)OPLLは治癒する疾患ではないが,1カ月に1回程度の神経ブロック療法で愁訴が軽減する症例では, 治療を継続していく価値があると思われる.
  • 米満 亨, 大納 哲也, 星野 一, 八木 由紀子, 上村 裕一
    2011 年18 巻4 号 p. 377-379
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    頸椎症による根性痛の治療中に,残存した周期的な痛みが桃核承気湯を併用して軽減した症例を報告する.81歳の女性で,持続硬膜外ブロックにより速やかに左上肢の痛みが軽減したが,感染性腸炎を契機に周期的な体温の上昇に連動して痛みが増悪するようになった.体温の変化を陽明病期の潮熱と判断し,桃核承気湯を投与した.桃核承気湯を服薬翌日以後,体温は安定し,痛みは軽減した.
  • 青木 浩, 境 徹也, 村田 寛明, 澄川 耕二
    2011 年18 巻4 号 p. 380-383
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    2005年1月から2007年9月の期間に当科を受診した三叉神経痛35症例のうち微小血管減圧術後に痛みが再発した5症例があった.これら5症例の背景と治療経過を診療録から調査した.カルバマゼピンによる薬剤誘発性過敏症症候群の1症例には三叉神経節の高周波熱凝固術を施行し,残りの4症例では内服薬での治療を試みた.内服薬を増量した4症例中の2症例では,痛みの軽減が不十分であったので,三叉神経節の高周波熱凝固術を追加した.三叉神経節高周波熱凝固術を施行した3症例で,痛みは軽減した.
  • 杉浦 健之, 徐 民恵, 幸村 英文, 平手 博之, 藤田 義人, 薊 隆文, 伊藤 彰師, 笹野 寛, 祖父江 和哉
    2011 年18 巻4 号 p. 384-387
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    プラミペキソールの服用後に有痛性下肢運動障害疾患が軽快した症例を報告する.患者は60歳代の男性で,右膝関節の再置換術後から右足趾(第2~5)に痛みと不随意運動が発現した.足趾の痛みは,持続性で歩行時に増強していた.不随意運動は,安静時に足趾内転位を示すジストニアと,1-2 Hzの不規則な持続性の振戦であった.下肢遠位側の病変で,痛みと不随意運動を特徴とする“痛む脚と動く足趾症候群”を疑ったが,確定診断には至らず,有痛性運動障害疾患として取り扱った.仙骨硬膜外ブロックとプラミペキソールの内服後に,足趾の痛みと不随意運動は軽減した.プラミペキソールを増量後に,不随意運動はほぼ消失し,歩行が円滑にできるようになった.その後は,坐骨神経ブロックを隔週に行い,プラミペキソールの内服を継続している.下肢静止不能症候群の治療薬であるプラミペキソールは,本症例のような有痛性下肢運動障害疾患にも効果がある可能性がある.
  • 仁木 有理子, 金井 昭文, 岡本 浩嗣
    2011 年18 巻4 号 p. 388-391
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/09/22
    ジャーナル フリー
    三叉神経痛は三叉神経第2,3枝に好発し,飲食や会話を困難にする.口腔粘膜領域の三叉神経痛を有する患者12人に8%リドカインスプレー(キシロカインポンプスプレー®:LPS)を処方し,粘膜の痛み部位への塗布を指示した.1回使用量は最大24 mg,使用間隔を4時間以上空けて,痛み出現時に使用可能とし,痛みを視覚アナログスケール(VAS)で評価した.LPSは痛みをVASで塗布直前58 ± 17 mm(平均 ± 標準偏差)から塗布10分後5 ± 13 mmに有意に低下させた.作用発現時間の中央値(範囲)は3(1~10)分であり,作用持続時間は3(0.5~6)時間であった.2人にLPS塗布部のしびれを生じた.満足度は大変満足7人,満足4人であった.LPSは口腔粘膜領域の三叉神経痛に対して重篤な副作用なく,迅速に鎮痛作用を発揮する可能性が示唆された.
  • 橋本 孝太郎, 中川 雅之, 中野 裕子, 佐藤 薫, 村川 雅洋
    2011 年18 巻4 号 p. 392-394
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    われわれはがん性痛に対してガッセル神経節の高周波熱凝固を行った後に急性化膿性髄膜炎が生じた症例を報告する.50歳の男性で,右下顎の歯肉癌による痛みに対してガッセル神経節の高周波熱凝固を行った.右下顎の痛みは軽減したが,同日の深夜より強い頭痛と39°Cの発熱が起こった.明らかな髄膜刺激徴候はなかったが,4日後の脳脊髄液検査で細胞数増加,蛋白濃度の上昇,糖濃度の低下があり,細菌性髄膜炎が疑われた.パニペネム/ベタミプロン4 g/日とバンコマイシン2 g/日を投与した.高周波熱凝固から8日後に解熱し,頭痛は消失した.神経脱落症状はなかった.
  • 中川 雅之, 橋本 孝太郎, 佐藤 薫, 阿部 茉莉子, 中野 裕子, 小原 伸樹, 村川 雅洋
    2011 年18 巻4 号 p. 395-398
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/10
    [早期公開] 公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    開胸術後の創部痛で紹介されたが,悪性疾患による痛みであった2症例を報告する.【症例1】68歳の男性で,左腎癌術後の創部痛はいったん消失したが,手術創にほぼ一致した部位に痛みが再発し,増強してきたので当科を紹介された.脊椎の叩打痛,圧痛はなかったが,腰椎エックス線写真で第12胸椎の椎体高がやや減少しており,椎弓根の陰影が不鮮明であった.造影MRIで,第12胸椎の椎体に腫瘍があり,脊柱管内に浸潤し,左第12胸神経根を圧迫していた.【症例2】65歳の男性で,右気胸術後の創部痛が遷延し,当科を紹介された.胸部エックス線写真で,痛みのある部位周囲の肋骨が不鮮明であった.CTで右第3肋骨が融解していた.生検で肺原発の腺扁平上皮癌と診断された.
    手術後に創部痛が遷延,再燃した場合は,悪性疾患の既往がある患者では常に再発・転移を念頭において診察に当たらなければならない.また,悪性疾患の既往がない患者でも痛みの経過が通常の創部痛と異なる場合は悪性疾患の検索が必要である.
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