日本ペインクリニック学会誌
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25 巻, 2 号
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総説
  • 石田 高志, 関口 剛美, 川真田 樹人
    原稿種別: 総説
    2018 年 25 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    変形性関節症をはじめとする関節炎は,移動時に痛みが増強するため移動機能障害を招き,患者のQOLを著しく低下させることが問題となっている.関節炎の痛みの薬物療法として消炎鎮痛薬が用いられるが,長期投与による腎臓や消化管への副作用から,関節炎による痛みのメカニズムに基づいた,有効かつ安全な新たな治療法の開発が求められている.関節炎では,滑膜線維芽細胞や軟骨細胞からのIL-1やTNF-αをはじめとする各種炎症性サイトカインの放出が起こり,軟骨の変性や骨増生が起こる.炎症は関節内のみにとどまらず,関節周囲組織にも広範囲に波及する.慢性的な炎症に末梢神経や中枢神経における可塑的変化が生じ神経障害性疼痛の側面も持つようになり,痛みのメカニズムは複合的となる.さらに関節炎患者では,関節内の炎症や骨破壊だけでなく,骨髄内病変の出現により痛みが増強することが知られている.したがって関節炎では,関節・骨・骨髄の病変が相互に作用し,複合的なメカニズムにより痛みが増強する.本稿ではまず関節炎に伴う複合的な痛みのメカニズムを概説する.次いで,痛みのメカニズムに基づいた新たな鎮痛薬・鎮痛法について解説する.

  • 谷口 千枝
    原稿種別: 総説
    2018 年 25 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    がん関連痛は,手術,化学療法,放射線治療といったがん治療に伴うものから,終末期のがん性疼痛によるものまで,さまざまな病期に起こる.喫煙は急性症状として一時的に痛みを軽減させるが,その後に起こるニコチン離脱症状は痛みの感受性を上げる.患者は痛いとタバコを吸いたくなり,吸いたくなると痛みは増す.そのようななかでわれわれ医療従事者は,痛みのある喫煙がん患者に対しどのように対応すべきか.本稿では,喫煙と痛みの関連について特にがん関連痛を中心に文献レビューを行い,痛みのある喫煙がん患者に対する症状緩和につながる禁煙支援について説明する.

症例
  • 深田 祐作
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 2 号 p. 69-72
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    妊娠を契機に再燃したmeralgia paresthetica(MP)に対し,妊娠31週時に超音波ガイド下にパルス高周波法(PRF)を施行し,良好な治療効果を得たので報告する.症例は36歳の女性,2回目の妊娠12週時に左外側大腿皮神経領域に痛みが再燃した.3年前の初回妊娠時には,局所麻酔薬による神経ブロック治療のみで軽快したが,今回は妊娠子宮の増大とともに睡眠障害を引き起こすまでに増悪した.胎児に対する影響への懸念から内服療法や手術療法は選択できず,比較的低侵襲と思われるPRFを適用した.超音波ガイド下に外側大腿皮神経下面にスライター針を留置し,PRFの設定は2 Hz/20 ms/42℃/180 sとした.治療中は強い痛みを訴えることはなく,妊娠への影響もなかった.治療1カ月後,長時間の立位で軽度の痛みを感じる以外は無痛となり,治療に伴う合併症もなく,以後の妊娠経過も良好であった.妊娠に合併する難治性MPの治療法として超音波ガイド下PRFは,簡便であるとともに有効性と安全性の高い方法であると考えられた.

  • 深田 祐作
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    上腕近位部における橈骨神経の絞扼性障害はまれであるとされている.今回,肩関節と肘関節を屈曲した肢位を維持すると橈骨神経領域に鈍痛や異常感覚を伴う疲労感が出現する,上腕近位部での機能的絞扼性橈骨神経障害が疑われた4症例を経験した.各症例は,それぞれ患部の中枢側に存在する別の疼痛疾患の治療中に症状が出現した.いずれの症例にも,患肢の上腕腋窩背側に圧痛点が存在し,同点は超音波検査で上腕三頭筋内側頭と外側頭の間を背外側に回旋していく橈骨神経と一致した.上腕三頭筋による橈骨神経の絞扼性障害を疑い,超音波ガイド下橈骨神経ブロックを施行したところ,症状は消失した.絞扼の機序として,肘関節と肩関節の屈曲により牽引された橈骨神経が,伸展された上腕三頭筋により上腕骨との間で圧迫される可能性と,これに加えてdouble crush syndromeのような病態が関与している可能性が推測された.本症候は,知覚・運動神経障害を伴う典型的な絞扼性障害とは異なり症状は機能的であるが,日常生活動作を障害し,かつ神経ブロック治療が奏効することから,痛み診療において本病態を念頭に置いておくことは有用であると考えられた.

