症例は12歳男児,身長147 cm,体重36 kg.初診3カ月前に頭痛が出現し,近医小児科で片頭痛と診断された.頭痛が増悪し,イブプロフェン400 mg,ナラトリプタン2.5 mgの内服後もnumerical rating scale(NRS)8~10の頭痛,嘔吐が持続し当科紹介受診となった.呉茱萸湯エキス顆粒5.0 g分2を開始,初診7日後,ナラトリプタン10回/月以上の内服を認めナラトリプタンのみ中止した.NRS 5~8の頭痛が持続し,イブプロフェンを連日内服していた.初診14日後,経鼻的局所麻酔薬浸潤による翼口蓋神経節ブロック施行でNRS 3に軽減した.アミトリプチリン10 mgの内服を開始し,2~4週ごとの翼口蓋神経節ブロック施行,発作時のイブプロフェン内服で,学校生活に制限なく過ごせるようになった.初診6カ月後,アミトリプチリンを中止し,症状の増悪なく経過している.経鼻的局所麻酔薬浸潤による翼口蓋神経節ブロックは低侵襲であり,有用と考えられる.
足病変(巻き爪,胼胝,鶏眼など)は姿勢や歩容に影響を与え,慢性腰椎疾患症例では,痛みを増悪する要因になる.今回,ペインクリニックにて右母趾痛と両腰下肢痛を呈した症例の介入経験を報告した.症例は60歳代男性,職業は警備員.既往に腰椎椎間板ヘルニア(L3/4)に伴う左腰下肢痛があり,腰部硬膜外ブロックを実施していた.巻き爪による右母趾痛で初診来院した.疼痛性跛行があり,歩行時の右腰痛と右股関節周囲痛を認めた.初診時にフットケア,理学療法が開始となった.右母趾痛はNRS 6,両腰痛や右股関節周囲痛はNRS 3であった.看護師のフットケアとして,ポドストライプによる右母趾巻き爪の矯正とフットケアマシンによる左母趾爪甲鉤弯症の研磨を実施した.その後,痛みにより習慣化した疼痛性跛行の改善,骨盤アライメント修正の運動療法を実施した.初診3カ月後に右母趾痛はNRS 0,右腰痛はNRS 0~1で歩容の改善が認められた.足部病変のある慢性腰椎疾患症例に対し,看護師のフットケアと理学療法士の運動療法の併用で良好に痛み管理が遂行できた.
脊髄刺激療法(SCS)の周産期の使用に対する安全性はいまだ確認されていない.われわれはSCSを使用しながら周産期を経た1症例を報告する.症例:25歳時に右腕神経叢ニューロパチーを発症しステロイドパルス療法を受けたが,鎮痛薬が無効な患肢の自発痛,易疲労性,浮腫が持続し27歳時に当科を受診した.腕神経叢ブロックを継続した後,痛みの自己管理を希望し28歳時にSCSを開始した.刺激電極を頸椎に,充電式の刺激装置(IPG)を臀部に留置した.痛む時にSCSを使用し日常生活動作は改善した.36歳時に妊娠の連絡があり,胎児心拍モニター等の検査時はSCSをオフにすること,妊娠中はSCSをオフにするよう推奨されているが,使用しながら出産した報告もあることを説明し,当院産科と共同観察するために当院での周産期管理を勧めた.妊娠中も患肢の痛みが持続していたため,毎晩SCSを使用した.体重増加により皮膚からIPGまでの距離が増えた妊娠後期には充電不良になったがSCSは継続できた.38週3日で出産し,出産5日後に問題なく退院した.1カ月後には体重が減り充電も改善した.4カ月後も母子共に健やかに経過している.
65歳男性.乗用車運転中の交通事故にて受傷後,左頸部から上肢にかけての痛みが出現し,MRIで頸椎椎間板ヘルニアと左椎間孔狭窄を認め,保存治療を開始した.経過中,左肩腱板損傷を指摘され,鏡視下腱板断裂修復術を受けた.その後も左上肢痛としびれが改善せず,受傷より1年後,整形外科より頸部神経根ブロック目的にペインクリニックへ紹介となった.左C6神経根ブロックは頸部痛には効果があったが左上肢しびれには変化がなかった.ペインクリニックでの問診にて,受傷後から耳鳴が持続し生活に支障をきたしていることが分かった.後頸部痛の軽減目的に左大後頭神経ブロックを行ったところ著効し,耳鳴にも効果を認めた.超音波ガイド下に,左大後頭神経に高周波パルス法(42℃,2 Hz,20 ms,45 V,6分間)を施行したところ,耳鳴,頸部痛の軽減が得られ,効果は約3カ月持続し,抑うつ傾向にも改善がみられた.外傷性頸部症候群に伴う耳鳴に大後頭神経ブロックが著効し,さらにパルス高周波で長期的効果が得られた1例を経験した.