日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
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28 巻, 12 号
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総説
  • 林 伸治, 高薄 敏史, 山口 重樹
    原稿種別: 総説
    2021 年 28 巻 12 号 p. 245-252
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
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    オピオイドクライシスは,トランプ大統領が,公衆衛生上の非常事態宣言を出したことで広く知られるようになった.その始まりは,疼痛で苦しんでいる患者をなんとかしたいという善意であったが,グローバル化に取り残された社会環境を背景に,政策転換を悪用した製薬会社による安全性軽視の積極的なプロモーションにより,クライシスが拡大した.日本においては,まだ,オピオイドクライシスは起こっていないが,楽観視はできない.また,がん治療の進歩にともなって,がんサバイバーは増加していることからも注意は必要である.一度オピオイドクライシスが発生すると,終息させるのは至難の業である.そうならないため,オピオイド療法にかかわる全ての関係者が,適正使用に向け協力していくことが求められている.

症例
  • 中島 良夫, 村松 直樹, 藤沢 弘範
    原稿種別: 症例
    2021 年 28 巻 12 号 p. 253-257
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
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    crowned dens syndrome(CDS)は,急性発症の発熱,頚部痛,頚部の著しい可動域制限,頚椎CTにおける歯突起周囲の石灰化を特徴とするまれな疾患である.今回2症例を経験したので報告する.症例1:70歳,女性.5日間続く頚部痛,頚部運動制限,発熱を主訴に来院.血液データでWBC,CRPは上昇しており,頚椎CTで歯突起周囲の靱帯の石灰化を認めCDSと診断した.NSAIDsを投与し1週間後,頚部痛と運動制限は軽快し,炎症所見も改善した.症例2:84歳,女性.特発性水頭症に対し,左腰椎–腹腔シャント術施行.手術4日後に発熱と頭痛,嘔気,頚部痛,頚部回旋障害が出現した.頭部CTは異常なく,頚椎CTで歯突起周囲の石灰化があり,血液データでWBC,CRPの上昇を認めた.CDSと診断し,NSAIDsを投与,1週間で頭痛,頚部痛,頚部運動制限は消失し,炎症所見も改善した.本症はNSAIDsが著効する予後良好な疾患であり,急性頚部痛の鑑別診断として常に念頭におくべきであると考えられた.

  • 下畑 敬子, 下畑 享良
    原稿種別: 症例
    2021 年 28 巻 12 号 p. 258-261
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
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    帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)に対するリドカイン点滴静注は,本邦の神経障害性疼痛治療ガイドラインには含まれていないが,難治性疼痛治療に広く用いられている.亜急性期のアロディニアを伴うZAPに,リドカイン点滴静注が奏功した2症例を経験したので報告する.症例1は70歳男性,右Th4帯状疱疹を1カ月前に発症した.電撃痛,睡眠障害に対しプレガバリンが無効で,VAS 80 mm,アロディニアを認めた.抗血栓療法中のためリドカイン点滴静注を行ったところ,直後より電撃痛とアロディニアは軽減した.症例2は69歳男性で,左Th5帯状疱疹を3カ月前に発症した.電撃痛と睡眠障害に対し,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),プレガバリンが無効で,VAS 70 mm,アロディニアを認めた.肋間神経ブロックとリドカイン点滴を行ったところ,直後よりアロディニアは消失,疼痛も低下した.いずれの症例でも副作用は認めなかった.リドカイン点滴静注は,抗血栓療法中など神経ブロックが施行できないアロディニアを伴うZAPに対して有用な補助療法の一つと考えられた.

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