日本ペインクリニック学会誌
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30 巻, 10 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
症例
  • 五明 義就, 末松 美和, 可西 洋之
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 10 号 p. 227-231
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
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    【症例】59歳女性.他院の形成外科で右第1・2趾の小潰瘍を初発とする静脈うっ滞性潰瘍の治療が行われた.静脈瘤手術や植皮術などの治療に反して潰瘍は拡大し潰瘍部および潰瘍周囲の疼痛治療を当院が行うこととなった.初診時現症:右下肢は下腿下1/3内側と足背に広範囲な潰瘍,左下肢は下腿下1/3に全周性の潰瘍,潰瘍部の痛覚過敏と静的アロディニア,潰瘍周囲の皮膚には動的アロディニアを認めた.皮下埋設型の硬膜外アクセスポート(硬膜外ポート)を留置し潰瘍部の洗浄や不良組織の除去が鎮痛下に行え,脊髄刺激療法(SCS)を導入しアロディニアの改善が得られた.硬膜外ポートおよびSCSの併用による疼痛治療を開始し5年以上経過したが,感染や機能上のトラブルは認めていない.長期的な疼痛治療下で両下腿の潰瘍は良好な肉芽の形成と辺縁からの上皮化で縮小し,右足背には他院形成外科での分層植皮が生着し治癒した.【まとめ】慢性静脈性潰瘍の長期的な鎮痛管理に硬膜外ポートとSCSの併用が有効であった.感染や硬膜外の線維化などの合併症には定期的な精査を行い備えが必要である.

  • 星加 麻衣子, 草間 宣好, 加藤 利奈, 佐藤 玲子, 杉浦 健之, 祖父江 和哉
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 10 号 p. 232-235
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
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    鎖骨骨幹部骨折プレート固定術の合併症に鎖骨上神経の損傷がある.今回,プレート固定術後の遷延性術後痛に対し鎖骨上神経へのパルス高周波法が有効であった症例を経験したので報告する.症例は46歳の男性.2年前,左鎖骨骨幹部骨折を受傷し,前医でプレート固定術が実施された.術後,左鎖骨周囲の疼痛が悪化し持続したため,1年前にプレート抜去術が実施された.しかしプレート抜去後も痛みは改善せず,当院整形外科に紹介となった.胸郭出口症候群の疑いで腕神経叢(鎖骨上部)および鎖骨下筋に対しハイドロリリースが実施されたが効果なく,当科に紹介となった.初診時,左前胸部・鎖骨・肩周囲に針で刺されるような持続痛(NRS 7)と体動時痛,圧痛があった.神経障害性疼痛としてプレガバリン内服を開始したが効果がなかった.浅頚神経叢ブロックにより痛みは軽快したが効果は一時的であった.このため長期効果を期待して鎖骨上神経に対しパルス高周波法を2回実施したところ,持続痛はNRS 2~3へ軽減し,体動時痛と圧痛も改善した.末梢神経障害が関与する遷延性術後痛に対し,末梢神経パルス高周波法は有効な治療法となる可能性がある.

  • 髙松 美砂子, 冨田 美佐緒
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 10 号 p. 236-240
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
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    神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy:NA)は,肩や上肢の激しい痛みと疼痛の軽減後に顕在化する同側上肢の筋萎縮・筋力低下を特徴とする.NAの疼痛治療に神経ブロックを行った症例の報告は少ない.今回,NA患者の肩・上肢の遷延する激痛に対し,神経ブロックとデュロキセチン(DXT)による治療を行った.腕神経叢へのデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(DEX)投与は亜急性期の肩と上肢の痛みを改善したが,再燃した上肢の痛みには無効であった.再燃した痛みには上位胸部硬膜外ブロックが著効した.DXT内服は手の疲労感と前胸部違和感・咳嗽時痛に有効であった.NAの疼痛には多様な発生機序が存在する可能性があり,神経ブロックを含め複合的な治療戦略の蓄積が必要である.

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