持続硬膜外ブロックに伴う硬膜外膿瘍発生の報告は多い. 今回われわれは, 基礎疾患のない患者に1回注入法での硬膜外ブロック治療経過中, 硬膜外膿瘍および椎間板炎を発症した1例を経験したので報告する. 症例は74歳, 男性. 腰部脊柱管狭窄症および根性坐骨神経痛に対し, 硬膜外ブロックで疼痛軽減が得られていたが, 5回目の施行翌日に強い背部痛が出現し, 緊急入院となった. 第1病日, 高熱, 著明な炎症所見, 背部痛増悪から, 硬膜外膿瘍を疑い, 緊急MRIを施行した結果, 硬膜外膿瘍およびL
4/5の椎間板炎の所見が認められた. 第3病日, 意識混濁をきたしたため, 椎弓切除術, 硬膜外ドレナージ術が施行され, 同時に血液および硬膜外組織培養から表皮ブドウ球菌が同定された. この結果, 今回発生した硬膜外膿瘍はブロックに起因したものと診断された. 神経学的には脱力症状もなく, 一般には保存的治療が選択されるが, 本症例は腰背部痛が重度で, 菌血症を併発したことから, 観血的治療を選択した. 外来治療において, 基礎疾患のない患者への1回注入法での硬膜外ブロックの機会は多い. 同部位から硬膜外穿刺を繰り返す場合, 1回注入法でも感染発症の危険性がある.
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