  • 濵口 孝幸, 八反丸 善康
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    薬物使用過多による頭痛とは一次性頭痛に対する急性期治療薬の過剰使用による頭痛の発現・増悪であるが,詳細な病態生理は不明であり治療法も確立されていない.今回デュロキセチンを予防薬として投与し,乱用薬物の中止が可能であった症例を報告する.症例は44歳の男性.左眼窩部痛と頭痛を主訴に来院した.3年前から主訴が出現し各種の薬物療法を行った結果,ナラトリプタンにより痛みは緩和し,平日は連日ナラトリプタンを内服するようになっていた.当科初診時には一日中続く頭重感と15分間の流涙を伴う左眼窩部痛発作が数回/日あり,薬物使用過多による頭痛と慢性群発頭痛と診断した.さらに意欲の低下を自覚し,抑うつ傾向があった.群発頭痛に対しベラパミルを開始し左眼窩部痛発作は消失し,薬物使用過多による頭痛の予防薬として抑うつ症状の存在からデュロキセチンを開始したところ,頭痛は改善して乱用薬物が中止可能となった.デュロキセチンは薬物使用過多による頭痛の予防薬として有効である可能性がある.

  • 内山 智浩, 秋永 泰嗣, 今井 亮, 山本 洋子
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    神経障害性疼痛に対するプレガバリン療法の実施中に若年性ミオクロニーてんかんを発症し,いったん投与を中断したが,レベチラセタムとプレガバリンを併用することによりてんかん発作と痛みを抑制することができた症例を経験した.症例は16歳の女性で,トロッカーカテーテルによる自然気胸治療後に,刺入部周辺に遷延する間欠痛を自覚するようになった.プレガバリンによる治療が奏効していたが,四肢に意図しない運動が現れるようになった.プレガバリンによる副作用の可能性も否定できないためいったん中断したが,神経内科医による診療の結果,脳波検査により突発性の棘徐波複合が全般性に認められ若年性ミオクロニーてんかんと診断された.これによりレベチラセタムの投与を開始し,プレガバリンも従前の量に復することができた.プレガバリンの副作用の一つにミオクローヌスなどの不随意運動があり,類似薬のガバペンチンは単剤投与では若年性ミオクロニーてんかんを悪化させることが知られている.ミオクローヌスとてんかん発作には連続性があり診断と治療に苦慮したが,併用療法により疼痛管理とてんかん性疾患治療の両立を図ることができた.

  • 原 温子, 八島 典子
    原稿種別: 症例
    2018 年 25 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/06/29
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    三叉神経第1枝(V1)領域の帯状疱疹は眼症状(角膜炎,虹彩毛様体炎,強膜炎など)を伴うことが多い.しかし,複視を呈する眼球運動障害はまれな合併症である.今回われわれは,外転神経麻痺を合併した帯状疱疹を経験したので報告する.症例は52歳,男性.右V1領域に水疱が出現し,皮膚科で帯状疱疹と診断.ファムシクロビル,プレドニゾロン,ロキソプロフェン,プレガバリンが投与された.2週間後,複視を自覚したため,脳MRIを施行したが,脳内に異常はなかった.ステロイドはいったん増量後3週間で漸減中止した.1カ月で皮膚症状は軽快したが,複視の回復がないため当科受診となった.初診時,右方視時に右眼の外転障害を認め,眼科検査でも右外転神経麻痺が考えられた.星状神経節ブロック(SGB)を開始し,麻痺は徐々に改善した.V1領域帯状疱疹による眼球運動障害の機序として,ウイルスによる神経炎や血管炎によるもの,三叉神経炎に伴う腫脹による上眼窩裂での神経圧迫などが考えられている.治療は抗ウイルス薬,ステロイド投与に加えてSGBの有効性も報告されている.V1領域帯状疱疹においては経過中の眼球運動にも注意深い観察が必要である.

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