日本ペインクリニック学会誌
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25 巻, 1 号
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日本ペインクリニック学会安全委員会報告
  • —日本ペインクリニック学会安全委員会・有害事象調査報告と課題—
    田中 信彦, 斎藤 繁, 村川 和重, 關山 裕詩, 平川 奈緒美, 前田 倫, 益田 律子, 横田 美幸
    原稿種別: 日本ペインクリニック学会安全委員会報告
    2018 年 25 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
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    日本ペインクリニック学会安全委員会では,2009年より学会認定ペインクリニック専門医指定研修施設を対象に有害事象収集事業を開始した.本稿では2014年の1年間を対象とした第4回調査の結果について報告する.第4回調査では,343施設中173施設(50%)から回答が得られた.これまでの調査結果と同様に,有害事象のほとんどが鎮痛薬・鎮痛補助薬の副作用,または神経ブロック・インターベンショナル治療の合併症であった.鎮痛薬・鎮痛補助薬に関しては,非ステロイド性抗炎症薬,プレガバリンおよびトラマドール・アセトアミノフェン配合錠の副作用が多く報告された.神経ブロック・インターベンショナル治療に関しては,局所麻酔薬の血管内注入による意識消失や呼吸循環不全,肋間神経ブロックやトリガーポイント注射による気胸,化膿性脊椎炎や硬膜外膿瘍などの感染性合併症,頸部血腫や硬膜外血腫などの出血性合併症が報告された.これらの有害事象に関する情報を学会員間で共有し,痛み診療における危機管理意識を高める必要がある.

症例
  • 端 裕之, 渡辺 裕介, 西村 英祥, 小木曽 照子
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
    [早期公開] 公開日: 2018/01/30
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    症例は23歳,男性.胸腺がんの右前頭葉への脳転移に対し,腫瘍摘出術を施行した.術前には左胸腔内再発腫瘍による疼痛に対してオキシコドン徐放錠640 mg/日,モルヒネ徐放錠240 mg/日,ケタミン水320 mg/日を定期内服していた.術当日朝に最終内服を行い,全身麻酔下に手術を施行.術直後は疼痛時にオキシコドン速放散80 mgを胃管より投与.手術24時間後よりオキシコドン速放散200 mg,ケタミン水80 mgを6時間ごとに定期投与し,48時間後より経口内服薬を再開した.オピオイド内服中の患者の周術期がん疼痛管理は注射剤へスイッチングして行うことが一般的だが,本症例のように高用量オピオイドを内服しており,術前から脳腫瘍による意識障害や嘔気を伴う脳手術症例などではスイッチングが困難である.術後絶食期間の短い手術であれば,胃管からのオキシコドン速放散とケタミン水投与による術後がん疼痛管理も可能であると思われた.

  • 山本 裕梨, 樋田 久美子, 境 徹也, 原 哲也
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
    [早期公開] 公開日: 2018/01/30
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    症例は64歳,女性.4カ月前に右眼瞼のぴくつきが出現し,徐々に増強し筋痙攣となり,口角部分にまで広がった.片側顔面痙攣の診断でカルバマゼピンが処方され有効であったが,白血球減少のため中止され,当科紹介となった.右顔面痙攣に加え,右頸肩部痛があり,右頸部傍脊椎部に圧痛があった.片側顔面痙攣と頸椎椎間関節症の併存と診断し,クロナゼパム0.5 mg/日の内服と神経ブロック治療(星状神経節ブロック,頸椎椎間関節ブロック,後頭神経ブロック,頸部トリガーポイント注射)を行った.2カ月後には頸肩部痛は改善し,顔面痙攣も軽減した.併存していた頸肩部痛に対する治療による痛みの改善と,それによるストレスの軽減が,片側顔面痙攣の症状緩和に寄与した可能性がある.

