日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
26 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 大野 由夏, 小長谷 光
    原稿種別: 総説
    2019 年 26 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/06/28
    [早期公開] 公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー HTML

    遷延性術後痛の発症危険因子は明らかではないが,内因性鎮痛系の減弱も一部関与している可能性がある.生体に備わっている内因性鎮痛系の一種に,身体のある部位に与えた刺激により別の部位の痛みが抑制される現象があり,これは,動物においては広汎性侵害抑制調節(diffuse noxious inhibitory controls:DNIC),またヒトにおいてはconditioned pain modulation(CPM)と呼ばれる.DNIC/CPMは中枢性の抑制性修飾であり,セロトニン作動系やノルアドレナリン作動系などの内因性鎮痛系が関与する.健康成人を対象にCPM評価を行うとCPM効果の大きさに個人差が認められることから,CPM効果は内因性鎮痛系の評価法として応用できると考えられる.さらに,予定手術患者を対象に術前のCPMを評価した結果,術後痛とCPM効果の関連が示されたことから,CPMは遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査として応用できる可能性がある.本総説では,DNIC/CPMの概要,CPM評価法について概説し,さらにCPMの遷延性術後痛発症危険因子スクリーニング検査としての可能性について,最新の知見を自験例とともに報告する.

原著
  • 山上 裕章, 塩見 由紀代
    原稿種別: 原著
    2019 年 26 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/06/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】椎骨洞神経ブロック(S-Vブロック)の有用性を検討した.【方法】2012~2017年の5年間に施行したS-Vブロック157件(133症例)について,回顧的検討を行った.治療効果判定には数値評価スケール(numerical rating scale:NRS)を用い,施行1カ月後にNRSが50%以下に減少していれば「有効」とした.【手技】X線透視下斜位で施行し,ブロック針を椎間板線維輪背側部に当てた.ブロック針で線維輪に圧力をかけたときの疼痛の有無とその後の治療効果で責任高位診断を行った.造影剤(イオヘキソール240 mg I/ml)0.5 mlを注入後,薬液(1%メピバカイン0.5 ml+水溶性デキサメタゾン0.825 mg)を線維輪表面に注入した.【結果】有効68症例(51.1%)で増悪症例はなかった.責任高位診断のため複数椎間にS-Vブロックを施行した26症例では,21症例(80.8%)の診断が可能であった.施行に伴う副作用は認めなかった.1年後の転帰では23症例(17.3%)が軽快終診となっていた.【結論】S-Vブロックは椎間板由来の愁訴の診断・治療に有用であった.

症例
  • 中村 好美, 吉村 文貴, 田辺 久美子, 山口 忍, 杉山 陽子, 飯田 宏樹
    原稿種別: 症例
    2019 年 26 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/06/28
    ジャーナル フリー HTML

    セロトニン症候群は,中枢および末梢神経シナプス後部のセロトニン過剰刺激によって精神状態の変化,神経・筋症状,自律神経症状を生じ,薬物の過剰摂取だけでなく,薬物の投与または薬物相互作用によって発症する.今回われわれは,慢性疼痛患者に対する少量のデュロキセチンとトラマドールの併用により,セロトニン過剰状態を起こした3症例を経験した.3症例とも併用開始直後に焦燥感があり,発汗過多,動悸,振戦のうちの1つ以上の症状が出現したが,両薬物もしくはデュロキセチンの内服中止直後に症状が改善した.セロトニン症候群の診断基準を満たしていないが,セロトニン過剰状態と考えられ注意が必要であった.デュロキセチンはCYP2D6を阻害するためトラマドールの代謝が抑制され血中濃度が上昇し,セロトニン過剰状態を引き起こしたと考えられた.さらに1症例ではCYP3A4阻害薬であるビカルタミドを内服しており,これもトラマドールの代謝を阻害したと考えられた.慢性痛を有する患者は多剤併用されることが多いが,薬物相互作用をよく理解し副作用の出現に注意が必要である.

  • 前里 喜一, 小杉 寿文, 岡口 美帆, 冨安 志郎
    原稿種別: 症例
    2019 年 26 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/06/28
    ジャーナル フリー HTML

    小児悪性腫瘍に伴う難治性がん疼痛に対し,メサドンとくも膜下鎮痛法(IT)を用いて良好な鎮痛を得た症例を経験した.症例は12歳,女性.3歳時に悪性末梢神経鞘腫を発症し放射線・化学療法を施行されたが再発し,12歳時には胸髄浸潤による対麻痺症状が出現したため緊急手術が行われた.一時的に症状は軽減したが痛みが増強し,オキシコドンが開始されたが効果なく,手術から4カ月後当院へ紹介入院となった.オキシコドンをメサドンへスイッチすることで第7病日には持続痛,体動時痛ともに改善.病状進行による食道通過障害が進行した第33病日にITを導入することで最期まで良好な鎮痛維持が可能であった.わが国における小児の難治性がん疼痛に対するメサドンやITの報告はないが,安全かつ効果的な1例を経験した.

  • 柳泉 亮太, 田澤 利治, 後藤 隆久
    原稿種別: 症例
    2019 年 26 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/06/28
    ジャーナル フリー HTML

    脊髄性筋萎縮症とは,脊髄および下位脳幹における進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患であり,進行性の筋萎縮を引き起こす.運動予後の改善が期待される新薬(ヌシネルセンナトリウム)が2017年よりわが国でも使用可能になった.しかし髄腔内投与を必要とし,高度側弯症を有する場合,腰椎穿刺が困難になる症例もある.今回われわれは,高度側弯症のため主治医が不成功に終わった腰椎穿刺の再施行依頼に対して,X線透視下で腰椎穿刺を実施することにより良好な結果を得た2症例を経験した.症例1は29歳,女性.2回目までは神経内科主治医のランドマーク法で腰椎穿刺可能であったが,3回目以降から誘因なく穿刺不可能になった.X線透視によりL3/4間の椎弓間隙を同定することで,腰椎穿刺に成功した.症例2は15歳,女性.小児科主治医のランドマーク法では一度も成功しなかったが,当科でのX線透視の使用によって腰椎穿刺に複数回成功し,予定どおりに投与計画を達成できた.高度側弯症がある場合でもX線透視の使用で目標刺入部位の椎弓間隙が明瞭になれば,手技の確実性が高まることが示された.以上より,高度側弯症患者の腰椎穿刺にはX線透視が有用と考える.

短報
コラム
学会・研究会
feedback
Top