  • 中野 裕子, 大石 理江子, 中川 雅之, 佐藤 薫, 三部 徳恵, 村川 雅洋
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
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    症例は47歳の女性.背部痛を主訴として当科を受診し,MRIでTh6,7椎体前方に異常信号を認めたが,受診1カ月後には痛みが完全に消失していた.初診より7年後,両膝から下の痛みを訴え再度来院し,MRIでL3/4,4/5に脊柱管狭窄を認めたが,症状が軽度であったため,プレガバリンを処方し保存的に治療した.経過中に左胸部痛や背部痛を訴えたが自然に軽快,受診ごとに訴える部位が異なるため経過を観察していた.初診より7年6カ月後,左胸鎖関節の圧痛と両手掌の皮疹が出現したため,掌蹠膿疱症,胸鎖関節病変,脊椎病変を伴ったSAPHO症候群を疑った.しかし,保存療法のみで症状が軽快したため経過観察中である.SAPHO症候群は皮膚,骨関節病変を統合する概念である.病因の詳細は不明であり,寛解と増悪を繰り返すが,一般に予後良好な疾患である.皮膚症状よりも背部痛が先行した場合に診断は困難であり,本疾患を念頭に置いて診療にあたる必要がある.

  • 小林 充, 鈴木 興太, 藤井 俊輔, 渥美 和之, 横山 順一郎, 中島 芳樹
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
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    発見の遅れによる硬膜外血腫の後遺症を経験し,硬膜外カテーテル留置症例における管理プロトコールを作成した結果,その後発生した硬膜外血腫を早期に発見,治療できた症例を報告する.症例は80代男性,硬膜外麻酔併用全身麻酔下に行った横行結腸切除術の翌日に右下肢の知覚鈍麻と麻痺が出現した.症状は進行し,第3病日に撮影したMRIで硬膜外血腫を認め血腫除去術を行ったが,下肢の知覚鈍麻,麻痺,膀胱直腸機能障害の後遺症が残った.この経験から,硬膜外麻酔に関する注意事項を詳細に規定し,管理プロトコールを作成,遵守するよう徹底した.それより5年後,70代男性の腹膜播種による十二指腸狭窄に対し,硬膜外麻酔併用全身麻酔下にバイパス手術を施行後,4病日に突然の背部痛とTh10以下の知覚鈍麻,対麻痺が出現した.ただちにプロトコールに則って関係診療科に連絡がなされ,緊急MRIで硬膜外血腫と診断し血腫除去術を行った.迅速な対応により神経学的所見は完全に回復し,後遺症を回避しえた.硬膜外カテーテルを留置する際,硬膜外血腫の予防のみならず,血腫発生時の早期対応が重要である.

  • 藤原 亜紀, 渡邉 恵介, 福本 倫子, 木本 勝大, 篠原 こずえ, 川口 昌彦
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2018/03/08
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    硬膜下くも膜外注入は硬膜外ブロックのまれな合併症である.今回,頸部経椎間孔硬膜外ブロック施行時に硬膜下くも膜外注入となった症例を報告する.症例は75歳,女性.頸椎症に対して右T1経椎間孔硬膜外ブロックを定期的に施行していた.今回の同処置施行時は,X線透視下で針先は椎間孔外に位置し,後根神経節が造影された.局所麻酔薬注入数分後から右上肢のしびれが出現し,徐々に四肢へと広がった.その後,呼吸困難感,血圧および心拍数低下を認めた.広範囲の感覚低下と四肢筋力低下を認めたが,意識は清明で,下肢筋力低下が上肢に比し軽度であったことなどから硬膜下くも膜外注入と判断した.酸素および昇圧薬の投与によりバイタルサインは安定した.呼吸困難感は1時間で軽減し2時間後には座位も可能となった.その後全身状態は安定し,翌日に退院した.以降も起立性頭痛やその他の不調は認めていない.硬膜下くも膜外腔は狭い空間であり,少量の薬液で広範囲の神経遮断が起こる.今回,前回施行時とは異なる造影像であったことに注意を払うべきであった.まれであるが重篤な合併症を回避するために,慎重な造影所見の読影と処置後の注意深い観察が必須である.

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